公認会計士は転職市場で高く評価される資格ですが、転職先によって年収やキャリアの広がりは大きく異なります。近年は監査法人だけでなく、FAS、金融機関、事業会社、スタートアップなど選択肢が広がっており、会計・監査の専門性に加えて、M&AやIPO、経営に関わる経験へのニーズも高まっています。
本記事では、公認会計士の転職市場動向や主なキャリアパス、年収水準、転職で失敗しないためのポイントについて、JACリクルートメント(以下、JAC)が解説します。
公認会計士の転職市場の最新動向
公認会計士は転職市場において高い需要があり、背景には、専門人材の不足に加え、企業側が会計・財務領域の強化を進めている点があります。
ここでは、公認会計士の転職市場の現状と、企業が求める人物像の変化について解説します。
公認会計士の転職市場は総じて売り手寄り
公認会計士の資格は、求人市場において高く評価され、採用選考で有利に働くケースが多く見られます。公認会計士は監査を担う国家資格で、試験合格と実務要件等を経て登録されます。こうした背景から、高度な会計・監査の専門性を証明しやすい資格といえます。
加えて、「会計の専門知識」や「数字に強いこと」はもちろん、監査法人や会計系ファームでの実務経験を通じて、企業との折衝やプロジェクト推進を経験している点も評価されます。こうした経験から培われる経営視点は、会計職に限らず、経営企画やコンサルティングといった幅広いポジションでも重視されています。
そのため、公認会計士は会計・財務分野のみならず、さまざまな職種において転職機会が広がっており、転職市場は総じて売り手寄りです。監査法人に限らず、事業会社やFASなどへ選択肢が広がっています。一方で、領域や経験によって選考難易度は異なります。
また、「米国公認会計士(USCPA)」については、求人の必須条件となるケースは多くないものの、「会計の専門性」と「英語力」を兼ね備えた人材として評価される傾向にあります。外資系企業や海外事業に関わるポジション、海外投資家向けファンドなどにおいては、キャリアの選択肢が広がる可能性があります。
近年の採用ニーズ
近年は、公認会計士に対する採用ニーズも多様化しています。近年の転職先は監査法人・会計事務所に限らず、以下のような領域での需要が拡大しています。
- 事業会社(経理・財務・経営企画)
- コンサルティングファーム(FAS・戦略・業務改革など)
- 金融機関(投資銀行・PEファンドなど)
- IPO準備企業やスタートアップ(CFO・管理部長など)
採用背景として、M&A・IPO・PMIといった経営の重要局面に関わるテーマが挙がるケースが増えており、会計・財務の専門性が求められています。これにより、公認会計士には単なる会計知識だけでなく、経営判断に関わる役割が期待されるケースが増えているのです。
評価されやすいスキルの変化
企業が公認会計士に求めるスキルは、従来の会計・監査業務にとどまらず、より高度かつ実務的な領域へと広がっています。
マネジメント
プロジェクトリード経験やチームマネジメント経験は、これまで以上に重視されています。特に事業会社やコンサルティングファームでは、単なる専門家ではなく、組織を動かすリーダーとしての役割が期待されます。
IPO・M&A
IPO準備やM&Aに関わる経験は、市場価値を高める要素の一つです。企業価値の向上や資本戦略に直結する領域であるため、実務経験の有無によって転職市場での評価に差が出ることがあります。
IT・データ活用
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、ITツールやデータ分析への理解があると歓迎されやすいでしょう。ERPやクラウド会計システムの活用経験、データをもとにした意思決定支援などができる人材は、特に評価される傾向にあります。
公認会計士の転職は本当に有利?評価される理由
公認会計士は転職市場において評価が高く、有利に働くことがある資格といわれています。
ただし、その背景には単に資格の難易度の高さだけではなく、企業側が求めるスキルや役割との親和性があります。ここでは、公認会計士が転職市場で評価される具体的な理由を解説します。
専門性と希少性の高さ
公認会計士が転職で有利とされる最大の理由の一つは、監査の独占業務を担う国家資格であり、専門性の証明として評価されやすいことにあります。
公認会計士は会計・監査の専門家として、財務諸表の理解や内部統制、会計基準に関する深い知識を有しています。これらは企業経営の根幹に関わる領域であり、どの業界においても一定のニーズが存在します。
その結果、採用市場においては専門性の高さが評価され、書類選考や面接の段階で有利に働く場合があります。
幅広いキャリアに展開できるスキル
公認会計士の強みは、特定の職種に限定されない“汎用性の高いスキル”を持っている点にもあります。
監査等の実務で身につきやすいスキルには、以下のようなものがあります。
- 財務分析力
- 論理的思考力
- 問題発見・課題解決力
- クライアントとの折衝力
これらは会計・財務領域にとどまらず、経営企画やコンサルティング、さらには事業会社の管理部門など、幅広い領域で活かすことができます。
そのため、公認会計士は「監査法人にとどまらないキャリア形成」が可能であり、自身の志向やライフステージに応じてキャリアの選択肢を広げやすい点が、転職市場で評価される理由の一つとなっています。
企業側が求める役割
近年の企業は、公認会計士に対して単なる“会計の専門家”以上の役割を期待する傾向があります。
従来は、決算や監査対応などの専門業務が中心でしたが、現在では以下のような役割が期待されるケースも見られます。
- 経営層に対する意思決定支援
- M&AやIPOに関わるプロジェクト推進
- 内部統制やガバナンスの強化
- 経営課題の抽出と改善提案
このように、公認会計士には「経営に近いポジションで価値を発揮できる人材」としての期待が高まっています。
その結果、企業にとっては単なる専門職ではなく、“経営を支えるパートナー”としての役割を担える点が評価され、転職市場における優位性につながっています。
公認会計士の主な転職先とキャリアパス
公認会計士は専門性の高さから、さまざまな業界・職種へキャリアを展開できる点が大きな特徴です。
実際、監査法人で経験を積んだ後、事業会社やコンサルティングファーム、金融機関などへ転職し、キャリアの幅を広げているケースもあります。
ここでは、公認会計士の主な転職先と、それぞれの特徴・向いている方の傾向について解説します。
監査法人でキャリアを継続する場合
公認会計士の多くは、資格取得後のキャリアとして監査法人に就職します。その後も同じ環境で専門性を高め、キャリアを積み上げていく選択肢があります。
監査法人では、会計監査や内部統制監査を中心に、IPO支援やアドバイザリー業務に関わる機会もあり、会計士としての基盤を強固に築くことができます。
特に以下のような方に向いているキャリアといえるでしょう。
- 会計・監査の専門性を深めたい
- 安定したキャリアパスを描きたい
- 将来的にパートナーなど上位職を目指したい
FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)
企業に対して財務関連のアドバイスやサポートサービスを提供するFASでは、主に「M&A」「事業再生」「フォレンジック」などを手がけています。会計の知識・スキルとクライアントワークの経験・素養を生かして、監査法人からFASへキャリアチェンジされるケースが多く見られます。 監査が主に企業の過去の財務情報の適正性を検証する業務であるのに対し、FASは企業価値向上や成長戦略の実現を支援する役割を担います。特に近年は、事業承継や事業ポートフォリオの見直し、海外展開などを背景にM&A案件が増加傾向にあります。成長市場で企業の未来を支えることに魅力を感じる方が、FASへの転職を検討されています。
事業会社(経理・財務・経営企画)
監査法人での経験を生かし、事業会社の経理・財務・経営企画部門へ転職するケースはよく見られます。
事業会社では、外部から企業をチェックする立場ではなく、内部から経営に関わる役割を担います。特に上場企業やIPO準備企業では、公認会計士の知見が強く求められています。
主な特徴は以下の通りです。
- ワークライフバランスの改善を目指しやすい
- 経営に近いポジションで意思決定に関われる
- 中長期的なキャリア形成がしやすい
公認会計士の方が「自社の成長に直接関わりたい」と考えた場合に選ばれることが多い転職先です。
コンサルティングファーム(戦略・業務改革等)
FAS以外のコンサルティングファームも、公認会計士の転職先として人気の高い選択肢です。
特に戦略コンサルティングや業務改革コンサルティングでは、財務・会計に関する知見を持つ人材への需要があります。企業の経営課題や事業課題の解決を支援するため、会計知識に加え、論理的思考力やプロジェクト推進力、経営視点が評価されます。
主な業務例は以下のとおりです。
- 経営戦略・事業戦略の策定支援
- 業務改革・BPR支援
- 財務会計プロセスの改善支援
- DX推進・システム導入支援
監査法人で培った分析力や課題発見力を活かしながら、より経営に近いテーマに関わることができるため、会計領域を起点としてキャリアの幅を広げたい方に向いています。
金融機関(投資銀行・PEファンドなど)
公認会計士は、金融業界でも高い評価を受ける職種です。特に投資銀行やPEファンドなどでの活躍が可能です。
たとえば、PEファンドでは企業の株式取得や経営支援を通じて企業価値を高める役割を担います。FASと近い業務内容ではありますが、より主体的な立場で企業経営に関われる点が特徴です。
金融業界は以下のような方に適しています。
- クライアントワークやフロント業務を志向している
- 高い成果に応じた報酬を得たい
- 経営や投資の意思決定に関わりたい
ベンチャー・スタートアップ(CFO・管理部長)
急成長を目指すベンチャー企業やスタートアップにおいては、CFOや管理部長として公認会計士を採用するケースが見られます。
特にIPO準備企業では、以下のような役割が求められます。
- 会計・財務体制の構築
- 内部統制の整備
- 上場準備の推進
企業の成長フェーズに深く関与し、経営に直結する経験を積める点が大きな魅力です。
一方で、業務範囲が広く負荷が高くなる傾向もあるため、以下のような方に向いているキャリアといえます。
- 裁量権を持って働きたい
- スピード感のある環境を楽しめる
- 将来的に経営ポジションを目指したい
会計事務所・税理士法人
監査法人から税理士法人や会計事務所へ転職し、税務領域にキャリアを広げるケースもあります。
公認会計士は税理士資格を取得しやすいこともあり、税務コンサルティングや相続・資産税などの分野で専門性を発揮することが可能です。
また、将来的に独立開業を視野に入れている方にとっても、有力な選択肢となります。
このキャリアは以下のような方に適しています。
- 税務領域の専門性を高めたい
- 顧客に長期的に寄り添う仕事をしたい
- 独立や開業を視野に入れている
公認会計士の転職と年収|1000万・2000万は現実的に可能か
公認会計士は高年収職種として知られていますが、キャリアの選び方によって年収水準は異なります。
ここでは、平均年収の実態から、1000万円・2000万円の到達可能性、さらには3000万円の現実性まで詳しく解説します。
公認会計士の平均年収とボリュームゾーン
公認会計士の年収は、ボリュームゾーンとしては700万円〜900万円程度が中心です。
監査法人に勤務する公認会計士の年収相場は、20代後半で700万円台、30代で1000万円に達するケースが一般的です。
この水準は一般的な職種と比較しても高く、公認会計士が「転職市場で有利」といわれる理由の一つとなっています。
一方で、転職後の年収は、以下のように選択するキャリアによって変わります。
| 転職先 | 転職による年収傾向 |
| 事業会社(経理・財務) | 給与テーブルに準拠するため年収が下がるケースもある |
| コンサルティングファーム(FAS) | 高水準で、年収アップしやすい |
| 金融機関・投資ファンド | 業界自体の給与水準が高く高年収帯に入りやすい |
このように、公認会計士の年収は「資格」だけで決まるのではなく、「キャリア選択」によって変動する点が特徴です。
年収1000万円は何年目で到達するか
公認会計士の場合、年収1000万円は比較的到達しやすい水準といえます。
一般的には以下のタイミングで到達するケースが多く見られます。
- 監査法人:30代
- 事業会社:管理職クラス以上
- コンサルティングファーム:シニア〜マネージャークラス
特に監査法人で数年の経験を積んだ後に転職することで、年収1000万円を超えるケースも珍しくありません。
そのため、「一定のキャリアを積めば到達可能なライン」として、多くの公認会計士にとって現実的な目標となります。
年収2000万円はどのキャリアで実現できるか
ハイエンド層では年収2000万円以上の水準も存在します。年収2000万円は、公認会計士の中でも上位層が到達する水準であり、条件を満たせば到達可能な年収帯です。
代表的な例としては以下が挙げられます。
FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)
- 20代:800~1500万円
- 30代:1000~2000万円
M&Aや事業再生など成長領域に関われるため、年収アップを実現するケースも多く見られます。
投資ファンド(PEファンドなど)
- 20代:700~1200万円
- 30代:1000~3,000万円台(役職・ファンドによる)
これに加えて、「キャリー」と呼ばれる成功報酬があり、実績次第で年収を伸ばすことも可能です。
CFO・経営幹部(事業会社・スタートアップ)
IPO準備企業や成長企業では、CFOや管理部長として高年収を提示されるケースがあります。特に企業価値向上に直接関与するポジションでは、報酬水準も高くなる傾向にあります。
このように、年収2000万円は「キャリア戦略次第で実現可能」な水準であり、公認会計士にとっては十分に現実的なハイエンド年収帯といえます。
年収3000万円は現実的に可能か
年収3000万円は、公認会計士として不可能ではないものの、限られたポジションにおいて実現される水準です。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- M&A仲介会社(成果報酬型)
- 投資銀行・PEファンドの上位ポジション
- 成長企業のCFO(ストックオプション含む)
特にM&A仲介会社では、基本給は400万~600万円程度にとどまる場合もありますが、案件の成約によって報酬が上乗せされ、平均年収が3000万円に達するケースや、億単位の収入を得る例も見られます。
ただし、これらは以下の要素が求められる高難易度のキャリアです。
- 高い営業力・案件遂行力
- 成果に直結する役割
- 高い業務負荷・プレッシャー
そのため、多くの公認会計士にとっては、まず「年収1000万~2000万円」を現実的な目標とし、その先のキャリアとして検討されるケースが一般的です。
年収が上がる転職パターン
公認会計士が転職によって年収を上げるためには、「職種」よりも「キャリアの選び方」が重要になります。
同じ資格を持っていても、進むキャリアによって年収の伸び方には大きな差が生じます。
一般的に、年収アップにつながりやすい転職パターンとしては以下が挙げられます。
- 監査法人 → FAS(M&A・事業再生などの成長領域)
- 監査法人 → 投資銀行・PEファンドなど金融領域
- 監査法人 → M&A仲介会社(成果報酬型)
- 監査法人 → CFO・管理部長(IPO準備企業など)
特に、「経営に近いポジション」や「成果に連動した報酬体系の職種」を選択することで、年収を伸ばせる傾向があります。
一方で、ワークライフバランスを重視して事業会社へ転職する場合などは、短期的には年収が下がるケースもありますが、長期的には安定したキャリア形成が可能です。
このように、公認会計士の転職は「年収」「働き方」「キャリア」のどれを優先するかによって最適な選択が異なるため、自身の志向に合ったキャリア設計が重要となります。
公認会計士が転職を考える主な理由
公認会計士は転職市場で有利な立場にある一方で、多くの方がキャリアの節目で転職を検討しています。
その背景には、働き方やキャリアの方向性に対する課題意識があります。
ここでは、公認会計士が転職を考える代表的な理由を解説します。
ワークライフバランスを改善したい
監査法人は、特に繁忙期において業務負荷が高くなる傾向があります。長時間労働や不規則なスケジュールに課題を感じ、ワークライフバランスの改善を目的に転職を検討する方は少なくありません。
そのため、以下のような転職先が選ばれるケースが多く見られます。
- 事業会社(経理・財務など)
- 中小監査法人
- 会計事務所
これらの環境では比較的安定した働き方が可能となり、プライベートとの両立を重視したキャリアが実現しやすくなります。
キャリアの幅を広げたい
監査業務を中心としたキャリアに対して、「このままでよいのか」と不安を感じることも、転職を検討するきっかけの一つです。
監査法人では専門性を深めることができる一方で、業務領域が限定されやすい側面もあります。
そのため、以下の理由から、コンサルティングファームや事業会社へキャリアチェンジするケースが増えています。
- 経営に関与したい
- M&Aや事業戦略に関わりたい
- 新しいスキルを身につけたい
年収アップを目指したい
公認会計士はもともと高年収の職種ではありますが、キャリアの選択次第でさらに高い報酬を得られる可能性があります。
特に以下のような領域では、年収アップを目的とした転職が多く見られます。
- FAS(M&A・事業再生)
- 投資銀行・PEファンド
- M&A仲介会社
これらの領域では、専門性に加えて成果に応じた報酬が得られるため、大幅な年収アップを実現するケースもあります。
監査以外の業務に挑戦したい
監査法人での経験を積む中で、「監査以外の領域にも挑戦したい」と考える方も多くいます。
例えば、以下のような志向です。
- クライアントの成長に直接関与したい
- フロント業務で価値提供したい
- 経営の意思決定に関わりたい
こうした志向を持つ方は、コンサルティングファームや金融機関、ベンチャー企業などへ転職する傾向があります。
特にFASや投資ファンドでは、単なる第三者の立場ではなく、企業の価値向上に主体的に関わることができる点に魅力を感じる方が多く見られます。
公認会計士の転職でよくある失敗・後悔
公認会計士は転職市場で相対的に有利とされる一方、選択を誤るとキャリアや年収に大きな影響を及ぼす可能性があります。
特に「選択肢が多い」からこそ、自身に合ったキャリアを見極めることが重要です。
ここでは、公認会計士の転職で実際によく見られる失敗・後悔のパターンを解説します。
年収だけで転職先を選んでしまう
年収アップを目的に転職を行うこと自体は自然なことですが、「年収のみ」を軸に転職先を選んでしまうと、入社後にミスマッチを感じることもあるでしょう。
例えば、以下のようなケースです。
- 高年収を優先して業務負荷が極めて高い環境に転職してしまう
- 成果報酬型の職種で安定収入が得られない
- 興味のない業務に従事することになる
短期的な年収だけでなく、「業務内容」「働き方」「将来のキャリアにつながるか」といった視点で判断することが重要です。
スキルの幅が狭まるキャリアを選んでしまう
転職によって専門性を深めすぎた結果、キャリアの選択肢が狭まってしまうケースもあります。
例えば、以下のような場合、将来的に別のキャリアへ転換する際のハードルが高くなる可能性があります。
- 特定領域の業務に特化しすぎる
- 限定的な業務のみを担当するポジションに就く
公認会計士はもともとキャリアの選択肢が広い資格であるため、「どのスキルを伸ばすか」に加え、「どの選択肢を残すか」という視点も重要になります。
長期的なキャリア設計ができていない
目の前の転職条件だけで判断し、長期的なキャリア設計が曖昧なまま転職してしまうケースも少なくありません。
例えば、以下のような場合、再び転職を繰り返すことになり、結果的にキャリアの一貫性が失われる可能性があります。
- 「今の環境から離れたい」という理由だけで転職を決める
- 次のキャリアステップを見据えずに職種を選ぶ
そのため、「将来的にどのポジションを目指すのか」「どのようなスキルを身につけたいのか」を逆算してキャリアを考えることが重要です。
転職タイミングを誤る
公認会計士の転職においては、タイミングも大きな影響を与えます。
例えば、以下のようなケースです。
- 経験が浅い段階で転職し、評価されにくい
- 繁忙期の直後に動き出し、準備不足のまま転職活動を進める
- 市場ニーズが高いタイミングを逃してしまう
監査法人の場合、一般的に3~5年程度を目安として転職する方が多く見られ、一定の実務経験を積んでから転職することで、選択肢が広がる傾向があります。
公認会計士が転職を成功させるポイント
公認会計士の転職は選択肢が多い分、準備や判断次第で結果が変わります。
自身の強みやキャリアの方向性を整理したうえで転職活動を進めることで、年収や働き方の改善だけでなく、長期的に納得できるキャリアを築くことが可能です。
ここでは、公認会計士が転職を成功させるために押さえておきたいポイントを解説します。
自身の専門性・強みを明確にする
まず重要なのは、自身の専門性や強みを整理することです。
公認会計士といっても、これまでの経験によって強みは異なります。
- 会計監査の経験が豊富
- IPO支援や内部統制に携わってきた
- M&Aやアドバイザリー業務に関わった
- マネジメント経験がある
こうした経験を明確にし、「企業にどのような価値を提供できるか」を言語化することが重要です。
特に近年は、単なる資格保有者ではなく、具体的な業務経験や成果をもとに評価される傾向が強まっているため、自身の強みを客観的に整理しておくことが転職成功につながります。
キャリアの方向性を定める
次に重要なのは、「どのようなキャリアを築きたいのか」を明確にすることです。
公認会計士には多様な選択肢があるため、方向性を定めずに転職すると、ミスマッチにつながる可能性があります。
例えば、以下のように、自身の優先順位を整理したうえでキャリアを選択することが重要です。
- 年収を重視する → FAS・金融機関
- ワークライフバランスを重視する → 事業会社
- 経営に関わりたい → CFO・経営企画
- 専門性を深めたい → 監査法人・税理士法人
「何を実現したいか」から逆算して転職先を選ぶことが、成功のポイントとなります。
市場価値を客観的に把握する
転職を成功させるためには、自身の市場価値を客観的に把握することも不可欠です。
公認会計士は需要の高い資格ではありますが、以下の要素によって評価は変わります。
- 経験年数
- 担当業務
- マネジメント経験の有無
- 英語力やITスキル
そのため、自己評価だけで判断するのではなく、転職市場の状況や求人の傾向を踏まえて、自身の立ち位置を正しく理解することが重要です。
これにより、現実的な年収レンジや選択可能なキャリアの幅、強化すべきスキルといった要素を具体的に把握でき、より納得感のある転職が実現しやすくなります。
専門エージェントを活用する
公認会計士の転職では、専門性の高いエージェントを活用することも重要なポイントです。
会計・財務領域に精通したエージェントを利用することで、以下ような支援を受けることができます。
- 非公開求人の紹介
- キャリアの方向性に関するアドバイス
- 年収や待遇の交渉サポート
- 書類・面接対策
特に公認会計士の場合、一般には公開されていないハイクラス求人が多く存在するため、エージェントを活用することで転職の選択肢が広がる点も特徴です。
また、自身の市場価値やキャリアの可能性について第三者の視点からアドバイスを受けることで、より精度の高い意思決定が可能になります。
公認会計士の転職で多い質問と回答
監査法人以外への転職を検討する公認会計士の方々から、多くいただく質問にお答えします。
Q1. 金融業界はどれくらい忙しいのでしょうか。ワークライフバランスが気になります。
A. 忙しさは業種・企業・担当領域で大きく異なります。ただ、監査法人のような「繁忙期・閑散期の差」が小さいケースもあり、年間を通じて一定のペースで働けると感じる方もいます。WLB重視なら、残業の実態・繁忙期の有無・休日対応の頻度まで面接で確認すると安心です。
Q2. 監査法人から転職する場合、年収を維持できますか。
A. 転職先によっては可能です。事業会社(経理・財務)では給与テーブルに合わせて年収が設定されるケースが多いため、一時的に下がることもあるかもしれません。一方で、FASや金融領域などは、傾向として年収維持またはアップする可能性があります。
Q3. 公認会計士資格はどれくらい生かせるでしょうか。
A. 資格自体が「会計・監査の専門性」と「信頼性」の証明になるため、選考で有利に働くことが多いです。加えて、監査で培った論理的思考・課題発見・折衝力は、事業会社やコンサルなど幅広い職種で再現性高く活かせます。
Q4. 公認会計士は転職で本当に有利ですか?
A. 相対的に有利とされる傾向があります。会計・財務・ガバナンス領域は企業にとって重要度が高く、専門性がある人材は不足しがちです。特に「IPO・M&A・内部統制・マネジメント」など経験があるほど評価が上がりやすくなります。
Q5. 年収1000万円は何年目で到達する人が多いですか?
A. 監査法人でキャリアを積む場合は、30代で到達するケースが多い水準です。転職で早めることも可能ですが、経験年数・担当領域・役割(主査/マネジメント)によって到達時期は前後します。
Q6. 年収2000万円はどのキャリアで実現できますか?
A. 一部のキャリアで現実的に狙えます。代表例はFAS(M&A・事業再生・フォレンジック等)や、投資ファンド・投資銀行、IPO準備企業のCFO/管理部長などです。いずれも「経営に近い役割」や「難易度の高い専門領域」が鍵になります。
Q7. 年収3000万円は現実的に可能ですか?
A. 不可能ではありませんが、到達できる人は限られます。成果報酬型のM&A仲介などでは高年収の可能性がありますが、業務負荷や成果プレッシャーも大きくなります。まずは年収1000万〜2000万を現実的な目標として、キャリア戦略を組むのがおすすめです。
Q8. 転職するなら何年目(いつ)がベストですか?
A. 一般的には3〜5年程度での転職が一つの目安とされています。監査実務に加えて「主査経験」や「強みが言語化できる状態」になったタイミングが動きやすいです。繁忙期の直後など、準備に時間を取れる時期に活動開始すると、書類・面接の質を上げやすくなります。
Q9. FASや金融領域は未経験でも転職できますか?
A. 可能です。ただし、監査での担当領域(金融・製造等)、会計論点への強さ、英語力、M&A/ファイナンスの学習・志望動機の一貫性などが評価ポイントになります。未経験の場合は「その領域で価値を出せるか」を具体化するのが重要です。
Q10. 事業会社に転職すると、会計士としての専門性は薄れますか?
A. 役割設計次第です。連結決算・開示・内部統制・M&A・経営企画など、会計士の専門性が直結する領域を担えば強みは維持・強化できます。一方で、定型オペレーション中心に寄ると専門性が活かしにくくなることもあるため、職務範囲の確認が重要です。
公認会計士の転職事例
公認会計士の転職はキャリアによって結果が大きく異なります。ここでは実際の転職事例をもとに、年収やキャリアの変化を具体的にご紹介します。
監査法人からFASに転職された公認会計士の方の事例
Mさん(20代後半/男性)
Mさんは、監査法人で5年ほど経験を積んだころ、今後のキャリアに目を向けました。このまま会計監査を続けていく未来のイメージを持てず、「将来的には事業会社のCFOなど、ビジネスや経営に直接関与したい」と考え、転職活動を開始。JACからは考えられる選択肢として、事業会社の財務部門、FAS、投資銀行、PEファンドなどをご提案しました。
幅広く検討した結果、Mさんが自身の志向や将来の方向性に合致すると判断したのがFASの「M&Aアドバイザリー」のポジションです。M&A業務の経験はありませんでしたが、公認会計士としての監査業務の経験、M&Aについて独自に勉強していた向上心、その他今後の活躍が期待され、採用に至りました。
FASでM&A業務の経験を積んだ後、タイミングを見計らって事業会社もしくは投資ファンドに転職することで、将来の目標である「CFO」へ近づいていくキャリアプランを描いていらっしゃいます。
転職成功の詳細は下記にてご確認いただけます。
公認会計士の転職による年収変化の事例
公認会計士の転職では、年収アップを実現するケースが多く見られます。以下の表に、JACを利用して転職を成功させた公認会計士の方の事例をまとめました。
| 年代 | 性別 | 転職前業種/職種 | 転職後業種/職種 | 転職前年収 | 転職後年収 |
| 30代後半 | 女性 | 監査法人/会計監査 | エネルギー・プラント/業務監査 | 1,000万円 | 1,200万円 |
| 30代後半 | 男性 | 建設・土木/管理部門責任者 | 機械・装置/海外子会社管理(経理・財務) | 1,200万円 | 1,600万円 |
| 40代前半 | 女性 | 監査法人/会計監査 | 損害保険/内部統制・SOX・コンプライアンス | 1,100万円 | 1,300万円 |
| 40代後半 | 男性 | エネルギー・プラント/管理部門責任者 | 損害保険/事業企画・事業開発 | 1,400万円 | 1,700万円 |
| 40代後半 | 男性 | 食品・飲料/代表取締役 | 金属・素材/COO | 2,300万円 | 2,300万円 |
※当社実績(2025年1月~2026年4月、想定年収より)
上記の転職事例から、公認会計士のキャリアは選択によって年収・役割が変化することが分かります。
特に、海外子会社管理や事業企画など、経営に近いポジションに移行することで年収アップを実現しているケースが多く見られます。
一方で、年収が横ばいでもCOOなど経営ポジションへ移行する例もあり、単なる年収だけでなく、キャリアの質や裁量の広がりを重視した転職が行われている点も特徴です。
ご自身にとって最適なキャリアがどの選択肢なのかは、これまでの経験や志向によって異なります。「自分の場合はどのようなキャリアが選択できるのか」「年収はどの程度目指せるのか」など、具体的に知りたい方は、会計・財務領域に精通したコンサルタントへご相談いただくことも一つの方法です。
公認会計士の転職なら、JACリクルートメント
公認会計士の転職は、キャリアの選択によって年収や将来の可能性が大きく変わるため、専門的な視点での情報収集と判断が重要です。
JACでは、業界ごとの専門コンサルタントが連携し、公認会計士の方の転職をサポートしています。事業会社の経理・財務や経営企画ポジションに加え、コンサルティングファームや金融機関など、幅広い選択肢の中から最適なキャリアをご提案し、比較検討いただくことが可能です。
また、求人企業の幹部層との対話を通じて得られる、採用背景や求められる役割、将来的なキャリアパスなど、一般には公開されていない情報も含めてご提供しています。これにより、ご自身の志向に合った企業・ポジションを見極めやすくなります。
公認会計士の方の中には「転職活動の進め方が分からない」「自分の市場価値を客観的に知りたい」といったご相談も多く寄せられています。JACでは、求人紹介にとどまらず、書類作成や面接対策、キャリアの方向性整理まで一貫してサポートしています。
まだ転職を具体的に決めていない段階でも、市場動向の把握やキャリアの棚卸しとしてご相談いただくことが可能です。まずはお気軽にご相談ください。
銀行・保険・証券・アセットマネジメント・カード・Fintechなど、金融業界の転職動向については下記をご覧ください。




