知的財産の転職事情|年収相場や求められるスキル・経験を解説

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公開日:2025/06/27 / 最終更新日: 2025/06/27

知的活動によって生み出された特許権や著作権、実用新案権、意匠権などを知的財産といいます。企業における知的財産関連の職務では、発明の発掘や権利化した自社の知的財産を経営に生かすための戦略立案、自社製品の権利の侵害についての調査などの業務を担います。

ライセンス使用料などで収益を得る知的財産ビジネスも注目を集める今、知的財産に関わる職務に転職したいと考える人も増えています。では、知的財産業務では、どのようなスキルや経験を求められるのでしょうか。

今回は、知的財産に求められるスキルや経験、最新の求人情報など、転職に役立つ情報をご紹介します。

知的財産の転職動向


JACが2024年に取り扱った知的財産の求人数を見ると前年の約1.2倍に伸長しています。特に、化学メーカーや自動車製造業、自動車部品製造業、電気・電機メーカー、機械・装置メーカー、金属・素材メーカーなど、製造業での求人が増加中です。

求人の詳細を見ると、知的財産情報を分析し、その結果を経営戦略に活用するIPランドスケープの強化を背景とした求人や、グローバル展開に向けた知的財産の保護と活用を強化するための求人が多くなっています。IPランドスケープやグローバル展開に向けた知的財産の募集に関しては大手企業が多いものの、新たに開発した技術を活用したビジネスの拡大を目指したスタートアップ企業での募集も増加中です。スタートアップ企業の場合、まだ組織が大きくはないため、経営層と密接な連携を取り、幅広い領域の業務に携われる可能性があります。

知的財産で求められるスキル・経験・マインド


JACが取り扱う知的財産の求人を見ると、次のようなスキルや経験を求められる傾向にあります。

知的財産に関する法律の知識・法律事務所での実務経験

知的財産は知的財産権に該当する財産であり、知的財産の活用や保護にあたっては、関連法案の知識が必要不可欠です。そのため、法科大学院を修了した方や法律事務所での実務経験がある方など、法律に関する知識を求める求人が多くなっています。

特許に関連する実務経験

自社の発明した技術の権利を守るためには、特許の出願が必要です。しかし、特許を出願しない方がメリットを得られるケースもあるため、まずは特許の出願をすべきかどうかを検討する必要があります。そのため、特許出願の判断や特許の申請に関わった経験をもつ方が求められる傾向にあります。また、海外進出を計画している場合は、進出先での特許出願や権利形成に関連する知識が求められます。

英語力

グローバル展開を見据え、海外での権利取得などを計画している企業では、英語力が必須です。その場合、英語を使用して海外とやり取りをした実務経験など、高いレベルの英語能力が求められる傾向にあります。
一方で、英語の文献の読解や海外代理人とのメールのやり取りができる程度の英語を求める求人などもあり、英語力は必要になるものの、それほどレベルは求めないものも一定数見られます。

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知的財産の想定平均年収は890.4万円


JACが転職をサポートした実績を見ると、知的財産の想定平均年収は、890.4万円です。ほかの職種と比べても高額な年収を期待できる職種だといえます。

また、グラフを見て分かるように、特に40代前半では想定平均年収が1,000万円を超えるなど、40代以降の年収が高額になる傾向があります。

知的財産の業務は、関連する法律の知識や特許の出願などに関する知識、自社の知的財産の技術などに関する知識などが求められます。経験を重ねるほど知識は増えるため、ノウハウを蓄積しやすく、ある程度の年齢の方は、転職後に即戦力として活躍できる可能性が高くなります。従って、若い年齢の転職者よりも実務経験の豊富な40代以降の転職者の年収が高くなっていると考えられます。

しかしながら、年齢が高くなると、未経験の方や実務経験が少ない方の転職は難しくなる一方で、若い方の場合は、法律の知識などがあれば未経験でも知的財産関連の業務に転職できる確率は高まります。

役職平均年収
メンバークラス763.2万円
管理職1,098.3万円

企業平均年収
日系企業880.2万円
外資系企業1,099.4万円

一般的に知的財産の平均年収は、700万円前後といわれています。しかし、年齢を重ねるほど年収は高くなる傾向にあり、管理職のポジションになると年収はより高額になります。

また、知的財産では高度な専門知識が求められるため、管理職に就いた場合、他部署よりも高い年収を得られる可能性もあるといわれています。

知的財産の最新求人情報


JACでは、知的財産の求人を多数取り扱っています。ここでは知的財産の求人の中から一部をご紹介します。

大手精密機器メーカー:知財創出・活用と知財リスクマネジメント

非公開企業:知的財産(特許業務)

栗田工業株式会社:知的財産_出願担当(知的財産部)

大手日系メーカー:知的財産

総合化学メーカー:特許・知財担当

本田技研工業株式会社:知的財産

トヨタ自動車株式会社:【先進技術開発】知的財産業務全般

※求人の募集が終了している場合もございます。ご了承ください。(2025年5月最新)

JACでは、このほかにも知的財産の求人を多数、取り扱っています。しかし、JACが取り扱う求人の70%近くが企業名などを公開できない非公開求人です。

非公開求人は、JACにご登録いただいた方のみにご紹介が可能です。転職活動を成功させるためには、自分の適性や希望に合った求人を見極めることが重要になります。知的財産の転職をお考えの際には、ぜひJACにご登録ください。

JACには知的財産業務に詳しいコンサルタントが在籍しており、非公開求人も含めた豊富な求人の中から理想のキャリアの実現につながる最適な求人をご紹介します。

>>非公開求人について詳しく知りたい方はこちら

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知的財産への転職で有利となる資格


知的財産の転職にあたって必須となる資格はありません。しかし、次のような資格を所有している場合、転職に有利に働く可能性があります。

弁理士

弁理士は、知的財産に関する専門家です。弁理士資格があると、特許や実用新案、意匠、商標などの出願や知的財産全般についての知識を保有していることの証明となります。

弁理士資格を得るには、国家試験に合格後、弁理士登録をする必要がありますが、受験資格に制限があるわけではありません。令和6年度弁理士試験の合格率は6.0%と非常に低く、難易度の高い資格となりますが、弁理士の資格を保有していると知的財産の転職を優位に進められるでしょう。

参考:特許庁:弁理士試験

知財検定

知財検定は、知的財産教育協会が実施する知財マネジメントスキルを測る国家試験です。JACが取り扱う知的財産求人の中にも知財検定の資格保有者を歓迎するものがあり、資格を保有していると知的財産の管理に関する一定の知識を保有していることの証明になるでしょう。

試験は1級から3級まであり、2級と3級は管理業務、1級は特許専門業務、コンテンツ専門業務、ブランド専門業務の3つに区分されています。それぞれ、学科試験と実技試験の両方の合格が必要です。

参考:知的財産教育協会:知的財産管理技能検定

TOEIC

TOEICは、英語の能力をスコアで示す試験であり、TOEICのスコアも知的財産への転職に役立つ可能性があります。JACが取り扱う求人では、応募資格にTOEICスコアの目安を記しているケースが少なくありません。そのため、転職の際には、あらかじめTOEICを受験しておくと英語のスキルの証明に役立つでしょう。

参考:一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会:TOEIC

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知的財産のキャリアパス


知的財産の代表的なキャリアパスをご紹介します。

プロジェクトのリーダーや管理職を目指す

知的財産の業務で経験を積んだ後は、プロジェクトのリーダーとして、メンバーをまとめ、プロジェクトの進行に責任をもつポジションを目指すことが可能です。また、さらに経験を積み、複雑な案件にも対応できるようになると、IP戦略などの立案にも携わり、知財部門全体をまとめる管理者のポジションを目指すこともできるでしょう。

経営に携わるポジションを目指す

昨今、ライセンスビジネスが注目を集めているように知的財産の活用戦略が事業戦略につながる可能性もあります。また知的財産の活用によるグローバル展開が成功すれば、会社全体の業績にも大きな影響を与えるでしょう。そのため、知的財産の分野で成果を残した場合、経営に携わるポジションを目指すこともできます。

特許事務所へ転職をする

知的財産の業務にやりがいを感じている場合やさまざまな知的財産の保護などに携わりたい場合などは、特許事務所に転職する方法もあります。ただし、特許事務所への転職を希望する場合には、弁理士資格が必要になるケースが多いため、業務を遂行しながら弁理士資格の取得を目指すとよいでしょう。

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知的財産への転職を成功させる3つのポイント


知的財産への転職を成功させるために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

化学や技術分野の専門性をアピールする

知的財産の求人を見ると、自動車製造業や化学メーカーをはじめとし、製造業での募集が多くなっています。そのため、知的財産や特許に関する知識や実務経験がない場合でも、化学の専門知識や特定分野での技術的な知識があれば応募可能な求人もあります。法律や特許に関する知識をもつ方がいても、専門的な知識や技術的な分野に詳しい方が不足している部署では、専門性が求められる可能性があるのです。

そのため、技術開発や研究に携わる経験がある場合には、積極的にこれまでの実務経験や技術に関する知識をアピールするとよいでしょう。

グローバル展開に関わった経験をアピールする

知的財産に関連する求人の中には、グローバル展開を目的とした求人が少なくありません。知的財産領域での経験があり、さらに海外進出に携わった経験がある場合、その実務経験は大きく評価される可能性が高いでしょう。
担当した業務の内容や対応した国、地域などを具体的にアピールすることをおすすめします。

特許事務所での経験をアピールする

知的財産業務の経験を積み、特許事務所へ転職するというキャリアパスもありますが、反対に、特許事務所から企業の知的財産職への転職を目指すという方向性もあります。
特許事務所で弁理士の仕事に従事した経験をもつ方の中には、事業会社の中で知的財産の発掘や知的財産を活用する戦略に携わりたいというケースもあります。弁理士の資格や特許事務所での実務経験は、転職時の大きなメリットとなるでしょう。転職時には、特許事務所での経験を生かし、どのような業務に携わりたいのか、転職の目的を具体的にアピールするとよいでしょう。

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JACでは、知的財産への転職を希望する多くの方をサポートしてきた実績があります。ここでは、JACが知的財産への転職をサポートした50代男性の事例をご紹介します。

Sさん(男性/50代前半)

業種職種年収
転職前デジタルエンタテイメント企業知的財産1,400万円
転職後大手メーカー知的財産1,500万円

Sさんは、国内の特許事務所で経験を積んだ後、大手の電機メーカー、大手デジタルエンタテイメント企業で特許関連業務に従事してきた実績をお持ちの方です。100件以上の特許訴訟や多くの特許警告、ライセンス交渉、IP戦略の立案、特許リスクのコントロールなど、知的財産に関連する幅広い業務に携わり、企業の利益を知的財産の面から支えてこられた実績があります。

また、Sさんは業務上の英語の使用経験もあることから、JACでは大手メーカーリーダー職の求人をご紹介しました。知財MIXマネジメント組織への転換を目指している企業であり、Sさんの豊富な実績と経験は高く評価され、面接後すぐにでも入社をしてほしいとの連絡をいただきました。Sさんも、これまでの経験を十分に発揮でき、経営者と近いポジションで業務を遂行できる環境に意欲を示され、無事に入社が決定しています。

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知的財産の重要性が増す中、知的財産業務の求人も増加傾向にあります。知的財産は、企業の努力の結晶である発明を守り、活用するとともに、新たな発明を見いだす役割もあるなど、多様な業務に携わります。関連法規の知識も求められるなど、業務の難易度は高いものの、企業の成長にも深く関わることのできるやりがいの多い仕事です。

JACでは、知的財産に詳しいコンサルタントが転職希望者の希望や悩みにしっかり寄り添いながら、一人ひとりに最適な求人をご紹介しています。知的財産の転職をご検討の際には、ぜひお気軽にJACにご相談ください。

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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。