金融業界への転職を考えるなかで、「資格を取ってから転職活動を始めるべきか」と迷う方もいるのではないでしょうか。
金融業界の中途採用では、これまでの職務経験と成果が主な評価材料となり、資格は専門知識や学習状況を補足する材料として扱われるのが一般的です。そのため、資格を取得する前から転職活動は始められます。資格は、その経験に専門知識が伴っていることを示すのに役立ちます。
本記事では、銀行・証券・資産運用・保険などの職種別に、転職に役立つ資格を整理しました。未経験者と経験者それぞれの優先順位や選考での活かし方を、JACリクルートメント(以下、JAC)が解説します。
金融業界への転職で資格は必須?採用における資格の扱い
金融業界では、すべての求人で資格が求められるわけではありません。まずは志望する求人が「必須」「歓迎」「入社後取得」のどれに当たるかを確認しましょう。
一方で、採用担当者は資格から知識の水準や学び続ける姿勢を判断します。また、証券外務員のように、業務に就く前に登録が必要な資格もあります。
- 資格だけで転職が決まるわけではなく、採用担当者は職務経験と併せて評価する
- 証券外務員など、業務を始めるために登録が必要な資格もある
資格だけで転職が決まるわけではなく、採用担当者は職務経験と併せて評価する
金融業界の中途採用では、採用担当者は資格を職務経験と成果の裏付けとして見ています。
書類選考で最初に確かめられるのは、担当してきた領域と業務、そこで出した成果です。資格があれば、その経験に体系的な知識が伴っていることや、入社後も学び続ける姿勢を示せます。
求人票での資格の書かれ方は、必須と歓迎、入社後の取得の3とおりです。必須とするのは一部の専門職の求人で、多くの求人では歓迎条件として書かれる程度です。証券会社などでは、入社後一定期間内の取得を条件に採用するケースもあります。
転職活動は、資格を取得する前から始められます。志望する求人で資格が必須か歓迎かを先に確かめ、必須でなければ資格の勉強と応募を同時に進めてみてください。
証券外務員など、業務を始めるために登録が必要な資格もある
証券外務員のように、試験の合格に加えて登録が必要な資格もあります。証券業務に従事するには、外務員資格試験に合格し、外務員として登録を受ける必要があります。
外務員資格試験への合格と外務員登録は別の手続きです。過去に外務員として勤務した経験がある方も、応募先では現在の登録状況や入社後に必要となる手続きを確認しておきましょう。生命保険の募集業務についても、所定の教育・試験を経たうえで、所属会社などを通じた登録が必要です。応募先で担当する業務に応じて、入社後に必要となる手続きを確認しましょう。
応募前には、求人票の資格要件が試験の合格と登録済みのどちらを求めているかを確かめておきましょう。職務経歴書には、外務員資格の種別と過去の登録歴を分けて記載し、資格の取得状況と実務経験が正確に伝わるようにしましょう。
金融転職で役立つ資格10選
金融転職で役立つ資格は、目指す業態や職種によって変わります。
ここでは、金融業界への転職で検討される資格・試験を、関連するものをまとめて10項目に整理し、それぞれ活かしやすい職種を紹介します。
- FP技能士・AFP・CFPは個人向け金融やウェルスマネジメントで活かしやすい
- 証券外務員一種・二種は証券や金融商品販売への基礎理解を示せる
- 日商簿記2級・1級は法人金融や投資銀行で財務分析の力を示せる
- 銀行業務検定で銀行業務の特定領域の知識を補強できる
- CMAは資産運用・調査・企業価値評価の体系知識を示せる
- CFAはグローバルな資産運用・投資分析で専門性を示せる
- 公認会計士・USCPAは会計・監査・M&Aの高度専門性を示せる
- アクチュアリーは保険数理・商品開発・リスク管理で活かしやすい
- FRM・CIAはリスク管理・内部監査の専門職と親和性が高い
- TOEICなどの英語資格で海外業務に必要な英語力を示せる
FP技能士・AFP・CFPは個人向け金融やウェルスマネジメントで活かしやすい
FP関連の資格は、個人の顧客に資産運用や税金、保険をまとめて提案する職種で役立ちます。
FP技能検定は国家検定で、合格するとFP技能士を名乗ることができます。2級の取得には、学科と実技の両方に合格する必要があります。
AFPは日本FP協会の認定資格で、2級の合格とAFP認定研修の修了などが要件です。上位のCFPは国際的に通用するFP資格です。
FPの知識を活かせるのは、銀行の資産運用相談や証券会社のリテール営業、プライベートバンキングなどです。富裕層向けの提案では、相続や事業承継の相談も多くあります。FP資格の学習を通じて税制や不動産、相続の基礎知識を身に付けると、顧客の課題を整理し、必要に応じて税理士や不動産の専門家と連携した提案につなげやすくなります。
FPの知識が選考で評価されるのは、個人の顧客を担当する職種です。法人向けや運用の職種を目指す方は、簿記やCMAなど、その職種で使う知識を学べる資格を優先しましょう。
証券外務員一種・二種は証券や金融商品販売への基礎理解を示せる
証券外務員資格試験は、証券会社や銀行などで金融商品の販売・勧誘に携わる際に必要となる知識を確認する試験です。実際に外務員業務を行うには、試験合格に加えて所属先を通じた登録が必要です。
証券外務員の試験は日本証券業協会が実施し、一種と二種があります。二種外務員が扱えるのは、株式や債券、投資信託などです。信用取引やデリバティブ取引の勧誘には、一種が必要です。
外務員資格を活かせるのは、証券会社のリテール営業や、銀行の窓口で投資信託を販売する部門です。金融商品の販売経験がある方は、一種まで取得していれば、扱える商品が多いことを採用担当者に示せます。
日商簿記2級・1級は法人金融や投資銀行で財務分析の力を示せる
日商簿記は、企業の財務諸表を読み解く力を示せる資格で、法人向けの職種で役立ちます。
日商簿記2級では商業簿記と工業簿記を学び、財務諸表の数字から企業の経営内容を把握する力を身に付けます。1級では商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を扱い、合格すると税理士試験の受験資格も得られます。
簿記の知識を活かせるのは、銀行の法人営業や融資審査、投資銀行部門、PEファンドなどです。融資先や投資先を評価する場面では、決算書の数字から収益力や資金繰りを読み取る力が日常的に求められます。
簿記に合格していれば、財務分析の基礎を学んだことを示せます。職務経歴書では簿記の合格を融資や審査、案件に関わった経験と並べて書きましょう。
出典:日本商工会議所「簿記」
銀行業務検定で銀行業務の特定領域の知識を補強できる
銀行業務検定は、融資や法務など銀行の業務分野ごとに知識の水準を証明できる試験です。
試験は銀行業務検定協会が実施し、法務・財務・税務・融資・外国為替などの種目に分かれています。特定の種目への合格を、昇格の条件にしている銀行もあります。
銀行業界内での転職や、地方銀行からメガバンク・信託銀行への転職では、銀行業務検定に合格していれば、担当してきた業務の知識を客観的に示せます。
証券会社や運用会社など銀行以外の業態を目指す場合は、求人で求められる知識を確認し、志望職種との関連性がより高い資格を優先しましょう。
CMAは資産運用・調査・企業価値評価の体系知識を示せる
CMAをもつ方は、資産運用や調査の職種で、投資分析の知識を体系的に学んだことを示せます。
試験は日本証券アナリスト協会が実施し、第1次レベルと第2次レベルの2段階に分かれています。CMA資格の学習領域には、証券分析とポートフォリオ・マネジメント、コーポレート・ファイナンスと企業分析、市場と経済の分析、職業倫理などが含まれます。CMAを名乗るには、所定の講座受講と試験合格に加え、3年以上の実務経験などの要件を満たし、日本証券アナリスト協会の検定会員として入会する必要があります。
CMAを活かせるのは、運用会社のファンドマネージャーやアナリスト、証券会社のリサーチ部門、銀行の運用部門などです。転職先を検討する際は、国内市場を中心に分析・運用の基礎を体系化したいのか、国際的な運用業務を視野に入れるのかを整理し、CMAとCFAを選び分けましょう。
CFAはグローバルな資産運用・投資分析で専門性を示せる
CFAは、外資系の運用会社や投資銀行など、英語で投資分析を行う職種で専門性を示せる資格です。
CFA Programの試験はLevel IからIIIまでの3段階で構成されています。CFAの称号を得るには、3段階の試験に合格したうえで、4,000時間以上かつ36か月以上の関連実務経験など、CFA Instituteが定める要件を満たす必要があります。
CFAは、世界の運用会社で投資分析の専門性を示す共通の資格として認められています。外資系の運用会社や海外拠点との連携が多い部門を目指す場合は、求人票で求められる資格や業務言語を確認し、国際的に認知されているCFAを選択肢として検討できます。
取得途中で応募する場合は、「Level I合格」「Level II受験予定」など、合格済みの段階と現在の学習状況を区別して記載しましょう。具体的な書き方は後述します。
公認会計士・USCPAは会計・監査・M&Aの高度専門性を示せる
公認会計士とUSCPAは、会計と監査の専門家であることを示す資格で、M&Aや財務アドバイザリーの職種で活かせます。
日本の公認会計士として登録するには、短答式・論文式試験への合格に加え、3年以上の業務補助等、実務補習、修了考査への合格などの要件を満たす必要があります。
USCPAは米国各州・地域が付与する公認会計士ライセンスの通称です。Uniform CPA Examinationへの合格に加え、出願先の州・地域が定める学歴、実務経験、倫理などの要件を満たす必要があります。職務経歴書では、「試験全科目合格」と「ライセンス取得」を区別して記載しましょう。
両資格を活かせるのは、投資銀行や証券会社のM&Aアドバイザリー、FAS(財務アドバイザリーサービス)、金融機関の経理や内部監査などです。財務デューデリジェンスや企業価値評価では、監査で培った会計の知識をそのまま活かせます。
外資系金融機関や海外関連業務を目指す場合は、USCPAで学んだ会計知識に加えて、英文の財務資料を扱った経験や、英語での報告・調整経験も具体的に示しましょう。
出典:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験」、日本公認会計士協会「公認会計士試験について」
アクチュアリーは保険数理・商品開発・リスク管理で活かしやすい
アクチュアリー資格は保険や年金の数理に関する専門資格で、保険会社や信託銀行で求められています。
日本アクチュアリー会の資格試験は、数学や保険・年金の数理などの基礎科目と、生保・損保・年金の分野別に分かれた専門科目の2段階です。第1次試験の全科目に合格し、所定の手続きを経ると準会員となります。正会員になるには、第2次試験への合格に加え、日本アクチュアリー会が定める要件を満たす必要があります。転職活動では、研究会員、科目合格、準会員、正会員のどの段階にあるかを正確に記載しましょう。
FRM・CIAはリスク管理・内部監査の専門職と親和性が高い
FRMをもつ方はリスク管理、CIAをもつ方は内部監査の職種で、国際的に通用する専門知識を示せます。
FRMは米国のGARPが認定するリスク管理の資格で、Part IとPart IIの2つの試験で構成されます。試験では、リスク管理の基礎や定量分析、金融市場・商品、評価・リスクモデルに加え、市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスク、流動性リスクなどを扱います。認定には、2年間の関連する実務経験が必要です。
CIAは内部監査人協会(IIA)が認定する公認内部監査人の資格です。試験は3つのパートに分かれ、日本語で受験できます。
FRMはリスク管理部門やALM、CIAは内部監査部門やコンプライアンス部門で役立つ資格です。
出典:GARP「FRM Program and Exams」
TOEICなどの英語試験で海外業務に必要な英語力を示せる
TOEICなどの英語資格は、外資系金融機関や海外業務のある部門で、英語力を客観的に示せる資格です。
TOEIC Listening & Reading Testは、聞く力と読む力を10〜990点のスコアで測る試験です。スコアは、求人票の応募条件や社内の基準として使われることが多くあります。
英語資格を活かせるのは、外資系の銀行や証券会社、運用会社のほか、日系金融機関の海外拠点や国際部門などです。
ただし外資系の選考では、英語での面接を通じて話す力も確かめられます。スコアに加えて、英語で担当した業務や交渉の経験を具体的に伝えられるよう準備しておきましょう。
出典:IIBC「TOEIC Listening & Reading Test」
【職種別】金融転職で優先したい資格の選び方
優先して取るべき資格は、目指す職種で求められる知識のうち、自分に足りないものを補える資格です。
ここでは職種ごとに、選考で確かめられる経験や成果と、足りない知識を補う資格の組み合わせを紹介します。
- 銀行・法人金融は簿記や銀行業務検定で財務・融資知識を補強する
- 証券営業・ウェルスマネジメントは外務員とFPを組み合わせる
- 資産運用・リサーチはCMAやCFAを運用実績と結び付ける
- 投資銀行・M&Aは簿記・会計資格と案件経験を組み合わせて専門性を示す
- 保険はFPとアクチュアリーを営業系・数理系で使い分ける
- リスク管理・監査・コンプライアンスはFRM・CIAと規制対応経験を組み合わせる
- FinTech・金融ITは情報処理・クラウド・データ資格を金融業務知識と組み合わせる
銀行・法人金融は簿記や銀行業務検定で財務・融資知識を補強する
銀行や法人金融の職種を目指すなら、簿記や銀行業務検定の学習で、財務分析や融資審査の知識を身に付けておきましょう。
採用担当者が重視するのは、担当してきた法人顧客の規模や業種と、融資の組成から管理までに関わった範囲です。
個人営業や他業界の法人営業から移る方は、決算書の分析や融資審査の知識が不足しがちです。まず日商簿記2級で財務諸表を読めるようになり、銀行業務検定の財務や融資の種目で審査の考え方を学ぶと、効率よく準備できます。
すでに融資の経験がある方は、資格よりも担当業種や案件の実績で差がつきます。資格の取得は、外国為替や信託など新しい分野を担当したいときに検討してみてください。
証券営業・ウェルスマネジメントは外務員とFPを組み合わせる
証券営業やウェルスマネジメントへの転職では、外務員資格に加えてFPを取得し、資産全体を提案できる知識を示しましょう。
この職種で採用担当者が確かめるのは、新規顧客の開拓や預かり資産の拡大といった営業成果と、富裕層の顧客と長く取引を続けてきた実績です。
外務員資格が必要となる業務では資格要件を確認したうえで、富裕層向けの資産相談まで担当したい場合は、FP2級・1級やCFPの学習を通じて、相続・税金・不動産などの知識を補う選択肢があります。
外務員とFP2級を先に取得し、CFPやFP1級は担当顧客の資産規模が大きくなる段階で検討するとよいでしょう。
資産運用・リサーチはCMAやCFAを運用実績と結び付ける
資産運用やリサーチの職種を目指す方は、CMAやCFAで学んだ分析の手法を、実際の運用やレポートでどう使ったかを示しましょう。
資産運用・リサーチ職への応募では、担当した資産クラス・業種・銘柄に加え、運用成績やベンチマークに対する超過収益、その結果に至った投資判断の過程を整理しましょう。資格で学んだ知識は、運用の実績を筋道立てて説明するときに役立ちます。
運用経験の浅い方が営業や企画からこの職種を目指す場合は、公開情報をもとに企業分析や投資判断の考え方を整理し、分析の過程を説明できるようにしておきましょう。ただし、個人で作成した分析資料は職務上の運用実績とは区別して伝える必要があります。
投資銀行・M&Aは簿記・会計資格と案件経験を組み合わせて専門性を示す
投資銀行やM&Aの職種に応募するときは、案件の経験を一番に伝え、足りない会計の専門知識は簿記や会計資格の学習で補いましょう。
投資銀行・M&Aへの応募では、関わった案件の規模や種類に加え、企業価値評価、財務モデルの作成、交渉など、自分が担当した工程を具体的に示すことが重要です。
銀行や事業会社の財務部門から移る方は、会計基準や連結決算の知識を日商簿記1級やUSCPAを通じて身に付けられます。監査法人出身の公認会計士は会計の知識を十分にもつため、案件を進める段取りや交渉の経験を積むことが課題です。
会計資格を保有していても、選考では財務モデルを実務で作成できるかが確認される場合があります。資格に加え、モデル作成、企業価値評価、デューデリジェンスなど、担当した工程を具体的に示しましょう。
保険はFPとアクチュアリーを営業系・数理系で使い分ける
保険業界では、営業系の職種はFP、数理系の職種はアクチュアリーと、目指す職種によって優先する資格が分かれます。
営業系の職種で採用担当者が見るのは、個人や法人の顧客を担当した実績と、ライフプランに沿った保障を提案できる力です。営業系の職種を目指す方は、FP2級で税金や年金、相続の知識を身に付けておくと、保障以外の相談にも応じられることを示せます。
数理系の職種で採用担当者が重視するのは、商品開発や責任準備金の評価、リスク管理の経験です。
保険会社で健全性規制や経済価値ベースの評価に関わる職種を目指す場合は、アクチュアリー試験の合格状況に加え、責任準備金、収支予測、EV・ESR、再保険、リスク管理などの実務経験を整理しておきましょう。
リスク管理・監査・コンプライアンスはFRM・CIAと規制対応経験を組み合わせる
リスク管理・監査・コンプライアンスの職種を目指す方は、規制に対応してきた経験を前面に出し、FRMやCIAで専門知識も学んでおきましょう。
採用担当者が重視するのは、バーゼル規制への対応やリスク計測モデルの検証、マネー・ローンダリング対策など、具体的な規制対応の経験です。
リスク管理部門を目指す方はFRMで市場リスクや信用リスクを数値で測る手法を、監査部門を目指す方はCIAで内部監査の国際基準を学べます。
営業や事務の部門からこれらの職種を目指すなら、営業店で担ってきた不正防止や事務ミス防止の経験を強みにしましょう。FRMやCIAで学んだ考え方を使えば、その経験をリスク管理の言葉で説明できます。
FinTech・金融ITは情報処理・クラウド・データ資格を金融業務知識と組み合わせる
FinTech・金融ITの職種では、ITの資格と金融業務の知識を両方もつ方が求められます。
採用担当者が確かめるのは、システム開発やデータ分析のプロジェクトで担った役割と、金融機関の業務やシステムへの理解です。勘定系システムの更改や決済サービスの開発、クラウド移行などを経験した方は、即戦力として評価されます。
IT業界から移る方に足りないのは、金融の業務知識と規制への理解です。応用情報技術者試験やAWS認定などで技術力を示せる方は、FP2級や銀行業務検定、証券外務員の学習で金融の基礎を補いましょう。
金融機関の出身者は、業務知識を強みに、統計検定やクラウドの資格などで技術を学んでいることを示せます。
未経験者と金融経験者で資格取得の優先順位は異なる
資格を取る目的は、金融業界での経験の有無と、これまで担ってきた役割によって変わります。
その目的は、金融未経験の方なら基礎知識の証明、金融経験者なら足りない専門性の補強です。管理職・ハイクラスの方は、取得にかかる時間に見合う効果があるかを先に判断しましょう。
- 金融未経験者は基礎資格と転用できる経験の言語化を並行する
- 金融経験者は次の職種で不足する専門性を資格で補う
- 管理職・ハイクラスは学習時間と機会損失まで含めて判断する
金融未経験者は基礎資格と転用できる経験の言語化を並行する
金融未経験の方は、志望職種に近い基礎資格の学習と、前職の経験を説明できるよう整理する作業を同時に進めましょう。
未経験の方の応募書類で、採用担当者が確かめるのは2点です。業界の基礎知識を自ら学ぶ姿勢と、前職の経験を入社後の仕事に活かせる見込みです。
次の表は、前職の経験ごとに、金融業界で活かせる業務を示したものです。
| 前職の経験 | 金融業界で活かせる業務 |
|---|---|
| 法人営業 | 法人金融の営業 |
| 事業会社の財務・経理 | 融資審査、企業分析 |
| IT・データ分析 | 金融システムの開発、データ活用 |
| 法務 | コンプライアンス、契約審査 |
応募書類では、前職の経験について、扱ってきた金額や顧客の規模、自分が判断した内容まで具体的に書きましょう。
基礎資格は、志望職種に合わせて選んでみてください。個人向けの営業ならFP2級や証券外務員、法人金融なら日商簿記2級が候補です。いずれも金融・会計の基礎知識を体系的に学べますが、受検要件や学習範囲は異なります。応募時期を遅らせるのではなく、求人の必須条件を確認したうえで、転職活動と学習を並行して進めましょう。
金融経験者は次の職種で不足する専門性を資格で補う
金融経験者が資格取得を検討するのは、これまでと異なる職種へ移る場合や、担当領域を広げたい場合です。選考では担当業務の成果を中心に伝えたうえで、法人営業から運用・リサーチへ移るならCMA、リスク管理へ移るならFRMというように、新しい職種で不足する知識を補いましょう。
現在の業務で日常的に使っている知識を資格で証明するだけでは、経験者としての違いを示しにくい場合があります。証券営業の経験者がFP2級を取得する場合も、資格名だけでなく、相続・税金など新たに補った知識を業務でどう活かせるかまで整理しましょう。
在職中に会社の受験費用の補助や研修制度を使える場合は、転職前に受験しておくと費用の負担を抑えられます。
管理職・ハイクラスは学習時間と機会損失まで含めて判断する
管理職・ハイクラスの方は、資格取得の投資対効果を、転職の機会を逃すリスクまで含めて判断しましょう。
この層の選考で問われるのは、組織を率いた実績や事業の成果、業界での人脈です。資格が合否を左右する場面は限られます。
上位資格の取得には、長い学習期間と費用も必要です。CFAのように、修了まで数年を要する資格もあります。上位資格では、受験料や教材費に加え、資格によっては認定後の維持費も考慮する必要があります。
さらに、管理職の募集は数が少なく、出る時期も企業の事情次第です。資格の勉強をしている間に、狙っていたポジションが埋まることもあります。
判断の目安は、目指すポジションの求人で資格が必須とされているかです。必須でなければ、転職活動を先に進め、入社後の担当業務に合わせて資格を選ぶ方が投資対効果は高くなります。
金融転職で資格を活かす職務経歴書・面接のポイント
資格は、応募先の仕事でどう使えるかまで書くと、入社後に役立つ知識として採用担当者に伝わります。
保有している資格と取得途中の資格の書き方と、志望動機への活かし方を解説します。
- 資格名に加えて応募職種で活かせる知識を具体化する
- 取得予定は試験日と学習進捗を事実ベースで記載する
- 職務経験・成果と資格を結び付け、一貫した志望動機にする
資格名に加えて応募職種で活かせる知識を具体化する
資格で学んだ内容のうち、応募職種の仕事で使う知識を具体的に書きましょう。
保有資格欄に資格名を書いただけでは、採用担当者に伝わるのは合格したという事実だけです。資格で得た知識を入社後のどの仕事に使えるかは、転職希望者自身が示す必要があります。
次の表は、応募職種ごとに、職務経歴書で具体的に書きたい知識の例を示したものです。
| 応募職種 | 資格 | 具体的に書く知識 |
|---|---|---|
| 投資銀行・FAS | 日商簿記1級、公認会計士 | 連結会計、企業価値評価 |
| 資産運用・リサーチ | CMA、CFA | 財務分析、ポートフォリオ理論 |
| リスク管理 | FRM | リスクの計測手法 |
| ウェルスマネジメント | FP1級、CFP | 相続・税金を含む資産設計 |
知識を書くときは、実際に使った場面まで示しましょう。担当先の設備投資計画についてDCF法を用いて事業価値を検討した経験など、手法、対象、自身の担当範囲を具体的に書けば、知識を実務で使えることが伝わります。
面接では、求人票の業務内容を確認し、入社後によく使う知識から話すと効果的です。
取得予定は試験日と学習進捗を事実ベースで記載する
取得途中の資格は、受験予定日や合格済みの科目、学習の状況を事実のまま書きましょう。
職務経歴書では、取得途中の資格を保有資格とは分けて書いてみてください。合格済みの資格と並べて資格名だけを書くと、取得済みと読まれ、入社後に信頼を損なうおそれがあります。
「CFA Level I合格、Level II受験予定」のように、合格済みの段階と次の受験予定を分けて記載すれば、現在の取得状況を正確に伝えられます。
科目合格に有効期限がある資格では、期限内に残りの科目を受ける計画も書いておくと、採用担当者に取得の見通しが伝わります。
入社後の繁忙期と試験の時期が重なる場合は、選考の段階で伝えておきましょう。そうすれば企業も、試験の時期を考えて入社後の業務を割り振れます。
職務経験・成果と資格を結び付け、一貫した志望動機にする
志望動機は、これまでの職務経験と成果、資格で補った知識、入社後に貢献できることの順に組み立てましょう。
資格を動機の中心に置くと、「資格を活かしたい」という自分の希望を伝えるだけになります。それでは採用担当者は、入社後にどう活躍するかを想像できません。話の中心に置くのは、これまでの経験と成果です。
例えば、銀行で中堅企業の融資を担当してきた方が運用会社のアナリストを目指すなら、次のような流れになります。まず融資先との取引を広げた経験、次にCMAで補った企業価値評価の知識、最後に融資先との対話力と分析力を投資判断に活かせる点です。
面接では、資格を選んだ理由を深く聞かれることが多くあります。取得のきっかけになった業務の場面を1つ用意しておくと、経験から資格、志望動機までが筋の通った話になります。
金融業界で専門性を活かした転職を目指すならJACリクルートメントへ
金融業界で資格を転職に活かすには、保有資格を並べるだけでなく、応募先で求められる業務と、自身の経験・知識がどのようにつながるかを整理する必要があります。
ただ、企業が重視する資格や経験は、銀行・証券・運用・保険といった業態やポジションによって異なります。求人票の応募条件だけでは、企業ごとの違いを見極めるのは難しいでしょう。
JACでは、金融業界を担当するコンサルタントが、企業の採用担当者と転職希望者の双方とやり取りしています。採用の背景やポジションごとに求める経験を踏まえて、保有資格と職務経験を活かせる求人をご紹介します。
金融業界で専門性を活かした転職を目指す方は、ぜひJACにご相談ください。
