企業の規模や業種を問わず必要とされ、積み上げた経験が次の会社でもそのまま生きる、転職先として魅力のある経理職。
経理の実務経験を積み、より広い範囲を任される環境へ移りたい方と、他職種から経理を目指す方とでは、選考で見られる軸が異なります。面接官は、それぞれの立場に応じた材料で判断しているためです。
本記事では、面接官が見ているポイントを経験者と未経験者に分けて示し、それぞれの例文と作成の手順をJACリクルートメント(以下、JAC)が解説します。
経理転職の自己PRで面接官が見ているポイント
面接官は、経理の自己PRを実務経験の有無によって別の軸で読んでいます。
同じ経理の募集でも、これまで経理を担ってきた方と、これから経理を目指す方とでは、面接官が確かめようとしていることが変わります。ここでは、それぞれ何を見られているのかを整理します。
- 経験者の場合:即戦力としてのスキルと事業貢献度
- 未経験者の場合:ポテンシャル・学習意欲・経理適性
経験者の場合:即戦力としてのスキルと事業貢献度
面接官は経理経験者の自己PRを、正確に決算を締められるかではなく、事業にどれだけプラスを生んだかで見ています。決算実務を任せられることは、募集の条件そのものだからです。
月次決算の締めや決算整理仕訳、監査法人へ渡す資料の準備は経験者の多くが担っており、記述も似通います。正確に締められることは、経理経験者どうしでは差がつかない前提条件として確認されるにとどまります。
差がつくのは、事業のプラスになった実績です。入金消込の手順を組み替えて滞留の確認にかかる時間を減らし、月次決算の締めを前倒しした業務フローの改善、手作業の集計をやめて月あたりの工数を落としたコスト削減、予算実績の差異分析を経営会議へ上げて投資判断の材料にした提言。こうした記述は、入社後に何が変わるかを面接官が思い描ける材料になります。
任されてきた範囲の広さも、同じ軸で見られています。子会社を含めて何社分の決算を担ってきたか、監査法人への対応で主担当だったかによって、入社後に任せられる幅が変わるためです。
未経験者の場合:ポテンシャル・学習意欲・経理適性
面接官は実務経験のない応募者を、経理の実績ではなく、業務への適性と学習の跡から判断しています。書類にも面接にも実績が現れないため、入社後の伸びしろを前職での仕事ぶりから見立てるためです。
まず見られるのは数字への抵抗感のなさです。営業での売上高や予算の管理、請求書の発行と入金確認、在庫の管理を担ってきた経験があれば、経理での立ち上がりが読めます。正確にコツコツ取り組む適性も同じで、毎月の請求データの突き合わせや、期日を落とさず処理を回してきた経験が材料になります。実務経験のない応募者の場合、この正確さは、これから経理を任せられるところまで伸びるかどうかを見込む手がかりとして読まれます。
学びを積み重ねてきた姿勢は、意欲の表明と違って進み具合を事実で確かめられます。日商簿記の級、学習にかけた期間、受験の時期が書かれていれば、経理へ向けて手を動かしてきた量が伝わります。経験者の軸を薄めたものではなく、実績をもたない応募者のための別の軸です。
【経験者向け】経理転職の自己PR例文と書き方ポイント
経理経験者の自己PRは、アピールする経験の種類によって証明できる価値が変わります。
経理の経験者といっても、何をアピールすべきかは積んできた経験の種類で分かれます。ここに挙げる7つのうち、はじめの3つはメンバークラス・一人経理・管理職とキャリアフェーズごとに並べています。続く4つは、開示や会計システムの導入、IPO準備、グローバル対応といった専門領域ごとの区分です。複数が当てはまる方は、主に据えるものを1つ決め、もう一方は補う形で重ねます。
- メンバークラスとしての実務の経験をアピールする場合
- 中小・ベンチャー企業での幅広い管理部門経験(一人経理)をアピールする場合
- 管理職としてのマネジメント・組織構築経験をアピールする場合
- 上場企業での開示・有報作成経験をアピールする場合
- 会計システム導入・経理DX推進の経験をアピールする場合
- IPO準備・内部統制の構築経験をアピールする場合
- グローバル経理・外資系企業での実務経験をアピールする場合
メンバークラスとしての実務の経験をアピールする場合
上長のもとで月次決算と年次決算を担当してきた方に当てはまる例文です。
事業会社の経理部で単体と国内子会社3社の月次決算・年次決算を6年間担当し、決算整理仕訳から売掛債権管理、固定資産管理までを受けもってきました。
当時の月次決算は第7営業日での締めで、監査法人への提出資料の作成と他部署からの問い合わせ対応も担っていました。
締めが遅れる原因は経費精算の差し戻しにあると考え、自ら提案して申請様式をそろえ、仕訳入力の分担を組み直しました。
その結果、月次決算の締めは第7営業日から第5営業日へ短縮し、経理部全体で月20時間の工数を削減できました。
この例文が伝わる形になっているのは、担当範囲の広さを先に置いたうえで、その範囲の中で自分から起こした改善を後段に置いているためです。日常業務の説明ではなく、任された範囲で自分が動いた話として読めます。
3文目は、締めが遅れる原因をどこに見たかと、自ら提案したという着手のいきさつを書いています。ここを「申請様式がそろえられ、仕訳入力の分担も見直されました」と結果だけの記述にすると、1文目の担当範囲が任されて広がったものなのか自分で広げたものなのかを読み分けられなくなります。
2文目は、当時の締めを第7営業日という日で書いています。もし「月次決算を滞りなく担当していました」と水準を欠いた書き方であれば、4文目の第5営業日がどれだけ動いた結果なのかを測る基準は本文に残りません。
4文目は、削減した工数を経理部全体の合計で書いています。これが「自分の作業時間が月20時間減りました」であれば担当者ひとりの時短の話になり、1文目で示した子会社3社までを含む担当範囲と結び付かなくなります。
子会社を含む決算を任されながら、その中で締めを2営業日早めた担当者として受け取られます。
中小・ベンチャー企業での幅広い管理部門経験(一人経理)をアピールする場合
社内に経理が自分ひとりという環境で決算まで回してきた方に当てはまる例文です。
従業員80名のベンチャー企業で経理を任されたとき、担当は自分ひとり、前任からの引き継ぎ資料もない状態でした。
記帳から月次試算表の作成、年次決算までを一気通貫で担当し、給与計算や社会保険の手続きを含む総務・労務も兼務しました。
適格請求書等保存方式(インボイス制度)と電子帳簿保存法への対応では、顧問税理士に確認しながら自分で要件を調べ、電子保存へ切り替える書類の範囲を判断しました。
そのうえで請求書の受領から保存までの手順書を作りました。
制度開始後も手戻りは発生せず、月次試算表を翌月第8営業日に出す運用が続いています。
この例文は、体制がないという状況を先に置いたことで成り立っています。後段の制度対応が、割り当てられた作業ではなく自分の判断として読めるためです。
1文目は、担当が自分ひとりで引き継ぎ資料もないという枠の不在から入っています。ここを「ベンチャー企業で経理業務全般を担当していました」と役割の紹介にすると、2文目の総務・労務までの兼務が、もともと決められた分担だったのか担い手がいないために引き受けたものなのかが分からなくなります。
3文目は、電子保存へ切り替える書類の範囲という判断の対象まで名指ししています。ここを「インボイス制度と電子帳簿保存法に対応しました」と対応の事実だけにすると、4文目の手順書が自分の判断から生まれたものなのかどうかが見えなくなります。
5文目は、制度開始後も手戻りが出ず、月次試算表の提出日が保たれていることに着地しています。「無事に対応を完了しました」という終わりの宣言では、4文目の手順書が一度きりの書類だったのか日々回っている仕組みなのかを見分けられません。
誰も指示を出さない環境で、制度改正への対応まで自分で判断し、業務を成立させてきた人物だと読み取れます。
管理職としてのマネジメント・組織構築経験をアピールする場合
経理部門の責任者として、部下を率いて体制づくりを担ってきた方に当てはまる例文です。
経理課長として、特定の担当者が抜けても月次決算が同じ日程で締まる体制をつくることに取り組んできました。
6名を直接マネジメントし、単体と国内子会社8社の月次決算・年次決算、予算実績差異分析、経営会議への月次報告までを管掌しました。
属人化していた決算業務を洗い出して業務分掌を組み直し、担当ごとの手順書を整備したうえで、四半期ごとに担当替えを行ってきました。
その結果、主要な決算業務の8割を複数名で担当できる状態になり、後任へ引き継いだ後も月次決算は第4営業日で締まっています。
この例文が伝わる形になっているのは、自分が抜けても回る状態という到達点を先に置き、人数と分担の作り方を後ろで支えているためです。そのため、処理した仕事の量ではなく仕組みを組んだ話として読めます。
2文目は、6名を直接マネジメントしたことを置いてから管掌範囲を並べています。ここから人数が抜けて「子会社8社の決算や経営会議への報告を担当しました」となると、6名で分けた仕事なのか自分ひとりで処理した仕事なのかを読み分けられなくなります。
4文目は、主要な決算業務の8割を複数名で担当できる状態と、人に定着した範囲で結果を書いています。ここを「決算の早期化を実現しました」と成果だけの記述にすると、3文目の担当替えが続いている運用なのか一度きりの入れ替えだったのかが分かりません。
3文目は、属人化していた決算業務の洗い出しから業務分掌の組み直し、手順書の整備、四半期ごとの担当替えまでを手順として並べています。これを「属人化の解消に取り組みました」と活動名でひとまとめにした場合、4文目の8割という到達点が何をした結果なのかをたどれなくなります。
プレイヤーとしての実績ではなく、体制を設計して人に定着させられる人物だと読み取れます。
上場企業での開示・有報作成経験をアピールする場合
上場企業で有価証券報告書や決算短信の作成に関わってきた方に当てはまる例文です。
上場企業の経理部で、事業年度経過後3ヵ月以内という法定の期限がある有価証券報告書と、期末後45日以内が求められる決算短信の開示に携わってきました。
担当は連結財務諸表と注記の取りまとめで、株主総会招集通知の作成も受けもちました。
連結子会社12社からの連結パッケージの回収日は、監査法人のレビュー日程から逆算して設定しました。
サステナビリティ情報の開示欄が加わった年度には、記載内容の収集を人事部門と分担する段取りを組み、日程を崩さずに吸収しました。
担当した4期はいずれも期日を落とすことなく、決算発表は期末後38日で行いました。
法令が定める期限と取引所が求める期限を冒頭に置いたため、後段の担当範囲がそのまま責任の重さとして読めます。
4文目は、制度で増えた作業を人事部門と分担する段取りとして、自分の手の動きから書いています。ここを「サステナビリティ情報の開示が求められるようになりました」と制度の説明にすると、5文目の期日を落とさなかった結果が何に支えられていたのか分からなくなります。
2文目は、担当を連結財務諸表と注記の取りまとめ、株主総会招集通知の作成に限って書いています。これを「開示業務全般を担当しました」と広く書いた場合、3文目の日程の逆算が自分の担当のためのものだったのか他部署の作業だったのかがつながりません。
5文目は、担当した期のすべてについて期日を落とさなかったと書いています。「複数年にわたり開示業務を担当しました」という在籍期間の記述では、1文目に置いた期日の制約を実際に守り切ったのかどうかを確かめられません。
落とせない期日と対外的な責任のもとで、書類を成立させてきた人物だと読み取れます。
会計システム導入・経理DX推進の経験をアピールする場合
会計システムの入れ替えに、業務側の担当として関わった方に当てはまる例文です。
会計システムのリプレースにあたり、業務側の主担当としてプロジェクトに参画しました。
対象は国内3拠点と子会社2社の会計・経費精算・ワークフローで、要件定義から本稼働までの10ヵ月を担当し、利用者は約200名にのぼります。
勘定科目と部門マスタは標準の体系に寄せる一方、月次で使う配賦の計算は自社の運用として残すと判断し、その線引きの理由をベンダーと利用部門の双方に説明しました。
稼働後は経費精算の紙の申請がなくなり、承認までの日数は平均5日から2日へ、経理側の入力工数は月30時間減りました。
この例文は、業務側の主担当という立ち位置を1文目で決めてから、システムをどう作るかの判断を後ろに置いています。この並びのため、判断はベンダーが出した結論ではなく、自分の意思として読めます。
3文目は、標準の体系に寄せたものと自社の運用として残したものを並べ、その線引きを自分が引いたと書いています。ここを「利用部門の要望を整理してベンダーへ伝えました」と橋渡しの記述に替えた場合、4文目で紙の申請がなくなった変化を、自分の判断から出た結果として示せません。
2文目は、拠点と子会社の数、期間、利用者数で対象の大きさを示しています。これが「大規模な会計システムの刷新に携わりました」という形容であれば、3文目の線引きが何人分の運用の話なのかを測れなくなります。
1文目は、参加の事実ではなく、業務側の主担当という役割の定義から入っています。ここを「リプレースプロジェクトに参加しました」と書き替えると、3文目の判断も4文目の効果も、全体の成果なのか自分の担当分なのかを切り分けられなくなります。
システムに明るい担当者ではなく、経理の側から要件を決め、利用部門の運用まで変えた人物として受け取られます。
IPO準備・内部統制の構築経験をアピールする場合
上場前の会社で、規程や内部統制の整備を担ってきた方に当てはまる例文です。
直前々期(N-2期)から上場準備に加わりましたが、その時点では社内の規程も業務の文書もほとんど整っていない状態でした。
経理規程や職務権限規程など8本の規程を整備し、主要業務の業務記述書と業務フロー図、リスクコントロールマトリックスを作成しました。
対象は販売・購買・在庫・決算の4プロセスと、国内2拠点および子会社1社です。
整備した内容は監査法人のショートレビューと主幹事証券会社の引受審査で指摘を受けるたびに見直し、運用状況の記録まで含めて説明できる形にしました。
申請期に上場を果たし、その後も同じ枠組みで内部統制の評価が続いています。
この例文の要は、1文目に置いた未整備の状態と、5文目の到達点が対になっている点です。何もそろっていない状態から審査を通るまでの落差が全体の並びから読み取れるため、間に置かれた規程や文書は、担当業務の一覧ではなく差を埋めた手立てとして読めます。
2文目は、規程を本数で、作った文書を種類で数えています。これを「内部統制の整備を推進しました」と活動の名前でまとめると、1文目の状態から何がどれだけ増えたのかを測れず、差を埋めたという成果が残りません。
5文目は、上場という到達点で止めず、その後も同じ枠組みで評価が続いていることまで書いています。これが「上場を果たしました」で終わっていれば、4文目の指摘対応は上場までの間に合わせだったのか、その後も使える形に直したのかを区別できません。
3文目は、プロセスの数と拠点・子会社の数で対象を区切っています。ここを「上場に向けた内部統制の整備を担当しました」と対象を書かずに済ませると、2文目の文書がどこまでを覆っているのかが読めず、4文目の指摘対応も何についてのやり取りかたどれなくなります。
何もないところから規程と文書を作り、第三者の審査を通した人物だと読み取れます。
グローバル経理・外資系企業での実務経験をアピールする場合
海外子会社を含む決算や、外資系企業での経理を担ってきた方に当てはまる例文です。
アジアと欧州の5ヵ国8拠点に子会社をもつメーカーで、現地は各国の会計基準、本社は日本基準という差のある状態で連結決算を担当しました。
担ったのは8社分の連結パッケージの回収と、在外子会社の外貨換算、現地基準と日本基準の差異調整です。
回収が遅れがちな2社に対しては、グループの会計方針のどこが現地の処理と違うのかを英語で説明する資料を作り、決算前に現地の担当者と手順を確認する場を設けました。
連結パッケージの回収から連結完成までの日数は14日から9日へ縮まり、監査法人からの追加質問も減りました。
1文目で差の所在を示したことが、後段の読まれ方を決めています。現地と本社で拠り所にする基準が違うという条件が先に立つため、英語での説明も決算前の確認も、語学の話ではなく差を埋める段取りとして読めます。
3文目では、英語が単独の能力として出てこず、会計方針の違いを説明する資料を作る行為の中に置かれています。ここを「英語でのコミュニケーションに問題はありません」と能力の申告にすると、1文目に置いた基準の差を誰がどう埋めたのかが空欄のまま残ります。
4文目は、回収から連結完成までを一つの区間として取り、その日数で結果を書いています。ここを「担当分の回収を早めました」と自分の手が離れるところで区切ると、3文目の資料と事前の確認が連結の完成まで効いたのかを確かめられなくなります。
1文目は、勤務先の属性ではなく、拠点の数と基準の食い違いで会社を説明しています。もしここが「外資系メーカーで連結決算を担当しました」であれば、2文目の外貨換算や差異調整が何拠点分の、どのような食い違いを扱った作業なのかを示す手がかりがありません。
語学ができる方ではなく、基準の違いを自分の言葉で説明し、時差のある体制で決算を締められる人物として読まれます。
【未経験者向け】経理転職の自己PR例文と書き方ポイント
経理未経験の自己PRは、会計の知識をどれだけ語れるかではなく、前職のどの仕事が経理と地続きなのかを示せるかで決まります。
ここに挙げる3つのうち、はじめの2つは前職が専門職か総合職かで分かれます。3つ目の資格と学習意欲は、どちらの経歴にも重ねて使えます。
- 専門職からの転職の場合
- 総合職からの転職の場合
- 簿記などの資格取得・学習意欲をアピールする場合
専門職からの転職の場合
特定の領域の知識を積み上げてきた専門職の方に当てはまる例文です。
前職では自動車部品の品質保証を担当し、取引先ごとに異なる規格を読み込んだうえで検査基準を作成してきました。
法改正で基準が変わった際は、条文と社内規程の差分を一覧にまとめ、関係部門へ共有したうえで運用開始までの手順書を整備しています。
数値の根拠を残し、後から誰が見ても同じ結論にたどり着ける記録を作ることを大切にしてきました。
経理を志望したのは、部門ごとの数字が最後は決算書へ集約される仕組みに関心をもったためです。
規格を読み解いてきた進め方は、会計基準の理解と月次の処理にそのまま生かせると考えています。
この例文が経理への志望として読めるのは、前職の専門領域の説明を1文に抑え、残りを経理での使い道に充てているためです。前職の紹介ではなく、経理へ移るための材料として経歴が並んでいます。
1文目は、前職の担当を品質保証と検査基準の作成に絞って書いています。ここで規格の中身や検査の手法まで2文3文と書き込むと、その職種を続けたい方だと受け取られ、4文目の志望理由が後から付け足したものに見えます。
3文目は、担当した業務ではなく仕事の進め方を書いています。ここを「検査の精度を高める工夫を重ねてきました」と前職の成果の話へ戻すと、5文目の「そのまま生かせる」が何を指すのかを示せません。
5文目は、規格を読み解く進め方と、会計基準の理解や月次の処理を名指しでつないでいます。これが「これまでの経験を生かしたいと考えています」であれば、前段の経歴は経理と関係のない職歴の紹介として残ります。
新しい制度や基準を自力で読み込み、社内の処理へ落とせる方だと読み取れます。
総合職からの転職の場合
売上高や経費の数字を扱う場面があった総合職の方に当てはまる例文です。
法人営業として8年間、製造業を中心に約60社を担当してきました。
四半期ごとに予算と実績の差異を分析し、値引きや仕入条件の変更が利益率に与える影響を数字で整理して上長へ報告しています。
請求内容に誤りが見つかった際は、営業部門と管理部門の間に入って原因を確かめ、再発を防ぐ確認手順を作りました。
担当企業の業績が伸びる過程を数字で追ううちに、事業全体の数字を扱う仕事に関わりたいと考えるようになりました。
営業の視点で見ていた売上高や原価を、会計のルールに基づいて処理する立場から捉え直したいと考えています。
この例文が営業の経歴紹介にならずに済んでいるのは、担当した仕事のうち数字に関わる場面だけを選び、その中身を深く書いているためです。
2文目は、値引きや仕入条件の変更が利益率に与える影響を、分析の対象として書いています。営業の成績ではなく利益の側から数字を見ていたことが、ここで伝わります。これが「担当エリアの目標を達成してきました」と営業の成果で書かれていれば、扱ってきた数字は経理が扱う数字とは別のものになります。
3文目は、請求内容の誤りに対して、営業部門と管理部門の間に入り原因を確かめたところまで書いています。これを「関係部署と連携して対応しました」とまとめると、誰が原因までたどったのかが残らず、経理が日々行う確認の作業と重なる部分も見えなくなります。
4文目と5文目は、志望する理由を担当業務の延長線に置いています。これが担当業務と離れたところから出てきた動機であれば、前段の経験と切り離され、数字を扱ってきたことが志望の裏づけになりません。
数字を扱ってきた経験と経理を志望する理由が同じ話の中でつながるため、思い付きで職種を変えようとしているのではないと読み取れます。
簿記などの資格取得・学習意欲をアピールする場合
簿記を学びながら経理への転職を目指す方に当てはまる例文です。
経理を志望するにあたり、まず日商簿記3級を取得し、現在は2級の工業簿記を学習中です。
次回の試験に向けて、平日は1時間、休日は3時間を確保して進めています。
学習をはじめたきっかけは、店舗の売上高を集計するなかで、自分が入力した数字がその後どう扱われるのかを知らないままだと気付いたことです。
商業簿記を学んでからは、日々の売上高や仕入が試算表のどこに現れるかを意識できるようになりました。
貴社は製造部門を自社でもつため、原価計算の知識が欠かせないと考えています。
工業簿記の学習を早めに終え、入社後は原価の集計から任せていただけるよう準備を進めます。
この例文は、資格の取得状況から書きはじめながら、学習の報告で終わっていません。学んだ内容を志望先の仕事のどこで使うかまで書いているためです。
3文目は、学習のきっかけを前職の場面に置いています。これを「経理の仕事に興味をもったため学習に取り組みました」と書けば、きっかけが本人の経験の外にあることになり、学習が続いてきた理由が本文から消えます。
4文目は、学んだ内容を前職で見ていた数字に当てはめて書いています。ここが「商業簿記をひととおり学びました」であれば、知識を覚えた段階なのか業務の場面と結び付いた段階なのかを、採用側が読み分けられません。
5文目は、志望先が製造部門を自社でもつことと、工業簿記の学習を結び付けています。ここを「簿記の知識を生かして貢献したいと考えています」と一般化した場合、どの会社へ出しても同じ文になり、6文目の原価の集計という申し出も根拠を失います。
学習の進み具合と入社後に任せてほしい仕事が並んでいるため、採用側は育成にかかる時間を見通せます。
経理転職の自己PRを作成する際の3つのステップ
経理の自己PRは、書き出す前に材料をそろえて選ぶ段階で決まります。
ここでは、自分の職務経歴を材料として扱い、書き出す、選ぶ、言葉にするという順で自己PRを組み立てる手順を、実務経験の有無にかかわらず使える形で示します。
- STEP1:キャリアの棚卸しで強みを特定する
- STEP2:応募企業のフェーズ・課題に合わせてアピール内容を調整する
- STEP3:ルーティン業務の羅列を避けて成果を言語化する
STEP1:キャリアの棚卸しで強みを特定する
まず担当してきた業務を時系列で書き出し、ほかの人より広く任されたことと、自分から動いたことを拾い上げます。経理業務全般という単位では後から選ぶ材料にならないため、1行を業務名と自分の役割、規模を表す数、時期の4点でそろえます。対象は担当した決算の種類や勘定科目、対象会社数で表せる任された範囲です。
拾い上げる物差しは、自分の経歴の中での比較です。同年次では任されていなかった子会社の決算や、決算が遅れる原因を自分で調べて他部署へ確認に行ったことが残ります。
実務経験がない場合も、同じ表に材料を並べます。前職で数字を扱った業務は、担当した金額の規模、扱った件数、締め切りの頻度まで書き添えます。学習中の簿記は、級と学習期間、受験時期、独学か通学かまで書き出します。
洗い出しで気をつけたいのは、直近の担当業務だけを見て終えることです。年末の棚卸立会や他部署からの問い合わせ対応のように、毎年繰り返して慣れた業務ほど書き出しから漏れます。
STEP2:応募企業のフェーズ・課題に合わせてアピール内容を調整する
書き出した材料は、応募先が抱えている課題に合わせて順番を組み替えます。自分が強みだと感じている経験が、その会社の最優先とは限らないためです。
課題は求人票から読み取れます。募集背景の欄と業務内容の並び順、応募資格の必須と歓迎の分かれ方を見ます。先頭に置かれた業務が、いま最も人手を求めている仕事であることが多いです。
決算の早期化を課題にしている会社なら、日程を前倒しした経験と、そのために変えた段取りが先に来ます。管理会計を強めたい会社なら、原価や採算の分析に関わった経験が先です。海外拠点の管理に人手が要る会社なら、拠点をまたぐやり取りや基準の違いを扱った経験を前へ出します。実務経験がなければ、応募先の業務に近い材料を先に置き、学習の進度を事実で示せるものを続けます。
すべての応募先へ同じ自己PRを送らないようにします。募集背景に決算の早期化とあるのに、正確に締めてきたことを先頭に置いたままでは、課題とかみ合いません。
STEP3:ルーティン業務の羅列を避けて成果を言語化する
担当した業務名を並べるのではなく、どういう状況で何をして、その結果どうなったのかが分かる形に組み直します。業務名だけでは、その中で自分が何をしたのかが伝わらないためです。決算を担当、で止めず、連結子会社4社の決算を取りまとめていた状況で勘定科目内訳の様式をそろえ、回収の日数を3日短縮した、まで書きます。
打ち手と結果には数を添えます。短縮したとだけでは規模が伝わりません。対象会社数や部下の人数、担当した期間、3日短縮のような変化に数を置き、数で表せない業務は範囲で代えます。
組み直した文は、担当した年数と変化を1文目に置き、経緯を後ろへ回します。冒頭の1文で先を読むかどうかが決まるためです。
実務経験がない場合も同じ型で書きます。取引先ごとの入金予定を管理していた状況で、確認の手順を自分で決め、消込の遅れをなくした、という形です。
業務名の羅列や根拠のない形容、結論が最後に来る書き方は避けます。「正確かつ迅速に業務を遂行してまいりました」では、何をどう正確にしたのかが伝わりません。
経理への転職なら、JACリクルートメント
経理は、企業の規模や成長のフェーズによって、任される範囲も求められる経験も大きく変わります。決算や管理会計に加え、IPO準備やM&Aへの対応まで役割が広がっているためです。
そのため、求人票から読み取れることには限りがあります。いま任せたいのが日々の実務なのか、体制の立て直しなのかは、公開されている情報の外にあるためです。経理という職種の事情と企業ごとの違いを理解した転職エージェントの支援が欠かせません。
JACには管理部門領域に特化したコンサルタントが在籍し、職種別・業界別の専門チームを編成しています。決算業務の深さや管理会計への関与度といった経理特有の業務範囲まで把握したうえで、経験や志向を丁寧にうかがい、強みを生かせるキャリアを提案します。
経理の経験を生かした転職も、これから経理を目指すキャリアも、ぜひJACにご相談ください。

