異業界から不動産金融業界へ。仕事内容や必要な資格を解説

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公開日:2024/05/20 / 最終更新日: 2025/12/05

不動産金融は、株式や債券といった伝統的資産とは異なる特性をもつオルタナティブ投資を運用する業界として、注目を集めています。近年は新たなアセット需要も生まれており、多くの企業が不動産業界や金融業界から積極的に中途採用を進めています。

今後、中長期的な成長が見込まれる不動産金融業界の転職動向について、JAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが解説します。

不動産金融業界への転職は未経験でも可能か?


不動産金融業界は中途採用が中心で、転職者の3〜4割は異業界出身者ですので、未経験でも転職可能です。

アクイジションやアセットマネージャーなどのフロント職であれば、不動産業界での不動産開発やプロパティマネジメント、売買仲介、用地仕入れの経験が役立ちます。また、金融機関での投資やファイナンス業務、信託受益権の取り扱いや不動産管理の経験も活かせるでしょう。

財務・IR/経理であれば、異業界での同じ職種の経験や会計事務所・監査法人での不動産SPC会計・管理業務と親和性があります。

不動産金融は、不動産、金融、会計、法務など複数の分野を組み合わせたビジネスです。そのため、フロント職の場合でも、これらの中でいずれかひとつに強みを持ちながら、ほかの分野についても幅広く知識を身につける必要があります。ゼネラリストとして高いスキルが求められます。

不動産金融業界とは

不動産金融業界とは、不動産と金融を掛け合わせた金融商品を扱う業界です。土地や建物などの証券化、インカムゲインやキャピタルゲインを狙う不動産投資、不動産から生まれた収益を返済原資とするノンリコースローンなどが挙げられます。

JACがご紹介する不動産金融業界の求人は、不動産ファンドやREIT(不動産投資信託)が中心ですが、証券会社や金融機関などの投資家サイドに関連する求人もあります。

不動産金融業界の動向とトレンド

投資目的での不動産の運用・保全を行う不動産アセットマネジメント(不動産AM)企業には上場REIT、私募REIT、私募ファンドの3種類があり、近年は事業会社が私募REITに続々と参入しています。その内訳としてはエネルギー、鉄道、飲料メーカーなど事業の特性上、広大な不動産を所有している企業が目立ちます。

多くの企業が参入している背景としては、多種多様な企業が参入する背景には資産から不動産を外すことによる貸借対照表(BS/バランスシート)の適正化や、新規事業として新たな収益を見込むケースなどが挙げられます。

一般社団法人不動産証券化協会の調査によると、2025年9月時点でJ-REITの上場銘柄数は58で、2024年9月比は同数です。私募REITは61投資法人あり、2024年9月比で+3投資法人となっています。

このことからも私募REITの注目度の高さが伺えます。日本では2000年の投信法改正によって、投資信託の運用対象に不動産が加わり、翌年に東京証券取引所にJリート市場が誕生しました。業界自体の歴史は比較的浅く成長性も見込めることから、今後も不動産金融に参入する企業は増えるでしょう。

一方で新たな金融商品として注目を集めているのがデジタル証券です。セキュリティトークンを使って証券を小口化したもので、個人投資家でも少額で投資でき、美術品や航空機、船舶などあらゆる資産を証券化できる点にメリットがあります。

これまで不動産投資は、高額な運用資金が必要なため一部の富裕層や機関投資家に限られていました。しかし、デジタル証券の仕組みが登場したことで、個人でも少額から投資できるようになっています。既存の大手証券会社によるデジタル証券の取り扱いや、専門企業の設立も進んでおり、「貯蓄から投資」への流れを後押しする存在として期待されています。

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不動産金融業界の将来性

デジタル証券の登場によって不動産投資の間口が広がっただけでなく、今後は投資対象となる不動産の多様化が見込まれています。

オーソドックスな投資対象としてはオフィスビルやレジデンス、大型商業施設、ホテル、物流施設などが挙げられるほか、昨今はIoTやAIの台頭によるクラウドインフラの需要拡大からデータセンターを投資対象に組み入れるファンドも増えています。また、ホスピスや大規模な医療機関、高齢者福祉施設といった社会的な需要が高まる施設にも注目が集まっています。

一方で既存の投資対象も建物自体のバリューアップを行うことで、資産価値を高める取り組みが進んでいます。例えば、物流施設内にカフェやアミューズメントを併設することで、不動産価値を高めるケースなどが挙げられます。

不動産金融業界は社会の需要の変化を機敏に捉えながら、新たなテクノロジーを取り込むことで成長し続けており、今後も成長が期待されます。

不動産金融業界における日系と外資の違い

日系企業のREITはインカムゲインを前提としたコア投資がメインで、安定的な利回りを重視しリスクを避ける傾向があります。運用期間も10〜20年単位の長いスパンで安定的な成長を目指します。一方で外資系企業はコア投資だけなく、割安に物件を調達して付加価値をつけ、数年後に購入時よりも高価格で売却する「オポチュニスティック型投資」も行います。

一般的に、働く環境としては日系企業が安定して長く働きたい方向けで、外資系企業は好待遇を得たい方や専門性を身につけたい方に向いています。

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不動産金融業界に多い職種の仕事内容やスキル・経験


不動産金融業界は不動産業界出身者と金融業界出身者を中心に構成されます。業界全体として社員数が比較的少なく、最も多いのは30〜50人規模。10人以下という企業も珍しくありません。最大手でも150人程度と比較的小所帯です。また、大半の企業が新卒採用を行っていないため、業界全体の平均年齢が高く、どの企業も若返りを目指して若手層の採用を強化しています。

外資系企業へ転職する場合は、TOEIC800点以上に相当するビジネス英語スキルや、Excelの操作やモデリングスキルが求められます。

求人が多い職種について仕事内容と求められるスキル・経験をご紹介します。

アクイジション

投資対象となる不動産物件取得に関するポジションがアクイジションです。

未経験での中途採用の場合、不動産売買仲介や用地仕入れの経験がある方が有利です。また不動産鑑定士の資格を保有する方も歓迎されます。主に3つの業務を担当します。

ソーシング

物件の情報収集を担当。仲介会社や不動産を所有する事業会社に営業活動を行い、投資対象となる物件をリサーチします。

デューデリジェンス(アンダーライティング)

投資対象不動産の評価(バリュエーション)、投資分析(アンダーライティング)、遵法・土壌汚染調査などを行います。商業施設やホテルであれば近隣の競合施設も含めたマーケット分析を行うこともあります。

クロージング

多くの関係者との利害調整及び合意形成を結ぶための契約書の作成・締結業務、関連書類の受け渡し、資金決済、登記手続などを行います。

アクイジションは3つ全てを担当する場合もあれば、個々の業務に特化する場合もあります。

アセットマネージャー(アセットマネジメント)

取得した不動産物件の運営戦略策定・実行、プロパティマネジメント(PM)会社の管理や修繕計画・バリューアップ施策の立案など物件の運営を担うポジションです。また投資家や金融機関との交渉や運用状況報告なども担当します。

未経験からの転職の場合には不動産プロパティマネジメント業務経験、金融機関・デベロッパーでの業務経験をお持ちの方が有利です。なかでもJ-REITや私募ファンドの対象物件のPM業務に就いた方は選考でも高く評価されます。

アクイジションとアセットマネージャーは業界内でも求人が比較的多いのが特徴です。

機関投資家/投融資担当

主に金融機関でのポジションになります。不動産投資に関する融資や投資を担当します。
30代から40代の即戦力が主な採用対象となりますが、未経験からの転職では金融+αの経験を持った若手層の方にも可能性があります。特にアセットファイナンスや法人営業のポジションで財務諸表も読める方が有利です。日系であっても海外に投資している企業が多いことから、英語力のある方は日系・外資問わず優遇されます。

財務・IR/経理

財務はアセットマネジメント会社で銀行からの融資、投資家からの出資による資金調達を担うポジションです。IRは投資家とのコミュニケーションや、機関投資家向けのレポート、書類作成が主な業務です。

同業界での経験者が中心に採用されていますが、30代前半で金融機関出身であり、ファイナンス業務や法人営業の経験がある方であれば、未経験でも採用される可能性があります。

経理は資産運用会社と投資法人の求人が中心です。前者は一般の事業会社の経理職と職務は同じですが、後者は証券化した不動産が対象となり、有価証券報告書等開示書類や計算書類の作成などの業務が加わります。

中途採用の場合には会計・経理業務の経験者であれば、異業界でも問題ありません。特に会計士や税理士などの資格があれば非常に有利です。

ポジションごとの職務は企業によってさまざまで、例えばアクイジションであってもアセットマネージャーを兼務する場合もあれば、アクイジションのデューデリジェンスのみのポジションもあります。応募の際は職務内容を細かく確認しましょう。

不動産金融の職務経歴書の書き方について、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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不動産金融業界への転職で有利な資格


ここでは不動産金融業界への転職で有利な資格を紹介します。

宅地建物取引士

業界でも資格保有者が多く、入社後は持っていて当然と見なされることもありますので、転職活動前に取得することをお勧めします。合格率は20%未満と難しい資格ですが、それだけに不動産金融業界が求める要件は高いともいえます。

不動産証券化協会認定マスター

不動産証券化ビジネスに関する会計・法務の知識を証明する資格です。宅建を取得した上で100〜200時間相当の学習時間を確保する必要があり、合格へのハードルが高い資格ではありますが、それだけに転職活動時には強力なアピール材料になります。入社後に取得を推奨する企業もあり、どのポジションであっても取得するべき資格といえます。

日商簿記検定

会計・経理・財務の実践的なスキルを証明する資格です。転職に当たっては2級以上の取得を目指しましょう。アセットマネージャーを目指す方にはお勧めの資格です。

証券アナリスト

証券分析業務で3年以上の経験をもつ方を対象とした民間資格です。外資系企業や銀行・証券会社で投資サイドのポジションやアレンジャーに就きたい場合には有利な資格です。

不動産鑑定士

フロントのアンダーライティングやデューデリジェンス、クロージング業務で活かせる資格です。転職でもアクイジションのポジションで歓迎条件に記載されることが多々あります。

このほか、フロント向けの資格としてはビル経営管理士や不動産コンサルティング技能士も挙げられます。

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JACで異業種から不動産金融へ転職した方の平均年収は881.9万円

国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」で不動産金融に携わる方の平均年収をみてみましょう。

「不動産金融」は、国税庁の分類では金融業・保険業や不動産業・物品賃貸業に含まれます。同調査で「業種別及び給与階級別の給与所得者数・給与額(1年を通じて勤務した給与所得者)」をみると、金融業・保険業の平均給与は702.3万円 、不動産業・物品賃貸業は495.5万円となっています。

一方、JACが「金融」または「不動産」以外の業種から「不動産金融」へ転職サポートを行った事例をみると、平均年収は881.9万円で、国税庁の各業種の平均を大きく上回っています。

ここからは、年代別や英語別力など、さらに詳しく見ていきましょう。

出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査

年代別の平均年収

JACを利用して「金融」または「不動産」以外の業種から「不動産金融」へ転職した方について、年代別の転職者割合と平均年収を、以下の表にまとめました。

年代転職者数の割合平均年収
20代31%741.4万円
30代38%896.5万円
40代31%1004.4万円

※当社実績(2023年1月~2025年10月分データ)より

各年代の転職者数が全体に占める割合をみると大きな差はなく、異業種から不動産金融に転職できるかは年齢と関係ないことがわかります。一方、平均年収は年代が上がるにつれて上昇しています。

異業種から不動産金融への転職事例

JACのサポートによって異業種から不動産金融への転職を成功させた方の事例を3つご紹介します。

事例①:コンサルから金融系不動産AMへキャリアチェンジした事例

Rさん(女性/20代後半)

 業種職種年収
転職前コンサル会計事務550万円
転職後金融(リース・ノンバンク)不動産AMバックオフィス800万円

Rさんは大学卒業後、観光業界での接客業務を経て、コンサルティング会社にてSPCの会計事務を担当。帳簿作成から決算・税務申告、監査対応、物件売却時の関連業務まで幅広く経験されました。さらに、物件取得時のクロージング業務にも携わり、案件組成時のスキーム検討や税務意見書作成など、専門性の高い業務にも積極的に関与。日商簿記2級や不動産証券化協会認定マスターなど複数の資格を取得し、挑戦意欲の高さが際立つ方です。

当社がご紹介したのは、金融(リース・ノンバンク)における不動産AMバックオフィス業務。私募ファンドやREITの運用部門にて、キャッシュマネジメントやレポート作成、税務申告対応などを担うポジションです。日本最大級の金融グループの安定した環境で、これまで培った会計・税務の知識を活かしながら、不動産アセットマネジメント領域で専門性をさらに深めるキャリアを実現しました。

事例②:監査法人から不動産投資会社のグループ経理へキャリアチェンジした事例

Sさん(男性/30代後半)

 業種職種年収
転職前監査・コンサルティング会計監査1,045万円
転職後金融(不動産投資)グループ経理1,150万円

Sさんは大学卒業後、公認会計士試験に合格し、監査法人にて一般事業会社の監査業務を経験。その後、より大規模な案件に携わるため大手監査法人へ転職し、上場企業やJ-REIT、不動産会社などの会計監査に従事。現場主査として監査チームの取りまとめやクライアントとの交渉も担当し、専門性とマネジメント力を磨いてこられました。落ち着いた人柄で周囲との調和を大切にしながらも、任された業務には真摯に取り組む姿勢が印象的な方です。

当社がご紹介したのは、不動産投資会社のグループ経理ポジション。月次・四半期・本決算対応、税務申告、キャッシュフローマネジメント、親会社との連携業務など、経理業務全般を担う役割です。外部監査対応や業務改善にも関与できる裁量あるポジションで、これまでの監査経験を活かしつつ、事業会社側でのキャリアを築く転職を実現。年収もアップし、ワークライフバランスの改善も叶える理想的なステップとなりました。

事例③:ホテル運営から不動産金融の資産運用部門へキャリアアップした事例

Tさん(女性/40代後半)

 業種職種年収
転職前ホテル運営・事業再生ホテルオペレーション・事業再生1,200万円
転職後金融(不動産金融)ホテル資産運用部門アナリスト/シニアアソシエイト1,350万円

Tさんはホテル業界にて、アナリスト業務から新規開業準備、システム導入、業務改善、アセットマネジメントまで幅広い経験を積まれてきました。複数のホテルチェーンで現場実務を経験した後、統括本部でホテル収益や顧客満足度の分析、レポーティング業務に従事。外資系ホテルオペレーターではLMS導入や新規部署の立ち上げ、オペレーションのクラスタリングなど先進的なプロジェクトを推進し、ホテル全体の生産性向上に貢献。財務経理部門では予算策定やコスト管理も担い、GOP達成にも寄与されました。

その後は日系デベロッパーでホテルのバリューアップを担当し、フルサービスホテルからリゾートまで多様な物件を経験。現在は不動産ファンドにてホテルオペレーターに出向し、事業再生を担当されています。

当社がご紹介したのは、不動産金融会社のホテル資産運用部門でのアナリスト/シニアアソシエイトポジション。ホテルの収益管理、戦略立案、レポート作成、Capexプロジェクトの推進など、資産価値向上に向けた業務を担う役割です。これまでのホテル運営・財務・事業再生の経験を活かし、より戦略的な立場でホテル資産の運用に携わるキャリアアップを実現。年収もアップし、専門性をさらに深める転職となりました。

不動産金融業界の転職で多い質問と回答


Q.業界のワークライフバランスについて教えてください。

A. 平均残業時間はおおよそ月20〜30時間程度です。一部の企業では40〜50時間の場合もありますが、80時間を超えることはほとんどありません。また、JREITでは年2回の決算にあわせて忙しい時期と落ち着いている時期があり、残業時間に変動があります。リモートワークは週に1〜2日程度で、出社勤務が中心です。外資系企業の場合は、投資家の要望に合わせて会議や対応が必要になることもあります。

業界全体の離職率は年間平均で5~10%程度、業界内転職が多いこともあり、比較的流動性のあるマーケットといえます。


JACでは不動産金融領域でのご支援を2010年頃よりスタートし、業界内にて多くの企業様とのお取引があります。この業界は求人票には記載されない要素の情報収集が難しく、企業に入り込んでいる転職エージェントも限られているため、ミスマッチな転職が起きやすい傾向があります。

しかし、JACでは業界専任コンサルタントが各社の役員・部門ヘッドと面談し、チーム間で情報共有することで、他社には無い情報量と質を活かしたキャリアパスのご提案が可能です。

コンサルタントは証券、信託銀行、会計事務所出身者などで構成され、外資系企業やエグゼクティブクラスの転職にも強みがあります。また、証券化事業へ参入したい事業会社から早期に中途採用のご相談をお受けすることも多く、業界内の求人をいち早くご紹介できます。

更に当社の海外拠点や、不動産金融業界と親和性の高い銀行、証券、アセットマネジメント、デベロッパーチームなどとも連携し、あなたの可能性を最大限に活かせる転職が可能です。

不動産金融業界への転職をご検討の方は、JACまでお気軽にご相談ください。

■不動産金融業界の求人傾向・年収についてはこちらの記事をご覧ください。

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この記事を監修した転職コンサルタント

佐藤

佐藤

金融ディビジョン リーダー

2019年に入社して以来、一貫して不動産金融領域を担当。現在はリーダーとなり、日系・外資AM会社、金融機関不動産部門をメインに担当し、新規事業参入の役員・CxO等のご転職ご支援も行っています。どのようなキャリア可能性があるのか、具体的な求人詳細、潜在的な採用ニーズなど、タイムリーな情報をお伝えいたします。


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