評価額100億ドルを超える未上場のテクノロジー企業として、世界経済を牽引する存在へと成長したデカコーン企業。世界でも数十社しか存在しない希少な企業群であり、生成AIやフィンテック領域を中心に世界経済へ大きな影響を与えています。
世界をリードするスタートアップへの転職を検討している方のなかには、「どの企業がデカコーンなのか」「日本企業はどの程度存在するのか」と気になる方もいるでしょう。
本記事では、デカコーン企業の定義やユニコーン企業との違い、世界の企業ランキング、日本の現状について、JAC Recruitment(以下、JAC)が詳しく解説します。
デカコーン企業とは? 定義を解説
デカコーン企業は、評価額が100億ドルを超える未上場のテクノロジー企業を指します。ユニコーン企業のなかでも評価額が際立って高く、世界でも数十社にとどまる希少な存在です。ここでは定義として広く使われる3つの条件と名称の由来を確認したうえで、ユニコーンやヘクトコーンとの違いを整理します。
- 3つの条件を満たす企業がデカコーン企業として定義される
- デカコーンと「ユニコーン」「ヘクトコーン」の違い
3つの条件を満たす企業がデカコーン企業として定義される
デカコーン企業とは、一般的には「評価額100億ドル以上、未上場、テクノロジー企業」を指します。調査機関によっては設立年数を条件に含める場合もあります。
名称の由来は、伝説の一角獣ユニコーンにあります。ベンチャーキャピタリストのアイリーン・リーが2013年に提唱したユニコーン企業は、評価額10億ドルを超える未上場のテクノロジー企業を指し、めったに現れない希少さを一角獣になぞらえた呼び名でした。
ここに「デカ(deca)」を重ねたのがデカコーンです。デカは10倍を表し、ユニコーンの基準である10億ドルの10倍、つまり評価額100億ドルを超える企業を指す呼称です。短期間でこの規模に届く企業は世界でも限られ、成長の速さと資金調達力をあわせもつ企業だけがたどり着きます。
評価額そのものにも注意が必要です。上場企業の時価総額のように市場で日々値付けされるのではなく、ベンチャーキャピタルなどの投資家が将来の成長性を見込んで、資金調達のたびに算定する推定値です。この仕組みを知っておくと、各社の評価額を比べる際の目安がつかみやすくなります。
デカコーンと「ユニコーン」「ヘクトコーン」の違い
デカコーン・ユニコーン・ヘクトコーンを分けるのは、評価額の規模です。
ユニコーン企業は、評価額10億ドル以上の未上場テクノロジー企業を指します。デカコーンの10分の1にあたる水準で、世界では1,000社を超える企業が該当するとされます。日本ではAI開発のSakana AIやPreferred Networks、ニュースアプリのスマートニュースなどが知られた存在です。
ヘクトコーンは、評価額1,000億ドル以上の未上場企業を表します。「ヘクト(hecto)」は100倍を意味し、ユニコーンの100倍という桁違いの規模です。該当するのは世界でもごく少数で、生成AIを手がけるOpenAIやAnthropic、TikTokを運営するByteDanceがその代表格です。※ヘクトコーンはデカコーンよりさらに希少であり、世界でも一桁台から十数社程度の水準にとどまります。
ただし、この顔ぶれは固定ではありません。ヘクトコーンは未上場であることが条件のため、株式を上場すればこの区分から外れます。長く代表格とされた宇宙開発企業のSpaceXは2026年6月にナスダックへ上場し、未上場企業ではなくなりました。OpenAIとAnthropicもIPOに向けた手続きを進めており、上場が実現すれば同じくヘクトコーンには含まれなくなります。評価額が大きい企業ほど上場の判断が早まり、各社の状況は移り変わっていきます。
3つの呼び名は評価額で連続的につながっており、デカコーンはユニコーンとヘクトコーンの中間にあたる規模です。すでに巨大でありながら、さらなる飛躍の余地を残す企業群といえます。
世界の主要デカコーン企業一覧
世界のデカコーン企業は、集計基準によって約40〜90社と幅があります。ここでは、2026年6月末時点で評価額100億ドル超を確認できる未上場テクノロジー企業を対象に、各社の資金調達や株式取引の公表情報をもとに整理しました。読み解くと、アメリカへの集中とAI領域への偏りという特徴が見えてきます。
※デカコーン企業の定義や評価額は、調査機関や評価時点によって変動します。本記事では各社の直近の資金調達・株式取引に基づきJACが整理しています。
- 【国別】世界のデカコーン企業ランキング
- 【業種】世界のデカコーン企業ランキング
- 【企業別】世界のデカコーン企業ランキング
【国別】世界のデカコーン企業ランキング
デカコーン企業は、アメリカに大きく偏って分布しています。
| 国名 | 企業数 |
|---|---|
| アメリカ | 28社 |
| 中国 | 2社 |
| イギリス | 2社 |
| フランス | 1社 |
| オーストラリア | 1社 |
| シンガポール | 1社 |
| セーシェル | 1社 |
| フィンランド | 1社 |
| 日本 | 1社 |
※各社の資金調達・株式取引に関する公表情報・報道に基づく(2026年6月末時点JAC調査)
取引価格が確認できる範囲では、全体の7割超をアメリカが占めます。中国とイギリスが各2社で続き、残りをヨーロッパやアジアの各国が分け合います。集計の対象を過去の最高評価額まで広げると社数は増えますが、その場合もアメリカへの集中は変わりません。
アメリカに集中する背景には、リスクマネーの厚みがあります。ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの資金量は世界で群を抜き、未上場のまま巨額調達を重ねられる環境が整っています。世界中から起業家と研究者が集まる大学や、移民の層の厚さも評価額を押し上げてきました。
中国は、14億人規模の国内市場が成長の土台です。モバイル決済やECが社会の隅々まで浸透し、短期間で利用者を一気に広げられる点が大型化を後押ししてきました。
ヨーロッパ勢は社数こそ少ないものの、イギリスのフィンテックに代表されるように、特定の領域で世界的な存在感をもつ企業が育っています。
【業種】世界のデカコーン企業ランキング
デカコーン企業は、AI基盤とフィンテックに集まっています。
| 業種 | 企業数 |
|---|---|
| AI基盤・モデル開発 | 11社 |
| フィンテック・暗号資産 | 10社 |
| コンシューマー・その他 | 8社 |
| 防衛・自律システム | 4社 |
| データ・インフラ | 3社 |
| 業務・開発ソフトウェア | 2社 |
※各社の資金調達・株式取引に関する公表情報・報道に基づく(2026年6月末時点JAC調査)。
最も多いのはAI基盤・モデル開発の11社で、フィンテック・暗号資産の10社がこれに続きます。2つの領域で全体の半分を超え、生成AIと金融技術に資金が集中している状況が読み取れます。
AI基盤が最多となるのは、モデル開発に巨額の計算資源と高度な技術者を要し、その資金需要がそのまま評価額へ表れるためです。基盤モデルを手がける企業に加え、コーディング支援や検索、法務や医療に特化した企業も次々と加わっています。
フィンテック・暗号資産では、決済や送金の仕組みを刷新する企業が多くを占めます。既存の金融機関が手をつけにくい領域を取り込み、短期間で利用者を広げてきました。暗号資産取引所の評価額上昇も、この領域の数字を支えています。
一社あたりの評価額に目を向けると、業種ごとの性格の違いが見えてきます。コンシューマー領域は社数こそ中位ですが、動画とAIで世界規模の利用者を抱えるByteDanceが一社で数字を大きく押し上げており、少数の巨大企業が全体を左右する様子が読み取れます。
【企業別】世界のデカコーン企業ランキング
世界のデカコーン企業の上位3社は、Anthropic、OpenAI、ByteDanceです。評価額の上位は、AI関連企業が占めています。
| 企業名 | 評価額 | 評価額の時点 | 国 | 業種 |
|---|---|---|---|---|
| Anthropic | 9,650億ドル | 2026年 | アメリカ | AI基盤・モデル開発 |
| OpenAI | 8,520億ドル | 2026年 | アメリカ | AI基盤・モデル開発 |
| ByteDance | 5,500億ドル | 2026年 | 中国 | コンシューマー・その他 |
| Stripe | 1,590億ドル | 2026年 | アメリカ | フィンテック・暗号資産 |
| Databricks | 1,340億ドル | 2026年 | アメリカ | データ・インフラ |
| Revolut | 750億ドル | 2025年 | イギリス | フィンテック・暗号資産 |
| SHEIN | 660億ドル | 2023年 | シンガポール | コンシューマー・その他 |
| Anduril | 610億ドル | 2026年 | アメリカ | 防衛・自律システム |
| Canva | 420億ドル | 2025年 | オーストラリア | 業務・開発ソフトウェア |
| Ripple | 400億ドル | 2025年 | アメリカ | フィンテック・暗号資産 |
| Figure | 390億ドル | 2025年 | アメリカ | 防衛・自律システム |
| Safe Superintelligence | 320億ドル | 2025年 | アメリカ | AI基盤・モデル開発 |
| Ramp | 320億ドル | 2025年 | アメリカ | フィンテック・暗号資産 |
| VAST Data | 300億ドル | 2026年 | アメリカ | データ・インフラ |
| Anysphere | 293億ドル | 2025年 | アメリカ | 業務・開発ソフトウェア |
| Scale AI | 290億ドル | 2025年 | アメリカ | データ・インフラ |
| Cognition | 260億ドル | 2026年 | アメリカ | AI基盤・モデル開発 |
| OKX | 250億ドル | 2026年 | セーシェル | フィンテック・暗号資産 |
| Epic Games | 225億ドル | 2024年 | アメリカ | コンシューマー・その他 |
※各社の資金調達・株式取引に関する公表情報・報道に基づく(2026年6月末時点JAC調査)
首位のAnthropicは、対話型AIのClaudeを手がけるアメリカの企業です。2026年の資金調達で評価額を大きく伸ばし、2位以下を引き離しました。2位のOpenAIはChatGPTを開発する同じアメリカのAI企業で、両社が世界の評価額上位を占めています。
上位にはAI関連が目立ちます。安全性を重視した基盤モデルを掲げるSafe Superintelligenceや、コーディング支援のAnysphere、Cognitionなど、2024年以降に評価額を確認できた新顔も少なくありません。生成AIへ資金が集まる速さが、この顔ぶれに表れています。
3位のByteDanceはTikTokを運営する中国企業で、動画とAIを軸に世界規模の利用者を抱えます。金融領域では決済基盤のStripeや暗号資産取引のOKXが上位に並び、事業の広がりを映しています。
日本のデカコーン企業の現状
日本のデカコーン企業は、2025年に登場したGVEの1社にとどまります。世界で数十社を数えるなかで、日本から100億ドルの水準に届いた企業は長く現れませんでした。第1号となったGVEの実像、デカコーンが育ちにくい背景、そして国を挙げた育成策の3点から、日本の現在地を整理します。
- 2025年に日本初のデカコーン企業「GVE」社が誕生
- 日本のデカコーン企業が少ない理由
- 日本のユニコーン・デカコーン企業創出の取り組み
2025年に日本初のデカコーン企業「GVE」社が誕生
各種報道や資金調達時の評価額を基準にすると、日本初のデカコーン企業と位置付けられるのがGVE株式会社です。
GVEは、法定通貨をデジタル化するCBDC(中央銀行デジタル通貨)の基盤を開発するフィンテック企業です。非接触ICカードやモバイル決済のOSを開発した日下部進と、投資銀行での経歴をもつ房広治が2017年に共同で設立しました。
デカコーン入りは2025年初頭です。1月末に完了した増資で1株70万円の価格がつき、企業価値はおよそ1兆6,385億円と、デカコーンの基準である100億ドルを上回り、日本で初めてこの水準に届いた企業となりました。
同社のセキュリティー設計は日本・アメリカ・シンガポールで特許を取得しています。公式サイトでは、世界の決済市場のデジタル化を事業の柱として掲げ、2024年9月にはパスポートで予防接種歴を確認できるシステム「VICSA」の提案がWHO(世界保健機関)のデジタルクリアリングハウスに採用されたと発表しました。
日本のデカコーン企業が少ない理由
日本にユニコーンが8社ある一方でデカコーンがほとんど生まれないのは、後期の資金とエグジットの構造に理由があります。
第一に、レイトステージの資金が薄い点です。国内のベンチャーキャピタルは数百億円規模の調達までは支えられても、評価額を100億ドルへ押し上げる数千億円規模の出資には及びにくいのが実情です。海外の大型ファンドの参加も限られ、未上場のまま大きく育てる資金が集まりにくくなっています。
第二に、早い段階で上場する慣行があります。日本では早期上場を選択する企業が比較的多く、評価額が10億ドルに届く前後で株式公開へ進む企業が少なくありません。上場すればユニコーンやデカコーンの定義からは外れるため、未上場で評価額を伸ばし続ける企業が育ちにくくなります。
加えて、事業が国内市場にとどまりやすい点も大型化を妨げます。評価額を一気に高めるには世界市場での拡大が欠かせませんが、ここで足踏みする企業が目立ちます。
日本のユニコーン・デカコーン企業創出の取り組み
国はスタートアップ育成5か年計画を掲げ、ユニコーン100社の創出を目標に支援を進めています。
この計画は、新しい資本主義の中核として2022年11月にまとまりました。スタートアップへの投資額を2027年度に10兆円規模へ引き上げ、ユニコーン100社とスタートアップ10万社を生み出すという、大きな数値目標を据えています。
柱は3つです。人材・ネットワークの構築、資金供給の強化と出口戦略の多様化、そしてオープンイノベーションの推進を一体で進めます。具体策としては、有望企業を集中的に支える経済産業省のJ-Startup、税の優遇を広げたストックオプション税制の見直し、新興企業が国の案件を受注しやすくする公共調達の拡大などが動いています。
もっとも、足元のユニコーンは8社にとどまり、100社という目標とは開きがあります。数値の達成そのものより、未上場で大きく育つ企業をどう増やすかが、これからの焦点になります。
スタートアップへの転職なら、JAC Recruitment
スタートアップは成長段階や資金調達の状況によって、求められる役割やスキルが大きく変わります。デカコーンへ育つ企業が生まれる一方で、組織づくりの途上にある企業も多く、転職先としての見極めが欠かせません。
急成長の環境では、ストックオプションや評価制度、組織文化への理解が転職後の満足度を左右します。こうした情報は社外から見えにくいため、各社の実情に通じた転職エージェントの支援が転職の成否を分けます。
JACには、スタートアップの採用ニーズやポジション要件に精通したコンサルタントが在籍しています。転職希望者一人ひとりのキャリアや志向を丁寧にうかがい、これまでの経験や強みを的確に評価したうえで、最適なキャリアを提案します。
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