ベンチャーから大手への転職は難しい?フェーズや年代ごとの転職戦略

ベンチャーから大手企業への転職は「可能」ですが、評価軸の違いにより難易度が高まる傾向があります。

本記事では、ベンチャーから大手企業への転職が難しいと言われている理由や、フェーズ別・年代別の転職戦略などをJAC Recruitment(以下、JAC)が詳しく解説します。

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ベンチャーから大手企業への転職が難しいと言われている理由

ベンチャーから大手企業への転職は可能ですが、企業規模や組織構造の違いにより、評価のされ方が大きく変わる点には注意が必要です。
募集ポジションの設計、意思決定プロセス、ステークホルダーの広がりといった要素によって、ベンチャー出身者が想定していなかった評価軸が適用されることもあります。
本章では、こうした仕事の進め方や企業文化の違いを3つの観点から整理し、転職市場での評価ギャップを踏まえた準備の考え方を整理します。

  • 募集ポジションが限定的で高い専門性と即戦力性が求められるため
  • 意思決定プロセスや組織ガバナンスへの適応力が懸念されやすいため
  • ステークホルダーの複雑さ・規模感に大きなギャップがあるため

募集ポジションが限定的で高い専門性と即戦力性が求められるため

大手企業の中途採用は、特定領域のスペシャリストや即戦力となる方に絞って募集される傾向が強く、ベンチャー出身者の幅広い経験がそのまま評価されにくい構造にあります。

大手企業は新卒採用と社内育成を軸に人員計画を組み立てます。中途採用は欠員補充や新規事業向けの専門ポジションなど、役割を限定した公募が中心です。応募要件もポジションごとに細かく規定されるため、初期選考の段階から専門性が問われる点は見落とせません。

一方でベンチャーはひとりが複数業務を兼務し、職種の境界を越えて動くケースが一般的です。経営に近い距離で事業全般を見てきた経験は貴重な資産といえます。ただし大手企業が求める「特定領域で深い成果を出せる方」という基準に照らすと、経歴の読まれ方は変わってきます。

対策として、自身の経験を大手企業の職務区分に落とし込み、どの業務でどの成果を出したかを数字や事例で示す準備が有効です。幅広さを土台にしつつ、応募ポジションで生かせる専門領域を一本に絞って打ち出せば、選考通過の確度は高まります。

意思決定プロセスや組織ガバナンスへの適応力が懸念されやすいため

大手企業は多段階の合意形成と厳格なガバナンスのもとで意思決定を行うため、スピード重視で成果を出してきた方ほど、こうしたプロセスに適応できるかを懸念されやすい傾向があります。

ベンチャーでは意思決定のスピードが重視され、少人数で迅速に実行まで進むケースが一般的です。一方、大手企業では関係部門との調整や承認プロセスを経て意思決定が行われます。

さらに、ガバナンスの観点でも違いがあります。大手企業ではコンプライアンスや内部統制、リスク管理の枠組みが整備されており、ルールに則って業務を進める姿勢が評価の前提となります。ベンチャーで培ったスピード感や柔軟性は強みですが、承認プロセスを軽視しかねない印象を与えると採用側は慎重になります。

面接では過去に組織横断で合意形成を進めた経験や、ルールの範囲内で成果を出した事例を具体的に伝えるとよいでしょう。自走力と組織適応力を両立できる姿勢を示せれば、懸念は払拭しやすくなります。

ステークホルダーの複雑さ・規模感に大きなギャップがあるため

大手企業は社内外の関係者の層が厚く、扱う数値や事業規模もベンチャーと規模が大きくなるため、関係構築と調整スキルの両面で求められる水準が大きく上がります。

ベンチャーのステークホルダーは経営陣や限られた取引先、投資家などで構成される比較的シンプルな形です。意思疎通も当事者同士で直接行える場面が多く、話が早く進みます。一方で大手企業では社内の複数部門に加え、長年付き合いのある主要取引先や監督官庁、機関投資家まで関係先が広がります。

規模感の違いも無視できません。
扱う予算や影響範囲が大きくなり、意思決定に求められる検証の深さも増します。
関係者が多い分、合意形成にかかる時間も長くなり、粘り強く進める姿勢が必要です。

ベンチャーで身につけた機動力や当事者意識は、大手企業でも生きる強みです。
ただし入社後は、関係者の利害を読み解きながら影響範囲の広い意思決定に関わる場面が増えます。面接では複数部門や外部パートナーと連携した経験を具体的に語れるよう準備しておくと、ギャップを乗り越えられる方だと伝わります。

大手企業がベンチャー出身者に求めている強み

ベンチャー出身者には、新卒から大手に在籍する方や他業態からの中途採用者にはもたない固有の強みがあります。

変化の速い市場への適応力や、組織の枠にとらわれない動き方、限られた経営資源で事業を立ち上げた経験は、安定基盤のある大手企業ほど内部で育成しにくい資質です。

ここでは、大手企業がベンチャー出身者に特に期待している4つの強みを取り上げ、それぞれが評価される背景や生かされる場面を紹介します。

  • 不確実性の高い市場環境におけるスピーディな意思決定と実行力
  • 既存の職務領域や部署の壁を越えて課題を解決する当事者意識
  • 最新のテクノロジーやトレンドを事業に実装する高いビジネス感度
  • 限られた経営資源の中でゼロから事業をスケールさせた実績

不確実性の高い市場環境におけるスピーディな意思決定と実行力

不確実な状況下で素早く判断し実行に移す力は、ベンチャー出身者が大手企業で評価される代表的な強みです。

大手企業は事業基盤の安定性を強みにする一方、市場変化への対応スピードに課題を抱えるケースが少なくありません。
DXや海外展開、新規事業といった既存の延長線上にない領域では、情報が出そろう前に判断を下す力が求められます。ベンチャーでは限られた情報と時間のなかで日々意思決定を重ねる経験を積むため、この環境適応力がそのまま評価の対象となります。

仮説を立てて動き、結果を見て修正するサイクルを高速で回してきた経験も強みの一つです。大手企業の新規事業部門や経営企画ではアジャイル型の進め方を取り入れたいニーズが高まっており、ベンチャー出身者の行動様式は重宝される傾向にあります。

面接では、不確実な状況で下した判断と結果、その後の軌道修正までを一連のストーリーとして語れるよう準備しておくと評価に結びつきやすくなります。

既存の職務領域や部署の壁を越えて課題を解決する当事者意識

担当領域の枠組みにとらわれず組織横断で課題に向き合う当事者意識は、縦割り構造を抱える大手企業ほど希少性の高い資質です。

ベンチャーでは職務分掌が細かく決まっておらず、必要に応じて職種の境界を越えて動くことが前提となります。営業担当がプロダクト改善に意見を出したり、エンジニアが顧客対応に関わったりする光景は日常的です。環境のなかで培われる自分ごと化の姿勢は、指示を待つのではなく自走して成果を出す動き方へと直接つながります。

大手企業では部門間の調整に時間がかかり、部署の壁が課題解決の遅れを生むケースがあります。新規事業や全社プロジェクトでは、部門の枠を越えて関係者を巻き込みながら前に進める方が重宝される傾向にあり、ベンチャー出身者の動き方はこのニーズに合致しています。

最新のテクノロジーやトレンドを事業に実装する高いビジネス感度

最新技術や市場トレンドをいち早く捉え事業に落とし込むビジネス感度は、ベンチャー出身者が大手企業から求められる要素の一つです。

ベンチャー企業は既存の枠組みでは戦えないため、新しいテクノロジーや消費者行動の変化を取り込むことで差別化を図ります。生成AIやSaaS、D2Cといった領域では、情報収集から実装までのサイクルを自社の競争力につなげる動きが日常化しています。環境のなかで鍛えられた方は、トレンドを知っている段階で止まらず自社の事業にどう取り込むかを考える思考習慣が身についているといえます。

大手企業では既存事業の規模が大きいぶん、新しい技術の導入に慎重な判断が働きがちです。社内にトレンドを咀嚼して事業提案まで落とし込める方が少ないケースも目立ち、ベンチャー出身者はその橋渡し役として期待を集めます。DX推進部門や新規事業開発、マーケティング部門といった領域で中核を担う候補として声がかかる場面も増えています。

限られた経営資源の中でゼロから事業をスケールさせた実績

少ないリソースで事業を立ち上げ成長軌道に乗せた実績は、大手企業の新規事業部門で最も求められる経験の一つです。

ベンチャーは創業期から成長期にかけて、少数精鋭で事業を拡大する局面を繰り返し経験します。顧客開拓や資金調達、組織設計、オペレーション構築までを限られた人数で同時並行に進めるため、事業全体を俯瞰しながら優先順位を判断する力が鍛えられます。この総合力は、特定領域の専門性のみでは得にくい希少な資質です。

大手企業では近年、既存事業の成熟や市場変化を背景に新規事業創出への投資が広がっています。
一方で社内で育ってきた方は潤沢なリソースを前提とした意思決定の癖がつきやすく、立ち上げ期特有の制約下での判断に慣れていないケースも見られます。ベンチャーで資金が尽きる前に成果を出す経験を積んできた方は、まさにこうした場面で頼りにされる存在といえます。

社内ベンチャー制度やCVC、M&A後のPMIなど、大手企業が新しい成長エンジンを育てる取り組みは年々増えています。ゼロから形にした実績は職務経歴書のなかで数字や事業規模と合わせて示すと、説得力が高まります。


【フェーズ別】ベンチャーから大手企業への転職戦略

ベンチャー出身といっても企業のフェーズによって積める経験は大きく異なり、大手企業が評価する切り口も変わってきます。

シード・アーリー期のスタートアップで得られるゼロイチの経験と、組織拡大期のミドルベンチャーで培う仕組みづくりの力、さらにメガベンチャーで磨く大規模組織を動かす経験は、それぞれ強みの方向性が違います。自身の現在地を正しく把握し、どの経験を軸に大手のどのポジションを狙うのか逆算して戦略を組み立てることが、選考通過の鍵を握ります。

  • スタートアップから大手へ転職する場合の戦略
  • ミドルベンチャーから大手へ転職する場合の戦略
  • メガベンチャーから大手へ転職する場合の戦略

スタートアップから大手へ転職する場合の戦略

シード・アーリー期のスタートアップで培ったゼロイチの立ち上げ経験は、大手企業の新規事業開発や社内ベンチャー領域で最も価値を発揮します。

少人数のチームでプロダクトをつくり、顧客を開拓し、仮説検証を高速で回してきた経験は、既存事業の延長線上にはない動き方です。プロダクトマネジメントから営業、資金繰りの補助まで幅広く担ってきた方は、事業全体を俯瞰する視座と当事者意識を兼ね備えています。PMF(プロダクトマーケットフィット)を追いかけた経験は、大手の社内でも得にくい希少な資質です。

狙うべきポジションは、大手企業の新規事業部門やCVC、DX推進室、社内起業プログラムの推進担当などが中心となります。近年は大手でも既存事業の成熟を背景に新規事業への投資が広がっており、不確実な環境で事業を形にした経験がある方は重宝されやすい状況です。

アピールの際は、売上規模の小ささを気にする必要はありません。検証した仮説の数、獲得した初期顧客の反応、事業化に至った判断の過程といった定性・定量の両面で語れる準備をしておくと、規模の大小ではなく思考の質を評価してもらえます。大手企業で既存事業の改善に閉じ込められないポジション選びも、転職後のキャリア形成で重要です。

ミドルベンチャーから大手へ転職する場合の戦略

ミドル期のベンチャーで組織拡大や仕組み化を主導してきた経験は、大手企業の事業企画や事業部マネジメント、組織開発の領域で生かせます。

20人から100人規模へと組織が広がる局面では、経営陣のビジョンを部門に落とし込むミドルマネジメントの役割が重みを増します。採用計画の策定や評価制度の整備、権限委譲の仕組みづくりに取り組んできた方は、組織を動かすための実務知と修羅場経験を併せもつ存在です。単月黒字化から安定収益へと事業を伸ばす過程で、PLマネジメントや投資判断の感覚も身についています。

大手企業が求める場面は、新規事業を軌道に乗せるフェーズや、既存事業の構造改革、DX推進プロジェクトのリードなどです。スピードと規律のバランスをとりながらチームを率いた経験は、縦割り組織のなかで変革を進めたい部門にとって心強い戦力となります。

面接では、マネジメントした人数や売上規模、組織課題をどう解決したかを具体的な数字と打ち手で語れるよう整理しておくと効果的です。大手特有のガバナンスや合意形成プロセスを理解している姿勢を示せると、適応面の懸念も和らぎます。

メガベンチャーから大手へ転職する場合の戦略

メガベンチャーで培った大規模組織の運営経験と高度な専門性は、大手企業の経営企画や事業責任者ポジションで直接的に評価される強みです。

上場後のメガベンチャーは数百人から数千人規模の組織を抱え、複数事業の運営やM&A、グローバル展開など経営の難易度が一段上がる局面を日常的に経験します。事業ポートフォリオのなかで自部門の位置づけを考えながら数字をつくり、経営陣と対話しながら意思決定を下してきた方は、大手企業の管理職層と同水準の視座をすでに備えているといえます。

特徴的なのはスピード感と組織運営の規律を両立させている点です。大手企業が変革局面で最も欲しいのはまさにこの両立ができる方であり、DX推進責任者や新規事業本部長、事業会社の経営企画部長といったレイヤーで声がかかるケースが増えています。職務経歴書の段階から役員クラスとの接点を前提に見られる場面も少なくありません。

戦略としては自身が主導した領域を絞り込んで深く語る姿勢が有効です。どの事業でどの数字をつくり、何人の組織をどう動かしたか。その過程でどんな意思決定を下したかを再現性のある形で整理しておくと、大手の経営層にも納得感をもって受け止められます。キャリアの選択肢としては幹部候補採用や特定領域の責任者ポジションを中心に検討すると、経験とポジションの整合性を取りやすくなります。


【年代・キャリア別】ベンチャーから大手企業への転職戦略

ベンチャー出身者が大手企業への転職を目指す場合、年代やキャリアの成熟度によって求められる役割水準は大きく変わります。

20代後半では将来の中核候補としての伸びしろと専門性、30代では事業や組織を担う中堅戦力としての再現性、40代以上では、経営視点に加えて「組織変革をどう実行したか」という再現性がより重視されやすくなります。

自身の年代に応じて、ベンチャーで積んだどの経験をどう翻訳して伝えるかが、選考通過の決め手となります。

  • 20代後半は特定領域の専門性とプロジェクトリードの経験を提示
  • 30代はマネジメント実績や事業拡大に貢献した再現性を証明
  • 40代以上のハイクラスは経営視点と組織変革の牽引力を強調

20代後半は特定領域の専門性とプロジェクトリードの経験を提示

20代後半の方に大手企業が期待するのは、特定領域で確かな専門性をもちながら将来の中核候補として成長できる若手像です。

この年代はポテンシャル評価と即戦力評価が重なり合う境目の時期にあり、大手企業側も「伸びしろ」と「現時点の実力」の双方を見極めようとします。ベンチャー出身者の場合、同年代の大手社員よりも早い段階で裁量の大きい仕事を任されてきたケースが多く、この点が差別化の軸になります。

アピールすべきは、幅広さではなく深さです。営業・マーケティング・プロダクト開発など自分が腰を据えた領域を一つ定め、その分野でどんな課題をどう解決してきたかを具体的に語る準備を進めるとよいでしょう。さらに小規模であってもプロジェクトをリードし、複数メンバーを巻き込みながら成果を出した経験があれば、将来のマネジメント適性を示す材料になります。

狙うべきポジションは、大手企業の中核部門における専門職や、新規事業の若手推進担当、DX関連のプロジェクトメンバーなどです。職務経歴書では担当領域と成果を数字で示し、そこに至るまでの思考過程も添えて書くと、同年代の転職希望者との差が伝わりやすくなります。

30代はマネジメント実績や事業拡大に貢献した再現性を証明

30代のベンチャー出身者が大手企業で評価されるポイントは、マネジメント実績と事業拡大への貢献を再現性のある形で語れるかどうかにあります。

この年代に大手企業が期待する役割水準は、部門内の中核として数字に責任をもち、後輩の育成や組織運営にも関わる中堅戦力です。ベンチャーでは同年代の大手社員よりも早いタイミングでマネージャーや事業責任者を任される傾向が強く、この経験差は大きなアドバンテージとなります。ただし、役職名だけを並べても評価にはつながりません。

重要なのは、どんな課題に対してどう意思決定し、どんな成果を出したかを定量・定性の両面で示す準備です。マネジメントした人数、動かした予算規模、売り上げや利益への貢献度、組織の課題をどう構造化して打ち手を選んだかまで掘り下げて語れると、再現性の高い方だと受け止められます。

狙えるポジションは幅広く、大手事業会社の事業企画や新規事業責任者、マーケティング責任者、DX推進のプロジェクトマネージャーなどが中心です。既存事業の深い知識では新卒生え抜き組に勝ちにくいため、変革や立ち上げに近い領域を選ぶ戦略が有効です。

面接では「ベンチャーの小規模な成功」を「大手の規模でも通用する打ち手」へと翻訳して語る意識を忘れないでください。規模感の違いを理解したうえで自分の経験を位置づけられる方は、採用担当者に安心感を与えられます。

40代以上のハイクラスは経営視点と組織変革の牽引力を強調

40代以上のベンチャー出身者が大手企業に移る局面で問われるのは、経営視点で課題を捉え、組織全体を変革に導く力量です。

この年代に大手企業が求めるのは、部長職や事業本部長、経営幹部候補といったレイヤーで組織を動かせる存在です。ベンチャーで経営陣として意思決定を担ってきた方、事業責任者として数十億円規模の事業を率いてきた方は、大手の管理職層と同水準かそれ以上の視座をすでに備えていることが多く、この点を前面に出す戦略が有効です。

訴求軸は3つに絞られます。経営陣と並走して下した重要な意思決定、組織変革や制度設計を主導した実績、そして複数部門にまたがる課題に対して処方箋を示した経験です。これらを具体的な数字と打ち手とともに語れると、大手企業が抱える停滞感への突破口として期待される候補になります。

ハイクラスの転職では、公開求人よりも非公開のポジションで動く案件が中心です。JACでは、ハイクラス求人を中心に、非公開求人も多数取り扱っています。本記事で紹介している求人は、JACがお預かりしている求人の一部です。経営レイヤーのポジションを視野に入れる方は、職務経歴書を自身のキャリアサマリーではなく「大手企業の経営課題への処方箋」として書き上げる姿勢が、選考の印象を大きく左右します。

ベンチャーから大手企業への転職で意識しておきたいポイント

ベンチャーから大手企業への転職を成功させ、入社後に後悔なく活躍するためには、両者の働き方の違いを正しく理解したうえで心構えを整えておくことが欠かせません。

裁量や意思決定のスピード、組織文化の違いに戸惑い、入社後にミスマッチを感じるケースは決して少なくありません。事前に押さえておきたい4つの観点を整理し、自身が大手企業の環境に適応できるかを冷静に見極める材料としていただきたいと考えます。

  • 個人の裁量権の縮小や業務領域の細分化を許容できるか
  • 既存のルールや根回しなどの社内調整をポジティブに捉えられるか
  • 入社後のオンボーディングで自ら周囲の信頼を獲得できるか
  • 自身のベンチャーでの成功体験をアンラーニングできるか

個人の裁量権の縮小や業務領域の細分化を許容できるか

大手企業では役割が明確に区分されているため、ベンチャー時代の幅広い裁量と比べて担当業務が限定される現実をどう受け止めるかが重要になります。

ベンチャーでは事業全体を俯瞰しながら、職種の境界を越えて手を動かす働き方が日常です。営業がプロダクト改善に意見を出し、企画担当が部門のオペレーションまで踏み込むことは珍しくありません。一方で大手企業は組織が機能別に分かれており、職務分掌に沿って動くことが前提となります。この違いを軽く見ると、入社後に「裁量が小さい」「決裁権がなく動きにくい」と感じやすくなります。

転職前に押さえておきたいのは、限られた領域で深く成果を出すことへの面白さを見いだせるかという点です。専門性を磨きながら影響範囲を広げていく長期視点をもてれば、大手の環境でも力を発揮しやすくなります。逆に「全部見たい・全部やりたい」志向が強いまま転職すると、ストレスを抱えやすくなります。

ポジション選びの段階で、新規事業部門や立ち上げフェーズの組織など、比較的裁量を発揮しやすい環境を選ぶ視点も持っておくとよいでしょう。

既存のルールや根回しなどの社内調整をポジティブに捉えられるか

大手企業では稟議や合意形成のプロセスが業務の中核を占めるため、こうした調整を前向きに捉えられるかが活躍の分かれ目となります。

ベンチャーは経営陣との距離が近く、議論から実行までを数日で完結させる動き方が当たり前です。一方の大手企業では、関連部署のキーパーソンと事前に話を通し、稟議書を整え、複数階層の承認を得て初めて意思決定が前に進みます。プロセスを「無駄な手間」と捉えてしまうと、入社後に強いストレスを感じる原因となります。

意識を切り替えるうえで有効なのは、社内調整をリスク管理と組織の総意形成を担う仕組みとして理解する姿勢です。大手企業は影響範囲の大きい意思決定を行う以上、複数の視点で検証する仕組みが組み込まれています。プロセスを乗りこなせる方は、自部門だけでなく全社視点で動ける幹部候補として評価されやすくなります。

入社直後から既存のやり方を否定するのではなく、まずはルールの背景を理解し、そのうえで改善提案を重ねていく姿勢が信頼獲得につながります。

入社後のオンボーディングで自ら周囲の信頼を獲得できるか

大手企業では新卒生え抜き組が中核を担う組織が多く、中途入社者は自ら積極的に動いて信頼関係を築く姿勢が欠かせません。

ベンチャーは少人数で日常的に密なコミュニケーションが交わされるため、関係構築は自然に進みます。一方で大手企業は組織が大きく、部門を越えたつながりを得るには意識的な行動が必要です。受け身で待っていると業務上の情報が回ってこず、孤立した状態で成果を出しづらくなる懸念があります。

入社直後の3か月から半年は、過度に成果を急がず、組織の人間関係や業務プロセスを学ぶ時期と割り切る心構えが有効です。配属部署の上司や同僚との対話に時間を投じ、関連部門のキーパーソンにも自らあいさつに足を運ぶ姿勢が信頼の土台をつくります。社内勉強会や非公式の場にも積極的に顔を出すと、長期的に動きやすい人脈が育ちます。

ベンチャーで培ったスピード感は大きな強みですが、組織を理解する時間を惜しまない姿勢と両立させることが、活躍への近道となります。

自身のベンチャーでの成功体験をアンラーニングできるか

ベンチャー時代の成功体験を一度棚卸しし、大手企業の文脈に合わせて学び直す姿勢が、転職後の活躍を大きく左右します。

ベンチャーで成果を出してきた方ほど、自分のやり方への自信が強く、新しい環境でも同じ流儀を持ち込みがちです。ところが大手企業ではステークホルダーの多さや事業規模の違いから、ベンチャーで通用したスピード重視のアプローチがそのまま機能しないケースが目立ちます。「なぜ前職ではうまくいったのに」という違和感を引きずると、周囲との摩擦が生まれやすくなります。

意識すべきは、過去の成功要因を抽象化して再解釈する作業です。何が本質的な成功要因で、どこが当時の環境固有の条件だったかを切り分けると、大手企業の環境に翻訳しやすくなります。ベンチャーでの当事者意識や仮説検証の姿勢といった汎用性の高いスキルは、文脈を変えれば大手でも十分に通用します。

「教わる」ことへの心理的抵抗を手放し、新しい組織の作法を素直に吸収する姿勢が、結果として早期の信頼獲得と昇進へとつながっていきます。

ベンチャーから大手企業への転職事例

ここでは、JACが提供する転職支援サービスを利用して、ベンチャー企業から大手企業への転職を成功させた事例を紹介します。

品質保証×改善実行力で評価され、医療系ベンチャーから大手化学メーカーへ

Sさん(30代後半/男性)

業種職種年収
転職前医療系ベンチャー企業品質管理・品質保証(技術系)400万円
転職後大手化学メーカー品質管理・品質保証(技術系)800万円

大学卒業後、化粧品や医薬部外品、健康食品などの原料を手がける医療系ベンチャー企業で、製造管理や品質管理、新工場の立ち上げから部下の育成まで幅広く担ってきたSさん。工程の改善や課題抽出に面白みを感じる一方で、単純作業中心の業務が続く環境と自身の志向にギャップを覚え、TOEIC約900点の語学力を生かせる環境も視野に転職活動を始めました。

JACのコンサルタントは、ベンチャーで鍛えた部門改善の実行力とGMPに関わる品質管理の知見、さらに高い語学力を合わせて評価し、医薬品原薬の品質保証を担う大手化学メーカーの求人を提案しました。次世代リーダー候補としての採用枠で、Sさんが望むキャリアアップの方向性と企業側の期待が合致する案件です。

転職後は品質保証担当として国内外当局への申請業務や査察対応、顧客監査への対応に携わり、年収は400万円から800万円へと倍増しました。ベンチャーで培った改善志向と語学力が大手の品質保証体制のなかで生きた好例といえます。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。

唯一のマーケ担当”経験を再現性で示しリーガルテックから大手金融機関へ

Dさん(20代後半/男性)

業種職種年収
転職前リーガルテックマーケティング600万円
転職後大手金融機関マーケティング750万円

会計ソフトを提供する事業会社でマーケティングのプロモーション責任者として経験を積み、その後リーガルテックのベンチャー企業で唯一のマーケティング担当として戦略立案から施策実行まで一手に担ってきたDさん。Web広告の運用やマーケティングオートメーションの構築、セミナー企画までBtoBマーケティングの幅広い領域を経験しました。

個人の裁量で動ける環境にやりがいを感じつつも、多様なステークホルダーを巻き込んで組織を動かす経験へと視座を広げたい。そんな思いから転職活動を始められました。

JACのコンサルタントは、ベンチャーで培ったBtoBマーケティングの実行力と、前職でCVC設立を自ら企画・立案して役員プレゼンまで進めた推進力を評価し、法人デジタル戦略部を新設した大手金融機関のマーケティングポジションを提案しました。

転職後のDさんは、年収が600万円から750万円に上がり、法人向けデジタルマーケティングの戦略立案から運営までを担いながら、メガバンクという複雑な組織のなかで営業モデル変革に向き合っています。ベンチャーで鍛えた自走力を、組織を動かす力へと拡張しつつある事例です。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。

再エネ事業の営業・PM経験を生かし再エネベンチャーから大手製造メーカーの事業企画担当へ

Eさん(30代前半/男性)

業種職種年収
転職前再エネベンチャー企業法人営業450万円
転職後大手製造メーカー事業企画650万円

再エネベンチャー企業で太陽光発電所の営業に従事してきたEさん。大手電力会社への提案で高圧案件や、高額な受注実績を積み上げたほか、発電所建設のプロジェクトマネジメントや海外案件の入札対応も経験しました。その後は系統用蓄電池の開発サポートや用地調達まで担当領域を広げ、再エネ事業の上流から下流までを一気通貫で経験してきた方です。

事業者の立場で裁量をもちながら再生可能エネルギーの普及に貢献したい。そんな思いから、新規事業企画や事業開発の領域を視野に転職活動を始めました。TOEIC約830点のビジネスレベルの英語力も強みでした。

JACのコンサルタントは、営業とプロジェクトマネジメント双方の経験に加え、自治体や農家との折衝にも応用できる対外調整力を評価し、営農型太陽光発電を手がける大手製造メーカーの事業開発ポジションを提案しました。

転職後のEさんは年収が450万円から650万円に上がり、農地と再エネを両立させるプロジェクトで企画提案から契約締結までを担っています。ベンチャーで培った事業開発力が大手の新規事業のなかで生きた好例です。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。


ベンチャーから大手企業への転職なら、JAC Recruitment

ベンチャーから大手企業への転職は、企業規模や組織文化、意思決定プロセスの違いから特有の難しさをともないます。

培ってきた経験をそのまま伝えるだけでは強みが伝わりにくく、大手企業が評価する切り口に翻訳して打ち出す準備が欠かせません。ベンチャーで得たゼロイチの実行力や組織拡大の経験を、大手企業の新規事業開発や事業企画、経営企画といった文脈にどう接続するかが、選考通過の分かれ目となります。

JACには、大手企業の採用ニーズやポジション要件に精通したコンサルタントが在籍しています。ハイクラスを中心に、非公開求人も多数取り扱っており、経営層との直接のやり取りを通じてポジションの背景や求める人物像を深く把握しています。一人ひとりのキャリアと志向を丁寧に整理したうえで、ベンチャーで積んだ経験を生かせる最適なポジションを提案します。

ベンチャーから大手企業への転職をお考えの方は、ぜひJACにご相談ください。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

編集部

当サイトを運営する、JACの編集部です。日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

各業界・職種に精通したプロがあなたの転職を支援します。