出版業界への転職は難しい?|未経験でも転職を成功させるポイントとは

  1. 転職マーケット×サービス/物流/商社

公開日:2025/06/06 / 最終更新日: 2025/06/06

出版業界は新卒就職市場で依然として高い人気を誇る業界。そのため内定倍率が非常に高く、加えて離職率も低いため、採用枠が限られ中途採用、特に未経験者にとっては狭き門です。

とはいえ求人が皆無というわけではなく、かつ大きな変革期を迎えている出版業界にはチャンスが広がっているとも言えます。未経験者がそのチャンスを生かすには、業界構造や各社の課題を理解し、自身の強みを生かした具体的な提案を用意することが重要です。また、出版社に限らず、編集プロダクションやWebメディアなども視野に入れることで、転職の可能性は広がります。

本記事では、出版業界の現状と、未経験からでも転職を実現するための戦略を解説します。

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出版業界を取り巻く現状と課題


出版業界は、大きく分けると文芸書から漫画、専門書、雑誌などさまざまなジャンルの書籍を出版する総合出版社、漫画や文芸書などの特定の分野を出版する会社、経済や医学、建築などの専門分野に特化した出版社、児童書や学習参考書などの分野に特化した出版社などに区分できます。

現在、出版業界は構造的な転換期に直面しています。若年層を中心とした「活字離れ」が長年指摘されており、出版物の販売額は減少の一途をたどっています。公益社団法人全国出版協会のデータによれば、1996年に2兆6,564億円あった書籍・雑誌の販売金額は、2022年には1兆1,292億円と半減。特に雑誌市場は深刻で、販売額は1996年比で約3分の1にまで落ち込んでいます。

この背景には、スマートフォンやPCによる無料情報の普及、そしてフリマアプリなどによる中古市場の拡大があり、紙媒体の価値が相対的に低下していることが挙げられます。

一方で、出版業界には新たな成長の兆しも見え始めています。特に注目されているのが、電子書籍および電子コミック市場の拡大です。2022年には電子出版物の販売額が雑誌を上回るなど、デジタルシフトが加速しています。矢野経済研究所の調査によると、電子書籍市場は今後も年平均成長率5〜7%で拡大が見込まれており、特にIP(知的財産)を活用したメディアミックス戦略や、サブスクリプションモデルの導入が収益の柱となりつつあります。

出版業界は今、紙からデジタルへの転換を前提としたビジネスモデルの再構築が求められており、変革をリードできる方には大きなチャンスが広がっています。

出版業界のビジネスモデルの変化、2つの軸


前述のように出版社を取り巻く環境は厳しく、従来のビジネスモデルでは、時代の変化に取り残される恐れがあります。そこで、大手の出版社を中心にビジネスモデルを変化させ、新たな取り組みによって事業拡大を狙う動きが活発化しています。

紙からWebへ:IP活用とクロスメディア戦略
DXと流通改革:構造課題への対応と収益性の再構築

以下では、それぞれについて詳しく解説します。

紙からWebへ:IP活用とクロスメディア戦略

出版物の販売減少を背景に、出版社は紙媒体中心の収益構造から脱却し、IP(知的財産)を軸としたクロスメディア展開へと戦略を転換しています。漫画や小説を起点に、映像化・商品化・海外展開など多面的な収益化が進行中です。SNSによる口コミ拡散がヒットを生むケースも増え、出版社自らがWebメディアを運営する動きも活発化。こうした変化は、出版業界を目指す際に求められる視点やスキルセットの変化を示唆しています。

DXと流通改革:構造課題への対応と収益性の再構築

出版業界の利益構造には、委託販売制度と高い返本率(約40%)が大きく影響しています。売れ残りの返品が出版社の収益を圧迫しており、これを是正するためにAIを活用した需要予測や配本最適化が進められています。2023年の業界レポートでは、出版社と商社が連携し、デジタル基盤を活用した流通改革が進行中であることが報告されています 。

これにより、在庫リスクの低減と収益性の改善が期待されており、出版業界は構造的な変革のただ中にあります。


出版業界におけるキャリアの可能性は、従来の編集・営業といった枠を超えて、デジタル化・グローバル化・IP戦略といった新たな潮流の中で多様化しています。変革期にあるこの業界で「変化を牽引する立場」としての活躍が期待されているのは、以下のような人物像です。

DX・データ戦略プロ:出版業界の中核を担う変革推進者
IPビジネスとメディアミックス:コンテンツを育てるプロデューサー
グローバル展開と越境出版:国境を越える出版ビジネス

以下では、それぞれのキャリアイメージについて解説します。

出版業界でも、デジタル技術とデータ活用による業務・ビジネスモデルの変革が急務となっています。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2024」では、出版を含むサービス業においても、データサイエンティストやビジネスアーキテクトといったDX推進ニーズが高まっていることが示されています 

特に、電子書籍プラットフォームやサブスクリプション型サービスの運営には、UX設計・データ分析・パーソナライズ技術が不可欠であり、これらを担う方は出版業界の新たな収益源創出に直結します。

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出版物を起点としたIP(知的財産)展開は、アニメ・映画・ゲーム・グッズなど多角的な収益化が可能な分野です。2024年の業界動向では、電子コミック市場の拡大が特に顕著であり、IPの価値を最大化するためのライツマネジメントやメディア戦略の重要性が増しています 

この分野では、編集や企画の経験に加え、マーケティング・法務・海外展開の知見を持つ方が歓迎されており、出版業界の枠を超えたキャリア展開も可能です。

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日本のマンガやライトノベルは、アジア・欧米を中心に高い人気を誇り、翻訳出版やライセンスビジネスは成長分野です。英ロイター研究所の報告によれば、世界の出版社の8割がデジタル定期購読やメンバーシップモデルに注力しており、グローバル市場での競争力強化が進んでいます 

この分野では、語学力・異文化理解・国際契約の知識をもつ方が求められ、出版業界における「グローバルビジネス人材」としてのキャリアが広がっています。


通常の業種とは採用状況が大きく異なる出版社業界。転職を考える際には、出版社の現状を確認しておくことが必要です。

大手出版社は、新卒採用がほとんどです。しかしながら、新卒採用の場合にも採用人数は少なく、出版社への就職は狭き門となっています。出版社への就職の難しさは、出版社の離職率の低さにもつながっていると考えられ、離職者が少ないことから大手出版社が中途採用を募集するケースは少なくなっています。

出版社の求人情報を見ると、専門書の出版社での募集が多くなっており、職種を見ると、販促営業や広告企画営業、編集者などの募集が見られます。そのほか、Webマーケティング職や電子書籍やデジタルコンテンツに関連したITエンジニアの求人も増加傾向にあります。

未経験でも応募が可能な求人は少ないものの、営業職や電子コミック関連の職種には比較的未経験者でも応募可能な求人が多いようです。


出版社には主に以下のような職種があり、転職を希望する際には応募企業だけでなく、応募する職種についても研究を深めることが大切です。たとえ未経験でも、自分の今までのキャリアを生かせる職種を選択し、志願するのも一手です。

出版社における主な業務
企画・編集
営業
制作
管理部門
デジタル書籍、クロスメディア
デジタル書籍、クロスメディア

それぞれの職種について、解説します。

雑誌や書籍の企画、取材、編集、校正などを担当する職種です。書物を作成するすべての工程に関わるため、幅広い知識が求められます。現状では、編集職は経験者が優遇される傾向にあり、未経験からの応募は難しいケースがほとんどです。ただし、編集業務については大手の場合、編集プロダクションやフリーランスの編集者に発注するケースも少なくありません。

雑誌やWebメディアに掲載する企業を獲得する広告営業、自社の出版物の配置や宣伝を書店に依頼する書店営業などの職種があります。また、売上増を実現するための戦略を立案するマーケティングに携わる仕事もあります。営業職やマーケティング職は業界未経験の場合も比較的応募しやすくなっています。

原価計算から資材の購入、印刷・製本の発注、進行管理など、出版物を発行するまでの幅広い業務に関わる職種です。社外や社内との打ち合わせも多く、高いコミュニケーション能力が求められます。

人事、経理、総務、法務、著作権等の管理など、バックオフィス業務を担当する部門です。管理部門で出版社への転職を考える場合、ほとんどのケースにおいて実務経験が求められます。

デジタル書籍の企画やキャラクタービジネス、映像化などに関連する業務を担当する職種です。出版社の中には、Webに関する知識をもつ方が不足しているケースもあり、未経験からの転職を目指す場合には、Web関連の知識が役立つ可能性があります。

出版業界の平均年収


大手出版社と中小出版社では、事業規模が大きく異なるため、年収の開きも大きくなる傾向にあります。大手出版社の場合、年収は600万円から1,000万円程度が目安になるといわれています。特に編集職の場合は20代後半でも1,000万円を超えるケースも珍しくなく、高額な年収を期待できるでしょう。

一方、中小出版社の場合、大手に比べると年収相場は低下し、平均年収は600万円前後だとされています。しかしながら、専門書を扱う出版社の中には平均年収が1,000万円を超えるケースなどもあり、発行する出版物の発行部数や価格などによって売り上げも変わってくるため、年収にも差が生じると考えられます。


前述のように出版社にはさまざまな職種があります。職種によって求められるスキルは異なるものの、出版社を目指すうえでは次のようなポイントをアピールするとよいでしょう。

・出版物への深い関心と業界理解
言語化能力とコミュニケーションスキル
・デジタル知識と変化への適応力

以下では、それぞれについて解説します。

出版業界は、単なる「本好き」ではなく、読者ニーズを捉えた企画力と市場感覚が求められる領域です。特に編集職では、読者の潜在的な関心を形にする力が重視されており、「なぜ出版か」「なぜこの会社か」を論理的かつ情熱的に語れることが選考突破の鍵となります 。出版市場は紙から電子へと構造転換が進んでおり、業界の変化を理解した上での志望動機が説得力を持ちます。

出版社の業務は、著者、デザイナー、印刷会社、営業部門など多様な関係者との協働によって成り立っています。そのため、高いコミュニケーション能力と論理的な言語化力は不可欠です 。

特に編集や営業、ライツ管理などの職種では、交渉力や調整力が成果に直結するため、前職でのプロジェクト推進経験やチームマネジメントの実績を、自身の言葉で語れるよう準備しておくことが重要です。

出版業界では、Webメディアや電子書籍、SNSプロモーションなどデジタル領域の知見が急速に求められています。実際、2023年の出版市場における電子書籍の構成比は3割に迫っており 、紙媒体に加えてデジタルでの収益化戦略を理解していることは大きなアドバンテージです。Web運用経験やデジタルマーケティングの知識は、編集・営業・企画など幅広い職種で高く評価されます。


未経験から出版社への転職は決して簡単ではありません。しかしながら、次のようなポイントを押さえると転職の成功につながる確率を高められます。

大手出版社ではなく、中小規模の出版社を目指す
経験を生かせる職種に応募する
IT知識やスキルをアピールする
専門性を生かせる出版社への転職を目指す

以下では、それぞれについて解説します。

大手出版社は新卒採用で募集をかけるケースがほとんどです。従って、出版社への転職を考えているのであれば、大手ではなく、中小企業の出版社を目指す必要があるでしょう。

営業や経理、総務、人事など、出版業界以外での実務経験を生かせる場合、業界未経験でも応募できる求人は少なくありません。ほかの業務を希望している場合でも、入社後に部署異動を願い出ることも可能です。出版社への転職を実現するためには、経験を生かせる職種への応募をおすすめします。

多くの出版社では、デジタルコンテンツの充実を進めているため、ITスキルはアピールにつながります。WebサイトやWebコンテンツの制作経験だけでなく、Webマーケティングの知識やデジタル広告などに関わった経験も役立つでしょう。IT関連の知識やスキルは積極的にアピールすべきです。

総合出版社ではなく、専門書を発行する出版社の場合、出版業界の経験がなくても、専門性が優遇される傾向にあります。医療系、金融系、教育系など、学生時代の専門分野や前職での実務経験が生かせる分野の書籍を扱う出版社を目指すと転職の成功率を高められるでしょう。


未経験者が転職可能な出版社の求人は決して多くはありません。そのため、出版に関連する業務への転職を検討している場合には、出版社だけに限らず、出版に関連するほかの業種の求人も検討するとよいでしょう。関連業界での経験が実務経験となり、将来、出版社への転職を叶える可能性もあります。以下では具体的な選択肢について解説します。

【出版社以外の選択肢】
編集プロダクションなどで経験を積む
WebメディアやWebライターなど関連する業務で経験を積む
漫画アプリなどで編集経験を積む

以下では、それぞれについて解説します。

未経験から編集に関わる職への転職は難しいのが現実です。しかし、出版社の中には編集プロダクションへ編集業務を依頼しているケースがあります。出版社に比べると編集プロダクションへの転職はハードルが下がるため、編集職を目指すのであれば、編集プロダクションで経験を積み、次のステップとして出版社を目指す方法も検討した方がよいでしょう。

出版社に限らず、さまざまな業種の企業が自社のWebメディアを保有しています。他業界であっても、Webメディアの編集やライターなどの経験は、出版社への転職時に役立つでしょう。専門性を生かせる業界で、WebメディアやWebライターなどの職種があれば、出版社への転職の最初のステップとして応募を検討してみることをおすすめします。

電子書籍の中でも、スマホで読める漫画アプリの人気が高まっています。出版社で漫画に関わる仕事を希望する場合は、漫画アプリの編集や企画も視野に入れると選択肢が広がります。

出版業界の最新求人情報


JACでは、出版社だけでなく、出版に関連する求人を取り扱っています。出版に関連する一部の求人をご紹介します。出版社への転職を検討される際にはぜひ参考にしてください。

※求人の募集が終了している場合もございます。ご了承ください。(2025年5月最新)

【まとめ】出版業界への転職を成功させるために準備すべきこと


出版業界への転職は、決して容易な道ではありません。しかし、これまで培ってきた経験や視座を活かせば、未経験であっても十分に活躍のチャンスはあります。求められるのは、業界特有の価値観を理解し、変化の只中にある出版の未来に貢献できる力。ここでは、選考を突破し、出版の世界で新たなキャリアを築くために押さえておきたいポイントを整理しました。

出版社の中途採用は存在するものの、求人数は限定的であり、特に未経験者にとっては狭き門です。出版業界は依然として人気が高く、志望者数に対して採用枠が少ないため、志望動機の明確さと業界理解の深さが選考突破の鍵となります。

近年は、紙媒体の縮小と電子書籍市場の拡大により、出版社のビジネスモデルは大きく変化しています。こうした構造変化を踏まえ、業界が抱える課題に対してどのような価値を提供できるかを示すことが、採用側にとっての評価ポイントとなります。実際に、選考過程で具体的な企画提案を求められるケースも増えており、出版物の企画力やマーケティング視点をもつことが強みになります 

出版社にこだわりすぎず、編集プロダクション、Webメディア、漫画アプリ運営会社など、出版周辺領域にも目を向けることで、キャリアの選択肢は大きく広がります。特にデジタル領域では、UX設計、データ分析、SNS運用などのスキルが高く評価されており、異業種からの転職者にも門戸が開かれています。


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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。