人工衛星関連業界の転職事情｜年収相場や求められるスキル経験を解説

5Gや6Gなどのインターネット通信、気象予測、農業、物流など、さまざまな分野で衛星データが活用されている今、人工衛星関連産業は注目される分野の一つとなっています。では、人工衛星関連業界への転職を目指す場合、どのようなスキルや経験が評価されやすいのでしょうか。

本記事では、JAC Recruitment（以下、JAC）が、年収相場や求められるスキルなど、人工衛星関連業界の転職事情についてご紹介します。

人工衛星関連業界の転職動向

現在は、主に気象や海洋などを観測する観測衛星、位置情報などを測る測位衛星、広範囲に通信回線を提供する通信衛星の3つが、ビジネスで活用されています。そのほかにも、スペースデブリの除去を目的とした人工衛星や、宇宙空間から地球を撮影する人工衛星など、さまざまな用途に対応した人工衛星があり、その数は増加中です。

このように、人工衛星ビジネスが活発化する中、人工衛星関連業界の中途採用市場には、どのような動きが見られるでしょうか。

JACが取り扱う求人を例に人工衛星関連業界の転職動向について解説します。

多岐にわたる技術領域での募集増加

現在、さまざまな用途で人工衛星が活用されていることから、人工衛星の開発現場でも、多様な技術領域で採用活動が活発に行われています。具体的には、構造設計や振動設計、衛星に搭載する通信や制御回路の開発、材料工学など、衛星の製造に必要な知識や技術を有する方を対象とした求人が増えています。また、観測データ解析やソフトウェア開発分野の求人も増加しており、多岐にわたる分野で採用活動が活発です。

新規事業の立ち上げやグローバル展開にともなう採用が増加

宇宙産業の市場規模の急速な拡大にともない、人工衛星関連の新規事業開発を進めている企業も多く見られます。そのため新規事業の立ち上げや事業拡大に向けた戦略的な採用を進める企業が増加中です。

また、人工衛星の製造や関連事業では、海外顧客との取引や海外企業との共同プロジェクトも増えています。そのため、英語を使った実務経験や海外顧客との交渉経験がある方を歓迎する求人が多く見受けられます。

専門性の高い職種を中心とした募集

人工衛星関連業界では、専門性の高い職種を積極的に採用する傾向が見られます。特に組み込みエンジニアや制御系のエンジニア、機械設計エンジニア、ソフトウェア開発、ネットワークエンジニアなど、技術系分野での募集が目立ちます。そのほか、開発プロジェクトのマネジメント経験者の募集も増加中です。

人工衛星関連業界で求められるスキル・経験・マインド

JACの求人を見ると、人工衛星関連業界では、次のスキルや経験が評価されやすい傾向があります。

制御系・通信系の知識や衛星システムの開発経験

衛星の動きを制御するための技術や組込みソフトウェアの開発経験、地上局との通信や衛星間ネットワークに関する知識、通信装置のソフトウェア制御の開発経験は、転職の際に高く評価される傾向があります。特に、人工衛星のプロジェクト経験者は、即戦力として期待され、より良い条件で転職できる可能性が高まります

ただし、人工衛星分野の経験がなくても、制御システムや通信事業のシステム開発の経験者であれば、十分に転職のチャンスがあります。

人工衛星の製造材料や熱設計に関する知識

人工衛星が稼働する宇宙空間は非常に過酷な環境です。例えば、太陽光が当たる部分と影になる部分では、大きな温度差が発生します。そのため、開発職には軽量で振動に強い素材の知識や、大きな温度変化に対応できる熱設計の知識が求められます。

ビジネスレベルの英語力

JACが取り扱う多くの求人を見てみると、英語力が求められることがわかります。技術職においても、マニュアルなど英文資料の読解が必要になり、海外の顧客や協力企業と英語で商談するケースも多いためです。求人票では、TOEIC600点程度を目安にしている企業が多くなっています。

また、中にはビジネスで英語を使用した経験がない場合でも、積極的に英語を学ぶ志向があれば応募できる求人も見受けられます。

柔軟な思考力・課題解決能力・粘り強さ

人工衛星が稼働する宇宙は、予測が難しい環境であり、想定外のトラブルが発生する可能性も少なくありません。そのため、トラブル発生時には状況に応じて代替案を迅速に提案できる柔軟な思考力や、原因を追求し問題を解決する課題解決能力を有する方が歓迎されます。

さらに、人工衛星の開発や運用では、多分野の技術が必要になるため、関係各所との連携も欠かせません。専門外のメンバーからの意見に耳を傾ける柔軟性や、目標達成に向けて他部門や協力会社と粘り強く調整や交渉を続ける力も求められます。

人工衛星関連業界の想定平均年収は854.0万円

JACがサポートした事例によると、人工衛星関連業界に転職した方の平均年収は854.0万円です。管理職の場合はさらに高い年収も期待でき、40代前半で1,300万円を超える年収で転職した事例も見られます。

職種や仕事内容、企業規模によって年収は大きく異なりますが、「経験を積むことで年収が上がる傾向があります。特に人工衛星の設計や開発に携わる業務では、実務経験やスキルに応じて高年収を得ている方が多くなっています。

人工衛星関連の最新求人情報

JACが取り扱う人工衛星関連求人の一部をご紹介します

●三菱電機株式会社：人工衛星の運用設計/衛星シミュレータ設計

●株式会社QPS研究所：人工衛星ソフトウェアエンジニア（リードエンジニア）

●株式会社Synspective：人工衛星組立エンジニア

●三菱電機株式会社：人工衛星・宇宙機の熱制御系設計

●三菱電機株式会社：人工衛星の開発試験、打上、品質管理

●株式会社IHI：宇宙開発を担う宇宙機/人工衛星/宇宙用機器/推進装置等の新規設計・開発

●非公開：小型人工衛星開発プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント

●三菱電機株式会社：人工衛星搭載用 電子機器・部品類の信頼性設計、ならびに評価作業

●株式会社QPS研究所：衛星画像データ処理エンジニア

●スカパーJSAT株式会社：SE4 衛星通信ペイロードエンジニア/人工衛星搭載の通信機器調達業務を担う無線通信エンジニア

※掲載されている求人の中には、募集が終了している場合がございます。あらかじめご了承ください。（2025年12月現在）

JACでは、上記のほかにも多数の人工衛星関連の求人を取り扱っています。ただし、当社が取り扱う求人の約7割は一般には公開されていない非公開求人です。これらの非公開求人は、求人企業の意向により、ご登録いただいた方のみに詳細をご案内しています。

成長著しい人工衛星関連業界への転職をご検討の際には、JACにご登録ください。非公開求人を含む豊富な求人の中から、ご希望に合った求人をご紹介いたします。

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人工衛星関連業界への転職で有利となる資格

人工衛星関連業界への転職に必須の資格はありません。ただし、応募する職種によっては資格がスキルや知識の証明となるため、下記のような資格をもっていると転職時に有利になることがあります。

応用情報技術者

応用情報技術者資格は、基本情報技術者試験の上位資格です。衛星関連業界において、システム開発職などのITエンジニアを目指す場合、システム開発において一定以上の知識やスキルを有していることの証明となります。試験は筆記試験方式で年に2回実施されています。

参照：独立行政法人情報処理推進機構「応用情報技術者」

TOEIC

TOEICは資格ではないものの、英語力の証明となる試験です。試験を受講すると英語力がスコアで示されます。先にも述べましたが、JACの保有求人を見ると、TOEIC600点以上の英語力を求める企業が多くなっています。しかしながら、海外企業とより複雑な交渉が必要になる業務などでは、700点以上のスコア保有者を求めるものも見られます。

実務における英語使用の経験がない場合は、TOEICを受験し、スコアを提示すると英語力を証明しやすくなります。

参照：TOEIC

人工衛星関連業界のキャリアパス

人工衛星の主なキャリアパスとしては次のような方向性が考えられます。

技術部門のスペシャリストを目指す

人工衛星の製造開発や通信技術、制御技術などのエンジニアの場合、専門分野のスペシャリストを目指すことができます。人工衛星の技術は日々進化しているため、スペシャリストの道は、新しい技術への関心が高く、専門性を深めたい方に向いています。

マネジメントポジションを目指す

人工衛星関連の事業は、大規模プロジェクトとして進めるケースも多く、チームやプロジェクトをまとめるリーダーやマネージャーなど、マネジメントのポジションも選択肢の一つになります。組織として目標を達成することにやりがいを感じる方や後進の育成に関心が高い方などは、マネジメントスキルを習得し、マネージャーのポジションを目指すとよいでしょう。

観測データの解析技術を生かせる業界へのキャリアチェンジ

人工衛星によって取得したデータの解析技術は、農業や環境、都市計画などさまざまな分野で生かすことができます。そのため、航空機や船舶の最適航路の設計や二酸化炭素排出量の監視、気候変動の影響評価、災害被害の予測、スマート農業の推進など、社会課題の解決につながる業界へキャリアチェンジを図ることも可能です。

人工衛星関連業界の転職を成功させる3つのポイント

人工衛星関連業界への転職を成功させるために抑えておきたい3つのポイントを紹介します。

自身の方向性を明確に定める

人工衛星関連の事業は、日本の航空宇宙産業を牽引してきた大手電機メーカーや重工業メーカーだけでなく、スタートアップ企業でも行われています。大手企業は、潤沢な資金や人員を活用して大型プロジェクトを手掛けることが多く、職種ごとの担当分野が明確に分かれています。一方で、スタートアップ企業は小型衛星や衛星データの解析など新しい分野に関わる場合が多く、少人数のため一人ひとりが多くの役割を担うことが特徴です。

転職時には自身の志向に合った企業を選ぶことが重要です。

人工衛星関連業界での実務経験や航空宇宙関連の知識をアピール

人工衛星関連の実務経験を有する方は、まだ希少な存在であり、人工衛星関連の業務に携わった経験は、転職時の大きなアドバンテージとなります。また、人工衛星に直接関わった経験がない場合でも、航空宇宙分野の知識が人工衛星の開発に役立ちます。これらの実務経験や知識を有する場合、積極的にアピールすることが重要です。

大規模プロジェクトの参画経験や社内外の関係者との協働経験のアピール

人工衛星関連のビジネスでは、機械設計などの知識だけでなく、通信技術や制御技術、データ解析、ソフトウェア開発などさまざまな技術が必要です。異なる分野の担当者の意見も聞きながら最適解を導き出し、協働した経験は、人工衛星関連業界でも十分に生かせます。多様な関係者を巻き込んだ大規模プロジェクトの経験者は、プロジェクトの具体的な内容や自身の役割、得られた成果などを具体的にアピールしましょう。

人工衛星関連業界の転職事例

JACは、人工衛星関連業界への転職を希望する方をサポートした実績があります。ここでは、当社のサポートで転職に成功した2名の事例を紹介します。

宇宙事業の運用担当から人工衛星システム設計へ、年収450万→650万

JJさん（男性/30代後半）

	業種	職種	年収
転職前	宇宙事業会社	システム運用・衛星運用	450万円
転職後	ソフトウェア会社	人工衛星のシステム設計運用	650万円

Jさんは、宇宙事業会社で衛星データの受信や処理、伝送業務に従事した後、科学技術衛星の運用業務や海外局取得調整業務などに携わった経験を有しています。宇宙業界への関心が高く、現在の業務にやりがいを感じているものの、より事業者に近い場所で業務に就きたいとの希望から転職を決意されました。

実務経験やこれまで培ってきたスキルを生かせる職場として、JACのコンサルタントは人工衛星のシステム設計や運用を担当するソフトウェア会社の求人を紹介しました。人工衛星を運用するクライアント施設において、運用文書の作成や手順書の検証、データベースの維持・管理、技術調整、運用などに携わる業務です。宇宙関連事業への関心が強いJさんには、スキルアップにもつながる充実した研修制度の整備業務にも魅力を感じ、応募が決定。

面接では、Jさんの人工衛星運用業務への高い意欲と豊富な経験が高く評価され、年収アップの条件で採用されました。

総合電機メーカーの開発職から宇宙事業エンジニアへ

Lさん（男性/30代前半）

	業種	職種	年収
転職前	総合電機メーカー	電子機器開発・設計	850万円
転職後	総合電機メーカー	開発エンジニア	850万円

大手電機メーカーで研究・開発業務に従事されてきたLさんは、より成長が期待される部門で、スピード感をもって業務にあたりたいとの希望からJACに相談されました。

エンジニアとしての強い成長意欲がありながらも、自身がどの業界に向いているのかを判断しかねていたLさん。そこでJACのコンサルタントが提案したのは、成長分野である宇宙産業です。宇宙関連事業は念頭になかったLさんでしたが、将来性の高い分野であり、チャレンジしたいとの意向が固まりました。

JACではLさんの強みを考慮し、前職と親和性の高い総合電機メーカーの衛星開発エンジニア職を紹介。宇宙関連事業の開発経験はないものの、機械設計や開発課題の早期解決に取り組んだ経験と論理的な思考力が評価され、無事に採用が決定しました。

人工衛星業界への転職なら、JAC Recruitment

人工衛星関連の事業は、今、幅広い分野で注目されています。人工衛星関連の事業は急速に成長していますが、宇宙関連事業の経験者は、実際にはまだ多くありません。従って、人工衛星業界での実務経験は、転職時に高く評価されます。また、衛星関連業務の経験がない場合でも、ほかの分野で培った汎用スキルが評価される可能性が高く、業界未経験であっても転職しやすい状況です。

JACには、業界専任のコンサルタントが在籍しており、転職希望者の経験やスキル、目指すキャリアを丁寧にヒアリングしたうえで一人ひとりに最適な求人をご紹介しています。人工衛星業界への転職をご検討の際には、JACにご相談ください。