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沿線の暮らしを支え続ける。東急が挑む次世代のまちづくりに寄与する商業施設運営

東急株式会社

※このインタビューは2026年7月に実施しました。なお、肩書は当時のものとなります。 堀内 謙介氏
東急株式会社 リテール事業部 商業施設運営グループ 統括部長 堀内 謙介氏

鉄道事業を基盤に、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートなど幅広い事業を展開する東急株式会社。渋谷をはじめとする東急線沿線エリアを中心に、住む・働く・訪れる人々の暮らしの質の向上を目指し、交通インフラとまちづくりを一体的に進めてきました。現在、渋谷駅周辺の再開発プロジェクト、東急線沿線のまちづくりを加速させており、リテール事業部での採用を強化しています。

商業施設運営グループ統括部長の堀内謙介氏に、東急が大切にしてきた価値観、象徴的な事例、渋谷の再開発事業の現在、今後の展望について伺いました。

各事業部が連携して「まちづくり」を行い、地域の生活を支える

―― まずは東急のこれまでの歩み、担ってきた役割や大切にしてきた価値観についてお聞かせください。

当社は大正時代、「鉄道会社」ではなく「まちづくりの会社」として創業しました。都市化が進み、住宅不足や住環境の課題が生じる中、原野だった郊外を開発し、自然と都市生活が調和するまちづくりを目指した取り組みが、田園調布に反映されています。都心に通勤できる鉄道を整備し、沿線に百貨店、商業施設、文化施設をつくり、さらにホテルやリゾートなどの「非日常空間」も組み合わせて事業を展開してきました。

まちづくりは長期的な事業です。私たちは戦前から一貫してこの事業に取り組んできたからこそ、瞬間的な利益や一時的な満足を追い求めるのではなく、お客さまと継続して対話を重ね、信頼を積み上げてきました。ベースにあるのは、「沿線にお住まいのお客さまの生活を支えていく」という使命感です。お客さまの生活価値を高め、地域からより良い社会を築いていこうという企業マインドが強く根付いているのです。

東急には幅広い事業があり、その一つひとつが集まって街を形づくっています。そのため、自分たちの事業部だけでなく他事業部との関わりを意識しながら、常に全体で「街にどう貢献するか」「まちづくりのために自分たちは何ができるか」を考えています。例えば商業施設の開発においては、鉄道を利用するお客さまが駅で降車後にどう商業施設を利用するかを想像し、いかにして利便性を高めるかを考え、隣接事業と組み合わせたりシナジーを生み出していく。それが鉄道会社の複数の事業をまたぐまちづくりの面白さであり、醍醐味だと思います。

他社では多くの場合、商業施設のブランドが統一されており、施設づくりのフォーマットが確立されているかもしれませんが、私たちの目的は商業施設そのものをつくることではありません。街全体の中で果たす役割や機能を起点に施設を形づくっていくため、駅ごとに商環境づくりやテナントの組み合わせ方、CRM(顧客との関係づくり)の考え方はさまざまです。

例えば、渋谷・二子玉川・たまプラーザでは、地域性もお客さまのニーズも異なります。東急は鉄道やバスを長年運行し、お客さまとの対話の中で得られた気づきを施設づくりに反映しているからこそ、それぞれの街に合った役割や個性をもつ商業施設が生まれているのです。

―― そうした東急の施設づくりの象徴的な事例には、どのようなものがありますか。

1982年 たまプラーザ東急SC たまプラーザ東急百貨店開業 1982年 たまプラーザ東急SC たまプラーザ東急百貨店開業
たまプラーザ テラス たまプラーザ テラス

一つに「たまプラーザ」が挙げられます。東急百貨店を核としたショッピングセンターを開業したのが1982年。駅機能と商業施設をより一体化させ、お客さまの生活価値を高めることを目的に、2000年代後半に再整備しました。こうして2007年から段階的に開業したのが「たまプラーザ テラス」です。

当時は、都心へ通勤する沿線のお客さまの利便性を高めることが大きなテーマであり、鉄道と商業施設を組み合わせることで生活価値の向上を目指していました。私たちは、商業施設にはマーケットインやプロダクトアウトという考え方だけではなく、「社会課題を解決する」という役割もあると考えています。東急百貨店などを通じて日頃からお客さまの声を直接受け止め、そのニーズを新しい施設づくりに反映してきていたため、狙いと実態の大きなずれはありませんでした。お買い物やカフェ・レストランだけでなく、フードコートや屋上空間のイベントスペースを設けるなど、地域コミュニティとして、お客さまが長く滞在できるライフスタイルセンターとしての役割も果たせていると思います。

また、多摩田園都市のような住宅地では、開発から年月が経つにつれて住民の高齢化が進みます。そのため、高齢のお客さまの暮らしを支えると同時に、新たな世代を呼び込み、街を活性化させることも重要です。そこで、たまプラーザの再開発では、駅近くに定期借地権付き分譲マンションもつくりました。駅から離れた場所に住んでいて高齢になった方々に駅前へ移り住んでいただき、空いた住宅に次の世代が住むことを促進したのです。このように、長期的な視点で街の循環を生み出す取り組みも進めてきました。

こうした考え方に基づく再開発は、二子玉川、そして渋谷へと展開されています。中でも渋谷は、東急単独ではなく多くの事業者とともに進めるまちづくりであり、商業施設の開発にとどまりません。今後も継続し、ずっとバリューアップさせていく、東急を最も象徴するプロジェクトです。

商業施設に「文化的価値」を取り入れる

―― 渋谷の開発、再開発事業では、東急らしさがどう生かされていますか。

渋谷スクランブルスクエア スクランブル交差点からの視点 渋谷スクランブルスクエア スクランブル交差点からの視点
(提供:渋谷駅街区共同ビル事業者)

渋谷は、東急百貨店をはじめとするリテール事業の創業の地であり、東急グループの本拠地でもあり、特別な思い入れのある街です。もともと渋谷は、商業施設で買い物をしたり、鉄道やバスを利用したりする人が集まるターミナル駅でしたが、2000年代以降は複合開発が進み、「働く」という機能も加わり、働く、遊ぶ、買い物をするといったさまざまな活動が一つの街の中でつながっています。それを意識したまちづくりを進めています。

一方、昔から変わらない価値観もあります。それは「文化的な要素を取り入れる」ことです。かつて東急百貨店東横店に隣接していた東急文化会館には、創業者の名を冠した「五島プラネタリウム」や映画館がありました。また、東急文化村が運営する「Bunkamura」も、商業施設に文化的な価値を組み合わせるという発想から生まれた施設です。

現在も、映画館のほか、渋谷ヒカリエ内でミュージカル劇場「東急シアターオーブ」を運営しています。渋谷スクランブルスクエアは、JR東日本さまや東京メトロさまとの共同事業ですが、屋上展望施設・SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)の整備は文化施設の要素も意識して東急が強く推進しました。

渋谷は用地が限られますが、東京都町田市に2000年に開業した「グランベリーモール」を2019年に「グランベリーパーク」としてリニューアルオープンした際には、公園と商業施設を一体化させ、スヌーピーミュージアムを誘致しました。

このように、単に商業施設を開発するのではなく、文化・自然・体験を組み合わせて街全体の価値を高めていくこと、お客さまのライフスタイルを常に意識して新しい価値観を提案していくことが、東急らしさの一つだと考えています。

―― これまでと変えていくものもあるのでしょうか。今後大切にしたい在り方をお聞かせください。

コロナ禍を経て社会環境が変化した現在、商業施設は買い物をするだけの場所だけでなく、さまざまな人が集い、出会い、交流する場、そして新たな体験を生み出す場としての役割が求められていると捉えています。

これは私自身の考えですが、お客さまは大切な人に会うために素敵な洋服を買い、電車に乗り、商業施設のカフェを利用する。つまり、私たちの事業はお客さまが大切な人と過ごす時間を支えており、その中核を担うのが商業施設だと思います。

また、住宅地に立地する商業施設では、地域の皆さまが集うコミュニティの場としての役割も大きくなっています。お子様の課外活動の合間に保護者同士が過ごしたり、親子でイベントに参加したりと、最近ではランニングコミュニティの活動拠点など、地域の人々が自然体でつながっていける場へと変化してきていると感じています。

そうした中で、これから重視するのは「ヒューマニティ」、つまり人間らしさだと考えています。ものを買うだけならECで十分ですが、店舗スタッフとの会話や、人と人が触れ合う時間は、商業施設ならではの価値です。

商環境づくりにおいては、ただ多くの店舗を集めればよいわけではありません。吹き抜けの設計やエスカレーターの配置など、お客さまが心地よく過ごし、自然と時間を費やしたくなる空間をつくることも大切です。

渋谷の場合、さまざまな鉄道路線が乗り入れるため、高層階や地下など、さまざまなところからお客さまが出入りできます。私たちは人の流れを駅の商業施設内だけでなく、街全体へ広げていく役割を担っています。渋谷はすり鉢状の地形ですが、坂の上から坂の下まで、お客さまが快適に回遊できることを意識しています。

今後も、2030年前後に向けて複数の開発プロジェクトが進行しています。一つが、東急百貨店本店跡地の開発。同時に、いわゆる「奥渋」エリアまで含めた街の基盤づくりを進めます。もう一つは、渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)の開発です。完成すれば商業施設の規模は現在の東棟の2倍以上の面積となり、利便性や楽しさがさらに向上します。

こうした開発によって、渋谷ヒカリエ、渋谷スクランブルスクエア、渋谷マークシティ、SHIBUYA109、そして東急百貨店本店跡地の「Shibuya Upper West Project」がつながり、周辺商店街や地域の皆さまと一緒に街全体を活性化していきます。

私たちは渋谷を訪れる人々を「渋谷ビジター」、渋谷で日常の暮らしを送る人を「渋谷フィールダー」と呼んでいます。世界から注目され、海外から訪れるお客さまも増えている中、ビジターとフィールダー両方が楽しめる街を、皆さんとともにつくり続けていきます。

さまざまな方法で地域を活性化。構築したモデルを沿線以外、海外でも生かす

―― 西武渋谷店の閉店など、近年の小売業界には後ろ向きな流れも見られますが、そのような環境下で東急はなぜ商業を強化するのでしょうか。

東急には、商業施設を運営する、鉄道を運行するといったことにとどまらず、「街を運営する」という意識が強くあります。お客さまの生活がある限り、スーパーマーケットや商業施設は欠かせない要素です。EC市場が拡大しても、人々の暮らしに必要な役割を果たし続けることは私たちの責務です。そして、その役割を担う以上は、他地域や商業施設にはない魅力や価値を提案し続けなければなりません。

日本全体では人口が減少していますが、東急線沿線はまだ人口が増えているのです。これまで、街を元気にしようと頑張ってきた成果といえるかもしれません。コロナ禍以降は、若年層の集客力も高まっています。私たちは、さまざまな事業を組み合わせることで、街を活性化し、人が集まり続ける地域をつくれる自信をもっています。特に、渋谷、二子玉川、自由が丘は「プラチナトライアングル」と呼んでおり、港区とは異なる新たな価値を生んでいけるエリアと考えています。

今後はアジアでも人口減少や社会の成熟化が進んでいくでしょう。グローバル経済においても、私たちは街を活性化し、お客さまの生活を支え続けるビジネスモデルをつくっていけると思います。現在、渋谷をはじめとする沿線や駅周辺で進めている「街運営のビジネスモデル」はグローバルで横展開していける基盤づくりの挑戦でもあると思っています。

―― 今後の展望をどのように描いていますか。

まちづくりに「ここまでやったら終わり」というゴールはありません。これからも時代や世代の変化に合わせながら、お客さまの幸せな生活を支えるよう街の姿を進化させ続けていきます。

その手法は、必ずしも新たな開発だけではありません。商店街と商業施設を組み合わせたり、スポーツ施設や競技場と連携したりと、地域を活性化する方法はさまざまです。例えば関内横浜では、ディー・エヌ・エーさんが横浜スタジアムを「COMMUNITY BALLPARK」構想のもと、地域のランドマークに進化させる取り組みをされています。東急(株)グループでは隣接するBASEGATE横浜関内の開発・運営を行い、一緒に街を盛り上げています。

私たちは「地域コングロマリット」と呼んでいますが、リテール事業の対象は東急線沿線に限りません。例えば、長野市やベトナムでも商業施設を展開しています。ベトナムでは、かつて日本で取り組んできたように、新しい街を育て、商業施設は活況を呈しています。

世界には、高度経済成長の途上にある地域もあれば、日本のように成熟期を迎えた国もあります。私たちはこれまで培ってきた多様なまちづくりのノウハウを生かし、それぞれの地域の皆さまとともに、その地域のお客さまや生活者に合った価値を生み出していきたいと考えています。

今後は沿線や国内だけにとどまらず、海外も含めた幅広い展開を進めていきます。すでに香港でも事業を展開しており、現地で人気の店舗を日本へ誘致する取り組みもあります。また、日本でお取引のある約3,300社のテナント企業を対象に、各社のニーズに合わせて海外展開の支援をご提案するなど、商業施設の区画を提供するだけにとどまらない新たなビジネスもスタートしています。

当然ながら東急線沿線地域や渋谷など「ローカル」も大切にしながらも、そこで得たビジネスモデルや価値を国内外へ広げていき、ナショナルカンパニーとしての東急も意識していきたいと思っています。

―― 東急リテール事業部ではどのような人が活躍できると思われますか。

お客さまやチームメンバーと信頼関係を築いていける人間味のある方です。東急では、土地を買収して開発するのではなく、地権者さんの土地をお預かりしたり、地域の皆さまと対話を重ねたりして、ともに街を育ててきました。商業施設事業においても、テナントや取引先、お客さまと信頼関係を築き、皆で一緒につくっていく「共創」を大切にしています。こうした東急グループ共通の価値観に共感し、それを体現しながら事業を推進できる方に入社いただきたいと思います。

また、持続的に成長し、地域や社会へ貢献し続けるためには、利益を生み出して循環させていかなければなりません。そのためには粘り強く取り組み、時には関係者と意見をぶつけ合いながら、新しい価値創造へ突き進んでいくバイタリティも必要です。東急には「安定感」を抱かれることも多く、実際に事業基盤は安定しています。しかし、チャレンジすべき場面ではリスクを恐れず一歩踏み込み、情熱と行動力をもって最後までやり抜くラストマンシップと熱い思いをもつ方と一緒に働きたいです。

商業施設づくりは、開業がゴールではなく、その後も施設や街を育て続ける仕事です。私の実感としては、建物の完成そのものよりもお客さまが笑顔で施設を利用し、楽しそうにされている姿を見ることに大きな達成感があります。
お客さまの満足や暮らしを支えることに喜びを感じられる人にとって、大きなやりがいがある環境です。地域やテナントさま、お客さまとの「共創」を通じて新たな価値を生み出したい方と、ぜひ一緒に未来の街をつくっていきたいと思います。

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