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静岡のグローバルニッチトップ企業・スター精密の挑戦 vol.2
高精度加工技術を強みに、新たな需要領域を切り拓く

スター精密株式会社

※このインタビューは2026年6月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。 増田文雄氏
スター精密株式会社 常務執行役員 増田 文雄 氏

工作機械事業・特機事業(小型プリンター)を手がけるスター精密株式会社。主軸移動型自動旋盤では世界トップクラスのシェアを誇り、グローバルニッチトップ企業として、幅広い産業のものづくりを支えています。年間休日135日や賞与の多さなどで「静岡を代表するホワイト企業」としても知られる存在です。

同社は2025年にTOBへの賛同を表明し、2026年3月に東証プライム市場上場廃止。この変革により、さらなる成長のフェーズに入りました。

今後の事業戦略と将来展望について、取締役 専務執行役員の佐藤誠悟氏、常務執行役員の増田文雄氏にインタビューを実施。2回に分けてお届けします。第2回となる本記事では、増田常務に事業の強み、工作機械事業の可能性や面白みなどについて伺いました。

収益性が高い分野を開拓し、世界トップクラスのシェアを獲得

―― 事業内容と事業の強み、今後の戦略についてお聞かせください。

事業の柱は大きく2つ。小型プリンターなどを手がける「特機事業」と、工作機械を製造・販売する「工作機械事業」です。いずれの製品でも当社がニッチトップ企業として高いシェアを獲得できているのは、先達が将来性のある分野を見極めて選んできたからです。

特機事業の原点は、1970年代にスタートした「ドットプリンター」です。工作機械で培った精密制御技術を、ピンで細かく印字する技術に応用して作りました。1980年代以降、コンピューターの普及とともにプリンターの需要も増加し、当社売上の伸長に大きく貢献する事業となりました。

その後、プリンター市場の主流がレーザーやインクジェットへ移行する中、当社はあえてニッチな「サーマルプリンター」へ舵を切ったのです。これは熱を加えることで印字する技術であり、当社の既存技術や販売チャネルを生かせる分野だったためです。

現在は、飲食店や小売店などの店舗で、レシートや整理券などを印刷する業務用小型プリンターで世界トップクラスのシェアを獲得。スマートフォンやタブレット端末の普及に伴うモバイルPOSも需要が拡大。

ペーパーレス化が進む現在、将来性に疑問を抱かれることもありますが、サーマルプリンターの用途はレシートにとどまりません。飲食店の順番待ち券やキッチン・フードデリバリーの伝票、商品ラベルから選挙用紙まで幅広い用途で活用されており、需要は欧米を中心に堅調に推移しています。

また、特機事業は収益性が高いのです。自社工場をもたず、生産はEMS(電子機器受託製造サービス)を活用しているため、大規模な設備投資を必要としません。少ない投資で高いリターンを生み出せるため、収益力は工作機械事業にも引けを取りません。

一方で、今後の大幅な販売拡大は見込みにくい状況です。そのため、特機事業が生み出すキャッシュを土台としながら、工作機械事業を伸ばしていく方向性で戦略を立てています。

私は1990年に入社後、営業を担ってきました。バブル崩壊やリーマン・ショックなど、約10年スパンで好況・不況の波を経験してきましたが、工作機械市場は右肩上がりに伸びてきています。工作機械にはマシニングセンターや旋盤をはじめ多種多様な種類がありますが、やはり当社の先達は有望な分野を見極めてくれたと感じています。

現在の主力製品である「主軸移動型自動旋盤(スイス型自動旋盤)」は、工作機械市場全体の伸びを上回るペースで成長している分野です。これは、高精度な小型精密部品の加工に適した特殊な旋盤で、ほかのメーカーは容易に製造できない、参入障壁が高い製品です。国内で手がけられるのは当社を含め3社程度。そのため「ニッチ」といわれ、リピートが多く、高い市場シェアを維持できているのです。

他社が撤退した技術も継承。追随を許さない競争優位性を確立

―― 工作機械事業の強みとは、どのようなところにあるのでしょうか。

当社独自の加工技術、組み立て技術、チェック・評価手法などがお客さまから支持されています。一般的には、機械が組み上がった段階で最終的な精度を出します。しかし当社では、組み立て工程の各段階で必要な精度基準を細かく設定し、確認しています。そのため、完成時に高い精度を実現できるだけでなく、万が一不具合が発生した場合も原因の特定がしやすくなるのです。どの工程や部品に問題があるのかを把握しやすいため、必要な部品を交換することで迅速な対応が可能。手間を惜しまず、丁寧に作り込む姿勢が、当社の競争力につながっていると考えています。

―― 工場見学をさせていただいた際、全てが自動化されているわけではなく、エンジニアのスキルも重要であると想像しました。

一例として、「きさげ加工」があります。専用工具を用いて、金属の表面を職人の手で少しずつ削って微調整する、精密機械づくりに欠かせない技術です。かつては広く行われていましたが、手間と時間がかかるため、多くのメーカーがやめていきました。一方、当社は機械の剛性や耐久性にこだわり、この技術を継承し続けてきたのです。長年にわたり技術者を育成しながらノウハウを蓄積してきたことで、他社には容易にまねできない強みとなっています。

また、当社は製品そのものだけでなく、導入前後のサポート体制にも力を入れています。工作機械は安価なものでも1,000万円程度、高額な機種では3,000万~4,000万円に及ぶため、顧客にとっては大きな投資です。そのため、導入前にはショールームでテスト加工を行い、求める部品を実際に加工できるかを確認していただくなど、柔軟な対応を行っています。

さらに、納入後のアフターサービスも重要な強みです。どれほど高品質な機械でも、長く使えばトラブルは発生します。そうした際には迅速に駆け付け、早期に復旧させることで、お客さまの生産活動への影響を最小限に抑えています。この対応力はお客さまから高く評価いただいていて、競争優位性の一つとなっています。

加えて、人と組織風土も当社の大きな強みです。誠実で真面目な社員が多く、部門や職種の垣根を越えて互いをリスペクトする風土があります。私は営業畑ですが、製造部門を「すごいな」と尊敬していますし、製造部門は開発部門を「すごい」と思っている。そして製造や開発部門は営業に対して「作れば売ってくれる」と信頼を寄せてくれているでしょう。それぞれの役割を認め合い、高め合う風土があるのです。

新たな市場が生まれ、高精度な部品加工のニーズが拡大

―― 工作機械事業を手がける面白みを、どのように感じていらっしゃいますか。

工作機械事業は、自動車、電機、半導体、医療など幅広い業界と関わっています。現在は、AIデータセンターやドローン、ヒューマノイドロボットといった新たな市場が拡大中。どのような部品がどこで生産され、どのようなサプライチェーンを経て世界中へ届けられているのかを知ることができます。ものづくりだけでなく、流通や経済の仕組みまで理解できることが非常に楽しいですね。

私たちは常に市場動向を調査し、自社の機械が活躍できる業界や用途を探っています。世の中のあらゆる製品は小型化が進んでおり、より高精度な部品加工が必要となる。当社の製品はこれからますます需要が伸びていくことが明らかなので、どのように貢献し、どれだけ拡大できるか、ワクワクしています。

―― 今後の取り組み、海外展開の方針についてお聞かせください。

当社の主力製品である主軸移動型自動旋盤は、これまでスピード向上や機能追加などを重ねながら進化してきました。今後もさらなる性能向上を追求するとともに、要素技術の開発にも注力し、お客さまのニーズに応えていきます。また、主軸移動型自動旋盤の周辺領域や関連市場への展開も視野に入れています。

海外戦略については、地域ごとに異なります。欧米市場ではさらなるシェア拡大の可能性があると見込んでいます。最近では、スイスに欧州ソリューションセンターが完成し、欧州全域へのよりよいサービス提供の基盤がさらに強化されました。中国は現在、最も需要が旺盛ですが、国土が広く、十分に開拓できていない地域も残されているため、拡販の余地があるでしょう。インド市場は、現在の販売台数は年間100台程度ですが、今後10年で10倍以上に拡大する可能性を秘めています。最近では北アフリカからも案件が出てきています。やれることは数多くありますね。アメリカの関税政策の動向も注視しながら、柔軟に戦略を立てていきます。
※参照 「欧州ソリューションセンター」が完成、竣工式を開催

―― TOBを経て、事業運営における変化を感じていますか。

ファンドが入ったことで、これまでとは異なる視点をもてるようになりました。これまでもそれなりに利益を上げてきましたが、ファンドの視点ではまだまだムダな部分も多いことが分かったのです。特に数字の見方については多くの学びがありました。指導いただきながら、より効率的に投資を行い、さらに利益を生み出せる体質に変わろうとしています。

実際にやっていることは大きく変わりませんが、どこにお金を使うかという考え方は変わっていくと思います。無駄なことをしない、在庫を必要以上にもたない、キャッシュアウトをいかに抑えるか――など、これまであまり意識してこなかったことに気付けたので、経営に取り入れていきます。

―― 採用にも力を入れていらっしゃいますが、どのような方が活躍できるでしょうか。

当社は「世界に挑戦する 「偉大な中小企業」として 社会の持続的発展に貢献する」をパーパスに掲げ、世界市場を相手にグローバルニッチで勝つことを大切にしています。そのため、仕事の中で海外とつながる機会は自然と多くなります。⁠⁠

現在も約20人の社員を海外の製造拠点や販売拠点へ駐在員として送り出していますが、今後はさらに増やしていきたいと考えており、そうした機会も含めて、成長のステージは状況に応じて広がっていきます。留学や海外ビジネス経験、語学力ももちろん活きますが、それ以上に、主体的に動き、学び続け、技術や仕事の質にこだわり、仲間と一緒にやり切れる方とご一緒したいですね。

挑戦したい方にとっては海外含め、チャンスが豊富にある環境です。変革期を迎えている当社の挑戦に共感をいただける方との出会いを期待しています。

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