※このインタビューは2025年2月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
採用企業インタビュー
株主総会の本質を問い直す――企業と投資家をつなぐ日本シェアホルダーサービスの役割
日本シェアホルダーサービス株式会社

- 日本シェアホルダーサービス株式会社 執行役員 株主戦略アドバイザリー部長 斎藤 輝貢 氏
-
近年、機関投資家やアクティビストの台頭により、企業は株主との対話をより真剣に捉え、株主総会を単なる形式的な場ではなく、経営課題を共有するための重要な機会として位置づけるようになりました。そこでは、自社株を実質的に保有しているのは誰なのかを正確に把握し、株主総会での議決権行使を的確にシミュレートするニーズが急速に高まっています。
そうした状況下で、「実質株主判明調査」や「シェアホルダー・リレーションズ(SR)コンサルティング」を行い、企業のガバナンス強化を支える存在として注目されているのが、日本シェアホルダーサービス(以下、JSS)です。JSSの事業背景や今後の展望、そして転職を検討する方へのメッセージを、執行役員を務める斎藤輝貢氏に伺いました。
「株主を正確に把握する」ことの社会的意義

―― まずは貴社の設立経緯と、事業の中心にある「株主判明調査」についてお聞かせください。
当社の設立は2005年9月です。会社法が制定され、敵対的買収防衛策がちょうど注目され始めたころで、株主の構成を正確に把握しないと経営上のリスクになると、企業の経営層が考えるようになったタイミングでした。
企業のガバナンス意識が高まるにつれ、より専門性を強化した組織が必要となり、企業の株主名簿管理と株主総会関連支援業務を展開する三菱UFJ信託銀行の証券代行部門との効果的連携を企図し、三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)が提供していた「実質株主判明調査」のサービスとSR/IRコンサルティングや機関投資家対応業務を引き継ぐ形で、設立された会社です。
設立当初は世界最大の証券代行機関であるコンピュータシェアとの合弁会社でしたが、現在は三菱UFJ信託銀行の単独出資の元で運営されています。
実質株主判明調査の中心にあるのは、「表向きの株主名簿では把握しきれない実質株主を正確に洗い出す」というミッションです。例えば、名簿上は国内外の信託銀行やカストディアン※の名義になっていても、実際には異なる機関投資家やファンドが大きな議決権を握っているケースが珍しくありません。そうした裏にいる投資家を徹底的にリサーチすることで、企業が「自社株主は誰か」「どのような投資姿勢で臨んでいるか」を把握できるのです。
※カストディアン…投資家の代わりに有価証券の保管や管理を行う金融機関のこと。受託信託銀行とも呼ばれる。
私たちはそうした調査を終えたうえで、株主総会に向けた議決権行使のシミュレーションをしたり、アクティビストから株主提案が出そうな場合に備えて企業の経営トップと戦略を練ることも増えています。つまり、単に「誰が株を持っているか」を示すだけでなく、「その株主はどのような方針や傾向を持っているか」「株主総会ではどれだけ賛成を取り付けられそうか」「アクティビスト提案とどう折り合いをつけるか」など、より深いレベルのコンサルティングに対する需要が近年は急拡大しています。
こういった戦略のベースとなるのは、『機関投資家が何を考えているのか』になりますが、それを把握するために「SR(シェアホルダー・リレーションズ)支援」と当社では呼んでいるサービスの重要性が急速に高まっており、議決権行使に付随する株主との対話のアレンジを通じて、企業のガバナンス強化に大きく寄与するサービスとして評価されています。
―― 企業側からすると、株主総会で議案が可決されるかどうかは経営に大きな影響を及ぼすわけですね。こうしたニーズがこれほど高まっている背景は何でしょうか。
一つは、持ち合い株式が解消されてきたという流れがあります。かつて日本では系列企業同士で株を持ち合う風土が色濃かったのですが、外国人や国内外の機関投資家が従来よりも高い比率で株を保有するようになり、以前のような状況から大きく環境が変化しました。さらに、アクティビストと呼ばれる「もの言う株主」が増え、企業の収益構造や役員体制にまで踏み込んで提案をしてくるケースが目立つようになりました。
そのため、以前のように「株主総会は形式的に終わるもの」と考えていたら、「いつの間にか大口株主が反対票を投じて、想定以上に低い賛成率だった」というリスクが現実味を帯びてくるようになりました。株主総会の事前準備や対話の進め方に失敗すると、経営トップの信任だけでなく、企業全体の評判にも影響しかねないわけです。
そうしたリスクを未然に防ぐためにも、SR支援を通じて総合的かつ戦略的にアドバイスする業務が急拡大しており、全ての業務の大元となる株主判明調査の重要性も高まっているのです。
―― IR(インベスター・リレーションズ)とSRの違いは、どのような点にあるのでしょうか。
IRの主眼は企業が投資家に対して財務情報を開示し、株価形成や評価に影響を与えることですが、SRではそれに加えて取締役会の構成や経営ビジョン、ESGに関する取り組みといった非財務情報にも深く関わっていく点が特徴です。
具体的なトピックとして、企業の経営課題から見たときに、どのような社外取締役が必要であるかを企業自体が正しく認識し、その課題を解決するために相応しいスキルを持った社外取締役を配置しているかといった議論があります。また、製造業であれば、サプライチェーンを含めた環境問題への取り組みや、海外の労働者における人権問題にまで指摘が及ぶケースが増えています。
先に述べたように、株主総会は、かつてのような「シャンシャン総会」で済んでいた時代は終わり、本来あるべき姿に向かっている中で、ガバナンスやESGまで議論が及ぶケースも増えています。そういった背景から、今後はSR支援の需要はいっそう高まっていくと思われます。
―― 具体的に、どのようなプロセスで調査やコンサルティングが進むのでしょう?
まずはアナリストがリサーチを担当します。株主名簿に出てくる株主情報を整理し、その裏にある機関投資家やファンドを特定していくのがアナリストの役割です。調査する際には膨大なデータを取り扱いますので、社内のデータ整備を担うデータソリューション推進部と連携して業務を遂行します。
そこからコンサルティング部門が、得られたリサーチ結果をもとに株主総会での議決権行使シミュレーションをしたり、アクティビストが株主提案を行ってきた場合の対策をアドバイスしたり、あるいは機関投資家との面談アレンジなどを行います。
単に「調べて終わり」ではなく、「判明した株主構成をどう捉え、どう戦略を立てるか」というところまで踏み込み、企業の経営陣に寄り添う点が当社の特徴だと思います。とりわけ当社は自社の利益を追求するのではなく、「マーケットはどうあるべきか」という視点に立ったコンサルティングに重きを置く文化が根付いています。
これは信託銀行の子会社という立ち位置もありますが、資産運用部門から転職してきたスタッフが多いので、株式市場のために何ができるかを自ずと考える意識を持ったコンサルタントが非常に多く在籍していることが影響していると思います。
JSSだからこそ得られる専門性――「経営を左右する議案の裏側に携わることができる」

―― 実際、貴社へ転職してくる方のバックグラウンドはどのようなものが多いでしょうか。
業界経験者の方が転職されるケースはほとんどありません。というのも、当社が専門としている実質株主判明調査やSRに携わるスタッフは、国内ではごく一握りしかいません。ですから銀行や証券会社出身の方を中心に、未経験の領域でも「やってみたい」「新しい知識を吸収したい」という意欲がある方に来ていただいています。
前職で株式や機関投資家の仕組みにある程度触れていたらベストですが、アナリストについては、実際にはそこまで要求していません。コツコツ調べるのが得意とか、Excelやデータ分析が好き、といったタイプであれば大丈夫です。一方でアナリストからコンサルタントへステップアップすると企業との折衝や議決権行使のシミュレーション提案などもしますから、長い目で見ると資本市場やガバナンスに一定の理解があるとスムーズでしょう。M&Aの知識がある人や、運用会社での経験がある人などもマッチしやすいですね。
当社は今、社員数が約80名前後ですが、案件が急増していて数十人程度の増員が必要です。現場の働きやすさの改善も進めながら、アクティビスト対応のような高難度案件への需要にも対応していきたい――そういう状況ですので、キャリア採用をかなり強化しているところです。
―― JSSで働く際の魅力ややりがいとは何でしょうか。
やはり経営の最前線を支える手ごたえは大きいと思います。例えば、新聞に「ある企業の株主総会で社長選任案が想定以上に低い賛成率だった」というニュースが出ても、その影には必ず「議決権行使をどこがどう判断したか」という物語が存在します。私たちは、その根本にある実質株主の特定や投資家の意向調査をすることで、企業にとっては「自分たちの経営方針が受け入れられるのか」という重大な判断材料を提供しています。
さらに、アクティビスト提案の是非が話題になるようなケースでは、私たちの調査やシミュレーションを元に投資家対応をした結果、株主総会の結果が大きく変わることさえあります。企業の行方を左右するキーパートとして動ける点は、金融機関にいただけでは触れられない醍醐味でしょう。
しかも大手信託銀行の子会社でありながら独立性を持っているので、グループ企業以外のクライアントに対しても、中立的な立場からサービスを提供できるのが特徴です。実質株主判明調査などの経験がない方でも、入社後に一定の経験を積めばSR/IR関連の知識と業務経験に加え、議決権行使に関わる専門家になれるスキルが身につきます。
上場企業のガバナンスを支えるプロフェッショナルスタッフとして成長したい方にとっては、最良のキャリアが積めますし、自分の知見を掘り下げながら、市場全体のダイナミズムを肌で感じたい人には、まさにぴったりの環境だと思います。
コンサルタントに与えられた自由度も比較的高いと認識しています。自らコンサルティングメニューを考えて、実際の案件獲得につなげている社員もいますし、自らの課題意識を仕事に結びつけていくことで、仕事の幅を広げられる環境は大いにある状況です。私たちマネジメント層としては、そういったことを考える時間をコンサルタントに、さらに与えたいと思いますし、そのためにも採用の強化は重要な経営課題だと捉えています。
「個」と「チーム」のバランスを重視した組織文化
―― 貴社の社内環境や働き方も教えていただけますか。
繁忙期(株主総会シーズン)とそうでない時期とのメリハリはありますが、当社では在宅勤務や時差出勤を積極的に採り入れており、業務効率化のためにシステム投資も進めています。また、男性社員の育児休暇の取得率も高いと思います。
どうしても株主総会前は案件が重なって忙しくなりがちですが、その分オフシーズンは比較的落ち着いており、休暇も取りやすいです。今は事業拡大にともない、採用を強化してチーム体制を厚くすることで、働きやすさをさらに向上させようとしているところです。
評価制度は、アナリスト・コンサルタントの双方において「案件の質と貢献度」を総合的に見ています。実質株主判明調査における分析力や企業への提案力、メンバーの育成など、成果だけでなくチームワークを重視して評価する風土があるので、未経験で入った方もしっかりステップアップできると思います。
入社時のオンボーディングでは一カ月ほどかけて、業務の基礎を学ぶ研修を受けた後に、入社2年目の先輩社員と組んで実務に着手します。同性で年齢が近く、1年前に悩んだ経験が生々しく残っている社員がサポートするなど、気軽に相談しやすい環境作りを心がけています。また、業務習得のスピードも個々の社員のキャリアに応じて調整しています。
―― 最後に貴社への応募を検討している方へのメッセージをお願いします。
全ての企業が株主総会やガバナンスを軽視できない時代で、「誰が実質株主なのか」「どうすれば議案は支持されるのか」という問いが経営そのものを左右しています。それは、新聞で目にするようなアクティビストの動向や経営トップへの賛否にも直結します。私たちJSSは、調査やコンサルティングを通じて、上場企業を縁の下で支える企業で、需要の拡大に応じて採用を強化しています。
未経験でも、銀行や証券会社等で得た基礎があれば十分に生かせますし、キャリア採用で入社する社員は全員未経験からのスタートです。むしろ「業界をまたいで新しい知見を吸収したい」と思っている方にはうってつけだと思います。ご自身の金融知識をさらに深めたい方や、コンサル的な対話力を生かしたい方が集まってくれれば、当社としても大歓迎です。ぜひ興味を持たれたら一度チャレンジしていただけると嬉しいです。
ハイクラス転職を実現する
「コンサルタントの提案」
をぜひご体験ください
ハイクラス転職で求められることは、入社後すぐにビジネスを牽引する存在になること。
そのために「コンサルタントの提案」を聞いてみませんか?
ご経験・ご経歴・ご希望などから、転職後のご活躍イメージを具体的にお伝えします。