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新進気鋭のAIベンチャーに聞く、AIの社会実装について

株式会社JDSC

※このウェビナーは2023年11月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
イベントレポート

AIの急速な進化が社会に与える影響について、さまざまな視点から議論が行われる中、JACではAIのキャリア座談会を開催。東大発AIベンチャーのJDSCに在籍する3名をゲストに迎え、AI技術を活用した事例や、AIが生活や産業に与える可能性などをうかがいました。

<登壇者・登壇企業紹介>

  • 佐藤 飛鳥 氏
    佐藤 飛鳥 氏
    株式会社JDSC
    執行役員 コンサルティングユニット長
    佐藤 飛鳥 氏
    早稲田大学大学院修了後、アクセンチュア株式会社に入社。戦略コンサルティング本部・SCM本部に所属し、幅広い業界を対象としたIT・DXプロジェクトを多数経験。2020年1月にJDSCに参画し、主に製造業・物流業を対象とした大手企業のDX案件を推進。また、大企業との接点構築の組織化や、社外とのアライアンスの担当を務める。
  • 冨長 裕久 氏
    冨長 裕久 氏
    株式会社JDSC
    執行役員 ITユニット長
    冨長 裕久 氏
    東京大学大学院修了後、Bond UniversityでMBAを取得。ソニー株式会社で通信、暗号、映像など多様な分野で開発やプロジェクトマネジメントの経験を積み、新規事業開発に参画。タブレット事業やモバイルアプリの成長に貢献。その後、教育AIベンチャーの取締役CSOを務め、高度な技術を活用して広範なビジネスインパクトを生み出すことに魅力を感じ、JDSCに参画。
  • 中橋 良信 氏
    中橋 良信 氏
    株式会社JDSC
    VP of Data Science
    中橋 良信 氏
    帯広畜産大学で博士後期課程修了後、データ分析会社や複数のコンサルティング会社にて、データサイエンティストとして統計モデルや機械学習を用いた業務課題の解決に従事。保険、製造、ヘルスケアなどの領域で多数のプロジェクトを担当。フレイル事業に魅力を感じ、2022年7月よりJDSCに参画、2023年5月よりデータサイエンスチームリードを務める。

1.データから問題を早期発見し、社会課題を解決する

JAC:まずは御社について教えてください。

佐藤氏:JDSCという社名は、「ジャパンデータサイエンスコンソーシアム」の略称です。社名に「コンソーシアム」という一風変わった言葉選びをしている背景には、社会課題の解決に向けた我々の「想い」が込められています。企業個々の課題だけでなく、社会全体にわたって解決策を提供することを使命とする、ということです。設立は2018年で、2021年に上場もしています。

日本を代表するような大企業に対して価値を提供し、社会課題の解決という役割を果たしながら、自社としての売上についても着実に増加してきたことが、スピーディーな上場に繋がったと自負しています。
現在の従業員は71名です。当社が取り組んでいる活動をより加速していくためにも、同じ想いを持つ仲間を積極的に集めている最中です。

JAC:現在注力している取り組みについて教えてください。

佐藤氏:「Joint R&D」と呼んだりしますが、日本を代表する各業界のリーディングカンパニーとの共同研究開発を起点に、その業界が抱える大きな課題の解決を追求すること、「UPGRADE JAPAN活動」に注力しています。
我々のクライアント企業は超大手企業が中心ですが、製造業、物流、ヘルスケア等、さまざまな業界が含まれています。

課題を解決するためには、まず課題自体を明確にし、AIアルゴリズムを開発し、それを業務に落とし込む必要があります。私たちの強みは、この一連のプロセスを一気通貫して行っている点です。「三位一体」とよく言いますが、当プロセスを同じメンバーで取り組んでいくことにより、方針自体の柔軟なチューンナップについても柔軟に行うことができます。

また東京大学との連携も弊社の強みの一つです。新しい技術の開発や発信をしているアカデミックな場所である大学、そしてそこに在籍する先生方との連携を通じて、最新の技術トレンドや社会の動向を把握し、それをビジネスに転換できるよう努めています。

JAC:本ウェビナーのテーマであるAIの社会実装における事例を教えてください。

冨長氏:弊社の事例としてご紹介したいのは「フレイルの検知」です。
フレイルとは、高齢者の体力が衰え、介護が必要になる一歩手前の状態を指します。この状態を検知することが出来て生活習慣や食生活を改善することが出来れば、健康な状態に戻すことができるのです。要介護になると非常に大きな医療費を要しますので、要介護を防いで健康に戻すことは、個人の健康寿命を延ばすということだけでなく、医療行政という視点でも大きな意義があるプロジェクトだと捉えています。

弊社の開発した検知方法は、自宅に設置されているスマートメーター(電力計)から取得可能なデータを活用します。電力データから、起床・就寝や外出、食事の準備といった生活パターンを定量的に捉え、そのパターンからフレイルが疑われる状態であるかを判断し、その情報を自治体に提供することで、支援するタイミングを知らせることができます。実際に、中部電力様の「eフレイルナビ」というサービスにAPIを提供しています。

この技術により、高齢者の健康状態を察知し、支援が必要なタイミングを自治体に提示できるという社会的意義と、中部電力様に利益をもたらすという経済的意義の両面に貢献できていると思います。

JAC:具体的にはどのようにデータを活用するのでしょうか?

冨長氏:スマートメーターの電力データは電気事業者以外の事業者でも活用が可能になっていますので、新しく機器を設置することなく電力データを収集することができます。検知の仕方ですが、電力使用量のグラフから外出回数や就寝時間などの情報を取得し、時系列データから行動パターンを推測します。また、当社はコンソーシアムの組成を得意としているので、フレイル対策コンソーシアムを立ち上げてさまざまな企業の参加を促し、フレイルの問題を解決するための包括的な取り組みを行っています。

問題を解決するためには、AI技術だけに特化すればいいわけではなく、さまざまな人との関わりが鍵になると考えています。2023年10月には実証実験に参加いただいている自治体が日経新聞で紹介され、中部電力様が「eフレイルナビ」をプレスリリースにて発表するなど、少しずつ認知度が高まっていると実感しています。

佐藤氏:AI技術を活用した事例は増えてきていますが、実際に社会を変えていけることを世間に知ってもらえたことも、大きなステップだったと思います。中橋さんも関わったメンバーとして喜びもひとしおだったと思いますが、どうでしたか?

中橋氏:フレイルは早期に検知することはもちろん、適切な介入も重要です。ただ自治体にはそのためのリソースが不足している場合も少なくありません。ですので、介入が必要な場合、介護領域のさまざまなプレーヤーを巻き込んで進めていくことが求められます。そこは自治体に伴走支援しながら、介入をしっかりと実行できるにはどうすべきか考えながら取り組むべきと考えます。

冨長氏:このプロジェクトは、JDSCらしさがよく表れたプロジェクトだったと実感しています。例えば対象者を監視できるようなセンサーを大量に設置していれば、確かにフレイルを見つけることはできるかもしれません。しかし高額なセンサーを高齢者がフレイルになる前から購入することは期待できませんし、現実的ではありません。社会性と経済性の両立を目指して技術を社会実装してきたJDSCだからこそ、今あるデータを基にフレイルを検知するにはどうすればいいかという視点で考え、その方法を見出すことができました。利用可能なデータを適切に分析し、実現可能な解決策を提案できることはJDSCの強みだと思います。

佐藤氏:同感です。単なるアルゴリズムを作るだけの会社ではないということを示せたプロジェクトでした。このサービスによって健康な生活を送る方を増やすことに貢献できていく。開発やアルゴリズムの構築だけに特化しているのではなく、より包括的に、世の中を変えていく活動に尽力する、私たちの姿勢が表れていたと思います。

JAC:電力データからフレイルを察知し、社会課題を解決するという発想そのものがほかにないアイデアですが、こうしたアイデアはどのようなプロセスで生まれたのでしょうか?

佐藤氏:スマートメーターの設置がすすむことを踏まえ、弊社として、電力データの解析が、世の中を変える大きなチャンスになるという仮説を持っていました。例えば、在宅状況を予測して不在配送を減らす実証実験なども行っていました。こうした過程を経て、そこから現実的なビジネスプランを考え、複数の企業にご提案する中で、中部電力様とジョイントR&Dを進めることになりました。

今回JDSCのアルゴリズムを使用して開発されたeフレイルナビは、中部電力様との協力のもとで世の中に初めて出た製品です。もともと電力データの活用がビジネスチャンスになると捉えてはいたものの、間違いなく単独では今回のようなビジネスは実現できなかった。ジョイントR&Dだからこそ実現できた事例だと思っています。

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2.JDSCが捉える今後のAIの社会実装について

JAC:第一線でAIビジネスを牽引されているJDSC様としては、今後AIの社会実装はどのように変化していくと考えていますか?

佐藤氏:AIの利用率は年々増加しており、あらゆる業界で当たり前のように使用されるようになってきました。特に最近ではChatGPTなど、日常に身近なユースケースも増えて来ました。また、AIを提供する企業やデータサイエンティストも増加してきたことで、AI構築やデータサイエンス自体の価値は薄まっていくでしょう。このような状況を背景に、ビジネスの構想を練る力や実務に落とし込む能力の重要性がますます高まっていくと考えています。

冨長氏:IT業界の変遷を振り返ると、今後のAI業界を占うヒントがあると考えています。例えばインターネットやWeb開発が世の中に出てバブルが起きた時は、最初はSIerがシステムを構築する役割を果たし、次第に事業会社が同様のスキルや知識を持つ人材を取り込み、ビジネスをつくる流れができていき、今に至ると思います。

おそらくAIも同様に進化していくのではないでしょうか。AIの専門企業が開発を担う状態から、事業会社が主体的にAIの活用を考えていくようになります。その時にはビジネス視点でのAI活用を提案することが重要になってくる。JDSCが企業のAI活用を支援することは、顧客企業が発展する支援でもありますし、社会の変革をご支援するという意味で社会的意義の達成にも繋がると考えています。

JAC:中橋さんは、データサイエンスの観点からはどのように考えていますか?

中橋氏:データサイエンスによる問題解決というものを考えたとき、定式化された問題を数理的に解いたりするスキルの価値はどんどん下がっていくと考えています。今や誰でもコードを書き、分析が容易になる現実に近づきつつあります。その時どこに価値を置くべきかと言うと、現実社会に落とし込む力だと思います。

具体的な課題を見つけ、解決する方法を考え、実装していくことが重要となっていくでしょう。この部分は、今のAI技術では対応できません。そこを私たちはしっかりと網羅し、取り組むべき課題や社会的な問題を解決していける存在でありたいと感じています。

決して数理的なステップをないがしろにするわけではありません。そもそも私自身データサイエンスチームのリーダーなので、数理的なステップはやらなければならない部分ではありますが、まずは解決すべき課題が何かを考え、どうしたら最適な手段でクライアントが社会実装できるのか考え続けられるような人でありたいしチームでありたいです。またこうした観点で活躍したい人は、当社にフィットします。

JAC:AI導入に適した業界や、社会を良くするためにAIを活用すべき業界はありますか?

中橋氏:AIが向いている業界は、データが豊富にあるところです。しかし重要なのは、課題解決に焦点を当てることです。課題を解決する上でデータサイエンスを用いることが有効だと判断すれば、どのような業界でもAIを活用したベストな手段をとことん追求していくべきだと考えます。現在の産業や社会の課題、その解決法の最適解を見定めることが大事ですね。

JAC:AIマーケットはますます活性化していくと予想されますが、生き残るAI企業になるためにどのような戦略を描いていますか?

冨長氏:幸いにもさまざまな企業と連携して実績を積み上げてきましたので、この実績を土台にできることは当社の強みです。AI企業として生き残るためには単にAIの知識や技術があるだけではなく、AIビジネスをどれだけ世の中に届けたかという経験値も必要です。当社はこれまで多くの経験を積む中で、AIによってうまく結果を出せなかった場面も乗り越えてきました。そうした経験をしてきたことは、これから参入してくるAI企業に対しての明確な強みだと思うので、より強固にしていきたいです。

また、AIプロジェクトには、不確実性がつきものです。AIがどこまで役立つか、実際にデータを見て試してみなければ分からないこともたくさんあります。そのためビジネス側の理解も深め、結果を出すための計画を立てなければ課題解決は達成できないと思います。技術だけでなくコンサルティングの能力もあるのがJDSCの良さですので、AI一辺倒でなく業務改革につながる包括的な提案をしていくことで価値を出していきたいと思います。

JAC:東大発という点も御社の強みですが、学術的な知見とビジネスをタッグすることで生まれるシナジーはどのようなことでしょうか?

中橋氏:社会性と経済性の両面に意義を見出せることです。社会的な課題は、大学の先生のもとに集まってくるものです。大学と連携を図ることで、そうした情報を起点にクライアントや社会の実態を考慮しながら、望ましいソリューションを設計・実装していく必要があります。一方、収益を生み出す方法についても考えなければなりません。優れたソリューションでも、収益が得られなければ維持できません。課題を解決しながらも経済合理性を生み出す視点を考えるのが、私たちの役割と思います。

佐藤氏:AI等の課題解決の手段を社会実装するためには、さまざまな事業者が動き続けるよう、インセンティブ設計を検討する必要があります。アカデミアだけでは実現することは難しいので、私たちの経験やノウハウを活かせると考えています。

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3.活躍し続けるデータサイエンティストとは?

JAC:御社で構築できるキャリアについてもお聞きします。入社することでどのようなスキルを習得できますか?

冨長氏:JDSCは自分の領域を広げる機会が多い職場だと思います。当社におけるプロジェクトマネジメントの役割は、お客様・開発者・事業の関係を円滑に進めるところにあります。スケジュール管理やリソース管理、プロジェクトの進行管理など、一般的にプロジェクトマネジメントの役割だと思われている業務は、その一部に過ぎません。

お客様と開発者を繋ぐ役割ではPoCの提案や結果の報告、お客様と事業を繋ぐ役割ではKPIの設定や効果測定といったビジネスの説明など、役割は多岐にわたります。さらにプロジェクトは、データサイエンス、ビジネス、エンジニアの3つのチームで協力しています。ですので、JDSCはプロジェクトマネージャーとして自分の可能性を広げていきたいという方にはとてもフィットすると思いますし、新しい視点を持てるようになるはずです。
私たちも、そうした方を歓迎します。選考の際にこうした職場環境についてご説明すると、候補者の皆さんにも自身のキャリアを高める機会がある会社だと感じていただけているようです。

JAC:例えばAIに関わった経験がない方でも活躍できるチャンスはあるのでしょうか?

冨長氏:はい。AI技術にアンテナを張り、積極的に学ぶ意欲のある方であれば、さまざまな関わり方ができます。AIの専門家でない多くの人にとって活用を考える際に重要になるのは、AIのインプットとアウトプットを理解することです。例えばインプットする情報をお客様に説明したり、AIのアウトプットをどうテストして実装にフィードバックすべきかを理解したり。AIを使うための構造が理解できていれば、AIの中身についての知識が絶対に必要というわけではありません。

JAC:AI技術が進化していく中、データサイエンティストが5年後、10年後も活躍し続けるためには何が必要でしょうか?

中橋氏:コーディングだけに価値を求めるのではなく、データサイエンスが問題を解決する手段であることを理解し、その手段を効果的に活用できる能力を身につけていくことが必要です。

エンジニアやプログラマの仕事がなくなることはありませんが、需要などは変わっていくと考えます。他の職種に取って代わられる可能性も大いにある。だからこそビジネスの世界で、自分の行動がどのような価値を生み出すか認識しておく必要があります。今自分が手がけている分析は何のためにやっていて、どのくらいの価値になるか。そんな考え方ができると良いのではないでしょうか。

様々なユースケースやベストプラクティスを知ること、使用されている手法の妥当性を説明できるようになること、課題を見つけて解決し、実装していく能力を身につけること。そうしたスキルが重要だと考えています。

JAC:本日は貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。ありがとうございました。

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