- 株式会社第一ライフグループ IT・デジタルユニット長 野田 剛氏
国内「4大生保」の一角として120年以上の歴史をもつ第一生命保険。2026年4月1日に持株会社の社名を「第一生命ホールディングス」から「第一ライフグループ」へと変更し、生命保険にとどまらない事業展開を加速させています。
グループのIT・デジタル戦略をけん引するのがIT・デジタルユニット。グループ各社の部門・役員・技術チームなど多様なメンバーと協働し、グループ全体のデジタル化を推進することをミッションとしています。
「保険業における日本発グローバルトップティア企業」を目指し、人財採用を強化中。IT・デジタルユニット長の野田 剛氏に、同部門のミッション、今後のビジョン、組織風土、組織づくりへの思いについて伺いました。
ビジネス戦略の中核として、グループ各社の進化とシナジーをけん引
―― まずはIT・デジタルユニットが発足した経緯、ミッションについてお聞かせください。
IT・デジタルユニットは2016年、第一生命がホールディングス制へ移行したタイミングで立ち上がりましたが、グループとしてのガバナンスやシナジーに関する取組が本格化したのは3年前、2023年です。スティーブン・バーナムをG-CIO(Group Chief Information Officer)兼G-CDO(Chief Digital Officer)として迎えたことを機に、グローバルトップティアを目指し、グローバルも含めたグループIT・デジタルの取組が加速しました。
2024年度からスタートした中期経営計画では、ビジネス戦略の中核にIT・デジタルを据え、IT・デジタルによりビジネスの推進、ビジネスモデルの変革をリードすることを目指しています。この方針のもと、グループ横断的なガバナンスとワンデジタルチーム運営により、グループ全体でのシナジー創出に取り組んできました。
2000年代まではITは、生産性を上げるための一つのツールという位置づけでした。しかし現在は、テクノロジーは経営に欠かせない武器として、さらにはテクノロジーを前提としてビジネスモデルが構築されるようになっています。とりわけここ数か月でAIの目覚ましい進歩もあり、変化の速さを強く感じています。
一方、サイバーセキュリティも、2年ほど前まではシステムトラブル発生時の復旧や、オペレーションレジリエンス、BCP対策といった文脈で語られていましたが、現在はビジネス停止のリスク、もっと言えば、経営リスクとして捉えられるようになっています。経営層を含め多くのステークホルダーが関心をもつテーマになってきたと感じています。
2030年に目指すのは、グローバル市場や国内の保険業界において圧倒的な存在感をもつ企業グループへ進化すること。その実現に向け、現状の課題を踏まえながら、議論を進めています。
―― 生命保険事業において、IT・デジタルで目指す進化をどのように描いていますか。
従来のデジタルは、利便性を高め、業務を効率化するという位置づけでしたが、近年の目指しい技術進歩により、いよいよビジネスそのものを変えていく存在になってきたと感じています。
生命保険はレガシーな業界です。当グループも120年以上の歴史の中で、良くいえば「大切な伝統」なのですが、変えきれないものが数多くあります。我々は変わらないものを守るために、時代の変化と共に変わらなければならないと思っています。まずはデジタルの力で生産性を上げていくことが重要ですが、AIの進展により、あらゆるサービスがAIに置き換わる可能性もあり、その時に、お客さまやステークホルダーとの関係性をどのように築いていくのかが大きな課題となると思っています。
生命保険業界は労働集約型のビジネスであり、まだまだ人が介在する仕事が多くあります。保険は「人が対面で提案した方が成約しやすい」という考えが根強いです。「○○さんが勧めてくれるなら入るよ」と、人同士の信頼で契約が成立することが多い世界です。
ネット保険もありますが、入りたいと思う人は入る一方で、そもそも興味をもたない人も多く、待っていてもお客さまから来ていただけません。既存の保険販売の世界観を変えていかなければ、労働集約型のビジネスからは抜け出せないでしょう。
今はまだ「人」の介在が大前提となっています。一方、人が対応するにしても、例えば、1日のお客さま訪問件数には限界があります。まずは、この点をデジタルでサポートし、お客さまとの接点を増やし、接点を深めるところから始めていますが、さらに進化させていきたいと思っています。「自分たちが便利になる」ためではなく、「お客さまが安心して加入できる」ためのデジタル活用を模索しています。
信頼関係をいかにデジタルの力で築けるか。そのゲームチェンジが次のステージの課題です。保険の未来を再構築し、それをグローバルに展開していく。その仕事は非常に面白く、ワクワクするものだと思っています。
―― 生命保険にとどまらず、新たな事業を展開されています。どのような未来を描いているのでしょうか。
当グループは、保険を売る会社から「保険サービス業」へ進化することを目指しています。2026年4月1日には、第一生命ホールディングスから「第一ライフグループ」へ社名を変更し、「生命保険」を意味する言葉を外しました。生命保険にとどまらず、ライフに関わるサービスを広く提供していこうとしています。
新たな収益の柱として注力するアセットマネジメント(資産運用・管理)事業に加え、2023年に完全子会社化したペット保険大手の第一アイペット損害保険、2024年に完全子会社化した福利厚生代行大手のベネフィット・ワン、など事業の幅が広がっています。
買収した企業や、戦略的にパートナーシップを組んでいる企業とコラボレーションしながら、いかにシナジーを生み出すか、どのような経済圏をつくっていくのかを議論しています。
最早、従来の競合他社と比較する世界ではありません。グローバルのトッププレーヤーに加え、保険業に限らずライフに関わるサービス業界にも目を向けながら、目指す姿を踏まえて、自分たちはどうあるべきかを模索中です。テクノロジーを活用し、第一ライフグループとしてどのようなビジネスをつくっていくのか。そうしたフェーズに移ってきており、非常に面白いと感じています。
グローバルの観点でいえば、海外生保事業の修正利益は1,000億円を突破、グループ修正利益に占める割合は、約25%まで拡大しています。これからの戦略を考える上で、私たちのチームでは常に「グローバルスタンダード」を意識しています。目指すのは、「日本発のグローバル企業」なのです。
多様なバックグラウンドのメンバーが自由に議論できる風土
―― IT・デジタルユニットの組織構成・風土をお聞かせください。
以前は、第一生命グループ内で同じ領域を経験してきた人たちで構成された組織でした。しかし、この3年で大きく変わっています。キャリアのほとんどを外資系企業で培ってきたスティーブン・バーナムが着任し、彼の加入を機に、大きな組織変革が進みました。
現在、ホールディングスのみで約60名の組織ですが、半数以上がキャリア採用で、3割強が外国籍です。多様なバックグラウンドをもつ人が集まっています。「変革の渦の中に飛び込み、ダイナミズムを感じながら働きたい」という志向をもつ方が多く入社しているのです。現在は、バックグラウンドやポジションに関係なく、自由闊達に意見交換や議論ができる環境です。
組織づくりの面での今後の課題は、個の力をどうつなぎ合わせていくか。一人ひとりにとって心地よいコミュニケーションをとれる環境をつくることで、コラボレーションを生み出すことが重要だと考えています。
変革を志向し、主体的にスピード感をもって取り組みたいと考えるメンバーが多くいます。そのため、例えば何重もの稟議プロセスのように、旧来の慣習の中で不要なものは排除しつつ、柔軟なコミュニケーションを促進しています。
外国籍のメンバーが増える中で、国ごとのコミュニティも生まれてきました。中国人コミュニティやスペイン人コミュニティなどがあり、母国語で会話する姿も見られます。「まさかこの会社で母国語を話すとは思わなかった」「使いやすい母国語でコミュニケーションを取れる環境は、仕事を進める力になるのでありがたい」といった声を聞くこともあります。どのようなバックグラウンドをもつ人にとっても働きやすく、活躍できる風土をつくっていきたいと思います。
一人ひとりの好奇心や情熱をしっかりとくみ取る組織でありたい
―― 野田様は人事部門に長く在籍されたそうですが、そのご経験を踏まえ、どのような組織づくりを目指しているのでしょうか。
私は入社して24年になります。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後は人事の仕事を長く経験してきました。人や組織のマネジメントを通じ、会社を変えていく仕事に長く携わってきた経験は、今のポジションでも非常に生きています。
テクノロジーの力だけでは組織は変わりません。人・組織・テクノロジーが掛け合わさって初めて力になる。人事とITの両方を経験してきた中で培ってきた考えや思いを、今の組織づくりに反映しています。
人事時代には、それまで活躍してきた人が突然パフォーマンスを落としたり、会社への不満を抱えて退職に至ったりするケースにも遭遇しました。そうした方々との対話を通じて、「なぜこうなってしまったのか」を考える機会が数多くあったのです。
ひも解いていくと、そうした問題のほとんどはコミュニケーションに起因しています。職場でのコミュニケーションのずれが、不満やパフォーマンスの低下につながっていく。上長や組織が一人ひとりの好奇心や情熱をしっかりと受け止められているか、引き出せているか。そもそも、人としてリスペクトできているか。そこができていれば、多くのことはうまくいくと私は思っています。
どれだけ能力が高く、仕事ができる人でも、職場での関係性や環境が悪ければ力を発揮できません。大事なのは相互のリスペクトです。仕事を前進させること、変えていくこと、その土台には「エンゲージメント」がありますし、好奇心や情熱も欠かせません。
どのようなものも「人」がつくっている。その原点は決して忘れてはいけないと思っています。メンバーがやりたいこと・できることと、会社として期待することが一致しないケースもあるでしょう。そのズレについて上司としてきちんと対話できているのか、適切なフィードバックができているのか、さらに本人もそれを踏まえて努力できているのかが問われます。ズレを大きくしないためにはコミュニケーションや仕掛けが大切だと実感してきたので、人事時代の経験を生かして実践しています。
また、会社が目指す「人財育成」を、自分自身が率先して体現することも意識しています。社員に成長を求める以上、部長だからといって自分のことを棚に上げるわけにはいきません。グローバルな環境、常に変わりゆく外部環境に適応し、戦っていくために、英語力の向上や大学での普遍的な知の学びを継続しています。自分も常に成長が必要である、という姿を見せることも大事だと思っています。
人事としては幅広く経験してきましたが、IT領域では足りないものが数多くありますし、周囲には専門性が高い、自分は到底かなわないと思う人が多数います。専門性へのリスペクトをもち、日々刺激を受け、自分自身に足りないものを補っていきたいと思います。
―― 応募・入社を検討する方にメッセージをお願いします。
まず、グループ各社が目指している方向を知っていただきたい。そこに共感してもらえれば、ご自身のやりがいや成長にも必ずつながるはずです。成長したいという思いをもつ方には、素晴らしい環境を提供できると思っています。
もちろん技術力も大事ですが、それ以上に大切なのは、「○○をしたい」「○○を成し遂げたい」という情熱や好奇心だと思っています。ご自身の情熱や好奇心と私たちのビジネスに接点があり、色々なことに挑戦してみたいと思える方には、ぜひ仲間になっていただきたいですね。可能性は無限に広がっています。
※原則、雇用元は第一生命保険株式会社です。在籍型出向にて第一ライフグループ株式会社での勤務となります。
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