ロケットベンチャー企業は、小型ロケットの開発や宇宙輸送サービスを通じて急成長しています。独自技術による物資輸送や打ち上げ実績が評価され、宇宙産業の新しい担い手として求人も活発になっています。また、宇宙ビジネス転職市場でも今後の動向が注目されます。
本記事では、ロケットベンチャー企業への転職を目指す方に向けて、JAC Recruitment(以下、JAC)が、主要なロケットベンチャー企業の特徴や、転職時のメリット・デメリットについてご紹介します。
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ロケットベンチャー企業とは?
技術の発展と経済活動の拡大、宇宙開発の民間移行にともない、宇宙関連事業におけるビジネスチャンスが拡大し、さまざまなサービスを提供するベンチャー企業が登場しています。本記事では、その中でも、ロケットの開発や製造、打ち上げサービス、人工衛星を活用したサービスを提供するベンチャー企業を「ロケットベンチャー」と定義し、解説します。
ロケットベンチャーを含む宇宙産業の市場規模
宇宙産業全体の市場規模は、年々拡大を続けています。世界経済フォーラムが2024年に発表したレポートによると、2023年時点での世界の宇宙産業市場規模は6,300億ドル(約98兆円)とされています。さらに、2035年には1.8兆ドルに達する見込みです。この予測には、ロケットの打ち上げだけでなく、衛星によって得られるデータを活用したサービスによる収益も含まれるものの、顕著な成長が見込まれています
一方、日本の宇宙産業の市場規模は2023年時点で約4兆円です。また、宇宙基本計画では2030年代の早期に8兆円にまで拡大することを政府目標として掲げています。
政府の取り組み/ロケットベンチャー企業のトレンド
政府は基幹ロケットの開発だけでなく、民間ロケットの開発支援を積極的に行っています。昨今のロケットベンチャー企業を支える政府の取り組みや、ロケットベンチャー業界のトレンドについて解説します。
宇宙戦略基金の設立
政府は、総額1兆円規模の宇宙戦略基金を設立しました。宇宙戦略基金は、日本の宇宙開発の中核機関である宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設置した基金を活用し、最大10年間にわたり、民間企業や大学などの研究開発を支援するものです。ロケットベンチャーの中にも宇宙戦略基金の補助を受け、開発を進めている企業があります。
JAXAスタートアップ支援制度の設立
JAXAは、独自に研究開発した成果を社会に役立てることを目的として、従来「JAXAベンチャー支援制度」を運用してきました。2025年に、この制度を改正し、「JAXAスタートアップ支援制度」へと名称が変更されています。
この改正により、スタートアップ企業がより支援を受けやすい環境を整備するとともに、JAXAと一定の連携関係を有する外部スタートアップ企業も支援を受けられるようになっています。
SBIRフェーズ3基金事業によるロケットベンチャー企業の支援
スタートアップ企業の優れた技術を速やかに社会実装につなげるため、スタートアップによる大規模技術実証を支援するSBIRフェーズ3(特別枠)が、2022年度の補正予算において新設されました。
フェーズ3基金事業は、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省によって実施されるものです。この中で、文部科学省は公募テーマの一つに民間ロケットの開発・実証を掲げました。支援対象には、後述のインターステラテクノロジズ株式会社、株式会社SPACE WALKER、将来宇宙輸送システム株式会社、スペースワン株式会社などのロケットベンチャー企業が選ばれています。
小型打ち上げロケット需要の増加
通信や地球環境観測など、人工衛星の用途が拡大し、それにともなって衛星の小型化が進んでいます。この流れを受け、打ち上げに関するコストの低下や頻度の増加が可能な小型打ち上げロケットへの需要が高まっています。大手重工業メーカーなどが手掛ける大型ロケットとの競合も避けられることから、世界中のロケットベンチャー企業が小型打ち上げロケットの開発に参入しています。
コスト低減、リードタイム短縮につながる再利用技術の開発
先にも述べましたが、人工衛星の打ち上げニーズが増加する中、打ち上げに対してどこまでコストを削減し回数を増やせるかが、ロケットベンチャー企業の重要な課題となっています。再利用も可能な簡素化された設計は、コストを低下させるとともに、次の打ち上げまでのリードタイム短縮を実現します。安く、早く、頻繁に打ち上げられるようになれば、競合他社との差別化につながるため、各社が競って再利用可能な小型打ち上げロケットの開発を進めています。
ロケットベンチャー企業の主な企業一覧
ここでは、日本の主要なロケットベンチャー企業を紹介します。
インターステラテクノロジズ株式会社
インターステラテクノロジズ株式会社は、民間企業単独として初めて観測ロケットを宇宙空間へ到達させた企業です。ロケット事業と通信衛星事業の垂直統合型ビジネスモデルの構築を目指して、現在も開発が進められています。ロケットを高い頻度で打ち上げるためには、ロケットを一点物ではなく、規格化し量産できる体制への転換が必要です
インターステラテクノロジズでは、ロケットの量産化をはじめ、高頻度・低コストでの打ち上げを可能にする宇宙輸送サービスの確立に向けた取り組みを加速させるなど、日本の民間宇宙輸送を牽引しています。
スペースワン株式会社
スペースワン株式会社は、小型ロケットによる宇宙輸送サービスを提供しているロケットベンチャー企業です。和歌山県に、日本で初めてとなる民間ロケット射場、「スペースポート紀伊」を建設し、運用も行っています。
「カイロス」という独自ロケットは、固体燃料を採用することで、シンプルな構造を実現している点が特徴です。シンプルな構造によって製造が容易になり、コスト削減や短期間での製造が可能となりました。そのため、契約から打ち上げまでの期間が短縮され、高頻度での打ち上げも実現しやすくなっています。
株式会社SPACE WALKER
株式会社SPACE WALKERは、再生利用が可能な有翼式再使用型ロケット(サブオービタルスペースプレーン)の開発を行うロケットベンチャー企業です。ロケットの再使用化によって海洋投棄を極限まで抑え、カーボンニュートラルな液化バイオメタン燃料を活用するなど、地球環境への負荷を低減した持続可能な宇宙輸送手段の提供を目指しています。開発中のロケットは「ECO ROCKET®」と名付けられています。
株式会社アクセルスペースホールディングス
株式会社アクセルスペースホールディングスは、2003年、日本の大学生チームによって重さ1kgの超小型衛星が開発され、世界初の打ち上げ・運用に成功しました。このプロジェクトに参加したメンバーによって設立されたのがアクセルスペースです。これまでに11機の小型衛星を開発し、軌道上で運用した実績を生かし、小型衛星のワンストップサービスである「AxelLiner」や地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」を提供しています。
PDエアロスペース株式会社
PDエアロスペース株式会社は、単一のエンジンで宇宙に到達することを目指し、デトネーション技術を基盤とする世界初のジェット燃焼モード/ロケット燃焼モード切り替え型エンジンを開発している企業です。2017年には燃焼実験に成功しており、技術実証と実用化に向けた開発が行われています。開発が進められているのは、完全再使用型サブオービタル宇宙機であり、航空機のように離着陸するものです。
有人および無人の宇宙機を開発していることから、宇宙旅行者向けの事前訓練プログラムも提供しています。
将来宇宙輸送システム株式会社
将来宇宙輸送システム株式会社は、繰り返し使用可能な再使用型ロケット「ASCA(アスカ)」を開発している企業です。2040年代前半には、1,000回以上の飛行が可能なロケットを用い、1日2回、最大50人の乗客と物資を輸送する宇宙輸送システムの確立を目指しています。
2025年には、日本企業として初めてアメリカでのロケット垂直離着陸実験「ASCA1ミッション」を実施することを発表し、創業から3年、構想1年のスピード感が話題となっています。
AstroX株式会社
AstroX株式会社は、大型の気球で成層圏までロケットを放球し、そこからロケットの空中発射を行うロックーン方式での衛星軌道投入サービスの開発を行っている企業です。実現すれば、天候に左右されにくく、地上発射にともなう空気抵抗が少ないため、少ないエネルギーかつ低いコストで打ち上げが可能になります。2023年には、サブオービタルロケット「FOX」の空中発射における姿勢制御装置の統合試験に成功し、2026年にはロックーン方式による打ち上げの実現を目指しています。
株式会社ElevationSpace
株式会社ElevationSpaceは、「軌道上の人とモノをつなぐ交通網の構築」をビジョンに掲げ、小型衛星による再突入技術を中心に、宇宙から地球への輸送サービスの開発に取り組むベンチャー企業です。
国際宇宙ステーション(ISS)は2030年末で運用終了が決まっています。その後継となる存在として、フリーフライヤー型の軌道上実証・改修衛星「ELS-R」や、宇宙ステーションから高頻度で改修可能なカプセル「ELS-RS」を開発し、提供することを目指しています。また、2026年以降には、日本初の民間主導による再突入衛星「あおば」が打ち上げられる予定です。
ロケットベンチャー企業で働くメリット・デメリット
ロケットベンチャー企業が目覚ましい勢いで成長している今、これまでの知識や経験を生かしてロケット開発に携わりたいと考えるケースもあるでしょう。以下にロケットベンチャー企業で働く場合の主なメリットやデメリットを紹介しますので、転職検討時の参考にしてください。
ロケットベンチャー企業で働くメリット
ロケットベンチャー企業で働く主なメリットは、以下の5つです。
最先端技術に関わりスピード感のある環境で成長できる
ロケット開発には最先端技術が集約されており、世界市場で競争するため、業務はスピード感を重視します。短期間で試行錯誤を重ねながら多様な経験を積み、早期に成長を実感できます。
大きな裁量で幅広い業務に挑戦できる
少人数体制のため、一人が担う業務範囲や裁量は大きく、年齢に関係なく重要な役割を任されることもあります。経営層との距離が近く、意思決定に関わる機会も多いため、スキルの幅を広げながら責任ある業務に取り組めます。
成長業界でキャリアを構築できる
宇宙産業は、世界的に成長している分野です。日本政府も積極的に宇宙関連のベンチャー企業を支援しており、将来性も高い業界だといえます。ロケットベンチャー企業での実務経験は、将来、ほかの宇宙産業分野でも応用できる可能性が高いものです。また、成長著しい分野で裁量権をもって業務を行った経験は、今後のキャリアにも大きなプラスとなるでしょう。
同じ夢や目的をもつ仲間と協働できる
ロケットベンチャー企業には、宇宙への関心が高い人が集まっており、自社の技術で成功させるという強い意志のもと、高いモチベーションで業務にあたっています。ロケット開発という難題に組織一体となって取り組み、成功時には大きな達成感を得られます。持続可能なロケット開発は、社会貢献につながる分野でもあり、高い志を維持しながら取り組める点も、ロケットベンチャー企業で働く魅力の一つです。
ロケットベンチャー企業で働くデメリット
ロケットベンチャー企業で働くことには、多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあることに注意が必要です。
まず、開発から、実証実験を経て商用ベースに乗せるまでには、非常に時間がかかります。その間の開発費は巨額になるため、資金調達が必要です。目標を達成するまでの間に資金繰りが悪化し、経営が厳しくなるリスクもあります。また、少人数での開発体制であるため、裁量権は大きい一方で、わずかな判断ミスがプロジェクトの失敗につながるリスクもあり、精神的なプレッシャーも大きくなります。
さらに、大手企業のような充実した福利厚生制度が整っていないこともあり、プロジェクトの進行状況によっては、労働負荷が高くなることもあります。
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日本でも、数々のロケットベンチャー企業が独自のロケット開発を進めています。日本政府も積極的に宇宙産業に携わるベンチャー企業の成長支援を行っており、今後ますます、宇宙産業の成長が期待されています。
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