銀行や証券、保険などの金融機関において「FinTech(フィンテック)」が急成長しています。従来、金融機関は新卒採用や同業界からの転職が中心でしたが、近年はフィンテック領域を中心にDXに強い人材を、異業界から採用する動きが活発化しています。
業界の一大変革期の真っ只中にある金融機関。中でもフィンテック関連の転職市場動向について、JAC Recruitment(以下、JAC)のフィンテック領域専任コンサルタントが解説します。
目次/Index
フィンテックに特化した専任コンサルタントが、あなたの転職をサポートします。
業界における市場価値はもちろん、レジュメの効果的な書き方、面接対策、企業傾向の情報収集など、
JACのコンサルタントにご相談ください。
フィンテックとは?
フィンテックとは銀行や証券、保険などの金融領域のビジネスに、IT・デジタルを組み合わせることで、新たなビジネスやサービスを創出することを指します。
銀行は預金や融資、生保・損保は保険料、証券は手数料といったそれぞれの本業があります。いずれの業界でもテクノロジーを活用する「DX」を通じて、第2,第3の収益源を生み出そうとしています。
金融機関×フィンテックの最新トレンドと、これからの可能性
金融機関におけるフィンテックのトレンドとしては、データの利活用が挙げられます。
銀行は膨大な購買データや個人情報を抱える一方で、それらを有効に利活用できていませんでした。近年はデータを活用した新規事業や既存業務のデジタル化を進める一方で、海外へ商圏を広げるべく、アジア・パシフィック圏へ積極的に進出しています。
一方で信託銀行は不動産や相続、証券代行など幅広いサービスを提供しています。少子高齢化が進むことから信託銀行の社会的な存在意義は年々高まっており、組織の若返りを目指して積極的に中途採用を進めると同時に、デジタル化への対応を進めている最中です。三井住友信託銀行では資産運用や遺産相続にブロックチェーンを活用し、業務の迅速化を図るといった実証実験を行ったケースがあります。
また、生保・損保や事故や災害、疾病に関するデータを保有しており、予防に焦点を当てたヘルステックにも注力しています。がん保険で世界トップシェアを誇るアフラックでは、がんに関する膨大なデータを活用し、医療機関や自治体、DX関連のスタートアップと連携しサービス開発を進めています。損害保険でもドライブレコーダーから収集したデータや災害に関するデータを活用し、防災、減災、気候変動リスクに関するサービスを手掛けるなど、これまでとは異なるビジネスが立ち上がっています。
金融機関におけるフィンテック領域の転職市場動向
新規事業と既存事業の両方でデジタル化が進んでいる背景から、プロジェクトマネージャー(PM)の求人は非常に多い傾向が続いています。古いシステムを新しいものへと刷新するマイグレーションに関するプロジェクトが多いため、全体最適を考えてシステムの要件を定義できるITアーキテクトのスキルを持った方の需要が伸びています。
金融機関では長らくシステム開発・運用を外部のSIerに依存してきた結果、内部にノウハウが蓄積されずベンダーを適切にコントロールできなかったという背景があり、内製化が進んでいます。デジタル関連の投資も3年間で1.5倍、1000億円規模まで増額するケースや、中途採用の人数も年間一桁から数十人に増やすなど、各社とも積極的に異業界からの採用を進めています。今後はデータエンジニアやデータサイエンティスト、データアナリストなど、データ関連の求人の増加が予想されます。
また、金融機関ならではの特徴としてはサイバーセキュリティ関連の採用も非常に活発です。近年、複雑化するサイバー攻撃に対応するべく、独自にSOC(Security Operation Center)を内部に設ける企業も増えています。
一方で新規事業領域ではターゲットとする業界で、0→1の事業立ち上げを経験した事業企画・開発人材を積極的に募集しています。とりわけヘルスケア、モビリティ、デジタル関連のビジネスの事業会社で新規事業をリリースし、マネタイズまで実現した方の市場価値は高く、金融機関でも新たなビジネスに関われるポジションが多数あります。
デジタルを活用した業務改善や最適化を図る企業も多く、BPR関連の求人も多数あります。金融機関は課題解決能力に長けた人材育成に後れを取っていた背景から、中途採用に力を入れており、主にコンサルティング業界から転職する方が活躍されています。
金融機関におけるフィンテック領域の年収相場
課長以下が600万円から1300万円、課長以上が1300万円から1800万円が一つの目安と言えます。
金融機関は旧来の総合職採用が中心で、専門職採用を進めている企業は他業界と比較すると少ない傾向があります。しかし、現在は専門職採用に加え、一部の職種においては独自の年収テーブルを設定する企業も出始めています。三菱UFJ銀行は2024年から専門の業務分野以外への異動がない新たな人事区分を設けることを発表。みずほフィナンシャルグループでも年功序列型の給与体系や役職定年を廃止し、スペシャリストやシニア社員の活躍の場を広げる動きが進んでいます。
こうした動きに追従するかたちで他社でも人事制度を改革する動きは進んでおり、中途採用で入社するDX人材にとっても妥当性のある待遇でオファーする企業が増えています。
金融機関におけるフィンテック領域でのキャリアパス
スペシャリストとして自身の専門性を磨くパターンと、マネジメントとして組織を束ねる2つのパターンに分類されます。
スペシャリストのキャリアパスとしては現場で大規模なプロジェクトを担当するポジションだけでなく、更に事業やサービスの上流に携わるポジションを目指して、現場とは離れた立場で企画職として活躍するポジションもあります。
総合職採用のイメージが強い金融機関ですが、先に述べた通りスペシャリスト採用やジョブ型雇用も進んでいます。自分の専門性を伸ばしやすいだけでなく、次の転職活動でも強力なアピール材料となる経験が積める業界として、今後は異業界からの転職がさらに増えていくことが見込まれます。
金融機関におけるフィンテック領域で必要な知識・スキル
金融機関のフィンテック領域で活躍するには金融とITに関する知識に加え、高度な折衝能力が必要な場面があります。それぞれのポイントについて紹介します。
金融に関する知識
金融機関においては、職種によって必要な金融機関の知識が異なります。
例えば、銀行ではBPRや基幹システムのPMは業務フローからオペレーションまでの理解が求められますが、新規事業のポジションでは不要であり、担当するビジネス領域の知識が欠かせません。一方でセキュリティ関連のポジションでは商慣習や基幹システムに対する理解が求められます。
折衝能力
社内の利害関係者との合意形成を進めながら、金融機関ならではの長く複雑な承認フローを通す折衝能力は欠かせません。また、内製化が進んでいるとはいえ、内部で開発を進めるケースはほとんど無く、外部ベンダーとのやりとりが発生します。その際も現場から抽出した課題を効果的に引き出し、外部に的確に解決策を指示する能力が要求されます。
IT・デジタルに関する知識
PMやセキュリティ関連のポジションであっても、実際に自ら手を動かすケースはありませんが、外部ベンダーと対等に話せるだけの技術理解は必須です。外部ベンダーの言いなりになることなく、対等な立場で対話しながらプロジェクトを成功に導くことができる方を業界では求めています。
金融機関におけるフィンテック領域で働くうえで必要な心構えとは
新たな取り組みを進める金融機関ですが、他業界と比較して承認フローが多く、スピード感に欠けるといったイメージを持たれる方もいらっしゃいます。影響範囲も大きく、動く金額も決して小さくないため、慎重さを持ちながら着実に大きな山を動かすようなマインドセットが欠かせません。時には泥臭く動くことも必要です。
また、決まった型にはめて物事を進めるイメージを持たれがちですが、業界ではそういったカルチャーからの脱却を目指しています。既成概念や商慣習にとらわれすぎず、自らの手で業界のイメージを刷新する気概を持つことも大切です。
金融機関が持つコンプライアンス遵守をベースとした真面目で堅い文化は変わりつつあります。とりわけDX関連の組織は顕著で、大手日系企業の文化と大差は無く、金融機関特有の文化はありません。DXという業界の変革期にある中で、ステレオタイプな文化やイメージを崩すような方が求められています。
金融機関未経験での転職は可能?
先述の通り、フィンテック領域では異業界での経験やスキルを持った人材を積極的に採用しています。特にIT業界出身の方はPMやシステム部門のポジション、コンサルティング業界出身の方はBPR、ヘルスケアやモビリティ業界の方は新規事業のポジションで活躍されている事例があります。また、業界を問わずデジタルマーケティングに従事された方は、金融機関でも同様のポジションの募集が多数あります。
金融機関におけるフィンテック業界の転職成功事例
ここでは、JACを通じてITベンダーから大手損保へ転職に成功したKさんの事例を紹介します。転職のきっかけ・応募した企業・採用に至った決め手・年収アップ金額など、実例を元にお伝えします。
ITベンダーから保険会社への転職を実現
Kさん(40代/男性)は大手ITベンダーでプリセールスを担当。直近ではセキュリティ関連サービスの立ち上げからセールスを経験し、裁量を持って幅広く業務に取り組むことに手応えを感じていました。しかし、異動により再び細分化した業務に魅力を感じられず転職を決意。
当初はITベンダーを志望されていましたが、保険会社が新規に立ち上げるセキュリティ関連のポジションをJACのコンサルタントが紹介しました。大企業でありながら先進的な領域で企画から実運用まで関われることに魅力を感じたKさんと、企業担当者の思いが合致しスムーズに内定を獲得。年収も900万円から1100万円にアップし、金融機関での新しいキャリアをスタートさせています。
金融機関におけるフィンテック領域への転職Q&A
Q. 新しいものが生まれにくい印象がありますが、コンプライアンスを遵守する堅さゆえに動きが遅いことはないでしょうか
A. 必ずしもそうとは限りません。多くの企業がこれまでのカルチャーからの脱却を図り、稟議や承認フローもスピーディーなものへと改革が進んでいます。また中途採用も積極的に進めることで、プロパー社員中心の組織カルチャーから脱却している企業も多数あります。
Q. 金融機関は営業部門が強い印象があります。DXに対しても消極的であったり、現場からの反発が強いのではないでしょうか
A. どの企業でもデジタルに関する予算を最低でも1.5倍以上増額し、中期経営計画でもDXを中心に据えるなど非常に高い優先順位で取り組んでいます。経済紙でのインタビューでも代表取締役自らDXの重要性を語り、経営会議ではDX関連のプロジェクトや計画が必ず議題に上がるなど、聖域なき改革が進んでいます。
金融機関におけるフィンテック領域への転職はJAC
JACでは、他社に先駆けて2020年からフィンテック専門のコンサルタントチームを立ち上げました。金融✕デジタルに特化した専任コンサルタントが業界の転職市場動向を日々リサーチ。圧倒的な情報量には自信があります。
また、企業の採用担当だけでなく役員などの経営層とも日々面談し、採用戦略や各ポジションの募集の背景にある課題などをヒアリング。その内容をダイレクトに登録者の皆様にお届けすることで、ご希望を叶える転職をサポートします。
コンサルタントは金融業界出身者が多いのも特徴です。コンサルタント同士で日々情報交換を行うことで、特定のコンサルタントに知識や情報が偏ることもありません。これからフィンテックによる改革が進む金融業界への転職をご検討されている方は、ぜひJAC Recruitmentまでご相談ください。
フィンテックに特化した専任コンサルタントが、あなたの転職をサポートします。
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