化学エンジニアの転職動向や最新求人、未経験からの転職難易度も解説

化学工学の知識を生かし、さらなるキャリアアップや新領域への挑戦を目指す方にとって、化学エンジニアは魅力的なキャリアパスの一つです。特に、脱炭素社会に向けた新エネルギー技術やライフサイエンス分野の成長が著しい昨今、化学エンジニアの活躍の場は広がり続けています。

本記事では、化学エンジニアの転職市場動向や最新求人情報に加え、未経験からの転職難易度などをJAC Recruitment（以下、JAC）が解説します。

化学エンジニアの転職市場動向

化学エンジニアの転職市場は、石油化学や基礎素材メーカーといった以前からある採用需要に加え、現在は選択肢の多様化が進んでいます。特に製薬、再生可能エネルギー、電池材料、バイオプラスチックなどの分野では採用需要の増大が顕著です。

今後の展望としても、世界的な潮流であるカーボンニュートラルの実現に向けた新エネルギー技術や省エネプロセスの開発、ライフサイエンス領域の成長によって、化学エンジニアが活躍する舞台はさらに広がるでしょう。さらに、アメリカや中国ではバイオテクノロジー分野に巨額の投資が行われており、国際的にも化学エンジニアの採用競争は激化することが予測されています。

求人票を読み解くと、新規事業・新拠点の立ち上げや、技術革新・製品開発強化を目的とした採用が多く、多くの企業が事業成長の中核を担えるスペシャリストを求めている様子がうかがえます。加えて、グローバル展開を視野に入れた募集も目立ち、外資系企業や日系グローバル企業を中心に、英語力や異文化理解を備えたビジネスパーソンへのニーズが高まっています。

化学エンジニアが求められる主な転職先候補

本章では、化学エンジニアが求められる次の主な5つの転職先候補について解説します。

製薬・バイオ企業

製薬やバイオテクノロジー分野の化学エンジニアは、医薬品やワクチンの製造・開発、品質保証、スケールアップなどの職務を担います。

具体的には、微生物の培養や細胞培養に用いるバイオリアクター（培養槽）の設計・最適化、医薬品の有効成分を、高純度で精製するための分離・精製プロセスの開発など、その業務は多岐にわたります。

社会的意義が高く、最先端技術に携われる点も魅力です。研究開発投資に積極的な企業が多いため、挑戦意欲の高い方にとって魅力的な転職先といえるでしょう。

素材・化学・半導体メーカー

素材や化学メーカーでは、石油化学製品や高分子材料、電子材料の研究開発から製造プロセス改善まで幅広い職務を担います。具体的には、既存製品のコストダウンや品質向上を図る改善活動から、新機能素材の量産技術の確立といった業務が挙げられます。近年は従来の石油化学中心の構造から脱却し、高機能樹脂、炭素繊維、半導体材料など、付加価値の高い分野へのシフトが進んでいます。

また、素材・化学・半導体メーカーでは、グローバル規模の競争が加速しており、特に海外市場展開を強化する企業ではビジネスレベルの英語力を備えていると歓迎されることもあります。

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エネルギー・環境関連企業

エネルギー分野の化学エンジニアは、エネルギー効率の改善や環境負荷低減に貢献することが期待されています。活躍の場も従来の石油精製やガスプラントだけでなく、再生可能エネルギーや水素エネルギー、二酸化炭素回収・利用（CCUS）といった新規領域にまで広がっています。

特に環境関連企業では、排水処理や廃棄物リサイクル技術の導入、新素材を活用した環境対応製品の開発が進められており、社会的使命感をもって取り組める分野といえます。

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食品・消費財メーカー

食品や消費財メーカーでも化学エンジニアの存在がますます重要になっています。

食品分野では、発酵技術や食品添加物の製造プロセス、品質管理などの領域で活躍でき、食品の安全性と安定供給を支える役割を果たします。消費財メーカーでは、スキンケア製品や洗剤、日用品といった分野で新素材の開発や製造工程の効率化に携わり、消費者のニーズを反映した製品の実用化を推進します。

市場競争の激しい業界であるため、スピード感をもって商品開発を行える実行力や、データ活用のスキルが重視されます。

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自動車メーカー（EV・素材）

自動車業界のなかでも電気自動車（EV）の分野は、化学エンジニアの新たな活躍の場として注目を集めています。

代表的な業務としては、リチウムイオン電池のエネルギー密度や寿命を向上させるための新しい電極材料の開発、バッテリーの熱暴走を防ぐ熱マネジメントシステムの設計などが挙げられます。また、自動車の軽量化を目的とした新素材の開発や塗料・接着剤の改良に携わるケースもあります。

グローバル競争が激しい業界のため、国際共同研究への参画や海外工場との連携が求められることも少なくありません。そのため、採用選考では語学力や異文化への適応力、異なるバックグラウンドをもつメンバーと円滑に協働できる能力・姿勢が問われます。

次世代モビリティの成長分野に携わりたい方にとって、自動車メーカーでのキャリアは有望な選択肢となるでしょう。

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化学エンジニアの最新転職・求人情報

本章では、化学エンジニアが求められる最新求人・転職情報を紹介します。

なお、本記事で紹介している求人は、JACが取り扱う求人の一部です。JACが取り扱う求人は、大半が非公開となっています。そのため、非公開求人も含め化学エンジニアが求められる求人の紹介を希望する方は、ぜひJACにご登録ください。
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●中外製薬株式会社：化学工学研究員 / Chemical Engineer

●品質サービス企業：化学分析エンジニア

●化学系大手エンジニアリング会社：機器・配管応力解析エンジニア

●化学原料メーカー：化学プラントの機械設備エンジニア

●大手化学メーカー：プラントエンジニア

●非公開：ケミカルエンジニア

※掲載中の求人が終了している場合もございます。ご了承ください。（2025年9月現在）

未経験から化学エンジニアへの転職は難しいのか

化学エンジニアは高度な専門知識を必要とする職種であることから、完全未経験からの転職は容易ではありません。

しかし実務経験がなくても、化学工学や工業化学、理工系学部で学び、修士課程や博士課程を修了した経歴を有する方であれば、研究や実験の経験が評価され採用に至る場合があります。また、品質管理や研究補助など隣接領域での実務経験も、高い評価につながることがあります。

未経験から化学エンジニアへの転職に挑戦する場合、採用担当者に入社後の貢献イメージを具体的に示せるよう、専攻内容や研究テーマを整理し、企業の技術課題との関連性を明確にすることが重要です。

化学エンジニアへの転職で求められる経験・スキル・マインド・資格

ここでは、化学エンジニアへの転職で求められる次の4つの要素について解説します。

化学工学の知識・技術を用いたプロセス開発・最適化、スケールアップ

化学エンジニアへの転職では、化学工学の学術的な知識と、それを実際のものづくりに適用した実務経験が求められます。

研究段階の実験結果を工業規模に拡張するスケールアップは、理論だけでなく実際の生産現場での試行錯誤を通じた知見が欠かせません。また、既存の製造プロセスの課題を分析し、収率の向上やコストダウン、品質の安定化を実現した「プロセス開発・最適化」の経験は、即戦力として活躍できる可能性を示すうえで有効です。

これらの経験者は即戦力として歓迎され、製造現場と研究開発の橋渡し役を担うことが期待されます。

分析機器操作（NMR、XRDなど）、PythonやMATLABを用いたデータ解析

昨今の化学エンジニアには、実験結果や製造過程から得られる膨大なデータを活用するスキルが不可欠になりつつあります。

具体的には、物質の構造を解析するためのNMR（核磁気共鳴装置）や、結晶構造を調べるためのXRD（X線回折装置）といった高度な分析機器を自ら操作し、得られた分子構造や結晶性、純度などの定量的データを的確に解釈して、研究や製造工程にフィードバックすることが求められます。また近年では、PythonやMATLABを用いて大量のデータを統計的に解析したり、化学プロセスのシミュレーションモデルを構築したりする能力も重要視されるようになりました。

技術職におけるデジタルリテラシーの重要性が高まっている背景もあり、データを活用して課題解決にあたれる化学エンジニアは、転職の際に好条件の提示が期待されます。

周囲と協調しながら長期プロジェクトを遂行する粘り強さ

化学エンジニアには、周囲と協力しながら課題解決に取り組む協調性も不可欠です。

その理由として、化学エンジニアの業務の多くは、研究開発や製造、品質管理、営業など、多様な部門の関係者と連携して推進するケースが大半だからです。また、設計段階から稼働後の検証まで数年単位で進行するプロジェクトも多いため、短期的成果にとらわれず持続的に取り組む粘り強さも問われます。

このように困難な状況下でも冷静に対応し、関係者を巻き込みながら粘り強く成果の創出を目指す姿勢は、化学エンジニアとして活躍し続けるために必須の素養といえます。

危険物取扱者（甲種）、技術士（化学部門）、高圧ガス製造保安責任者

化学エンジニアへの転職を目指す際、関連する国家資格の保有は、自身の専門性と安全に対する高い意識を客観的に証明する際に役立ちます。

危険物取扱者（甲種）は、危険物の取り扱いに関する専門知識を有していることの証明になります。また、技術士（化学部門）は国家資格として高い専門性と倫理性を保証する資格であり、特にマネジメントや海外案件に関与するポジションで評価されることがあります。さらに高圧ガス製造保安責任者はプラント稼働の現場で必須とされるケースが多く、取得していることで転職活動を有利に進められるようになります。

さらに、グローバルなプロジェクトが増加する昨今においては、英語力が必須になるケースもあり、TOEICなどのスコアが評価の対象になることもあります。

化学エンジニアへ転職した場合の年収相場

化学エンジニアとしての年収相場は、国内における技術系職種のなかでも高水準に位置しています。

JACが取り扱う求人の平均年収は770万円前後であり、20代後半でも600万円弱、30代には700万円を超える水準に達します。30代後半から40代にかけても継続的に上昇し、40代後半で870万円を超え、50代以上になると900万円台半ばまで到達します。

また、役職別に見ると、メンバー層で730万円程度、管理職層になると1,000万円を超える待遇も視野に入ります。

年代	平均年収
20代後半	599.2万円
30代前半	746.4万円
30代後半	733.6万円
40代前半	803.0万円
40代後半	876.4万円
50代以上	935.9万円

日系企業と外資系企業を比較すると、外資系企業の方がやや高い傾向にあり、40万円程度の差が見られます。外資系企業では成果主義の評価制度が浸透しているため、業績やプロジェクト貢献度が報酬にダイレクトに反映されやすい環境があります。そのため、早期の昇進や高年収を目指す方に適した環境といえるでしょう。一方、日系企業は充実した福利厚生や安定的なキャリアステップが用意されている企業が多く、腰を据えて長期的にキャリアを築きたい方に適しています。

役職	平均年収
メンバークラス	734.1万円
管理職	1,003.3万円

	平均年収
日系企業	755.8万円
外資系企業	792.2万円

※当社実績（2023年1月～2025年8月、想定年収）より

化学エンジニアの転職事例

ここでは、JACが提供する転職支援サービスを利用して、化学エンジニアへの転職を成功させた事例を紹介します。

半導体関連装置メーカーのシニアサービスマネジャーからサービス部門を率いる化学エンジニアに転職した事例

Dさん（40代後半／男性）

	業種	職種	年収
転職前	電気機器製造業	シニアサービスマネジャー	1,200万円
転職後	電気機器製造業	サービスエンジニア（サービス部責任者）	2,100万円

Dさんは、長年にわたり半導体関連装置メーカーにて、サービス部門のシニアマネジャーとして露光装置や成膜装置のサービス部門を統括し、サービス体制の構築から収益管理まで、幅広い経験を培ってきました。これまでの経験を経てDさんは、マネジメント経験と技術的な知見を生かし、より大きな裁量をもって事業を動かせるポジションに就きたいと考え、転職活動を開始しました。

そこでJACのコンサルタントは、Dさんの半導体サービス部門での豊富なマネジメント経験と、事業全体を俯瞰して管理する能力を高く評価し、半導体検査装置を提供する企業のサービス部門の責任者ポジションを提案しました。

転職後のDさんは、技術的な問題の解決から、採用・育成、事業開発に至るまで、幅広い業務を指揮し、大きな裁量をもって活躍しています。今回の転職は、半導体サービス部門での経験とマネジメント能力が、日本法人のトップという責任あるポジションで高く評価され、大幅な年収アップを実現した好例といえます。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。

化学エンジニアへ転職後のキャリアパス

本章では、化学エンジニアへの転職後に考えられる3つのキャリアパスについて解説します。

プロジェクトリーダーや部門長への昇進

化学エンジニアとして経験を積んだ後の代表的なキャリアパスとして、プロジェクトリーダーや部門長といったマネジメント層への昇進が挙げられます。プロジェクトリーダーは研究開発や製造プロセスの改善などの案件を率い、スケジュール管理やメンバー育成、他部門との調整など多岐にわたる業務を担います。

さらに部門長クラスになると、企業の成長戦略に基づいた新規事業の方向性を描き、予算管理や人員配置といった経営寄りの意思決定が求められるようになります。そのため、技術者としての専門性に加え、経営層と同等に議論できる高度なコミュニケーション能力や確固たるビジョンを描き、それを推進する力も不可欠です。

技術的な知見と経営的な視点を高いレベルで融合させたキャリアであり、より大きなプロジェクトを自身の裁量で推進したい方にとって魅力的なキャリアパスといえます。

技術営業職やプラントエンジニアへの転身

化学エンジニアで培った専門性は、技術営業やプラントエンジニアといった職種に転身する際にも重宝されます。

技術営業職は、自社の化学製品や装置をクライアントに提案する職種ですが、専門知識を基盤とした課題解決型のソリューション提供が求められます。その点、化学エンジニア出身者は、化学的知見に基づき最適な製品仕様を提案できるため、クライアントの課題に寄り添った再現性の高い提案が可能になるでしょう。

一方、プラントエンジニアは、化学プラントの設計・建設・保守に携わり、設備の安全性や効率性を確保する役割を果たします。化学エンジニア時代に培ったスケールアップや新規プロセス導入における知識を直接生かせるでしょう。

自身の技術的な専門性を軸としながら、キャリアの幅を大きく広げられるキャリアパスです。

コンサルティングファーム（化学業界向け）

化学エンジニア時代に培った経験や知見を生かし、コンサルティングファームに転身するケースもあります。

本領域では、技術知識に基づいた市場分析や新規事業の立案、M&Aや海外展開における技術的デューデリジェンスなど、戦略と技術を橋渡しする役割が期待され、技術的なバックグラウンドをもつことが大きなアドバンテージとなります。

化学エンジニアからコンサルタントへのキャリアチェンジは、難易度が高く、適性の見極めも必須になります。一方で、技術を経営戦略に結び付けたいと考える方にとっては、挑戦しがいのあるキャリアであり、自身の専門性を新たな形で発揮できる機会にもなるでしょう。

化学エンジニアへの転職なら、JAC Recruitment

化学エンジニアは、石油化学や素材といった従来の分野にとどまらず、製薬、再生可能エネルギー、電池材料、バイオプラスチックなど幅広い領域で求められつつあります。また、研究開発からスケールアップ、生産プロセスの最適化まで多岐にわたる業務を担うため、企業ごとに期待される役割や求められる専門性が大きく異なります。そのため、化学エンジニアへの転職を成功させるためには、業界や企業の採用ニーズを把握した転職エージェントの活用が欠かせません。

JACには企業の採用背景や組織課題に精通したコンサルタントが在籍しており、専門性やスキルを見極めたうえで、企業の採用ニーズに合致したキャリアを提案いたします。

また、JACでは一般的な転職サイトには公開されない非公開求人も数多く取り扱っており、外資系企業の研究開発ポジションやグローバル拠点と連携するプロジェクトリーダーなど、キャリアの幅を広げる選択肢に出会える機会も豊富です。

化学エンジニアへの転職を目指す方は、ぜひJACにご相談ください。