IFRS(国際会計基準)経験は転職で有利に働く?IFRS経験が生かせる最新求人も紹介

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公開日:2025/06/06 / 最終更新日: 2025/06/09

企業の財務情報を国際的に共通化するために設けられたグローバルスタンダードの会計基準である、国際会計基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)。

本記事では、IFRS(国際会計基準)経験が生かせる転職先候補やIFRS経験が生かせる最新求人・転職情報をJAC Recruitment(以下、JAC)が解説いたします。

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IFRS(国際財務報告基準)とは、国際会計基準審議会(IASB)が策定する、世界共通の会計基準を指します。日本では、企業会計基準委員会(ASBJ)がIASBと共同でコンバージェンスを進め、2009年6月に「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を公表しました。本報告では、2010年3月期から一定の上場企業の連結財務諸表にIFRSの任意適用を認め、強制適用については2012年を判断のめどとする方針が示されていました。
さらに2021年度から上場・大会社に義務適用された収益認識基準(IFRS15ベース)への対応もあり、IFRSに精通したビジネスパーソンに対する需要は急速に高まっています。実際、IFRSの知識や実務経験を十分に持つ国内の経理担当者は少なく、特にグローバル展開を進める企業や海外投資家からの資金調達を目指す企業では、IFRSへの理解が深いビジネスパーソンが切望されています。

今後もグローバル展開を視野に入れた企業を中心にIFRS導入の動きは継続・増加すると予想されるため、たとえ実務経験が浅くても、一定のIFRS知識や導入プロジェクトに関与した経験を持つ場合、転職市場では大きなアドバンテージになるでしょう。

出典:「IFRSの基礎知識」(日本公認会計士協会)


ここでは、IFRS導入企業の現状について、下記2つの観点から解説します。

• IFRS(国際会計基準)導入企業が増えている背景
• IFRS(国際会計基準)を導入している代表的な企業

IFRS導入企業が増えている背景として、まず企業のグローバル化の進展が挙げられます。海外に事業展開する企業にとって、現地の会計基準やIFRSに基づく財務報告が求められるケースが増えており、経営管理の効率化や海外投資家への情報開示の質の向上を目的に、グループ全体の会計基準をIFRSに統一する動きが見られます。日本公認会計士協会「IFRSをめぐる動向(後編)」によると、2016年6月時点におけるIFRS適用済・適用決定企業は115社でしたが、2025年4月末時点では294社に達しています。

また、政策的な後押しも、IFRSを導入する企業が増えた要因だと考えられます。金融庁はIFRSの任意適用を推進しており、2010年3月期から一部の上場企業にIFRSに準拠した連結財務諸表の作成を認めて以降、適用要件の緩和などを進めてきました。自民党が公表した「国際会計基準への対応についての提言」(2013年6月)でIFRS適用促進の方針が明確化されたことも、環境整備を加速させるきっかけとなりました。

また、IFRS導入は、グループ経営の効率化や資金調達力の強化にも寄与するメリットがあります。国内外に多数の子会社を持つグループ企業がIFRSを統一的な会計処理の基盤にすることで、連結財務諸表の作成業務効率化、グループ内業績比較の容易化、経営判断の迅速化などが可能になります。さらに、海外からの資金調達を目指す企業にとっては、IFRSに基づく財務情報は国際的な投資家に対する信頼性を高め、資金調達を円滑に進める際に有利に働くでしょう。これらの背景から、IFRSを導入する企業は今後も増加すると予想されます。

日本でも、IFRSを導入する企業は着実に増加しており、多様な業種に広がっています。
例えば、製造業ではトヨタ自動車や三菱重工業、ブリヂストンなどの大手企業が名を連ねており、経営のグローバル化と連結財務管理の効率化を目的にIFRSを導入しています。情報通信業では、ソフトバンクグループやLINEヤフー、サービス業では楽天グループや電通グループなどが挙げられます。
また、医薬品業界では武田薬品工業やアステラス製薬、大塚ホールディングスなどが採用しており、海外市場との整合性を目的に導入していると予想されます。
さらに卸売業では、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、三井物産、三菱商事などの大手総合商社が早期からIFRSを導入しており、食料品では、日本たばこ産業やアサヒグループホールディングス、キリンホールディングスなどがIFRSへの移行を進めています。

このように、IFRS導入企業は、数だけでなく業種においても年々広がりをみせています。
今後もIFRSを導入する企業は増加の一途をたどると予想されることから、IFRSに関する実務経験や資格を持つ場合、転職市場でも高く評価され、多くの企業で求められるでしょう。


本章では、IFRSの経験が生かせる、次の3つの転職先候補について解説します。

• 事業会社・グローバル企業の経理部門
• 監査法人・会計事務所
• コンサルティングファーム・財務アドバイザリー

IFRS経験者が活躍できる代表的な転職先として、国内外で事業を展開する事業会社やグローバル企業の経理部門が挙げられます。
事業会社やグローバル企業の経理部門では、連結財務諸表の作成や海外子会社の経理業務管理、M&Aにおける会計処理、投資家や海外のステークホルダーへの情報開示など、IFRSの知識が必要となる場面が多数存在します。経営管理や事業戦略にも影響を与えるため、経営企画部門やIR部門と連携する役割も担うこともあるでしょう。
特に、IFRS適用を進めている企業や連結決算体制の国際化を図る企業では、IFRSを深く理解しているビジネスパーソンを強く求めており、採用の優先度も高い傾向にあります。

IFRS経験者にとって、監査法人や会計事務所は、自身の専門性をさらに高められる領域です。
監査法人や会計事務所では、IFRSを適用している、あるいは適用を検討しているクライアント企業に対し、会計監査業務やIFRS導入支援コンサルティング、各種アドバイザリー業務を提供します。IFRSに基づく会計監査では、日本の会計基準とは異なる判断が求められるため、IFRSの深い知識と実務経験が欠かせません。
多様な企業のIFRS対応に関与することで、幅広い業界知識と最新の会計実務に触れられる機会を得ることができ、会計分野におけるプロフェッショナルとしての市場価値をいっそう高められるでしょう。

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IFRSの知識や経験は、経営コンサルティングファームや財務アドバイザリーファームにおいても高く評価されます。
特に、M&Aや企業再編、グローバル展開支援など、財務の観点から経営戦略に深く関与する領域では、国際基準であるIFRSへの対応力が求められる場面が多々あります。具体的な業務としては、クライアント企業のIFRS導入支援やデューデリジェンスにおけるリスク評価、ポストマージャー統合における会計統合支援などが挙げられ、実務を通じて専門性を磨くことができるでしょう。
さらに、IFRSを活用した財務モデリングや企業価値評価など、分析力と実務知識の両面が求められるため、同領域での実績は今後のキャリアにおいて大きな強みになると考えられます。

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IFRSに関連する求人は増加傾向にあり、特にグローバル展開を推進する企業の経理・財務部門や、新たにIFRS導入を目指す企業のプロジェクト推進に携わるポジションでの募集が目立ちます。
多くの場合、単なる財務報告業務にとどまらず、IFRS導入支援や会計方針の整備、グループ連結決算の標準化など、複雑かつ高度な会計プロジェクトを遂行するため、実務経験が重視されます。

また、IFRSに関連する業務を遂行する際は、英語を使用する場面が多く、ビジネスレベルの英語力は必須となるでしょう。加えて、データ分析能力やERP(統合基幹業務システム)・会計システムの導入・運用経験、M&A関連の会計処理経験、内部統制(J-SOX)対応の知識などの知識は、採用選考においてプラスの評価につながります。IFRSに関連する経験を有しているだけでも十分に高い評価を得られますが、語学力やプラスアルファとなる専門知識を持ち合わせていると、転職活動をより優位に進められるでしょう。

ここからは、IFRSの経験が生かせる最新求人・転職情報を紹介します。
なお、本記事で紹介している求人は、JACが取り扱う求人の一部です。JACが取り扱う求人は、大半が非公開となっています。そのため、非公開求人も含めIFRSの経験が生かせる求人の紹介を受けたい方は、ぜひJACにご登録ください。
転職支援のプロであるコンサルタントが、丁寧なヒアリングを通じて適性や希望に沿った求人を紹介いたします。

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スズキ株式会社:制度会計、IFRS(国際会計基準)
プライム市場上場のグローバルメーカー:【姫路】経理(公認会計士/IFRS対応)
英語力を培える/大手日系との合弁外資:シニアアカウンタント
監査法人系アドバイザリー:財務報告アドバイザリー
非公開:会計アドバイザリー(マネージャー)
大手監査法人:財務会計アドバイザリー
大手EMCメーカー:財務経理(連結決算、開示業務)
外資系消費財商社:Senior Accountant

※求人の募集が終了している場合もございます。ご了承ください。(2025年6月最新)


IFRSの実務経験を生かした転職後の年収目安としては、経験年数や業務範囲、役職、勤務先の企業規模や業種によって大きな幅がありますが、IFRS経験が求められる経理職の場合、700〜800万円台が平均的な年収レンジとなり、通常の経理職よりもやや高めの水準に位置します。マネジメント層や財務部長、CFO候補などのポジションでは、1,000万円を超える額が提示されることも珍しくありません。
また、監査法人やコンサルティングファーム、財務アドバイザリー企業など、より高度な専門性と貢献が求められる領域では、経験とスキルに応じてより高額な年収を実現できる可能性も期待できるでしょう。

なお、JACが提供する転職支援サービスを利用し、転職を成功させたIFRS経験者の平均年収は850万円前後であり、最高年収は、2,500万円程度(役職:本部長以上)でした。

年代別・業界別の平均年収は、次のとおりです。

【IFRS経験者の年代別平均年収】

年代 平均年収
20代 550万円程度
30代 800万円程度
40代 900万円程度
50代 1,000万円程度

【IFRS経験者の業種別平均年収】

業種 平均年収
EMC 850万円程度
コンサルティング・シンクタンク・事務所 850万円程度
メディカル・バイオ 1,000万円程度
金融 900万円程度
消費財 800万円程度
商社 750万円程度
IT・通信 950万円程度
流通 800万円程度
建設・不動産 850万円程度
サービス 900万円程度

※当社実績(2019年1月~2025年4月分データ)より


IFRSに関連する実務経験がない状態でも、IFRS導入企業への転職を実現することは十分可能です。
まず、会計士や簿記1級などの専門資格を保有している場合、資格の保有自体が高いポテンシャルの裏付けになるため、IFRSの実務経験がなくても採用に至るチャンスは十分にあります。特に公認会計士資格を保有している場合、IFRS業務未経験でも会計基準への理解や知識が評価され、会計系コンサルティングファームや大手企業の経理部門の内定を獲得できることもあります。

ただし、実務未経験である以上、転職活動の際には「IFRSに対する高い関心」や「関連知識の習得に努めている姿勢」を示すことが不可欠です。
例えば、IFRS検定(国際会計検定)やBATIC(国際会計力テスト)などの資格取得を目指すことは、IFRSに関連する知識習得に対する熱意を示すうえで有効です。また、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」やIFRS第16号「リース」などを読み解き、主要な基準概要や日本基準との差異などを事前に理解しておくと、面接での受け答えにも深みが増し、採用担当者に対して前向きな印象を与えることができるでしょう。


ここでは、JACが提供する転職支援サービスを利用し、IFRS経験を生かして転職を成功させた事例を紹介します。

  業種 職種 年収
転職前 消費財 経理・財務 650万円
転職後 消費財 経理・財務 1,000万円

Kさんは、これまでグローバルな業務に携わりながら、一貫して経理・財務の専門性を高めてきました。特に直近では、財務経理の責任者として経営管理強化に寄与するなど、社内外から高い評価を受けていました。

転職のきっかけとなったのは、国内で新たなキャリアを築きたいと考え始めたからでした。「財務・会計の知見をベースに企業経営に関わる仕事」に軸足を置き、転職活動を開始することに。最終的には、高い語学力とグローバルなプロジェクトを牽引してきた実績が評価され、リーダーシップを期待される管理職ポジションの内定を獲得しました。

Kさんの転職成功の要因は、IFRSや事業管理領域における専門性と実務経験を強みとして打ち出した点にあります。加えて、業務に対する主体性や柔軟な対応力が企業の将来的な組織づくりにフィットすると判断され、企業の成長に貢献するポジションに就任することができました。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。

  業種 職種 年収
転職前 サービス 経理・財務 850万円
転職後 メディカル・バイオ 経理・財務 1,050万円

プレイングマネージャーとして連結決算や開示業務に携わってきたMさんは、IFRS導入におけるプロジェクトリーダーを担うなど、長年にわたり広範な業務を主導してきました。

将来的に起業を視野に入れていたMさんは、より経営に近いポジションを経験したいと考え、転職を決意しました。転職先を選定する際に意識したポイントは、ベンチャー企業や成長フェーズにある企業かつ経営や事業に深く関係するポジションであることでした。自身の専門性を生かしつつ、現在よりも年収やポジションを上げられる、あるいは将来的に昇給が期待できる環境を求め、応募先企業を絞り込んでいったとのことです。

最終的には、メディカル・バイオ企業の経理部門にて、IFRSに基づく制度連結決算やHFMシステム導入を担当するポジションへの内定を獲得しました。転職活動時の希望どおり、これまで培ってきた専門性を生かせる環境でありながら、経営視点を養えるポジションにて新たなキャリアをスタートさせることができた好例です。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。

  業種 職種 年収
転職前 EMC 経理・財務 950万円
転職後 メディカル・バイオ 経理・財務 1,050万円

Sさんは、事業会社および監査法人など幅広いフィールドで、経理分野の実務経験を積み重ねてきました。連結決算やIFRS対応に強みを持つことに加え、海外駐在の経験もあり、グローバルな案件も手掛けてきたとのことです。

転職を検討し始めた背景には、自身のキャリアアップとワークライフバランスの向上を図りたいという思いがありました。次のステージでは、これまでの専門性を生かしつつ将来的にはCFOポジションも担いたいと考えていたと語ります。また、家族との時間を大切にできる働き方を求めており、通勤負担を軽減できるエリアでの就業を望んでいました。

最終的に、自身の専門性が発揮できる経理財務職への転職を実現。転職を機に、Sさんは自身のキャリアをさらに発展させつつ、家族との生活も大切にできる環境を手に入れることができました。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。