スマートフォンや自動車、家電製品など、私たちの生活を支える電子機器の「頭脳」ともいえる半導体(IC・LSIなど)。その設計から評価・最適化までを担う専門職「半導体設計」は、今まさに注目を集めるキャリア分野です。
高度な専門性が求められる職種ではありますが、未経験者でも評価・試験業務などからステップアップを目指す道があり、異業種からの挑戦が可能なケースも存在します。
本記事では、半導体設計の転職市場動向や転職で求められる主な転職先候補、経験・スキル・マインド・資格をJAC Recruitment(以下、JAC)が解説します。
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目次/Index
半導体設計の転職市場動向
半導体設計分野の転職市場は、コロナ禍以降の変動を経て現在は回復基調にあります。2020年ごろには在宅需要の急増によって半導体が好景気となり供給不足に陥りましたが、その後パンデミック収束にともなう需要減退で製品在庫が急増し、市場は一時落ち込みました。
スマートフォンやPCの出荷台数は2021年初旬に大きく伸びたあと、2022年から減速し、巣ごもり需要を見込んだ増産が裏目に出て半導体在庫の積み上がりを招いた結果です。
しかし直近では、生成AIブームやクラウドサービスの拡大を背景に半導体需要が盛り返し、市場は再び成長軌道に乗りつつあります。2024年にはAI関連や自動車向けを中心に半導体需要が高まり、世界半導体売上高は過去最高水準を更新し、市場は完全に回復したとみられています。
特にデータセンター向けの高速半導体やAI処理用の先端チップが需要を牽引し、半導体メーカー各社の増産投資も再開している傾向です。加えて、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及にともない、「パワー半導体」分野への注目度は、一段と高まっています。
実際、パワー半導体業界は、2022年から2024年にかけてEV・再エネ市場の拡大を背景に大きな成長を遂げており、今後も高効率エネルギー制御デバイスへの需要増が見込まれます。こうした市場動向は半導体産業全体の底上げ要因となり、関連エンジニアのニーズも拡大中です。
このように需要が拡大する一方で、企業各社では半導体エンジニアの人手不足が深刻化しています。電子情報技術産業協会(JEITA)の見通しとして、2020年代半ばまでに最大40,000人規模の半導体エンジニアが不足すると指摘されていました。
慢性的な技術者不足と市場回復を背景に、2024年から2025年にかけて半導体業界の求人は右肩上がりで増加していく見通しです。
実際、プロセスエンジニアやデバイス開発・パッケージ開発エンジニアと並んで、半導体回路設計エンジニアの募集も各社で増加傾向にあります。
出典:電子情報技術産業協会(JEITA)「国際競争力強化を実現するための半導体戦略 2023 年版」
半導体設計が求められる主な転職先候補
半導体設計のスキルは幅広い業種・企業で求められています。主な転職先候補となる業種は次のとおりです。
- ● 電子機器・部品メーカー
- ● 自動車業界
- ● 医療機器メーカー
- ● 産業機器メーカー
- ● 通信機器メーカー
電子機器・部品メーカー
電子機器・部品メーカーでは、自社製品の中核となる半導体デバイスや電子回路の設計を担います。パソコンやスマートフォン、家電製品などの電子機器では、製品差別化のために専用ASICやセンサー、電源ICなどを自社開発するケースが多く、半導体設計者が不可欠です。
また、イメージセンサーやメモリ、各種モジュール製造などの電子部品メーカーでも、製品性能を左右するアナログ・デジタル回路設計のプロフェッショナルを求めています。
理由としては、半導体の大量実装により製品の小型・省エネ化が進み、設計力が競争優位に直結するためです。
電子機器分野では、市場の変化スピードが速く新製品サイクルも短いため、半導体設計者には最新技術へのキャッチアップと短期間で試作・改良を繰り返す対応力が求められます。具体的な業務としては、製品要件に合わせたICアーキテクチャ設計や回路シミュレーション、レイアウト検証、試作評価など多岐にわたります。
電子機器・部品メーカーでの半導体設計職は、製品開発の根幹を支える存在です。技術力次第で製品の市場競争力に直結し、ビジネス戦略上も重要な役割を担っているので、経験豊富な方を厚遇する傾向があります。
自動車業界
自動車業界でも近年の電動化・高度運転支援の進展にともない、半導体設計者の需要が飛躍的に高まっています。エンジン制御ユニット(ECU)や電動車(EV/HEV)のインバータ、ADAS用センサーなど、自動車には、多数の半導体デバイスが組み込まれており、その内製化や高性能化を図る動きが活発です。
自動車メーカー本体のみならず、大手サプライヤーである部品メーカーでも半導体開発部門を強化し、車載マイコンやパワー半導体モジュールの設計者を積極採用しています。
実際の業務例として、先進運転支援システム向けの前方レーダー開発では、アナログ・デジタル回路およびアンテナの開発設計が挙げられます。車載画像センサーの開発では、SoC搭載回路や高周波・光学系回路の設計といった高度な技術が必要です。
自動車業界で半導体設計を手がける企業は、車載規格の厳格な要求に応えるとともに、長期間にわたって安定した供給を担う責任を負っています。車載半導体は、高温多湿・振動など厳しい環境下での信頼性が要求されるので、設計段階から品質・安全規格(ISO 26262など)を織り込んだ堅牢な設計が不可欠です。機能安全に配慮した回路二重化や耐ノイズ設計など、自動車ならではのノウハウが求められます。
また、電動車向けでは、インバータ用パワーモジュールやバッテリー制御ICの開発など高電圧・大電流を扱うアナログパワー設計スキルも重宝される傾向です。この分野では、自動車メーカー系列の電子部品会社が車載半導体の開発拠点となっており、各社で大規模な採用ニーズがあります。

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医療機器メーカー
医療機器メーカーでも、高度医療とエレクトロニクスの融合が進む中で半導体設計の専門性が求められます。医療分野の機器には、高性能なセンサーや特殊なアナログ回路、信号処理用のASICなどが組み込まれており、精密かつ安全性の高い半導体設計が欠かせません。そのうえ、各製品ごとに専門的な設計ニーズがあります。
医療機器分野の特徴として、法規制の遵守と信頼性確保が他業種より求められます。医療用途の電子部品は、人体への影響を考慮した厳格な基準(IEC規格や薬機法など)のもとで開発されるため、半導体設計者も安全規格への深い理解が必要です。
また、一度承認された機器は、長期間にわたり使われるため製品ライフサイクルが長く、安定供給が重視される点も他業界と異なります。そのため、既存製品の回路設計変更や改良にも継続的に対応できるエンジニアが重宝されます。
具体的な業務としては、自社医療機器の新製品開発における電気回路設計や既存製品の回路改良、チームリーダーとして開発メンバーのマネジメントなどです。
医療機器メーカーの求人では、アナログ・デジタル回路設計双方の経験が重視され、装置全体の電気設計経験がある方が評価されやすいです。半導体そのものの知識に加え、医療という公共性の高い領域への使命感や慎重さも求められるため、精密さと倫理観のある設計者が高く評価される傾向にあります。

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産業機器メーカー
産業機器メーカー(FA機器・重電・ロボットなど)の分野では、工場の自動化やインフラ設備のスマート化に半導体技術が欠かせず、半導体設計者の活躍機会が豊富です。
特に、ハードとソフトの両方に精通し、現場ニーズに合わせたカスタマイズ設計ができる方が求められています。
産業用ロボットの高精度モーター制御回路、大規模プラントの電力変換装置用パワー半導体、農業機械のセンサーネットワークなど、過酷な環境下でも安定動作する電子回路の設計が必要になります。高出力・高電圧を扱う場面も多く、IGBTやSiCデバイスなどパワーエレクトロニクスに詳しい設計者は、より重要視されます。
また、工場設備のIoT化にともない、機器に無線通信モジュールやエッジAIデバイスを組み込む事例も増加中です。通信系やAIチップの知識がある方も求められています。製品サイクルが長くカスタム仕様が多い産業機器では、顧客要望に応じてゼロから回路設計を行うことも少なくありません。
そのほかにも、製造現場のDX推進によりAIやクラウドと連携する半導体デバイスの開発機会が拡大しています。そのため、クラウド連携やエッジAIの基礎知識を備えた設計者は高く評価されます。
重電大手や計測機器メーカーでは、電子回路の総合力を備えた方を年齢を問わずマネージャー候補として採用するケースもあります。
通信機器メーカー
通信インフラやネットワーク機器、モバイル通信端末などの通信機器メーカーも半導体設計者の需要が高いです。国外企業との競争も激しく、国内メーカーも国際水準の設計力を重視して採用を行っています。
業務例としては、無線通信機器では、マイクロ波帯の高周波IC設計やアンテナ一体型回路設計、有線通信機器ではSerDesやDSPなどの高速インターフェース回路設計が挙げられます。車載通信モジュールの開発では、クラウド・スマートデバイス・車両をつなぐ統合システムにおいて高周波回路を設計するポジションがあり、標準化団体と連携しながら無線技術開発をリードする場合もあります。
通信機器分野は、世界標準への対応と最先端技術への知識が必要であり、最新規格(5G NR、Wi-Fi6/7など)や通信プロトコルの知識が不可欠です。
また、半導体設計者は、他部署や他社との協業機会が多数あります。通信規格は国際標準化活動で決まるため、英語での技術議論や文書読解力が必要です。
また、国家プロジェクト的な側面もあり、大規模チームでの開発機会も豊富。プロジェクトマネジメントスキルを有する方は、管理職候補として重用されるでしょう。
待遇は特殊スキルゆえに高水準です。
特に5Gやデータセンター関連のポジションは他分野より年収が高めに設定される傾向があります。通信機器メーカーは、最先端技術に触れながらグローバルに活躍できる場であり、高度専門職としてキャリアアップを図れる有望な転職先です。
半導体設計の最新転職・求人情報
半導体業界の回復にともない、直近の半導体設計エンジニア向け求人にも活発な動きが見られます。中には、半導体製造装置のサービスエンジニア(フィールドエンジニア)など「未経験者歓迎」と記載された求人も見られ、特定職種では異業種からの受け入れも模索されていることが分かります。
また、募集職種は半導体の回路設計だけでなく、装置設計・機構設計などハードウェア寄りのポジションまで多岐にわたっています。
以下に、JACが扱う半導体設計分野の公開求人例を一部紹介します。
●TOPPANテクニカル・デザインセンター株式会社:半導体回路の論理設計(デジタル回路設計)
●アピックヤマダ株式会社/ヤマハロボティクスホールディングス:半導体の装置設計・機構設計~ヤマハ発動機グループ/半導体装置メーカー
●株式会社本田技術研究所:次世代ロジック半導体の研究開発(論理・物理設計/EDA・評価環境構築/SDK・評価AIモデル構築/パッケージ研究)
●TOPPANテクニカル・デザインセンター株式会社:半導体回路のアナログ設計
上記は公開求人の一例であり、実際には非公開求人も多数存在します。JACでは企業戦略上公にできない非公開求人を豊富に取り扱っています。より多くの選択肢を知りたい方は、転職コンサルタントに相談されることをお勧めします。
※求人の募集が終了している場合もございます。ご了承ください。(2025年8月最新)
未経験から半導体設計に転職できるのか
半導体設計エンジニアの職種は、高度な専門性が求められるため、未経験から直接そのポジションに就くことは非常に難しいです。
実際、多くの半導体設計求人票では、「職種未経験者:不可」と明記されており、回路設計エンジニア全般において豊富な実績や経験が重視される傾向があります。そのため、実務での設計経験がない方や経験年数の少ない方が半導体設計ポジションで採用されるケースは稀です。
未経験者が将来的に半導体設計者を目指すための一つの選択肢として、「試験担当レベルからスタートする」という方法が挙げられます。
具体的には、まず半導体デバイスの評価・テスト業務に携わるポジションに就き、製品の動作検証や測定業務を通じて半導体の基礎知識や設計プロセスを習得していくステップです。試験・評価エンジニアとしてデータ計測や不具合解析に従事しながら回路動作の理解を深め、数年の経験を積んだ上で設計部門への異動や転職を目指すことが現実的なルートの一つです。
また、電気・電子系の学科を卒業しているなど基礎学習を修めている方であれば、企業によってはポテンシャル採用で設計職にチャレンジできる可能性もあります。
特に新卒または第二新卒レベルの場合、設計業務が細分化されている大手企業などでは、一部分の工程から経験を積ませ、育成するケースも考えられます。
重要なのは、土台となる電子回路の知見やCAD操作スキルなどを独自に磨きつつ、応募時に意欲と適性を示すことです。全く未経験から半導体設計職への直接転職は難易度が高いものの、関連業務で経験を積めば道が開ける可能性があります。

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半導体設計職の職務経歴書サンプルと書き方
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半導体設計への転職で求められる経験・スキル・マインド・資格
半導体設計への転職で主に求められるのは、以下のような経験やスキルです。
- ● 半導体回路設計・開発の実務経験
- ● 電気・電子回路知識や情報収集能力・粘り強さ
- ● 主体性を持ち周囲と連携し業務を進める協調性
- ● 半導体製品製造技能士や半導体技術者検定など
半導体回路設計・開発の実務経験
最も重視されるのは、半導体回路設計の実務経験です。アナログ・デジタルを問わず、回路設計の実務に携わった経験があることは転職市場で最大のアピールポイントです。
半導体設計職の求人要件を見ると、「○○回路の設計経験〇年以上」や「ASIC開発プロジェクトのリーダー経験」などが明記されており、即戦力かどうかを図る物差しになっています。実務経験が重要視される理由は、机上の知識だけでは対応できない設計ノウハウが現場に多く存在するためです。
具体的な経験として評価されるものは、アナログ分野ならAD/DAコンバータや増幅器の設計経験、デジタル分野なら論理回路(Verilog/VHDL)設計から検証まで一連のフロー経験、RF分野なら高周波フィルタやPLL回路設計経験、パワー分野ならIGBTやMOSFETを用いたパワーデバイス設計経験などです。自身の強みとする専門領域を明確化し、その分野の実務実績をアピールすることが重要です。
また、プロジェクトマネジメント経験や他部門との協働経験があれば、将来のリーダー候補として評価される傾向にあります。いずれにせよ、半導体設計職への転職では、「どのような製品・回路を設計し、どのような成果や課題対応を経験したか」を具体的に伝えることが重要であり、たんなる知識以上に実践知と成果を示すことが求められます。
電気・電子回路知識や情報収集能力・粘り強さ
高度な半導体設計業務に取り組むには、電気・電子回路に関する深い知識が大前提です。大学学部程度の電子回路理論はもちろん、デバイス物性や半導体プロセスに関する理解、さらにシステム全体を見渡す広範な知識が求められます。
実際、採用側は「半導体物理の基礎知識」「回路設計の開発経験」を必須条件に挙げることが多く、回路方式や素子動作原理への理解が浅いと判断されれば書類選考を通過することすら難しいです。よって、日ごろから技術書や専門誌で知識をブラッシュアップし、新しいトランジスタ構造や設計手法などの技術動向にもアンテナを張ることが大切です。
しかし、半導体設計には一筋縄ではいかない未知の不具合も多々存在します。その際に求められるのが、幅広い知識に裏打ちされた情報収集・問題解決能力と粘り強さです。必要に応じて専門家に問い合わせ、試行錯誤を繰り返して解決に導く執念が求められます。
また、インターネットや論文データベースから英語の技術論文を読解して自社課題のヒントを探るなど、グローバルな情報収集力もあるとなお評価につながります。もちろん、基礎となる回路理論を理解していなければ得た情報も活用できないので、知識と探求心の双方が重要です。
総じて、半導体設計で求められるのは、「広く深い電気電子知識」と「問題解決への執念」といえます。
主体性を持ち周囲と連携し業務を進める協調性
半導体設計は、一人で完結する仕事ではなく、チームで協働するプロジェクト型業務です。そのため、主体的に自分のタスクを遂行しつつ、周囲と円滑にコミュニケーションを取って連携できる協調性や積極性が求められます。
設計エンジニアは、自分の担当回路ブロックだけでなく、隣接するブロックとのインターフェースも意識して仕事を進めるケースがほとんどです。自ら進んで関係部署と調整を行い、問題があれば提起・解決に導く主体性がある方は重宝されます。
加えて、複数の専門家が集まるプロジェクトではチームワークと調整力も欠かせません。意見を的確に主張するとともに、他者の意見にも耳を傾けて最善策を模索する協調性やファシリテーション力が必要です。
また、進捗が遅れているメンバーをフォローしたり、逆に自分が困ったときは素直に助けを求めたりできる柔軟性も重要です。これらは一見ソフトなスキルに思えますが、プロジェクトの成否を左右する大切な要素であり、技術力と同等に評価される場合もあります。
半導体設計職では自立しつつ協働できる方が理想です。主体性と協調性という一見相反する要素を高い次元で両立させ、技術と人を動かして成果を出せることが求められます。
半導体製品製造技能士や半導体技術者検定など
半導体設計職に直接必須となる国家資格は存在しませんが、関連資格を取得していると知識の裏付けとしてプラス評価になる場合があります。
国家検定である「半導体製品製造技能士」は、半導体製造プロセス寄りの資格ですが、クリーンルームでの製造実務知識を有する証明です。
また、民間資格の「半導体技術者検定」はデバイス物性から回路基礎まで幅広い筆記試験で、学生や新人技術者が腕試しに受験するケースもあります。
その他、「電子回路技術認定」や「デジタル技術検定」など電子・IT系の資格も基礎学力のアピールにはなります。より専門的な資格として挙げられるのは、FPGAやEDAツールのベンダー認定資格や、組込みシステム技術者試験などです。
こうした周辺領域の資格取得は自主的な学習意欲の証明となり得ますが、前述のとおり実務経験や成果を重視する傾向にあります。
半導体設計へ転職した場合の年収相場
2023年~2025年にかけてJACが支援した半導体設計関連の転職事例を集計すると、年収の平均は853万円で、30代前半からすでに900万円前後の提示を受けるケースも少なくありません。特に40代以降の経験豊富な方では1,000万円以上のオファーが複数あります。
さらに、50代後半で経営・企画系のポジションに転じたケースでは1,100万円超の実績も見られ、高い専門性とマネジメント経験を併せもつ方が大幅な待遇改善を果たしています。こうした高水準のオファーは、大手半導体メーカーや自動車関連企業、さらにLSI・IC・メモリ設計領域など逼迫した技術分野に集中している状況です。
一般的な半導体設計職の市場相場は、30代で600万~900万円前後が中心であり、リーダークラス以上では1,000万円超も十分に狙える水準です。大手デバイスメーカーや自動車メーカーの開発職では500万~1,300万円程度、外資系半導体関連企業では500万~1,500万円規模のオファー例もあり、専門性を磨くことで高待遇を得やすい職種といえます。
一方で、スタートアップや中堅規模のメーカーではレンジが抑えめになる傾向もありますが、将来性やストックオプションなどの要素を含めれば一概に不利とはいえません。
また、医療機器メーカーなどの電気設計系求人でも450万~900万円程度が想定されており、半導体設計の経験は幅広い業界で評価されやすいことがわかります。
特に近年は車載半導体やパワー半導体など、供給が逼迫している領域において1,000万円超の提示が珍しくなく、マネジメント層やプロジェクトリーダーとなれば1,500万円以上の待遇も現実的です。半導体不足が続く環境下では、不況時でもプロフェッショナルとして需要が途絶えにくく、景気に左右されにくい安定的なキャリア形成が可能な領域となっています。
半導体設計分野の転職事例
JACが提供する転職支援サービスを利用し、転職を成功させた半導体設計分野の転職事例を紹介します。
開発マネジメント職から半導体設計エンジニアへ転職した事例
Kさん(40代前半/男性)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 製造業(精密機器) | 開発マネジメント | 1,000万円 |
| 転職後 | 製造業(半導体) | 半導体設計エンジニア | 1,100万円 |
Kさんは大学院修了後、HDD用モーターの開発に従事。世界最薄クラスのモーター開発を成功に導くなど、精密機器分野で高い成果を上げてきました。
海外駐在や大規模チームのマネジメント経験も豊富で、技術力と統率力を兼ね備えています。
しかし、管理職昇格後は長時間労働が常態化し、ワークライフバランスの改善を最優先に転職を決意。
JACのコンサルタントは、Kさんの高いマネジメントスキルと精密機器開発の知見が、半導体設計プロジェクトの推進にも直結すると評価。海外折衝が可能な英語力も武器になると判断し、磁気センサーや半導体設計開発を担う大手メーカーのポジションを提案しました。
結果、年収アップと働きやすい環境の両立を実現しました。
※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。
回路設計スペシャリストが半導体設計エンジニアへ転職した事例
Sさん(40代前半/男性)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 技術派遣(電機) | 開発・設計 | 600万円 |
| 転職後 | 製造業(半導体) | 半導体設計エンジニア(回路設計) | 650万円 |
Sさんは約30年間、LSIの回路設計に従事。CD/DVD関連のデジタル設計やCMOSイメージセンサー開発、高速インターフェース設計など、半導体設計分野で幅広い実績を有しています。直近では技術派遣会社でFPGA回路設計を担当していましたが、待遇改善と製品開発の上流工程に関わる機会を求めて転職を決意しました。
JACのコンサルタントは、Sさんの高度なデジタル回路設計スキルと製品開発全工程への知見が、半導体設計エンジニアとして即戦力になると判断。特に「手を動かす業務」を志向する姿勢がメーカー側のニーズと一致し、専門性を存分に発揮できる新しい環境への移籍が実現しました。
※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。
バイオ医薬品研究開発職から半導体設計エンジニアへ異分野転身した事例
Cさん(50代前半/男性)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 製薬・バイオ | 研究・開発 | 800万円 |
| 転職後 | 研究開発法人(半導体・設備技術) | 半導体設計エンジニア(開発・設計) | 900万円 |
Cさんは工学博士として、医薬品・再生医療業界において約20年にわたりプロセス開発や品質保証、技術移管などを担当。国内外CMOとの折衝や新規設備導入を含むプロジェクトマネジメントに優れています。
現職ではミトコンドリア研究に携わっていましたが、専門知識をより活かせる環境を求め転職を決意。JACのコンサルタントは、Cさんの化学・工学の知見と大規模設備プロジェクト推進力が、半導体設計や製造設備開発にも適用可能であると判断し、国立研究開発法人を提案しました。
結果、登用され半導体設計関連プロジェクトに参画。異分野ながら高い専門性を発揮できるキャリアチェンジを果たしました。
※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。
半導体設計へ転職後のキャリアパス
半導体設計へ転職後のキャリアパスとしては、大きく次の2つに分かれます。それぞれのキャリアパスについて、どのような道があるのかを解説します。
- ● 専門性の深化や管理職への昇進
- ● 電子機器・半導体分野の開発エンジニアへの転職
専門性の深化や管理職への昇進
半導体設計への転職後のキャリアパスとしてまず考えられるのは、その分野のスペシャリストとして専門性を深化させる道です。高度に専門分化した半導体業界では、得意とする技術領域を極めることで「テクニカルリーダー」「プリンシパルエンジニア」といった社内随一の専門家ポジションに就くことが可能です。
また、管理職への昇進も主要なキャリアパスの一つです。
プレイヤーとして実績を積んだ半導体設計者は、やがて設計チームのリーダーやマネージャーに抜擢される可能性があります。
リーダー職では開発プロジェクト全体を統括し、進捗管理やメンバー育成、他部門との調整などマネジメント業務を中心に担当します。
半導体開発は技術知識が不可欠なため、管理職であっても設計経験が大いに役立つうえに、場合によってはプレイングマネージャー的に自ら難易度の高い回路ブロックを設計することもあります。
一方で、技術の第一線にとどまるスペシャリスト志向も尊重される風土が広がっており、各社で「デュアルラダー制度」(専門職と管理職の並行昇格制度)を設ける動きもあります。
電子機器・半導体分野の開発エンジニアへの転職
半導体設計で培ったスキルセットは汎用性が高く、将来的に関連する他分野の開発エンジニア職へキャリアチェンジする道も開かれています。
半導体メーカーで回路設計を経験したあとに、自動車メーカーや家電メーカーなどの完成品メーカーの電子回路設計者に転身するケースも一つの選択肢です。半導体内部の設計ノウハウをもつことで、より上位のシステム設計に強みを発揮する動きができます。
また、半導体設計からシステムLSIのアプリケーションエンジニアへの転身も選択肢の一つです。
システムLSIベンダーでは、自社チップを顧客製品に組み込む際の技術支援を行うアプリケーションエンジニア(FAE)を置いており、半導体設計経験者であればチップの内部構造まで理解しているので顧客対応に説得力があります。
特にコミュニケーション能力に長けた方は、技術営業的なポジションやコンサルティング的な立場も目指せるはずです。
さらに、近年注目されるAI・IoT分野のハードウェアスタートアップに転職する道もあります。
AIアクセラレータや量子コンピューター用デバイスなど先端分野のスタートアップでは、半導体設計のプロフェッショナルが不足しているため、豊富な経験のある方がCTO候補やリードエンジニアとして迎えられることもあります。
半導体設計への転職なら、JAC Recruitment
半導体設計分野への転職をお考えの方は、ぜひJACへご相談ください。半導体という高度専門領域では、JACは業界構造や技術動向を深く理解した精通したコンサルタントを擁し、豊富な支援実績と独自のネットワークを強みに最適なキャリア選択をサポートしています。
ただ求人票を紹介するだけでなく、応募書類のブラッシュアップや技術面接での具体的なアピール方法に至るまで、専門的な視点でのアドバイスが可能です。
例えば、「アナログ設計のどの実績を強調すべきか」「英語での技術説明はどう準備するか」といった点についても、業界用語や最新トレンドを踏まえた具体的な指導が受けられます。
また、JACでは一般には公開されていない非公開求人を多数保有しているため、希少価値の高いハイクラス案件にアクセスできるのも大きなメリットです。「車載半導体開発マネージャー」や「AIチップスタートアップCTO候補」など、注目度の高いポジションの独占求人に出会えるのはJACならではの強みといえるでしょう。
JACでは転職希望者一人ひとりに対し複数回にわたる丁寧な個別面談を実施し、技術スキルはもちろんキャリアプランや転職後のビジョンまでじっくり擦り合わせを実施。そのうえで、豊富な選択肢の中から最適な求人をご提案します。
業界特有の専門用語や慣習にも通じたコンサルタントが伴走し、企業との調整や条件交渉も一貫して支援するので、異業種からの転身であっても安心して選考に臨める体制が整っています。半導体設計への転職を成功させたい方は、ぜひ一度JACにご相談ください。

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