航空宇宙防衛産業は、人工衛星や次世代航空機など最先端技術に携われる転職先として注目されています。防衛費増額や宇宙ビジネスの拡大により、宇宙・サイバー・電磁波など新領域でも採用が進み、国家プロジェクトに関わる機会が増えており、航空宇宙防衛分野でのキャリア形成を目指す方にとって、選択肢が広がっています。
本記事では、航空宇宙防衛産業の転職市場動向や最新求人情報に加え、未経験(異職種・異業種)からの転職難易度についても、JAC Recruitment(以下、JAC)が詳しく解説します。
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目次/Index
航空宇宙防衛産業の転職市場動向
航空宇宙・防衛業界は近年、防衛費増額や国際情勢の変化を背景に大きな転換期を迎えています。今後の転職市場の動向を、市場全体の概況や転職市場における需要など、背景を踏まえて解説します。
- ●航空宇宙防衛産業の市場概況
- ●航空宇宙防衛産業の転職市場における需要
- ●航空宇宙防衛産業の今後の市場予測
航空宇宙防衛産業の市場概況
日本の航空宇宙・防衛産業は、特殊な市場構造ゆえに、長年にわたって成長が停滞気味でした。その要因は、主な顧客が国内の防衛省に限られ、国産の防衛装備品は輸出が原則禁止とされたため、市場規模が国内の防衛予算内に閉じていたことにあります。
そのため、「安定した利益は見込めるものの、大幅な成長は難しい」産業とみなされ、限られたパイを各社が分け合う状況が続きました。また、平成から令和にかけ、装備品コストの高騰や低収益により撤退を決める企業が相次ぎ、日本の防衛産業基盤の先細りが懸念されていました。
こうした中で2022年末、政府は2023年度から5年間の防衛費を、従来の計画比で1.5倍以上となる、総額43兆円にする方針を決定しました。加えて、採算悪化で撤退する企業の増加に危機感を抱いた防衛装備庁は、装備品調達契約で認める企業利益率の見積もりを従来の平均約8%から、将来的なコスト変動調整分を含めて、最大15%程度にまで引き上げる利益確保策を導入しました。
これらの政策転換を受けて、防衛関連ビジネスの収益性が向上し、企業の参入意欲も高まっています。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の不安定化など、地政学リスクの高まりも追い風となり、防衛産業は一転して「成長産業」へ移りつつあります。政府も「安全保障政策上、防衛産業の維持・強化は不可欠」と位置付けており、業界全体が再活性化しているのが現状です。
出典:防衛装備庁「今後の防衛生産・技術基盤の維持・強化について」
航空宇宙防衛産業の転職市場における需要
こうした市場環境の変化を受け、航空宇宙・防衛分野での転職市場でニーズが高まっています。特に航空機やミサイル、人工衛星といった先端エンジニアリング領域では、中核技術者の採用需要が顕著です。
例えば、宇宙産業の求人では、衛星の設計・ソフトウェア開発・運用システム構築などで、高度なハード・ソフト技術者を求める案件が増えています。また、サイバー防衛や電波情報収集など、新領域の技術者需要も拡大する傾向です。
航空宇宙防衛産業で求められるキャリアとしては、隣接分野である機械・電気・ソフトウェアのエンジニアリング経験や、大規模プロジェクトへの参画経験が挙げられます。また、官公庁・自衛隊出身者にも需要があります。なぜなら、装備調達や安全保障政策の知見を備えた方は企業にとって信頼感が強く、防衛コンサルタント職や渉外役として官民ブリッジの役割を担うケースもあるためです。
航空宇宙防衛産業の今後の市場予測
今後数年間、航空宇宙・防衛分野の採用ニーズは、堅調に拡大していくと予想されています。国内では、政府が掲げた「防衛費GDP比2%」の目標に沿い、年度ごとに防衛関連予算が増額され、それにともない民間企業の案件も増える見込みです。
また、安全保障領域自体が、従来の「陸・海・空」から「宇宙・サイバー・電磁波」領域へと拡大しており、新領域の技術開発が進むほど採用ニーズの裾野も広がります。例えば、宇宙基本計画(2023年改定)では「2020年に4.0兆円の宇宙産業市場規模を、2030年代初頭に2倍の8.0兆円へ拡大する」という政府目標が示されました。これに向けて、官民での大規模な投資が推進されています。
宇宙・防衛という、こうした政策目標や国際情勢を背景に、今後も高水準の転職需要が見込まれます。さらに、関連して複合材料やAI制御、極超音速技術など、先端テーマの研究開発も活発化するので、該当スキルを備えた方への需要は、市場成長とともに拡大する見通しです。
出典:内閣府「宇宙基本計画(令和5年6月13日 閣議決定)」(p.10)
航空宇宙防衛産業の主要企業と特徴
航空宇宙・防衛産業には、大きく分けて次のような企業群があります。それぞれの特徴や主要企業を解説します。
- ●プライム企業(主要重工・電機メーカー)
- ●専門領域メーカー(航空機・水陸両用機・車両・宇宙開発など)
- ●宇宙スタートアップ
- ●防衛専門商社・海外防衛企業
プライム企業(主要重工・電機メーカー)
プライム企業は、日本の防衛産業を支える中核的存在であり、戦闘機や艦艇、誘導弾、レーダーなど、幅広い装備を統合的に担っています。国家規模の開発案件を統括し、研究から生産・運用支援まで一貫した体制を整えている点が特徴です。官公庁との調整力や国際共同開発の実績をもち、大規模な組織ならではのキャリア機会が広がっているといえます。
主要企業としては、戦闘機や艦艇を手掛ける三菱重工業、航空機・ヘリコプターに強みをもつ川崎重工業があります。ほかにも、IHIは航空エンジンや宇宙機器、三菱電機は防衛エレクトロニクス、NECは通信やレーダー、富士通は指揮通信システムに、それぞれ強みがある企業です。

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専門領域メーカー(航空機・水陸両用機・車両・宇宙開発など)
専門領域メーカーは、特定分野に特化した技術力を背景に、防衛装備の要素技術を支えています。水陸両用機や回転翼、車両、火工品などで高い独自性を発揮し、官公庁からの直接の調達に応じられる体制を備えていることが特徴です。研究から製造までの意思決定が比較的迅速で、スペシャリストとしての専門性を深めやすい環境も整っています。
こういった領域の代表的な企業が、航空機やヘリコプター分野で技術を発揮しているSUBARU、救難飛行艇US-2を製造している新明和工業などです。そのほかには、装甲車両を手掛ける小松製作所や火砲・特殊鋼材を取り扱う日本製鋼所、ロケット推進剤で存在感を示す日油などがあり、それぞれが独自の分野で防衛基盤を下支えしています。
宇宙スタートアップ
宇宙スタートアップは、従来の大手中心の産業構造に新しい価値をもたらす存在です。小型衛星やロケット打ち上げサービスの低コスト化を進め、革新的な技術によって官民の双方から注目を集めています。裁量の大きさや事業推進のスピード感が、その特徴です。
代表的な企業には、月面探査に挑戦するispaceや小型衛星によるデータ解析事業を展開するSynspective、低軌道衛星を手掛けるアクセルスペースなどが挙げられます。それ以外にも、インターステラテクノロジズやSPACE ONEは商業ロケットの打ち上げを進めており、新市場を切り拓く存在としても注目されています。
防衛専門商社・海外防衛企業
防衛専門商社・海外防衛企業は、国際的な装備品調達や技術移転を担う点が特徴です。商社は、海外メーカーと防衛省を結ぶ役割を果たし、交渉力や軍事知識を武器にビジネスを展開します。海外防衛企業は、最新技術を日本市場に導入し、国際的な協業を通じて新しい視点と経験を提供しています。
この領域では、航空機関連機器の輸入販売を手掛ける三井物産エアロスペースだけでなく、防衛関連の幅広い取り扱い実績がある住友商事エアロスペースやカネマツが代表的な企業です。海外の主要企業であるロッキード・マーティンやレイセオン・テクノロジーズ、BAEシステムズ、ボーイング・ディフェンスは、日本法人も展開しています。
航空宇宙防衛産業の主な職種・仕事内容と求められる経験・スキル
航空宇宙防衛産業には多彩な職種が存在し、それぞれに固有の役割と求められるスキルがあります。代表的な職種ごとに、その仕事内容と必要な経験・スキルを解説します。
- ●研究・開発・設計職
- ●生産技術・品質保証・整備保守技術者
- ●新規事業開発・プロジェクトマネジメント
- ●技術営業・マーケティング
研究・開発・設計職の仕事内容と求められる経験・スキル
研究・開発・設計職は、航空機や人工衛星、ミサイルといった装備品の根幹を担う職種です。仕様策定から設計、電子回路やソフトウェア開発、試作評価まで広範囲を担当します。防衛装備は、長期間運用されるうえに故障が許されないため、設計段階から入念な解析と検証の繰り返しが求められます。
そのため、機械・電気・材料・制御など、工学分野の基盤知識や、CADやシミュレーション解析の実務経験が必須です。そのうえ、国家規模の開発では、数百人規模のチームと協働するため、部門横断的な調整力や粘り強い課題解決力が欠かせません。新技術を吸収し、挑戦する姿勢も強く期待されています。
生産技術・品質保証・整備保守技術者の仕事内容と求められる経験・スキル
生産技術職は、装備品を効率的かつ高い精度で製造するための工程設計や改善を担当します。品質保証職は、国際規格に準拠した品質基準の管理を行い、不具合の原因を分析したうえで、再発防止策を策定・実施します。また、整備・保守技術者は、納入後の機器点検や修理を担い、長期にわたる運用を支えます。いずれも「不具合が国家の安全に直結する」という責任をともなう点が特徴です。
これらの職種で必要な経験には、製造業における生産管理や品質管理の実績、QC手法や国際規格の理解があります。近年、防衛産業は海外調達や共同開発も増えており、英文の技術文書を取り扱う力や国際的な品質規格への対応力も求められます。安全性と信頼性を確保する役割のため、緻密な分析力と継続的な改善を続けていく姿勢が重要です。

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新規事業開発・プロジェクトマネジメントの仕事内容と求められる経験・スキル
新規事業開発は、宇宙やサイバーといった新たな領域で事業計画を立案し、パートナー企業や官公庁と連携しながら推進する役割です。プロジェクトマネジメントは、防衛装備品の研究から量産に至る工程を統括し、品質・コスト・納期を満たすよう全体を統制します。
防衛関連の開発は長期にわたり予算規模も大きいため、計画の遅延や品質不良は国家事業全体に影響する可能性があります。そのため、マネジメント経験や事業企画の実績に加え、関係者間の利害を調整する高い交渉力が必要です。加えて、防衛省をはじめとする官公庁案件に対応するには、契約制度や調達ルールへの深い理解が不可欠です。関係者との合意形成を柔軟かつ粘り強く進める力も、特に重要視されています。

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技術営業・マーケティングの仕事内容と求められる経験・スキル
技術営業は、防衛省や関連企業に対して装備品やシステムを提案し、仕様調整や契約交渉を担います。たんなる営業ではなく、製品特性を理解したうえで、最適な提案を行う点が特徴です。マーケティング職は防衛・宇宙分野の市場動向を分析し、自社技術の応用や新規需要を見極める役割を果たします。
これらの職種で求められる経験は、理工系の素養を前提とした提案型営業や市場分析の経験、輸出入規制や入札制度への理解です。海外メーカーとのやり取りも多いので、高い語学力と異文化対応力も重視されます。国家規模の装備導入に関わるため、技術的な理解と商談力を兼ね備えた方が評価されます。

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航空宇宙防衛産業の最新転職・求人情報
航空宇宙・防衛産業に関連する求人は、従来ニーズの高い設計・開発・生産技術に加え、品質保証やプロジェクトマネージャー、コンサルタントなど、幅広いポジションの募集が散見されます。
実際に、「防衛分野エグゼクティブコンサルタント」や「衛星通信系システムエンジニア」など、新領域やクロスオーバー領域の求人も増えつつあります。
では、JACが保有する、航空宇宙防衛産業関連の最新求人情報を一部紹介します。
●株式会社IHI:[00149091]航空・宇宙・防衛/事業企画/本社 : 航空・宇宙・防衛分野における新規事業開発・推進
●社名非公開:[00140021] 品質保証(航空・宇宙・防衛事業領域全体の品質マネジメント戦略立案~構築・推進)
●プライム市場上場・大手半導体商社:防衛機器技術営業・マーケティング
●株式会社IHI:[00149021]航空・宇宙・防衛/設計/富岡・豊洲 : 複合材(FRP)を用いた航空/宇宙/防衛関連製品の設計・開発担当
●日本電気株式会社:4105 プロジェクトマネジメント(航空宇宙・防衛事業向けサイバーセキュリティ事業開発)【エアロスペース】
●株式会社IHI:[00149073] 次世代防衛装備品の開発・設計(機械または制御)
●インテグラン株式会社:◇◆製品開発(機構・実装設計)◆◇日本を技術で守る仕事/特殊用途カスタム電源担当
●株式会社IHI:[00149141]宇宙/設計/富岡・東京 : 宇宙開発を担う宇宙機/人工衛星/宇宙用機器/推進装置等の新規設計・開発
●【航空宇宙・防衛業界向け】外資系最大手電子メーカー:アプリケーションエンジニア
●大手日系重工業メーカ:航空機搭載機器、航空機関連装置のソフト、ハード設計、研究/開発
●株式会社SHIFT:防衛分野 エグゼクティブコンサルタント/官公庁案件/裁量もち最前線で国家安全保障に貢献
●日本電気株式会社:3319 衛星通信系システムエンジニア(運用提案・ハードウエア) 【ナショナルセキュリティ/マリタイムセキュリティ】
これらは、公開求人のごく一例です。実際には非公開求人も多数存在します。JACでは企業戦略上公表できない非公開求人を豊富に取り扱っています。より多くの選択肢を得たい方は、転職コンサルタントに相談されることをお勧めします。
※掲載されている求人の中には、募集が終了している場合がございます。あらかじめご了承ください。(2025年9月現在)
未経験から航空宇宙防衛産業への転職は難しいのか
航空宇宙防衛産業は、高度な専門知識が要求される分野であるため、業界未経験からの転職はハードルが高いといえます。しかし、不可能ではありません。
特に機械・電機・ITなど、基盤技術が共通する分野の出身者であれば、そのスキルを防衛装備品の開発に転用しやすく需要は高い傾向にあります。自動車メーカーでのエンジン開発経験が航空機エンジンやロケットモーター開発に、通信会社でのネットワーク構築経験が防衛用通信システム開発に活かされるといった例もあります。また、製造業での生産管理や品質管理経験者も、防衛装備品の生産部門でスキルを発揮できます。
こういった異業種出身者が転職の成功率を高めるには、まず航空宇宙防衛産業に関する専門知識の習得が必要です。具体的には、MIL規格やFMS調達、ステルス技術の原理など、防衛産業の基本用語や、小型衛星の市場動向も含めた宇宙ビジネスの現状などが挙げられます。これらを独学でも学んでおくことで、志望動機や面接時に具体性のある回答ができるようになります。
航空宇宙防衛産業への転職で求められる人物像
航空宇宙防衛産業への転職で求められる人物像は、次のとおりです。
- ●国家を支える高い使命感と社会貢献マインド
- ●最先端技術への挑戦心
- ●チームで困難に立ち向かう協調性と柔軟性
国家を支える高い使命感と社会貢献マインド
航空宇宙防衛産業では、国家を支える高い使命感と社会貢献マインドを備えた方が求められます。なぜなら、防衛装備品の研究・開発・運用は国の安全に直結し、わずかな過失が重大な影響を及ぼす可能性があるためです。成果が可視化されにくく、日常業務は地味に見える場合もありますが、それらの積み重ねが安全保障そのものを成り立たせています。
よって、即時的な成果を求めるのではなく、長期的な公共への奉仕を自らの使命と捉えられる姿勢が不可欠です。防衛関連の政策文書でも公共性と責任感について繰り返し言及されており、この産業に関わるうえで揺るがない基盤とされています。
最先端技術への挑戦心
航空宇宙防衛産業では、最先端技術に挑みたいという高い精神性を備えることが求められます。防衛や宇宙の領域は、常に技術的な限界に挑む産業であり、既存の方法では解決できない課題に直面するからです。
極超音速飛翔体や次世代衛星の開発など、世界規模で研究が進むテーマは試行錯誤と失敗を前提にしています。過去の枠組みにとどまってしまえばそこから進歩はなく、積極的に未知の領域へ踏み出す姿勢が不可欠です。
技術革新の速度は年々加速しており、数年で陳腐化する知識も少なくありません。そのため、常に最新の知見を取り込み成長する意識と、それを自らに課すチャレンジ精神が求められています。
チームで困難に立ち向かう協調性と柔軟性
航空宇宙防衛産業では、チームで困難に立ち向かう協調性と柔軟性を備えた方が強く求められます。プロジェクトは長期にわたり複数の専門領域が関与するため、個の力だけでは成し得ないからです。
計画どおりに進まない場面では、関係者と連携して解決策を模索する協調性が必要です。突発的な課題や技術要件の変更が発生することも多く、その際に適切に対応できる柔軟さが欠かせません。特に国際共同開発や官公庁との連携においては、立場の違いが複雑に絡むため、協調性と柔軟性を備えた方が、成果を安定的に導きやすくなります。
航空宇宙防衛産業へ転職した場合の年収相場
2023年1月~2025年8月までにJACが転職をサポートした事例を見ると、航空宇宙防衛業界へ転職された方の平均年収は、806.7万円となっています。ボリュームゾーンは700万円台後半~900万円台で、全体的に高いレンジに集中しているのが特徴です。
年代別に見ると、20代後半では約573万円と標準的な水準ですが、30代前半には676万円を超え、30代後半には817万円前後に達しています。さらに40代でも上昇が続き、経験や専門性の深化が年収に強く反映されています。一方で、50代以上では891万円前後とやや横ばいになる傾向も見られますが、依然として高水準を維持しています。
また、JACの事例には1,600万円を超える年収で転職が決定したケースもあり、経営・事業企画やマネジメントクラスなどの責任あるポジションに就任することで、大幅な年収アップが実現しています。これらの数字から、専門知識と実績が大きく評価される業界であることがうかがえます。

| 役職 | 平均年収 |
|---|---|
| メンバークラス | 760.3万円 |
| 管理職 | 1,080.2万円 |
| 平均年収 | |
|---|---|
| 日系企業 | 803.2万円 |
| 外資系企業 | 820.4万円 |
※当社実績(2023年1月~2025年8月、想定年収)より
一般的な数字を見ると、航空宇宙・防衛産業に従事する技術者や研究開発職の平均年収は、600万円~800万円程度とされています。特に大手メーカーや防衛関連企業では、700万円台後半以上に達する事例も多く、業種と企業規模によって大きな差が出やすい領域です。
航空宇宙防衛産業の転職事例
JACが提供する転職支援サービスを利用し、転職を成功させた航空宇宙防衛産業の転職事例を紹介します。
宇宙スタートアップのシニアGNCエンジニア(防衛・宇宙)に転職した事例
Oさん(40代前半/男性)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 製造業(電気機器) | 制御系設計・開発 | 1,000万円 |
| 転職後 | サービス業(宇宙関連) | シニアGNCエンジニア | 1,100万円 |
Oさんは、人工衛星・宇宙探査機の制御系設計に一貫して携わり、姿勢制御や運用までを通貫で担ってきたエンジニアです。国内大手メーカーでの開発に加え、海外での購買・調達管理や小型衛星の新規事業にも関与し、技術深度とプロジェクトマネジメントの双方のスキルを磨いてきました。直近は、5〜10名規模のリード経験も有しており、英語力や情報処理系の資格も備える総合力が強み。
Oさんと面談をしたJACのコンサルタントは、Oさんの「制御則設計・アルゴリズム開発」や「AOCS/GNCのシミュレーション(MATLAB)」、「搭載SW開発(C/Linux)」といった実務スキルに加え、実機ミッションに近い試験や運用の経験を整理して分析しました。そのうえで、宇宙デブリ除去などのRPOやドッキングが求められるミッションに必要な要件と、Oさんの経歴とを対応させて可視化し、GNCハードウェア・ソフトウェアのアーキテクチャ選定やFMECA/FDIRまで踏み込んだ提案ができるシニア層として評価・提案しました。
結果、ミッションCONOPS定義から検証計画までを主導できるポジションで内定に至り、年収アップも実現しました。衛星制御の専門性に加え、チームリードや英語での技術交渉といった周辺能力が評価されたケースです。
※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。
宇宙(超小型衛星)SW開発エンジニアへ転職した事例
Kさん(50代前半/男性)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 製造業(輸送用機器) | PM | 1,100万円 |
| 転職後 | サービス業(宇宙関連スタートアップ) | SW開発エンジニア | 1,000万円 |
Kさんは、熱・空調領域の先行開発や海外駐在、共同開発など、自動車分野でのシステム志向のエンジニアリングを幅広く経験してきました。直近は課長として開発マネジメントに従事しつつ、設計品質やコスト目標の達成に向けた意思決定を率いてきた方です。その中で、宇宙産業への挑戦を志すようになり、衛星開発の立ち上げフェーズで手を動かしながら価値を出せる環境を希望されるようになりました。
JACのコンサルタントは、Kさんの「車両の熱マネジメント(宇宙機の熱・環境条件下でのシステム設計)」や「先行開発の要件定義(衛星ミッションの要件分解・仕様化)」、「グローバル連携(海外パートナーとの技術コミュニケーション)」といった経験の関連性を整理しました。そして、これらの経験が、衛星の姿勢制御ソフトウェアや地上局・運用系ソフトウェアなどの複数の職種に求められる宿主内容と合致すると判断。Kさんをアーキテクチャ設計や検証プロセスに強い即戦力として提案しました。
結果として、立ち上げ期の宇宙スタートアップにおけるソフトウェア開発職の内定を得ることができました。年収は一時的に下がるものの、裁量の大きさや成長の機会を重視し、将来的にリーダーやプロジェクトマネージャーへのキャリアアップも見据え、この選択を決断されました。
※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。
宇宙スタートアップの事業企画・事業開発(航空・宇宙)に転職した事例
Aさん(30代後半/男性)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 情報・通信業 | 事業開発・経営戦略 | 800万円 |
| 転職後 | 航空・宇宙産業/宇宙スタートアップ | 事業企画・事業開発 | 1,000万円 |
Aさんは、航空機整備の領域において、品質保証やエンジン整備の技術折衝を経験し、業界政策の策定から提言までを担ったあと、直近ではドローン企業での経営企画・IPO準備・予実管理を推進してこられた方。これと並行してドローンポートの国際標準(ISO 5491)の規格作成プロジェクトを主導し、ソリューション営業の職でも事業化を牽引してこられました。事業企画から事業推進、規制・標準、アライアンス形成まで、一気通貫の実行力という強みがあります。
JACのコンサルタントは、Aさんが有する「規制・標準化の実績」や「KPI/予実に基づく経営管理」、および「新規事業のPM・顧客開拓」という3つの強みを、超小型衛星を核とした通信、リモートセンシング、測位ソリューションを柱とする事業開発要件に照らし合わせて整理しました。そのうえで、技術部門と密接に連携しながら事業設計を推進できるビジネスリーダーとして、国内外のアライアンス構築や法令対応にも積極的に関与する役割を提案。
最終的に、IPOを目指す宇宙関連ベンチャー企業において、新規サービスの事業化を牽引するポジションのオファーを獲得。報酬も将来的な段階的上昇を見込んだ条件で合意しています。
※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。
航空宇宙防衛産業へ転職後のキャリアパス
航空宇宙防衛産業へ転職した後のキャリアパスで、代表的なものは次のとおりです。4つそれぞれを解説していきましょう。
- ●管理職へ昇進ルート・専門スキル深化ルート
- ●新興テック産業のマネージャー職や技術コンサルタントへ転身
- ●欧米の航空宇宙防衛企業に転職
- ●防衛省・防衛装備庁やシンクタンクに転職
管理職への昇進ルート・専門スキル深化ルート
航空宇宙防衛産業で経験を積んだあとは、そのまま企業で管理職を目指すルートと、専門スキルをさらに深めて専門職として活躍するルートがあります。
大規模で長期的な開発を担う企業では、品質・コスト・納期を統括できる管理職の育成が重視されています。一方で、推進・誘導制御や複合材、セキュア通信などの主要分野では、継続的に技術の高度化が求められるため、専門職として深い知識を磨く道も重視されています。
管理職は部門をまたいだ調整やサプライチェーンの統制を担当し、専門職は解析や規格への適合設計を主導するなど、いずれのルートも航空宇宙防衛分野で得た知識と経験を活かせる道です。
新興テック産業のマネージャー職や技術コンサルタントへ転身
航空宇宙防衛で培った経験は、新興テック産業のマネージャー職や技術コンサルタントへ転身する道にもつながります。なぜなら、防衛分野では高信頼性設計や要求定義から検証までの体系的な手法が徹底されており、ドローンや自動運転、ロボティクスなどの分野に応用できるからです。
国家規模の開発で養われた品質保証や安全設計の知見は、量産段階に入った新産業にとって、特に価値があります。加えて、大規模プロジェクトの統括経験は、コンサルタント職として技術戦略や事業開発への助言が可能で、高く評価される要素です。
欧米の航空宇宙防衛企業に転職
欧米の航空宇宙防衛企業に転職する道も開かれています。国際共同開発や海外拠点の拡大が進んでおり、日本での経験がある専門職を求める動きがあるためです。
航空宇宙防衛で培った設計や品質規格への理解、官公庁との調整経験は、海外プロジェクトに即応できる強みとなります。英語による高度な技術コミュニケーションや契約交渉の能力が求められますが、国際的な組織で必要とされるこれらの資質は、日本での実務経験とも密接に関係し、活かすことが可能です。
防衛省・防衛装備庁やシンクタンクに転職
航空宇宙防衛での経験は、防衛省や防衛装備庁、シンクタンクへの転職にもつながります。政策立案や調達評価には、産業での実務に基づく技術・コスト・信頼性の理解が欠かせないためです。
装備の要求水準やライフサイクル費用の判断には、開発から維持整備まで一連の流れを把握していることが役立ちます。防衛装備庁では研究開発や調達制度の企画運用を、シンクタンクでは技術動向分析や政策提言を担うことが想定されています。
いずれの場合も、航空宇宙防衛で培った知見が十分に活かせる領域です。
航空宇宙防衛産業への転職なら、JAC Recruitment
航空宇宙防衛産業は、防衛装備・航空機・衛星通信など国家インフラに直結する高度技術領域で構成され、長期プロジェクトと厳格な品質保証、および安全基準の遵守が同時に求められる領域です。
そのため、機械・電気・組込ソフトなどに関する専門知識やシステム設計・冗長化設計の経験、トレーサビリティ運用や規格適合の知見、利害関係者をまとめるプロジェクトマネジメント力など、幅広い能力が求められます。加えて、輸出管理や契約実務、英語を用いた国際協業の経験も評価対象となります。
こうした背景から、航空宇宙防衛産業での転職を成功させるためには、各社の開発体制・調達方針・技術ロードマップに関する情報や、セキュリティや規格に精通したエージェントのサポートが重要です。
JACには航空宇宙防衛の最新動向に精通したコンサルタントが在籍し、個々の強みを可視化したうえで最適なキャリアを提案します。さらに、一般には公開されていない非公開求人も取り扱っているため、新たなキャリアの可能性に出会える機会が広がります。
航空宇宙防衛産業への転職をお考えの方は、ぜひJACにご相談ください。

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メーカー転職情報
メーカーの転職市場においても、JAC Recruitmentは多くの方々の転職を成功させてきました。JACは業界専任制のコンサルティングを行っているため、高い専門性や業界の知識を豊富に蓄積しており、また市場動向についても… 続きを読む メーカー転職情報



