地方銀行から転職したい方へ|主な転職先や評価されやすい経験を解説

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公開日:2025/07/04 / 最終更新日: 2025/07/04

近年、地方銀行出身者が異業種へとキャリアを広げる動きが加速。これは一時的な現象ではなく、構造的な転職トレンドとして定着しつつあります。

その背景には、マイナス金利政策や地方経済の縮小による銀行の収益構造の変化などがあり、地方銀行の将来性に不安を感じる若手行員が少なからず増加した要因にもなっています。また、年功序列や硬直的な組織文化、営業ノルマのプレッシャーなど、成長実感を得にくい職場環境も転職を後押ししています。

一方で、地方銀行出身者がもつスキルは、異業種でも高く評価される傾向も。例えば、財務分析力やリスクマネジメント、法人営業における折衝力は、コンサルティングファームや事業会社の経営企画部門、投資部門などで即戦力として期待される要素です。実際、当社がかかわった実績でも多くの地方銀行出身の方が、多様な分野で活躍しています。また、地域密着型の金融機関で培った中小企業への理解力や現場感覚は、スタートアップや地方創生関連の事業でも重宝されています。

本記事では、JAC Recruitment(以下、JAC)の実績をもとに、地方銀行出身者に人気の転職先や、企業から高く評価されやすいスキル・経験について詳しく解説します。

地方銀行出身者の主な転職先


地方銀行出身者の主な転職先は以下のとおりです。

・金融機関(保険・証券・アセットマネジメントなど)
・コンサルティングファーム(金融アドバイザリー・業務改革)
・IT・EMC業界(システム部門・DX推進)
・事業会社(経営企画・経理・財務)
・営業系職種(特にBtoBソリューション営業)

ここから、それぞれの転職先について詳しく解説します。

金融機関(保険・証券・アセットマネジメントなど)

地方銀行で培った金融知識や与信判断力を生かし、保険・証券・アセットマネジメント業界において「営業」「商品企画」「リスク管理」などの職種に転職するケースがみられます。

・営業:法人・個人向けの金融商品提案や資産運用コンサルティングを担当します。地方銀行での顧客折衝力や信頼関係の構築力が、営業活動において大きな強みとなります。

・商品企画/リスク管理:市場ニーズを分析し、投資商品や保険商品の設計・リスク評価に携わります。金融実務とリスクマネジメント経験が評価されます。

コンサルティングファーム(金融アドバイザリー・業務改革)

「コンサルティング・シンクタンク・事務所」への転職も目立ちます。特に、中小企業支援や業務改善の経験を生かして「M&Aアドバイザリー」「業務改革」などの分野で活躍することが一般的です。

・M&Aアドバイザリー:企業価値評価や買収スキーム構築を担当。財務諸表分析や与信管理の知識が即戦力になります。

・業務改革支援:地方銀行での本部企画や店舗オペレーションの改善経験が、クライアント企業への業務改革提案に活かされます。

IT・EMC業界(システム部門・DX推進)

デジタルシフトの影響で、ITやEMC(電気・機械・コンピューター)業界への転職も増加傾向です。社内SEやIT企画、DX推進などの役割が中心です。

・社内SE・IT企画:勘定系や営業支援システムなどの導入・改修を担当。金融業界特有の業務要件理解がある方が求められます。

・業務プロセス改革(DX):現場に根ざした業務改善とシステム化の橋渡しを行います。銀行業務の知見とデジタルリテラシーの組み合わせが強みとなります。

事業会社(経営企画・経理・財務)

事業会社では「経営企画」「経理」「財務」などの管理系ポジションに転職するケースが多く、企業経営の意思決定を支える業務での活躍が目立ちます。

・経営企画・事業推進:銀行での中小企業支援や融資審査の知識を生かし、経営層に近いポジションで新規事業企画や予算管理に携わります。

・経理・財務:資金繰り・資金調達・財務戦略の立案などを担当。決算業務経験のある方は、早期戦力化が見込まれます。

営業系職種(特にBtoBソリューション営業)

地方銀行での営業経験を生かし、事業会社や外資系企業などで法人向けソリューション営業に転職するケースもあります。

・BtoB営業:IT・製造業・不動産など多様な業界で活躍。提案力・折衝力・課題解決力が求められ、地方銀行での営業経験は高く評価されます。

・新規開拓・アカウントマネジメント:取引先の課題を見極めた提案活動が期待され、地域密着型営業の経験が武器になります。

地方銀行からの転職で評価される経験・スキル


地方銀行から転職する場合、以下のような経験やスnキルをもっていると有利です。

・システム開発
・プロジェクトマネジメント
・ソリューション営業
・企業分析/与信判断
・データ分析

ここから、それぞれの内容を確認しておきましょう。

システム開発

地方銀行での基幹システムや情報系システムの導入・保守経験は、他業界でも高く評価される傾向です。特に、オープン系システムやクラウド環境での開発・運用経験は、事業会社のIT部門や社内SE職への転職で即戦力とみなされます。

ユーザー部門として開発プロジェクトに関わった経験も十分にアピール材料となり、業務知識と技術理解の両立が重要なポイントです。金融機関のシステム開発経験者は、DX化やクラウド化、セキュリティ強化のニーズが高まるなか、幅広い業界で求められています。

プロジェクトマネジメント

新規サービスやシステム導入などのプロジェクトを横断的な立場でリードした経験は、多くの業界で評価されます。

銀行業務は関係部署が多く、ステークホルダー調整・進捗管理・外部ベンダー折衝などのスキルが必須です。こうした経験は、転職先でのマネジメント職や業務改革担当として即戦力となりえるでしょう。大規模・複雑なプロジェクトの完遂経験はキャリアアップや年収交渉でも有利に働きます。

ソリューション営業

法人顧客向けに課題解決型の提案を行っていた経験は、IT・コンサルなどBtoB企業でも高評価に直結。金融商品という無形商材の提案経験から、顧客のニーズを引き出す力や信頼関係構築力が身についているとみなされるでしょう。

特に、単なるルート営業ではなく、提案型営業の経験があることが強みとなります。

企業分析・与信判断

銀行で培った与信判断、業界調査、企業分析のスキルは、経営コンサルやM&Aアドバイザリーへの転職で生かせます。特に中堅企業向けの経営支援や地方創生関連案件では、地方銀行出身者の知見やネットワークが強みとなります。

金融業界出身者向けのコンサルティングポジションは未経験でも門戸が広がっており、年収アップも期待できるでしょう。

データ分析

顧客データや取引履歴をもとにした分析業務経験は、他業界のマーケティングや経営企画部門でも通用します。ExcelやPower BIなどのツール活用だけでなく、分析結果を業務施策に落とし込むロジカルな思考力が欠かせません。

金融業界でのデータ活用経験は、今後さらに市場価値が高まる分野です。地方銀行でもDX推進やデータドリブン経営が進み、データ分析人材の需要が増しています。

【年代別】地方銀行からの転職事情


ここでは、地方銀行出身者の転職事情について年代別に解説します。

20代地方銀行からの転職事情

20代は柔軟なキャリア形成が可能で、異業種・異職種へのチャレンジがしやすい時期です。地方銀行では、若手でも地域企業との接点が多く、早期から法人営業や融資業務に携わる機会があります。こうした経験は、BtoB営業やコンサルティング業界でのポテンシャル評価につながりやすく、第二新卒枠やポテンシャル採用を活用してIT、コンサル、不動産など幅広い業界への転職が進んでいます。

30代地方銀行からの転職事情

30代は実務経験や専門性が評価される年代です。地方銀行では、支店運営や本部企画、業種別融資などの業務を通じて、地域経済の実態に即した判断力や調整力が培われます。前半は異業種・異職種への転職も可能ですが、後半になるとマネジメント経験や業務改善の実績が重視され、金融業界内外で即戦力として期待されます。特に、地域密着型の営業経験を生かしたスタートアップ支援や地方創生関連のポジションでの活躍が目立ちます。

40代地方銀行からの転職事情

40代は豊富な経験や専門知識、マネジメント力が強みとなります。地方銀行では、支店長や本部管理職として地域経済の中核を担う役割を果たすことが多く、ESG投資や事業承継支援など新たな領域への対応力も求められます。こうした経験は、コンサルティングファームや事業会社の経営企画部門などで高く評価され、組織の中核を担うポジションへの転職につながります。

50代地方銀行からの転職事情

50代は長年の経験や豊富な人脈、マネジメント力が大きな強みです。地方銀行では、地域金融の安定運営や後進育成、自治体・商工団体との連携など、地域社会との深い関わりをもつ方が多く、こうした知見は顧問・アドバイザー・コンサルタントとしての価値につながります。働き方の選択肢も広がっており、正社員に加え、嘱託や業務委託、地域貢献型のポジションなど、やりがいを重視したキャリア形成が可能です。

地方銀行からの転職を成功させるためのポイント


地方銀行からの転職を成功させるためのポイントを解説します。

・地方銀行ならではの“地域経済支援力”を汎用スキルへ転換
・業界研究と自己分析によるターゲット設定
・スキルアップと資格取得による市場価値向上
・納得感のある転職理由とキャリアストーリーの設計
・転職エージェントの活用

ここから、各ポイントの内容を解説します。

地方銀行ならではの“地域経済支援力”を汎用スキルへ転換

地方銀行での業務を通じて培った「地域経済への貢献力」や「地元企業・個人との信頼構築力」は、他業界でも高く評価される資質です。地域に根ざした金融サービスや、地場産業の成長支援、自治体・商工団体との連携経験などを、単なる銀行業務の枠を超えた“地域経済支援力”として言語化しましょう。

こうした力を「地域活性化」「コミュニティマネジメント」「パートナーシップ構築」などのキーワードで再定義することで、異業種や事業会社でも即戦力となるアピールが可能です。

業界研究と自己分析によるターゲット設定

転職活動を始める前に、転職先となる業界や職種について徹底的にリサーチし、自分の強みや価値観に合ったキャリアパスを描くことが大切です。地方銀行出身者は、金融業界内の他行・証券・保険はもちろん、コンサルティングやフィンテック、メーカー、IT、不動産など多様な選択肢があります。

自己分析によって「自分は何をしたいのか」「どのような環境で働きたいのか」を明確にし、どの業界、職種において自分のスキルがマッチアップするのか、また業界研究で転職先のニーズや求められるスキルを把握しましょう。

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スキルアップと資格取得による市場価値向上

地方銀行員としての経験に加え、転職市場での競争力を高めるためには、資格取得や新たなスキルの習得も重要です。

例えば、FP、宅建、簿記、証券アナリスト、ITパスポートなどの資格や、オンライン講座でのデジタルスキル習得が有効です。異業種やハイキャリア転職への道が広がります。

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納得感のある転職理由とキャリアストーリーの設計

面接で必ず問われるのが転職理由です。地方銀行での経験を肯定しつつ「より広いフィールドで自分の力を試したい」「金融知識を生かして新たな価値を生み出したい」など、前向きなキャリアビジョンを語れるようにストーリーを設計しましょう。

自分の成長意欲やキャリアの一貫性を明確に伝えることで、面接官の納得感を得やすくなります。

銀行・金融営業の職務経歴書サンプルと書き方

転職エージェントの活用

JACのような転職エージェントを活用することで、地方銀行で培ったスキルや経験がどの業界・職種で評価されるかを客観的に見極めてもらえます。コンサルタントは、ご自身の経歴や強みを分析し、最適なキャリアパスや求人を提案してくれるため、自分一人では気づきにくい選択肢や非公開求人にも出会える可能性が高まるでしょう。

また、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策、企業との日程調整、内定後の条件交渉などもサポートしてくれるため、転職活動全体が効率的かつ安心して進められます。

JACコンサルタント一覧(金融業界)

地方銀行からの転職事例


地方銀行出身者の転職先は、多種多様です。ここでは、JACを活用し地方銀行からの転職を成功させた事例を3つご紹介します。

地方銀行からインフラ・エネルギー事業会社への転職事例

Oさん(男性/30代後半)

 業種職種年収
転職前地方銀行法人向け融資/ストラクチャードファイナンス900万円
転職後日系大手・インフラ・エネルギー事業会社プロジェクトファイナンス1,100万円

Oさんは、金融機関で培ってきた高度なファイナンス知識と実務経験を生かし、より主体的に事業へ関与できる環境を求めて転職を決意されました。大学卒業後、大手地方金融機関に入行し、法人・個人向けの融資業務で優秀な実績を収めた後、本部の業種別専門チームへ異動。医療・介護業界向けの資金支援に従事し、病院や介護施設の建設、医師の開業支援などを手がけてきました。

その後はストラクチャードファイナンス部門へ転籍し、プロジェクトファイナンス、海外企業向け融資など、複雑性の高い案件に対応。豊富な専門知識と実務力を備えながらも、現職では保守的な業務範囲に限界を感じ、より能動的に事業形成に携われるキャリアを模索するなかでJACにご相談いただきました。

JACのコンサルタントはOさんの実績を強みととらえ、再生可能エネルギー分野のプロジェクトに携わるポジションでご提案。結果として、年収は900万円から1,100万円へと向上し、家族の生活環境にも配慮しながら、東京勤務のまま次のステップへ進まれています。

地方銀行からM&A仲介・アドバイザリー企業への転職事例

Nさん(男性/30代後半)

 業種職種年収
転職前地方銀行リレーションシップマネージャー850万円
転職後日系上場・M&A企業M&Aコンサルタント900万円

Nさんは、法人営業での高い実績を生かし、より専門性の高いフィールドでキャリアアップを目指して転職を決意されました。大学卒業後、地方大手の金融機関に入行。これまで複数支店で法人融資のRM(リレーションシップマネージャー)を務め、企業の資金ニーズに応じた融資提案や財務支援に一貫して取り組んできました。

前職は、次期支店長代理としての昇格も見据えられていたなか、M&Aやコンサルティングといった領域に強い関心をもつようになり、自身の経験をより高度な形で生かせる環境を求めてJACにご相談いただきました。

JACのコンサルタントは、Nさんの金融知識と営業力を生かせるポジションとして、M&A仲介会社の事業開発職をご提案。結果として、年収は850万円から900万円に向上し、今後はM&Aの現場でさらに専門性を高めながら、長期的には年収2,000万円を目指せるキャリアパスを歩まれています。

地方銀行からインターネット専業銀行への転職事例

Yさん(男性/50代前半)

 業種職種年収
転職前地方銀行リスク管理・審査・格付制度企画1,350万円
転職後国内大手ネット銀行信用リスク管理1,400万円

Yさんは、地方金融機関での長年の経験と、専門的な資格・知見を生かし、新たなステージへの挑戦を決意されました。大学卒業後、地域密着型の金融機関に入行し、大阪・東京の法人営業部門にて上場企業を中心に約10年間営業を担当。営業マネージャーとして10名規模のマネジメント経験も有しています。中小企業支援協議会への出向や私費でのMBA取得など、常に学びと挑戦を重ねてきた姿勢が印象的です。

近年は信用リスク領域へ軸足を移し、リスク管理・審査・格付制度の企画立案に従事。なかでも、10年にわたりIRB(内部格付手法)の導入プロジェクトをリードし、制度導入を達成した経験は、社内外から高く評価されています。

JACのコンサルタントは、その専門性と柔らかな人柄、プレイングマネージャーとしての実行力を強みととらえ、次なるフィールドとしてネット銀行をご提案。プロジェクト推進とリスク管理の双方で力を発揮できる環境への転職を実現し、年収も1,350万円から1,400万円へと向上。役職定年の制約を受けず、引き続き活躍できる新たな舞台でキャリアを継続されています。

実際、地方銀行出身者はどのような業種/職種に転職している?


ここからは、地方銀行出身者の転職先として選んだ業種、職種のトップ10をご紹介します。

【地方銀行出身者が転職先として選んだ業種トップ10】

地方銀行出身者の転職先として最も多かった業種は「金融(31.6%)」でした。銀行で培った融資・審査・リスク管理などの専門知識が、ほかの金融機関でも高く評価されており、同業界内でキャリアを継続する動きが主流となっています。次いで多かったのが「EMC(24.6%)」で、これは製造業・建設・エネルギー・インフラなどを含む業界です。法人営業での取引経験や業界知識を生かし、業種を超えた転職が進んでいることがわかります。

順位業種割合(%)
1金融31.4%
2EMC25.5%
3IT・通信13.7%
4コンサルティング・シンクタンク・事務所11.8%
5Web3.9%
6メディカル・バイオ3.9%
7マスコミ2.0%
8流通2.0%
9サービス2.0%
10消費財2.0%
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【地方銀行出身者が転職先として選んだ職種トップ10】

職種別では最も多かったのは「営業(19.6%)」で、銀行時代に培った法人顧客への提案力や関係構築力が異業種でも評価されていることがわかります。次に「金融系専門職(17.6%)」とされるポジションが多く、これは融資審査、運用、財務関連など、金融業界内での専門的業務を含むと推察されます。また「経営・事業企画(17.6%)」への転職も一定数あり、銀行での経営支援経験を生かして企画系の職種にシフトする事例も目立ちます。

順位職種割合(%)
1営業19.6%
2金融系専門職17.6%
3経営・事業企画17.6%
4IT11.8%
5経理・財務11.7%
6人事・労務7.8%
7コンサルティング・アドバイザリー7.1%
8マーケティング・商品開発3.9%
9内部統制・監査2.0%
10総務・広報2.0%
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また、JACは金融業界のみならず、コンサルティング、IT、メーカーなど幅広い業界とのネットワークを生かし、多様な選択肢を提案できる点も強みです。さらに、管理職や専門職などハイクラス求人を多く扱っているため、これまでの実績や専門性を生かしたキャリアアップを実現しやすい環境が整っています。

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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。