医師から他業種への転職事情|難易度や成功のポイントとは

  1. メディカル(医療)業界
  2. 医師
  3. 転職マーケット×メディカル(医療)業界
  4. 転職マーケット×医師

2024年では、医師の数は約34万人。これが2030年には36万人に達するともいわれています(厚生労働省による2020年までの調べ)。

参照先:厚生労働省「令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

医師が約34万人いる中で、医療施設以外の一般企業で働いている医師(その他の業務の従事者)はわずか800人弱と非常に少ない現状です。しかし近年、医師から他業種の一般企業へ転職を希望する方は増えており、JAC Recruitment(以下、JAC)にも医師から医師以外の仕事への転職相談が増加、今後ますます増えることが予想されています。

ここでは、JACに寄せられる医師からの転職相談でも、ご希望の多い製薬会社への転職がどのように進められるのか、実際にどのような採用ニーズがあるのかについて専門コンサルタントがご紹介いたします。また、医師からの転職で多い職種別・地域別の動向や年収相場、転職成功事例についてもあわせて解説します。

なお、JACにはヘルスケアのマーケットだけで150名程のコンサルタントが在籍。医薬品、医療機器、バイオテック・ヘルステックのベンチャー担当もおり、他社には真似できない規模で展開しています。

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医師から他業種への転職は増加傾向


2024年の転職動向として、アメリカやイギリス・ドイツなどの諸外国と同様に、医師免許をお持ちの方が医療施設以外の一般企業で働く事例は増加傾向です。JACでも医師からの転職相談は前年比で1.5倍に増加の見込みです。

実際、医師免許をお持ちの方を採用したいと考えている一般企業も徐々に増えており、今後数年スパンで見たときに医師の転職市場はますます増加していくことが予想されます。

医師から他業種への転職の年収相場|1,000~1,500万円


医師が製薬会社に転職する場合、一般企業未経験の方の年収はおよそ1,000万円~1,300万円、高評価の場合で上限1,500万円ほどが相場となっています。

一方で、一般企業経験者の医師の場合はその限りではなく、製薬業界の経験を数年積んでいただくことで年収1,500万円以上となることもあります。チームリーダー・部門のトップを任されるような方の場合には、それ以上の年収も十分に期待できます。

医師から他業種への転職で多いポジションは?


医師の医療施設以外の一般企業への転職では、どのようなポジションがあるのでしょう。現在、大きく分けて3つの採用ニーズがあります。

医療施設以外の一般企業での医師免許を生かした求人ポジション

以下より、それぞれの医師求人ポジション別にご紹介していきます。

一般企業での医師求人1. 製薬会社・医療機器会社

臨床現場からもっとも近い業種であり、未経験であっても疾患専門性を活かせるフィールドとして、医師から一般企業への転職でまず検討いただく最もポピュラーな選択肢が「製薬会社・医療機器会社」です。

医師として臨床で一人ひとりの患者さんを対応する中で「もっと多くの患者さんの力になりたい」と考え、そのために自身の専門とする疾患領域における医療用医薬品や医療機器の開発や適性使用に携わりたいとのお声も多く、企業としても臨床現場で培われた専門性をメーカーサイドで活かして活躍いただきたいとのニーズがあります。

具体的なポジションとしては以下4つに分かれます。

製薬会社・医療機器会社でのポジション

  1. 臨床開発
  2. メディカルアフェアーズ
  3. 安全性(Drug Safety)
  4. その他

それぞれのポジションについて、以下に解説します。

製薬会社・医療機器会社でのポジション1. 臨床開発

R&DのD: Developmentを担当いただく部門がClinical Developmentであり、まだ世の中にない薬剤を一日も早く患者さんに使っていただけるように承認取得を目指して治験を進めていただくポジションです。

昨今はICHに準拠してグローバル基準でClinical Trialが進められ、国際治験として各国共同で試験をすることが多くなってきています。

その際に日本の患者さんでの疾患像を踏まえて、どのようにリクルートを進めるのがよいのか、プロトコルは適切であって日本の実臨床を想定しても違和感がないか、主評価項目・副次評価項目は日本での治験実施において過不足なく設定されているかどうかなど、臨床現場の経験も活かしていただきながら臨床開発を力強く推進するプロジェクトマネジメントスキルが求められます。

製薬会社・医療機器会社でのポジション2. メディカルアフェアーズ

R&Dの「創薬」と比較して、「育薬」あるいは「適薬」などの表現であらわされるのがMedical Affairsです。臨床現場の医師への情報提供を通じて中立・公平な立場で科学的なディスカッションを行い、現場のクリニカルクエスチョンを持ち帰ってくるのがMSL: Medical Science Liaison。

そのクリニカルクエスチョンからメディカル戦略を構築し、臨床研究を進め、製品の価値最大化を実行していくのがMedicalのStrategy部門、いわゆるOffice Medicalと呼ばれる機能となります。実臨床がメインフィールドとなる部門ですので臨床経験を活かしながら、治療法をより戦略的に適切かつ最大化していくことが求められます。

製薬会社・医療機器会社でのポジション3. 安全性(Drug Safety)

医薬品における「有効性」と「安全性」、その内の「安全性」を専門として副作用情報の収集から医学的見地をまとめ、くすりの適性使用に貢献いただくのが安全性(Drug Safety)の部門となります。

実際に臨床現場で発生した新規副作用情報を医薬品メーカーへ報告した際に、企業側から安全性情報の説明にメーカー側の医学専門家として医師資格を保有する方に出会われた方もおられるのではないでしょうか。

治験フェーズでは限られた症例数・条件でしか副作用を検出できておらず、実臨床現場での安全性モニタリングは医薬品を安全に育てていく上で非常に重要な役割であり、医師の方の疾患専門性がそのまま活きてくるポジションです。

製薬会社・医療機器会社でのポジション4. その他

募集自体は少ないですが、①臨床開発②メディカルアフェアーズ③安全性(Drug Safety)を横断するようなポジションや、医療政策に携わるような機会もまれにあります。

一般企業での医師求人2. コンサルティングファーム

医師の中には将来的に実家の病院を継ぐ、あるいは開業を目指してビジネスサイドの経験を積みたいという理由や、医師が働く環境にも関わる病院経営・医療ソリューションが生まれるプラットフォーム自体を構築したいなど、スピード感を持って医療業界全体をより良くしていきたいという考えからコンサルティングファームへ転職されるケースも見られます。

医師の方の高いロジカルシンキング力・語学力・幅広くも深い医療の専門性に期待し、実際にヘルスケア領域を専門としたチームを構築して医師を雇用されている総合コンサルティングファームもあります。ヘルスケア産業を医師とは違うクライアントの目線からみることで一医療従事者としても視野の広がりも多いに期待できます。

一般企業での医師求人3. ヘルステック・バイオテック系のスタートアップ(バイオベンチャー)

多くの医師とキャリアの相談をさせていただくと、具体的に解決したい医療課題を見いだしていらっしゃる医師の方もおられます。

特にここ10年で基礎技術の社会実装は大きく進んでおり、これまでの治療をメインとする医療ソリューションが、予防・診断・治療・QOL改善とそのフィールドを広げています。

臨床現場で医療課題に常に向き合われている医師の方が、その課題解決のためにヘルステック・バイオベンチャーを起業するケースが日本でもようやく増えてきており、同様に、医師の方の知見を必要とするベンチャー企業も増えてきています。

新規技術からアプリケーション・医療分野におけるICTなどに興味をもたれている方はヘルステック・バイオテックのベンチャーへの転職を検討されるケースもあります。

最終的にCEO(Chief Executive Officer)・CMO(Chief Medical Officer:主席医務官)といった経営陣を目指してコンサルティングファームではなく、実経験を詰むことのできるベンチャーで経験を積もうと考える方もおられます。

いずれのケースにおいても、医師の医療施設以外の一般企業への転職市場には、「医療現場を改善していきたい」「この治療法を大きくしていきたい」と考える方が増えており、戦略的・挑戦意欲が旺盛な方が多いです。

診療科目別の医師から他業種への転職|オンコロジー・免疫疾患関連のニーズが高い


ここからは、製薬会社・医療機器会社でのポジションを中心に解説していきます。

現在、医療における開発品目として多いのがオンコロジーや免疫疾患・希少疾患の治療薬やワクチンで、それに関連する診療科の専門医のニーズは高まっています。よって、必然的に腫瘍内科やオンコロジーに携わっている医師の採用は徐々に増加しています。

一方、医薬品の副作用や安全性を説明するうえで疾患領域の知識を広く持っている小児科や麻酔科の医師が求められることもあり、企業によって考え方もさまざまです。たとえば、外科医の強みの一つとしてチーム医療で培われたコミュニケーション能力として、チームで個々の力を合わせて成果を出すことへの適性を期待されるケースもあります。

放射線科であれば幅広い癌腫の診断・治療に携わっていることから幅広い癌腫へ適応を予定する薬剤への適応力を期待されることもあります。

そのため、自分の専門の診療科がどのような企業とマッチするのかについてよく分からないという方は、ぜひお気軽にJACの専門コンサルタントにご相談ください。実際に企業へ相談をしながらあなたの疾患専門性がフィットする企業を探していきましょう。


医療機器業界に特化した専任コンサルタントが、あなたの転職をサポートします。
業界における市場価値はもちろん、レジュメの効果的な書き方、面接対策、企業傾向の情報収集など、
JACのコンサルタントにご相談ください。


地域別の医師から他業種への転職|東京が最も採用ニーズがあり、次いで大阪


医師が医療施設以外の一般企業へ転職する際、地域別の動向として、医薬品会社の本拠地は東京と大阪がメインであり、なかでも東京の方が絶対数が多いことから、最も採用ニーズが高いのは東京、ついで大阪となっています。

なお現在、転職市場全体でフルリモートの求人もありますが、医師の一般企業への転職市場ではフルリモートは少ないのが現状です。東京・大阪以外にお住まいの方には、医師を派遣する形態であるCRO(Clinical Research Organizations)での求人もあります。

医師から他業種への転職に求められるスキル・マインドセット


医薬品会社への転職を考えている医師から、「どのぐらいの臨床経験を積んでいればよいのか?」という質問をいただくことが多いです。これについてJACでは、「3年間にわたる専門領域での経験があれば製薬会社への転職のチャンスがある」とお応えしています。

10年の臨床経験を積まれている方やPh.D.を取得している方であれば、より専門的な戦略ポジションへ挑戦できる可能性が増えてきます。

裏を返すと、3年~10年の臨床経験を経て、一般企業への転職を検討する医師の方が多い傾向にあるということでもあり、ご自身の臨床での専門性を高める中で、また、Ph.D.を取得した後など、キャリアの転機を迎えるタイミングで検討される方が多いです。

医師から製薬会社への転職での必要条件として「疾患の専門性」がまず挙げられます。その上で、民間企業への適性を見られるため、たとえば「自組織を超えたチームワーク」「治験業務などタイムラインがある中でのプロジェクトマネジメント能力」も求められる傾向にあります。

これらに加えて昨今は、グローバル化にともない「英語力」も必要です。ここでいう英語力とは、TOEICのような資格というより、論文を書いたり読んだりする実務上でのスキルであり、過去に国際学会等で発表した経験・海外留学の有無などが問われます。

社内医学専門家として医師への期待は高く、組織上でも重要なポジションを担っていただく際には日本以外の拠点と連携いただくことになり、外資系企業であればヘッドクォーターのメンバーと英語で戦略のディスカッションや日本のクリニカルトライアルの説明など、英語力が早期に求められる可能性が高いです。

もちろん、「MSL」のようにまずは英語の読み書きができれば業務可能なポジションもありますが、それでもその後のキャリア形成を考えて、英語に抵抗がなく入社後に短期間で英語が使える方が求められます。

また、医師免許をお持ちの方の中長期的なキャリア形成の観点では、今後は医療データのより良い活用のために「統計解析スキル」が求められることも想定されます。

医師から他業種への転職成功後のキャリアパス


JACでは、医師の方が入社後にどのようなキャリアパスを作っていけるかについて、多くの企業と議論を重ねています。

現在は、挑戦意欲をもって積極的に自らキャリアを開拓される医師の方が増えつつあることで少しずつキャリアに広がりが生まれてきていますが、多くの方が歩むであろう定まったキャリアパスがあるとまではまだまだ言えない現状です。

たとえば製薬会社の場合、職種を変える・疾患領域を変える・マネージャーへ昇格する・部門のヘッドを目指すなど、さまざまなキャリアパスが考えられます。

医師から他業種への転職成功事例


医師から一般企業への転職に成功したTさんの事例をご紹介します。

臨床経験を7年積み、医師としてのキャリアを着実に歩んできたTさん(30代前半/男性)。しかし、臨床現場での数々の課題に直面する中、医療に対して貢献できることがもっとあるのではないか?という疑問に立ち向かうべく、転職活動を開始。

活動当初は志向が定まっておらず、どのような企業があるのか、ご存じない状態でした。しかし、JACとの面談を重ね、志向が決まってからは、選考の中で自分のキャリアをどのように作るべきかを考えて面接に臨むようになりました。

その結果、大手の外資製薬会社から、がんの知見を生かしたオンコロジー領域のメディカルサイエンスリエゾンのオファーがあり、前職と同じ年収を維持して転職されました。

採用企業からの採用ポイントとしては、Tさんとの面接を通して以下2点が挙げられました。

  • ・臨床現場で実際に使われていた医薬品に対して、製薬会社の一社員としてどのように医師や患者に届けていくべきなのかを具体的なイメージを持って話されたこと
  • ・面接の中で積極的に質問をする姿勢から、真剣さ・真面目さ・適応能力の高さを伺えたこと

>医師の転職に成功したTさんの事例へ

医師から他業種への転職についてよくあるQ&A5選


ここでは、他業種への転職を目指す医師の方からよくいただく質問を5つ、紹介します。

Q1. 医師から多業種への転職でうまくいかなかったケースは?

医師の転職活動では、必ずといってよいほど、医療施設以外の一般企業の理解が求められます。多くの場合、一般企業が初めてという方がほとんどですし、企業への就職活動も初めてという方が多いです。

そのため、入社後うまくいかなくなるケースとして、下記のような例が挙げられます。

  • ・サイエンスが強い一方、ビジネスへの理解が乏しい
  • ・社内の意思決定プロセスを理解せずに単独で動いてしまう

上記のようなことが理由で、ミスマッチとなってしまうことがあります。JACでは、そういったことが極力ないよう、企業とのカジュアル面談の機会を設けることで、事前に会社の理解を深めていただくことがあります。

Q2. 医師としての副業は可能?

一番多い質問として、民間企業で働きながら医師としての副業ができるかどうか?というものです。

この点は、企業が定めている人事規定によって異なります。

たとえば、製薬会社やヘルステック企業が医師専用のポジションで医師を採用する場合には副業を認めるところもあり、週に5日勤務すれば土日は副業OKという会社もあります。しかし一方で、業務量が増えてしまうと心身の健康によくないということで副業を禁止する企業もあります。

Q3. 専門医の資格を取っておいた方がいいの?

専門医の資格があることは評価ポイントにはなりますが、絶対的な指標として専門医を取っていれば大丈夫かというと必ずしもそうではなく、それ以外のスキルとの総合的評価となるのが一般的です。

専門医の取得には勉強量や行動量がともない、長期的な計画が必要になることが多いです。専門医を取得する前の段階で、一度どのようなキャリアパスが好ましいか、そのためにどのようなスキルを伸ばしていくのが良いか、専門医を取る前に転職をするチャンスはあるかどうか、あるいは専門医を取得した後の方が良いかどうか、一度JACのコンサルタントと相談することをおすすめします。

Q4. そもそも医師から多業種へ転職できるのか?

医師の方は臨床医以外の選択肢はないのでは?と思っている方が非常に多いものの、本記事に記載のとおり、キャリアの選択肢は年々可視化されてきています。

また、医療施設以外の一般企業への転職によってワークライフバランスが改善した事例もあります。

Q5. 転職を検討しているものの、すぐに退職するのが難しい

病院勤務の医師の場合、雇用契約によっては希望のタイミングですぐに退職できないケースもあるかと思います。

JACではさまざまな企業の担当者と日々やり取りを行い、転職時期を半年ほど先で検討している場合や、現在ポジションがない場合でも中長期的な採用の視点で企業へ相談できるように各企業と関係性の構築に努めています。

そのため、転職を想定するタイミングの1年以上前から転職活動のタイムラインを逆算することも可能ですので、まずは一度ご相談ください。

医師からの他業種への転職におけるJACの強み


医療施設以外の一般企業への転職を検討するにあたり、メディカルアフェアーズがいいのか、臨床開発がいいのか、はたまたコンサルティングファームがいいのか、最初はどれもピンとこない方がほとんどです。

そこには各ポジションの違いや医師が求められている理由など、単に医師としての役割だけでなく、その先にある企業のミッションやミッション達成のための組織の強み弱みなどを理解しつつも、ご自身が叶えたいことを言語化することが必要となります。

高い専門性を駆使して、企業・ポジションの説明を詳細に提供できる点がJACの強みのひとつです。

さらに、JACで取り扱う転職案件は、医師の転職だけでなく、医師以外の転職案件も幅広く多いことが特徴です。たとえば、これから立ち上げ予定のバイオベンチャーやヘルスケアを強化したい化学系のメーカーなど、これまで医師の採用経験がある企業だけでなく、これから医師の採用を検討する可能性がある企業との取り引きが豊富にあります。

つまり、医師採用の新規ニーズを業界問わず最先端でキャッチできる可能性が高いこともJACの強みのひとつです。

医師から民間企業への転職をご検討されている方は、医師への幅広くも専門的な提案が可能なJACへぜひご相談ください。


医療機器業界に特化した専任コンサルタントが、あなたの転職をサポートします。
業界における市場価値はもちろん、レジュメの効果的な書き方、面接対策、企業傾向の情報収集など、
JACのコンサルタントにご相談ください。


この記事を監修した転職コンサルタント

日笠山 聡

日笠山 聡

ヘルスケアR&Dディビジョン


この令和の時代に製薬会社において著しく進化し続けるファンクションがメディカルアフェアーズだと感じています。だからこそ中長期的な視点をもちつつ、メディカルアフェアーズ専門のエージェントとしてご登録者の皆さまに納得いただけるキャリアのご提案ができるように努めますので、どうぞお気軽にご用命くださいませ。「メディカルといえばJAC」そのように感じていただけるようなコンサルテーションを提供させていただきます。