近年、金融業界における30代の転職が注目を集めています。制度改正やデジタル化の加速、キャッシュレス社会の進展といった環境変化により、企業の採用ニーズは大きく変わりつつあります。こうした中で、30代というキャリアの節目にある方がどのような職種で転職を成功させているのか、企業はどのような背景から採用を進めているのか、そしてどのようなスキルや経験が求められているのか――。
本記事では、実際の求人票やJAC Recruitment(以下、JAC)の転職データをもとに、「金融業界30代の傾向」を読み解いていきます。
目次/Index
金融業界30代の転職動向
金融業界30代の転職市場において、JACが転職をサポートした中では以下のような職種の転職実績が多いです。
- ・ IT系プロジェクトマネージャー
- ・ 事業企画・事業開発
- ・ ファンドマネージャー・アナリスト
- ・ リスク管理
- ・ セキュリティエンジニア
- ・ 社内SE(インフラ・アプリケーション)
- ・ 不動産金融
- ・ 金融法人営業
- ・ 金融ミドルバックオフィス
- ・ データサイエンティスト・アナリスト
これらの職種に共通するのは、いずれも「専門性」と「変化対応力」が求められる領域であるという点です。
例えば、IT・デジタル系職種は、金融機関が非対面チャネルの強化や業務効率化を進める中で、プロダクト開発やシステム刷新を担う中核として採用が進んでいます。特に、プロジェクトマネジメントやセキュリティ、インフラ領域では、内製化やスピード重視の開発体制を支えるスペシャリストが求められています。
一方、事業企画やファンド運用、リスク管理といった職種は、制度改正や市場変動に対応するための戦略的ポジションとして注目されています。新NISAや資産所得倍増プランなどの政策的変化により、商品設計や運用体制の再構築が求められており、これに対応できる専門性と実行力を備えた層が採用の中心となっています。
また、金融法人営業や不動産金融といったフロント系職種では、従来の関係構築型営業に加え、ソリューション提案力や業界横断的な知見が重視される傾向にあります。特に30代は、現場経験と戦略的視点の両方を持ち合わせているため、プレイングマネージャー的な役割を期待されるケースも増えています。
金融業界30代に求められるスキル・経験
金融業界における30代の転職では、実務遂行力にとどまらず、変化を推進する力や、専門性と汎用性を兼ね備えたスキルセットが求められています。以下に、企業が重視しているスキル・経験を3つの軸で整理します。
1. 実務遂行力 × テクノロジー理解
- ・ システム開発・運用経験(社内SE、金融システム)
- ・ プロジェクトマネジメント(PMBOKやアジャイルの理解)
- ・ データ分析・活用(BIツール、SQL、Pythonなど)
- ・ セキュリティ・インフラ領域の知見(ゼロトラスト、クラウド移行)

金融業界においても、IT・デジタル領域の内製化が進んでおり、エンジニアリング分野のバックグラウンドをもつ人材が、事業部門と連携しながらプロダクト開発や業務改善を推進するケースが増えています。
2. 戦略性 × 業界知見
- ・ 事業企画・新規事業開発の経験
- ・ リスク管理・コンプライアンス対応
- ・ 資産運用・投資戦略の立案
- ・ ステークホルダーとの調整・交渉力
制度改正や市場変動に対応するため、戦略的な視点を持ちつつ、現場の実態を理解している方が求められています。特に30代はプレイヤーとしての実行力と、マネージャーとしての視座の両方を期待されるポジションに就くことが多くなっています。
3. 専門資格 × 信頼性
- ・ 公認会計士(CPA)
- ・ 証券アナリスト(CMA)
- ・ 不動産鑑定士
- ・ 金融商品取引法・AML関連の知識
資格はあくまで「入口」ではありますが、専門性の裏付けとして、また社内外の信頼を得るための要素として評価される傾向があります。特に、リスク管理やファンド運用、財務・会計領域では、資格保有が応募条件となっているケースも少なくありません。
このように、金融業界における30代の転職では、「専門性」「実行力」「変化対応力」の3点を軸に、スキルと経験のバランスが問われています。
金融業界30代の平均年収
30代の金融系プロフェッショナルにとって、年収はキャリアの成熟度や専門性の指標であると同時に、転職市場におけるポジショニングを考える上での重要な判断材料です。以下では、全体平均に加え、役職別・企業属性別・職種別の年収傾向を整理します。
■ 30代全体の平均年収
- 911.6万円
この水準は、他業界と比較しても高い水準にあり、特に専門性やマネジメント経験を積んだ層では1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
■ 役職別平均年収
| 役職区分 | 平均年収 |
|---|---|
| 課長未満 | 857.6万円 |
| 課長以上 | 1258.3万円 |
| 部長以上 | 1,440.0万円 |
| 本部長以上 | 2,420.0万円 |
役職が上がるごとに年収は大きく上昇し、特に本部長クラスでは2,000万円を超える水準となっています。これは、経営視点と専門性の両立が求められるポジションであることを反映しています。
■ 企業属性別平均年収
| 企業タイプ | 平均年収 |
|---|---|
| 外資系 | 752.8万円 |
| 日系 | 923.2万円 |
外資系企業は成果報酬型の傾向が強く、ベース年収はやや抑えられる一方で、インセンティブやストックオプションなどを含めた総報酬で差が出るケースもあります。日系企業は安定性と昇進に応じた年収上昇が特徴です。
■ 転職者が多い職種別平均年収(上位20件)
| 職種名 | 平均年収 |
|---|---|
| IT系プロジェクトマネージャー | 961.5万円 |
| 不動産金融 | 890.6万円 |
| 金融ミドルバックオフィス | 840.4万円 |
| 事業企画・事業開発 | 958.6万円 |
| 社内SE(アプリケーション) | 774.7万円 |
| 金融法人営業 | 1078.7万円 |
| ファンドマネージャー・アナリスト | 755.3万円 |
| 金融事業法人営業 | 818.7万円 |
| 金融システム | 655.4万円 |
| 金融リテール営業 | 803.8万円 |
| データサイエンティスト・データアナリスト | 937.6万円 |
| 代理店営業 | 667.9万円 |
| 営業推進・企画 | 792.5万円 |
| 経営企画 | 907.7万円 |
| リスク管理 | 1056.4万円 |
| 審査 | 932.3万円 |
| マーケティング・商品開発(金融) | 901.4万円 |
| 不動産開発 | 982.0万円 |
| ストラクチャードファイナンス | 921万円 |
| 法人営業(その他) | 871.9万円 |
このデータからは、IT・データ・金融専門職といった高度専門職が高年収帯に集中していることがわかります。特に「金融法人営業」「リスク管理」「不動産開発」「IT系プロジェクトマネージャー」などは、専門性と責任の重さが報酬に反映されている典型例といえるでしょう。

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金融業界30代の転職を成功させる5つのポイント
30代は、専門性と柔軟性のバランスが問われる年代です。金融業界においても、単なる職務経験だけでなく、変化を推進する力や将来性を見据えた視座が求められます。以下の5つのポイントは、転職活動を成功に導くための重要な視点です。
1. 専門性の明確化と再定義
これまでのキャリアで培ってきた専門領域(例:リスク管理、資産運用、ITシステムなど)を、単なる「経験の羅列」ではなく、「どのような価値を提供できるか」という視点で再定義することが重要です。特に、金融×IT、金融×戦略といった複合スキルは、業界横断的な価値を持ちます。
2. 変化への適応力と実行力の可視化
制度改正、DX、非対面チャネルの拡充など、金融業界は変化の連続です。こうした変化に対して「どのように対応し、どのような成果を出したか」を具体的に語れることが、選考において大きな差を生みます。特にプロジェクト推進や業務改善の経験は、実行力の証明として有効です。
3. 定量的な成果の提示
「売上○○%増」「コスト○○万円削減」「業務時間○○%短縮」など、成果を数字で語れることは、説得力を高めるうえで極めて有効です。特にハイクラス層では、戦略的な意思決定に貢献した実績が評価されやすいため、KPIやROIといった指標を活用した成果の整理が有効です。
4. キャリアの一貫性と将来像の提示
30代は「これまでのキャリアの集大成」と「これからの方向性」の両方を問われる年代です。過去の経験がどのように現在の志向性につながっているか、そして中長期的にどのような役割を担いたいのかを言語化することで、企業側に「長期的な貢献」をイメージさせることができます。
5. 情報収集とポジショニングの精度
転職市場においては、「どのタイミングで、どのポジションに、どのような強みをもって臨むか」が成功の鍵を握ります。業界動向や企業の採用背景を把握し、自身のスキルセットがどの領域で最も価値を発揮できるかを見極めることが、戦略的な転職活動につながります。JACのコンサルタントは企業の採用背景や事業戦略も深く理解しています。あなたがどのようなポジションで活躍できそうかのご提案も可能です。ぜひご相談ください。
この5つの視点を意識することで、単なる「転職」ではなく、「キャリアの進化」としての転職を実現することができます。
金融業界30代の転職事例
30代というキャリアの中核期において、金融業界では専門性の深化や業界横断的なスキルの活用が求められます。以下にご紹介する3名の事例は、それぞれ異なるバックグラウンドを持ちながらも、転職によって新たなステージへと進まれた好例です。
事例①:ITコンサルから生命保険会社のITプロジェクトマネージャーへ
Wさん(男性/30代前半)
| 転職前 | 転職後 | |
|---|---|---|
| 業種 | コンサルティングファーム | 生命保険会社 |
| 職種 | ITコンサルタント | ITプロジェクトマネージャー |
| 年収 | 約700万円 | 約1,000万円 |
Wさんは、保険業界における複数のプロジェクトを立て直してきた実績があり、製薬・介護・小売など多様な業界でPMOとして活躍してきたITコンサルタントです。
JACでは、Wさんが「副業との両立」や「ユーザー企業での柔軟な働き方」を希望されている点に着目し、事業会社である大手生命保険会社の社内IT部門をご提案。営業支援システムの刷新プロジェクトにおいては、Wさんの高い推進力とマルチステークホルダー間の調整力が評価され、プロジェクトの中核メンバーとして抜擢されました。
結果として、年収は700万円から1,000万円へと大幅にアップ。キャリアの方向性と働き方の希望を両立させた転職成功事例となりました。
事例②:不動産アセットマネジメントから金融機関の不動産ファイナンスへ
Sさん(男性/30代前半)
| 転職前 | 転職後 | |
|---|---|---|
| 業種 | 不動産業界 | 金融機関(不動産ファイナンス部門) |
| 職種 | アセットマネージャー | 不動産ファイナンス担当 |
| 年収 | 約600万円 | 約1,000万円 |
Sさんは、設計事務所・ディベロッパー・J-REIT運用会社といった多様な立場から不動産に関わり、利活用の企画段階から期中運用まで一貫して携わってきた実績を持つプロフェッショナルです。
JACでは、Sさんが「自身の成果が正当に評価されない」という現職での課題を抱えていたことに着目し、より裁量を持ってフロント業務に取り組める私募ファンド運用会社をご紹介。面談を通じて、業務内容だけでなく、企業カルチャーや報酬制度との相性も丁寧に確認し、Sさんの志向に合う環境を提案しました。
結果として、年収は600万円から1,000万円へと大幅にアップし、やりがいと待遇の両立を実現する転職となりました。
事例③:銀行の法人営業から投資運用会社の機関投資家向け営業へ
Rさん(男性/30代後半)
| 転職前 | 転職後 | |
|---|---|---|
| 業種 | 銀行 | 投資運用会社 |
| 職種 | リテール・法人営業 | 機関投資家向け営業 |
| 年収 | 約850万円 | 約1,150万円 |
Rさんは、証券会社および銀行においてリテール営業・法人営業の双方を経験し、さらに私募ファンドのセールスにも携わってきた、幅広い金融知識と営業力を兼ね備えたスペシャリストです。
JACでは、Rさんが「アセットマネジメント領域での専門性をさらに深めたい」という明確なキャリア志向があることを踏まえ、プロの機関投資家向けにオルタナティブ運用スキームを提案できるポジションをご紹介。選考過程では、Rさんの豊富な業界経験と提案力が高く評価され、即戦力としての期待を込めて採用が決定しました。
結果として、年収は850万円から1,150万円へと大幅にアップ。専門性の深化と待遇の向上を同時に実現した転職成功事例となりました。
金融業界30代の転職ならJAC
30代は、これまでの経験を生かしながらも、さらなる専門性や新たなチャレンジを求める方が多い年代です。金融業界においても、業界横断的なスキルや実務経験を生かしたキャリアチェンジが活発に行われています。
JACでは、銀行・証券・保険・アセットマネジメント・不動産ファイナンスなど、金融業界に精通したコンサルタントが多数在籍しており、30代の方々のキャリアアップを全力でサポートしています。
ご自身の市場価値を知りたい方、今後のキャリアに迷いがある方も、ぜひ一度ご相談ください。
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