グローバルビジネスの進展や事業形態の多様化などにより、複雑な会計処理が求められるようになった今、公認会計士のニーズは増加しています。では、一般的に転職が難しいといわれる40代でも公認会計士の資格があれば、スムーズに転職ができるのでしょうか。
本記事では、 JAC Recruitment(以下、JAC)が、40代の公認会計士経験者の転職の状況や転職を成功させるポイント、求められるスキル、経験などについて解説します。
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公認会計士40代の現状と転職動向
公認会計士のニーズは、グローバル化やM&Aの活発化、コンプライアンス重視の風潮により増加しており、40代の転職市場も活況です。40代は豊富な経験と高いスキルが評価される一方、実務経験に加え、マネジメントや人材育成スキルも強く求められる傾向にあります。
公認会計士の求人は増加傾向を維持
前述のように、グローバルビジネスの進展にともない、国際会計基準に則った会計処理が必要になるなど、複雑な会計処理が求められるようになりました。
また、公認会計士のニーズ増の背景には、国内外での投資、M&Aの動きの活発化も関係しています。
さらに近年では、大手企業だけでなく、中小企業やスタートアップ企業でも、自社で公認会計士を採用する動きが進んでいます。コンプライアンス重視の風潮を受け、公認会計士の採用により、経営の透明性確保に努める企業が増えているのです。
加えて、IPO準備に向けた公認会計士のニーズも増加しています。
40代の公認会計士の転職市場も活況
40代になると転職は難しくなるといわれますが、専門性の高い知識を保有している公認会計士については、40代という年齢がネックになることはありません。40代だからこその豊富な経験、高いスキル、経験に裏付けられた臨機応変な対応力は、高く評価される傾向にあります。
一方で、40代の公認会計士に求められるスキル水準は高度化していることも事実です。実務経験はもちろん、人材育成やマネジメントのスキル、クライアントや監査役などと交渉や折衝を行う高いコミュニケーションスキルなども求められます。
事業会社への転職事例が増加中
公認会計士の転職先としては、事業会社、監査法人、FASなどを中心とした財務系コンサルティングファーム、会計事務所、投資ファンドなどがあります。どの業態であっても公認会計士の募集は活発におこなわれていますが、40代の公認会計士の方は、事業会社への転職を選択するケースが増加しています。
安定した環境を希望される方、ワークライフバランスを重視される方は、事業会社でも大手企業を好む傾向にあります。
IPO準備の責任者として株式公開に関わる業務を希望し、転職を検討するケースが増えています。
内部統制強化や財務報告の透明性向上に向けた募集の増加
健全な企業活動の維持とリスク回避を目指し、内部統制の整備を進める企業が増えています。
また、上場企業にはJ-SOX法への対応が求められ 内部統制報告書の作成と開示が求められていますが、報告書は外部の監査法人や公認会計士による監査を受けなければなりません。
監査経験のある公認会計士を採用した場合、監査を通過する運用ルール、書類の作成方法などを熟知しており、スムーズに外部監査を進められるようになります。
さらに、社内に専門家がいることで、外部監査法人との交渉もスムーズに行えます。
このような背景から大手の事業会社では現在、積極的に公認会計士の採用が進められています。
スタートアップ企業における積極的な公認会計士の募集
事業会社への転職を目指す公認会計士が増える中、スタートアップ企業へ転職する事例も急増中です。スタートアップ企業では、事業規模の拡大に向けIPO準備を進めるケースが多く、40代の公認会計士に、IPO準備の責任者としての役割を期待する動きが顕著に見られます。
IPO準備において公認会計士が果たす役割は大きく、会社の成長に直接的に貢献できます。やりがいが大きく、IPOを通じて培ったスキルをさらなるキャリアアップにつなげられるため、IPO準備に関われる企業を希望する公認会計士も多くいます。
公認会計士40代で求められるスキル・経験・マインド
40代の公認会計士を募集する求人を見ると、次のようなスキルや経験、マインドをもつ方が歓迎される傾向にあります。
監査法人における実務経験
上場している大手事業会社への転職を検討する場合、監査法人での実務経験が優遇される傾向にあります。上場企業ではJ-SOX法に対応し、内部統制報告書の作成と外部監査が義務付けられています。監査経験のある公認会計士を採用できれば、監査を通過する運用ルールや書類の作成方法を熟知しており、スムーズに外部監査を進められるようになります。
特に、監査法人での上場企業の連結決算、内部統制、および内部統制報告書の外部監査に携わった経験は、転職時に高い評価につながります。
国際会計基準の理解とビジネスレベルの英語力
日本ではJGAAPに準拠した会計処理が行われていますが、海外ではIFRSに基づいた会計処理が用いられるケースが多くなっています。グローバルビジネスの進展にともない、海外子会社との連結決算が必要な企業も増加中です。
連結決算を行う場合は、IFRSからの組み換えや為替の換算など、複雑な手続きが必要になります。
また、海外子会社のスタッフとの連携も求められ、国際会計基準の理解のほか、ビジネスレベルの英語力が必要な求人が多数見られます。
USCPAと公認会計士のダブルライセンス
国際会計基準に対応できる公認会計士のニーズが高まる中、USCPAと公認会計士のダブルライセンスの保有は、国際的な案件への対応力の高さをアピールすることにもつながります。
グローバルビジネスを推進する企業への転職や、クライアントに外資系企業が入る会計コンサルティングファームなどへの転職を希望する際には、ダブルライセンスの保有が大きなアドバンテージになるでしょう。

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プロジェクト推進経験・マネジメント経験
40代の公認会計士には、連結決算・監査・内部統制などの専門的な経験に加え、組織を統括するマネジメント経験や、管理者としてプロジェクト推進経験のある方が歓迎される傾向が強まっています。
決算や監査などの実務であれば、20代、30代の公認会計士でも対応可能です。
しかし、40代の公認会計士には、経験を重ねたからこそ手に入る、「組織を俯瞰したうえで具体的目標・行動計画を策定し、組織全体の業務の進捗を管理できる能力」が求められます。
高いコミュニケーション能力と課題解決能力
40代の公認会計士には、組織をまとめるマネジメント力に加え、経営層やクライアント、外部の監査法人など、多様な立場の人との交渉や折衝をスムーズに進める能力が求められます。企業会計が複雑化している今、課題に直面することも頻繁に起ります。その際には、各所と連携を取りながら最適解に導かなければなりません。そのためには、相手の主張をしっかりと理解したうえで、自身や自社の意見を明確に伝えるコミュニケーションスキルが必要不可欠です。
公認会計士40代の平均年収は1196.2万円
JACのサポート事例を見ると、公認会計士職に転職された40代の方の平均年収は1196.2万円と非常に高い水準となっています。
また、管理職ポジションでの転職が多く、経理・財務部門の責任者に就任されている方が多いことも、平均年収のアップにつながっていると想定されます。
| 40代平均年収 |
| 1196.2万円 |
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年)によると、公認会計士・税理士の平均年収は965.5万円(45.8歳)です。
さらに40代に絞った場合、40代前半の平均年収は975.1万円、40代後半の平均年収は1,026.3万円となっています。
| 平均年収 | 40代前半の平均 | 40代後半の平均年収 |
| 966.5万円 | 975.1万円 | 1026.3万円 |
(厚生労働省:令和6年賃金構造基本統計調査)
公認会計士40代の転職を成功させる4つのポイント
40代の公認会計士経験者が転職を成功させるうえで重要となるポイントを4つご紹介します。
専門性の明確化と応募求人の見極め
40代の公認会計士を歓迎する求人では、会計や監査の実務経験だけでなく、特定領域における高い専門性が求められます。応募にあたっては、上場企業において内部統制基盤の設計に携わった経験やIPO、M&Aのサポート経験など、即戦力として活躍できる自身の専門性を示すことが重要です。
そのためには、自身の強みを最大限に発揮するための“求人選び”も重要になります。
データを活用したマネジメントスキルの訴求
マネジメント経験が必要な求人に応募する場合、これまでの経験をより具体的に伝えることが欠かせません。経験があるだけでは、その能力の高さがわからないからです。マネジメントした人数やプロジェクトの規模、担当したクライアント数、組織改革であればその施策による離職率の数値など、具体的な数字を添えることが重要です。
また、監査法人から事業会社への転職を希望される場合、これまでの経験を事業会社の管理職において、どのように転用できるのかを論理的に説明できるよう準備をしておきましょう。
ITリテラシーと柔軟な対応力のアピール
多くの企業がDX化を進める今、会計業務の効率化に向け、さまざまなITツールが導入されています。
監査時には、CAATを使った高精度の分析を実施するケースが多く、事業会社ではERPやクラウド会計ソフトに関する知識が必要です。
今後、会計や監査の分野においてもDXはますます進められるでしょう。
しかし、ITリテラシーの高い公認会計士は、まだ希少です。IT関連知識と新たな技術の両方を、適切に利用できる柔軟性が重要になります。こちらもしっかりアピールすると良いでしょう。
転職エージェントの活用
転職エージェントの活用は、公認会計士の転職を成功させるうえで重要なポイントです。40代を歓迎する求人は多いものの、キャリアアップや希望条件に合致する求人は限られる可能性があります。
納得できる企業へ転職するためには、より多くの選択肢の中から目的を叶えられる求人を選ぶことが重要です。40代の公認会計士への求人は一般に募集されるケースが少なく、多くが転職エージェントに紹介を依頼されています。
そのため、選択肢を増やすためには転職エージェントの活用を検討すべきです。公認会計士の転職サポート実績が豊富な転職エージェントであれば、希望に合った求人の紹介だけでなく、今後のキャリアについての相談も可能です。
公認会計士40代の転職成功事例
JACのサポートによって転職を成功させた40代の女性の例をご紹介します。
総合商社の経営・財務監査から保険会社の経理・財務スペシャリストへの転職
Sさん(女性/40代前半)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
| 転職前 | 総合商社 | 経営・財務監査 | 1,600万円 |
| 転職後 | 保険会社 | 経理・財務スペシャリスト | 1,500万円 |
Sさんは、大学卒業後に公認会計士の資格を取得し、長年に渡って経理・会計分野でスキルアップを目指してきた方です。
まず、大手会計監査コンサルティング会社の監査担当として外資系企業の会計監査や内部統制監査業務に従事された後、総合商社に転職。海外子会社の連結決算業務、経営監査、財務業務など、幅広い業務に携わってきました。
しかし、頻繫なジョブローテーションによってコアスキルの構築が望めないことへの不安や、ライフスタイルに応じた柔軟な働き方が難しいことから転職を考え、JACに相談。
JACが紹介したのは、保険会社の経理・財務スペシャリストの職です。Sさんは、求人企業が求める決算業務の経験、監査法人での監査業務経験、ビジネスレベルでの英語力、優れたコミュニケーションスキルのすべてもった方。面接後、すぐに採用の運びとなりました。年収は若干低下したものの、Sさんが望むワークスタイルでの就業が叶えられるため、Sさんも入社を快諾。すでに新たな環境で活躍されているとのご報告を受けています。
公認会計士としての経験や専門性を活かす転職ならJAC Recruitment
専門性の高い公認会計士は、40代であっても企業のニーズは高く、さまざまなフィールドで活躍できるチャンスがあります。
JACはミドルクラス・ハイクラスの転職サポート実績が豊富です。あらゆる業界に精通したコンサルタントが在籍しており、会計監査に関するコンサルティングファームや大手の事業会社、IPO準備ステージにあるスタートアップ企業など、豊富な求人の中からスキルを最大限に発揮できる求人のご紹介が可能です。
さらに、組織風土や募集の背景、ワークライフバランスの現状など、求人票だけでは読み取ることのできない生の情報を提供することができます。詳細な情報によって、希望に合った転職先の見極めが可能になれば、転職後のミスマッチを防ぐことができるだけでなく、効率のよい転職活動を可能にします。
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