法律事務所の転職動向や最新求人、未経験からの転職難易度も解説

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公開日:2025/10/09 / 最終更新日: 2025/10/09

法律事務所への転職は、高報酬と専門性を兼ね備えたキャリアアップの選択肢として注目されています。特に近年は、司法制度改革やリーガルテックの進展により、国際案件や専門分野に挑戦したい方にとって、魅力的な転職市場が広がっています。

本記事では、法律事務所の転職市場動向や最新求人情報に加え、異職種/異業種(未経験)からの転職難易度も併せて、JAC Recruitment(以下、JAC)が詳しく解説します。

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法律事務所の転職市場動向

本章では、法律事務所の転職市場動向について、下記2つの観点から解説します。

  • ●弁護士数増加や技術進化・新興事務所の台頭により市場は活況かつ過渡期
  • ●法律事務所の規模によって求められる弁護士の専門分野は異なる

弁護士数増加や技術進化・新興事務所の台頭により市場は活況かつ過渡期

2000年代初頭の司法制度改革により弁護士数は急増。業界内の競争は年々激化しています。その結果、弁護士には従来以上に専門性や差別化が求められる時代となりました。さらに、AI技術やリーガルテックの進化によって、契約書レビューやリサーチ業務は効率化が進み、今後こうしたツールを使いこなせる弁護士が、より高く評価されるでしょう。

一方で、定型的な作業が機械化されることにより、弁護士にはより創造的な問題解決能力やクライアントとのコミュニケーションにおける能力など、人間にしかできないことへの付加価値が、いっそう求められます。

加えて、先端技術分野に強みをもつ新興法律事務所も台頭してきました。例えば、ブロックチェーンやFintechに特化した事務所、スタートアップ法務に強いベンチャー系事務所が急成長し、注目を集めています。これまで伝統的な四大法律事務所が牽引してきた業界も、新興勢力の登場によって変革が起きつつあるといえます。

法律事務所の規模によって求められる弁護士の専門分野は異なる

法律事務所では、自社で取り扱う案件の専門分野に秀でた即戦力の採用需要が高く、事務所の規模によって求める専門分野は異なります。

大手法律事務所では、企業法務やクロスボーダー案件、M&Aなど高度に専門特化した分野を経験した弁護士の採用に積極的です。安定性や報酬面での魅力がある一方で、深い専門知識と豊富な実績が求められるため、より高い専門性を磨きたい弁護士に向いているといえます。

これに対して中小規模の法律事務所では、一般民事や企業顧問契約など幅広い法務ニーズに対応できるゼネラリストを重視する傾向があります。一人の弁護士が多様な案件を担当する機会が多いため、総合的な実務能力や顧客対応力が評価されやすく、クライアントとの距離が近いのも特徴です。

また、企業のコンプライアンス強化や国際取引への対応、データセキュリティ確保など、これらの課題に迅速に対処するため、弁護士を自社内に配置する企業が増えています。このような流れから、企業内弁護士(インハウスローヤー)の需要拡大も近年の大きなトレンドになっています。

法律事務所の主要企業と特徴

本章では、法律事務所の下記4つの企業群の特徴について解説し、それぞれの主要企業をご紹介します。

  • ●四大・五大法律事務所
  • ●全国展開型の大型法律事務所
  • ●地域大手・外資系法律事務所
  • ●新興法律事務所

四大・五大法律事務所

日本の法律業界を牽引する四大・五大法律事務所は、M&A、金融、知的財産、国際取引といった複雑かつ大規模な企業法務を専門に手掛けており、業界の最前線を担っています。

これらの事務所に所属する弁護士は、高度な専門性と豊富なリソースを活用し、キャリアの頂点を目指すことができます。入所の難易度は非常に高いものの、国際的な大型案件や最先端の法務に関わる経験を積むことで、専門知識と実務力を飛躍的に高められます。その結果、弁護士として大きな成長と社会的評価を得られる点が大きな魅力です。

代表的な事務所には、西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、TMI総合法律事務所があります。

全国展開型の大型法律事務所

全国展開型の大型法律事務所の特徴は、まず取り扱う案件の幅広さにあります。主要都市に拠点を構え、企業法務から一般民事、刑事事件まで多様な依頼に対応しています。また、全国に広がるネットワークを生かすことで、地方企業や個人案件を扱う機会も得られます。このように、組織的な体制のもとで幅広い分野を経験できるのは大規模事務所ならではの強みです。

次にキャリア形成の側面です。弁護士は多様な案件を通じて知識やスキルを着実に積み上げることができます。さらに、所属弁護士の数が多いため、異なるバックグラウンドをもつ仲間と協働しながら成長できます。

代表的な事務所には、アディーレ法律事務所やベリーベスト法律事務所などがあります。

地域大手・外資系法律事務所

地域大手法律事務所の特徴は、取り扱う案件の地域性にあります。地域に根ざし、有力企業や官公庁の依頼を数多く担当し、地域社会に密着した法的支援を展開しています。

キャリア形成の側面では、地域の発展に貢献しながら、企業法務から公共案件まで幅広い分野を経験できる環境が整っています。地域の発展に貢献したい方にとっては理想的な環境といえます。

一方、外資系法律事務所の特徴は、取り扱う案件の国際性です。クロスボーダーM&A、国際仲裁、外国企業の日本進出支援といったグローバル案件を中心に活動しています。

キャリア形成の側面では、高度な英語力や海外法務の知識を生かし、世界を舞台に活躍できる点が大きな魅力です。国際的な案件に携わることで、グローバルに通用する法的スキルを磨ける環境といえます。

代表的な外資系法律事務所には、ベーカー&マッケンジー法律事務所、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所などがあります。

新興法律事務所

新興法律事務所の特徴は、取り扱う案件の先進性にあります。ここではIT・ベンチャー法務やブロックチェーン、Fintech、スタートアップ支援など、新しい分野に強みを発揮しています。従来の枠にとらわれず、革新的なリーガルサービスを展開するケースも増えています。

キャリア形成の側面では、柔軟な働き方が可能で、若手弁護士にも大きな裁量が与えられる環境があります。新しい挑戦を望む人にとっては、キャリアの可能性を広げやすく、スピード感をもって成長できる環境といえます。

代表的な事務所には、法律事務所ZeLo、陽和法律事務所などがあります。

法律事務所の主な職種・仕事内容と求められる経験・スキル

法律事務所には多様な職種が存在し、それぞれ役割や求められるスキルが異なります。

本章では法律事務所における主要な下記3つの職種について、その仕事内容と求められる経験・スキルを解説します。

  • ●弁護士の仕事内容と求められる経験・スキル
  • ●パラリーガル(法律事務職員)の仕事内容と求められる経験・スキル
  • ●弁護士秘書(リーガルセクレタリー)の仕事内容と求められる経験・スキル

弁護士の仕事内容と求められる経験・スキル

弁護士の仕事内容は、企業法務から一般民事まで幅広い案件に対応し、契約交渉や訴訟対応を担う点が特徴です。
よって、求められる経験やスキルは、専門的な法的知識に加えて、依頼者から信頼を得るためのコミュニケーション力や交渉力が必要となります。

まず仕事内容に関して、弁護士は依頼者の代理人として、企業法務、M&A、国際取引、知的財産、訴訟対応など幅広い分野に携わります。具体的には、契約書の作成やレビュー、交渉、裁判所での弁護活動に加え、調停や仲裁などの紛争解決にも携わります。

次に経験・スキルに関して、弁護士には論理的思考力や法的分析力が不可欠です。さらに、コミュニケーション力や交渉力、国際案件を担当する場合には高度な英語力も必要です。加えて、強い責任感とストレス耐性、高い倫理観も重要となります。

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パラリーガル(法律事務職員)の仕事内容と求められる経験・スキル

パラリーガルの仕事内容は、弁護士の業務を実務面で支えることにあります。裁判書類の作成や証拠収集など多岐にわたる業務を担い、弁護士が依頼者の代理人として円滑に活動できるようサポートします。
そのため、求められる経験やスキルには、正確で迅速な事務処理能力、マルチタスク能力、そしてコミュニケーション力が挙げられます。

具体的な仕事内容に関して解説すると、パラリーガルは法律事務所や企業の法務部に所属し、裁判所提出書類の作成・提出、判例や文献のリサーチ、訴訟や契約に関する証拠資料の収集・整理、契約書や社内規程のドラフト補助などを担当します。手続きの進行管理や事前準備も担い、弁護士業務の基盤を支える存在です。

次に経験・スキルに関して、パラリーガルに求められるのは、業務の正確性とスピードです。裁判関連書類には、厳格な法的要件や提出期限があるため、誤記や遅延は依頼者の不利益につながります。そのため、緻密な作業力やスケジュール管理能力が不可欠です。資格は必須ではありませんが、法学部出身者や司法書士・行政書士の学習経験者、企業法務経験者は有利です。国際案件を扱う事務所では、英語を用いた契約書レビューや海外法令リサーチに携わるため、語学力が強みになります。

さらに、パラリーガルは弁護士や事務所スタッフとのチームワークの上に業務が成り立っています。そのため、コミュニケーション力や依頼者への丁寧な対応姿勢も評価されます。経験を積むことで「シニアパラリーガル」へとキャリアアップでき、近年では企業のコンプライアンス部門や法務部で活躍するケースも増えています。

弁護士秘書(リーガルセクレタリー)の仕事内容と求められる経験・スキル

弁護士秘書(リーガルセクレタリー)の仕事内容は、弁護士が専門業務に集中できるように事務や調整を幅広くサポートすることです。
そのため、求められる経験やスキルは、守秘義務を徹底する姿勢、正確な事務処理力、柔軟な対応力、さらに高いコミュニケーション力となります。

まず仕事内容に関して解説すると、弁護士秘書は、弁護士のスケジュール管理、裁判や会議の日程調整、来客・電話・メール対応、出張の手配、資料や証拠書類の整理、文書作成・校正などを担当します。さらに、契約書や訴訟関連書類の翻訳、弁護士と依頼者の間に入って調整する役割も果たします。

次に経験・スキルに関して、この職種では依頼者の個人情報や企業の機密情報を扱うため、高い守秘義務意識が不可欠です。また、弁護士の業務には突発的な案件や緊急対応が多いため、臨機応変な判断力と柔軟性が求められます。さらに、依頼者に安心感を与える顧客対応力、細部まで正確に処理する事務処理能力、そして弁護士の意図を理解して先回りするサポート力も重要です。
外資系法律事務所や国際案件を扱う事務所では、英文メール対応、会議での通訳補助、契約書翻訳などが日常的に発生します。そのため、ビジネスレベルの英語力を備えていると大きな武器となります。必ずしも法律の専門知識は必要ではありませんが、日常業務を通じて法律用語や裁判手続きを学べるため、経験を積むほど専門性が高まることになります。

法律事務所の最新転職・求人情報

現在、弁護士求人の大多数はインハウスローヤーであり、事業会社側の需要が非常に高くなっています。主な目的は、コンプライアンス強化や国際取引、データ保護対応などです。

その一方で、法律事務所からの公募求人は相対的に少なくなっています。ただし、法律事務所における求人がまったくないわけではありません。特定の専門領域、つまり、シニアアソシエイト(5〜10年目前後の中堅弁護士)や、国際仲裁の実務経験者、金融商品取引法のスペシャリストなどが即戦力として求められる傾向です。

また、そもそも法律事務所は企業のように大量採用を行わないため、求人件数自体が限られています。潜在的な採用ニーズがあっても公開されていない場合が多く、非公開求人として扱われるケースも少なくありません。そのため、求人情報だけでなく専門の転職エージェントを通じた情報収集が重要になります。

以下に、JACが取り扱う法律事務所の公開求人例を一部ご紹介します。

国際法律事務所:Legal Assistant リーガルアシスタント

法律事務所【WLB◎/リモートあり】:財務経理責任者

非公開:導入コンサルタント【四大法律事務所×国内トップAI技術】

弁護士法人ブライト:法務 (パラリーガル)

上記は公開求人の一例であり、実際には非公開求人も多数存在します。

JACでは企業戦略上公にできない非公開求人を豊富に取り扱っています。より多くの選択肢を知りたい方は、転職コンサルタントに相談されることをお勧めします。

>>非公開求人について詳しく知りたい方はこちら

※求人の募集が終了している場合もございます。ご了承ください。(2025年9月現在)

未経験から法律事務所への転職は難しいのか

未経験から法律事務所へ転職を目指す場合、弁護士としてなのか、あるいはパラリーガルや弁護士秘書としてなのかによって、難易度や可能性は大きく異なります。

まず弁護士職の場合、資格を有していれば実務未経験でも転職は不可能ではありません。しかし、多くの事務所は即戦力を求める傾向が強いため、実務経験のない弁護士を採用するケースは限られます。特に訴訟を中心に扱う事務所では経験者が優遇されやすく、採用はかなり狭き門です。また、インハウスローヤーから法律事務所に移るケースでは、訴訟経験が不足していると新人弁護士に近い扱いとなり、場合によっては年収が下がるリスクもあるため注意が必要です。

一方、パラリーガルや弁護士秘書といった事務系職種は、弁護士職に比べると未経験から挑戦できる可能性が広がっています。法学部出身や企業での法務経験、あるいは一般事務・秘書業務の経験があれば有利ですが、必須条件ではなく、実務を通じて知識やスキルを身につけられる点も魅力です。ただし年齢による制約は存在し、35歳を超えると未経験からの正社員転職は、ハードルが高い傾向にあります。まずは派遣社員や契約社員として実務経験を積み、実績をもとに正社員登用を目指すステップも現実的です。

また、未経験者が評価されやすいスキルとしては、Word・Excelなどの基本的なパソコンスキル、正確で丁寧な事務処理能力、電話や来客対応を含むコミュニケーション力が挙げられます。さらに、外資系事務所や国際案件を扱う環境では英語力が大きな武器となり、実際の求人でもTOEICスコアや実務での使用経験が評価されています。

このように、未経験から法律事務所へ転職することは容易ではありません。しかし、早い段階でキャリアチェンジを図り、関連スキルを磨いて、雇用形態には柔軟性をもって挑戦することで、十分に実現は可能です。異業種で培った経験を法律事務所でどう生かせるかを明確にアピールすることが、成功への大きな鍵となります。

法律事務所への転職理由・志望動機のポイント

本章では、法律事務所への転職志望者が抱える主な転職理由や志望動機、さらに選考の際に意識すべき以下2つのポイントについて解説します。

  • ●弁護士が法律事務所へ転職する際の理由・志望動機のポイント
  • ●パラリーガル・弁護士事務職が法律事務所へ転職する際の理由・志望動機のポイント

弁護士の法律事務所への転職理由・志望動機のポイント

弁護士が法律事務所への転職を希望する理由はさまざまです。代表的な理由としては、「専門性を追求したい」「働き方やキャリア環境を変えたい」の2つが挙げられます。

まず前者の専門性に関しては、M&Aや国際取引、知的財産、倒産処理、危機管理対応など、現職ではあまり取り扱えない案件に携わりたいという動機が、その典型例です。特定分野に注力する事務所や国際案件に強い大規模事務所などは、こうした志望理由と親和性が高くなっています。

後者の働き方・環境に関しては、長時間労働の改善やワークライフバランスの確保、あるいはインハウスローヤーから再び法律事務所へ戻りたいというケースが挙げられます。大規模事務所でスケールの大きな案件に挑戦したいという理由もあれば、小規模事務所でクライアントと直接関わり、密度の高い支援を行いたいという動機もあります。

志望動機を語る際には、単に「こうしたい」という希望を述べるのではなく、「これまでの経験」「応募先の特色」「今後のキャリアビジョン」 という三段構成で説明すると説得力が増します。例えば、「現職で培った企業法務の知識を、貴所のM&A案件でさらに深めたい」「国際仲裁の実務経験を活かし、貴所が注力するクロスボーダー案件で成長したい」といった形で具体的に結び付けると効果的です。

パラリーガル・弁護士事務職の法律事務所への転職理由・志望動機のポイント

パラリーガルや弁護士事務といった事務系職種における志望理由として代表的なのは、「スキルの向上」と「働く環境の改善」です。

スキルの向上に関しては、契約書レビューの補助や訴訟準備を経験してきた人が、より専門性の高い分野を扱う事務所で実務力を高めたいと考えるケースがあります。また、企業法務部や他業界の事務職から「法律専門職にキャリアチェンジしたい」という動機も少なくありません。

環境の改善に関しては、残業の多さや人間関係の難しさから転職を考えるケース、より大規模な事務所でキャリアを積みたい、あるいは逆に少人数事務所で弁護士と密接に働きたいという理由もあります。

志望動機を伝える際に重要なのは、これまでの業務経験を数字や事例で具体的に示すことです。例えば、「年間〇件の訴訟サポートに関わった」「契約書〇件以上の作成補助を担当した」といった実績は、説得力を高めます。そのうえで、応募先事務所の強みを事前に調べ、自分の実績と結びつけて、「自分の経験や姿勢でどのよう貢献できるか」を伝えると、評価されやすくなります。

さらに、事務系職種では ホスピタリティ精神・正確性・スピード が重視されるため、「丁寧かつ迅速に処理する力」「依頼者や弁護士から信頼される姿勢」を、具体的なエピソードとともに伝えることも大切です。

法律事務所への転職で求められる人物像

法律事務所で働くにあたって、法律知識やスキルだけでなく、人格的な資質や姿勢も重視されます。特に以下の5つは、弁護士・パラリーガル・弁護士秘書といった職種を問わず共通して評価されやすいポイントです。

  • ●高いコミュニケーション能力と協調性
  • ●正確さ・緻密さと責任感
  • ●向上心と自己研鑽意欲
  • ●ホスピタリティ精神と主体性
  • ●柔軟性・適応力とタフさ

本章では、これら上記5つのポイントについて解説します。

高いコミュニケーション能力と協調性

法律事務所への転職では、高いコミュニケーション能力が求められます。具体的には、依頼者の意向を的確に把握し、複雑な契約条項や訴訟戦略をわかりやすく説明する力、そして裁判官や相手方弁護士との交渉において論理的かつ冷静に対話できる力が求められます。

なぜなら、弁護士やパラリーガルの業務は、依頼者の人生や企業活動に直結する重大な判断に関わるためです。例えば、M&A契約のデューデリジェンスではリスクの所在を正確に伝えなければ依頼者に不利益をもたらしますし、訴訟準備において証人の供述内容を整理する際には、相手の言葉の背景にある意図や感情を汲み取る力が不可欠です。

このように、単なる会話能力にとどまらず、法的専門用語を依頼者に噛み砕いて伝える説明力、複数の利害関係者との調整力こそが、法律事務所で評価されるコミュニケーション能力といえます。

正確さ・緻密さと責任感

法律事務所への転職では、正確さと強い責任感も不可欠です。

その理由として、法律実務は一字一句の誤りが依頼者の不利益につながり、事務所全体の信用問題に直結することが挙げられます。例えば、契約書の条項における誤記、訴訟期日の管理漏れ、証拠提出書類の不備といったミスがあると、損害賠償請求や敗訴といった重大な結果を招くことにつながります。

そのため、弁護士やパラリーガルには、条文や契約条項を逐一確認し、訴訟カレンダーを正確に管理して、証拠の真正性を担保するなど、細部にまで注意を払って業務を遂行する姿勢が求められます。

もちろん人間である以上、完璧さを常に保つことは難しいものです。しかし、チェックリストの導入やダブルチェック体制の構築といったミスを防ぐ「仕組みづくり」ができる人は高く評価されます。なぜその作業が必要なのか、誤りがどのようなリスクにつながるのかを理解した上で責任をもって取り組む姿勢こそ、法律事務所で信頼される条件といえます。

向上心と自己研鑽意欲

法律事務所で活躍するには、常に学び続ける姿勢も不可欠です。

なぜなら、法律は改正や新判例によって絶えず変化し、依頼者のニーズも高度化・多様化しているためです。既存の知識だけでは複雑な案件に十分対応できないケースも少なくありません。

例えば、企業法務や国際仲裁など専門とする弁護士であれば、その専門知識を常に更新し続けるとともに、英文契約書対応に備えて語学力を磨く必要があります。パラリーガルや秘書であれば、訴訟管理システムやAIリサーチツールを活用するためのITスキルや、契約書レビュー補助に役立つ法務知識を高めることが期待されます。

このように、自主的に勉強会へ参加した経験や、資格取得の実績を示せば、成長意欲を客観的に裏付けられます。関心分野や将来学びたい領域を具体的に語ることで、説得力あるアピールにつながります。

ホスピタリティ精神と主体性

法律事務所への転職では、クライアントに安心感を与えるホスピタリティ精神と、自ら動ける主体性も重要です。

なぜなら、法律事務所は専門サービスを提供する場であると同時に、依頼者の不安や悩みに寄り添う存在でもあるためです。適切な気配りや迅速な対応は、案件解決以上に依頼者の信頼を得る要素となります。

具体的には、弁護士やパラリーガルは、契約交渉の場面で依頼者の立場を踏まえた提案を行うことや、裁判準備において依頼者に不安を与えない説明をすることが求められます。秘書や事務職であれば、スケジュール調整や会議準備の段階で、先回りの対応を行う姿勢が評価されます。

このように、指示待ちではなく、自ら課題を発見し改善策を提案できれば、法律事務所において高く評価されます。具体的な経験を交えて語ることで、主体性と貢献意欲を効果的に示すことができます。

柔軟性・適応力とタフさ

さらに法律事務所では、突発的な案件や厳しい状況に柔軟かつ粘り強く対応できる力も重要です。

なぜなら、訴訟や緊急の差止請求、国際取引のクロージングなど、予定どおりに進まない業務が日常的に発生するためです。想定外の事態に動揺せず、冷静に対応できることが依頼者の信頼につながります。

例えば、裁判期日の直前に証拠書類の追加提出を求められた際、限られた時間でリサーチや文書作成を完了させる柔軟性が必要です。国際案件であれば、異なる法制度や文化背景に迅速に適応し、新しい分野の知識を短期間で吸収する能力も求められます。

このように、困難な状況をどう乗り越えたかを具体的に語れることが、抽象的な「ストレス耐性」を超えた説得力のある自己PRになります。実体験に基づく柔軟性とタフさの証明こそ、採用側に強く響くポイントです。

法律事務所へ転職した場合の年収相場

一般的に、法律事務所における弁護士の平均年収は600万~1,000万円前後が目安です。新人弁護士は500万円台からスタートすることが多いものの、経験を積み、企業法務やM&Aなど専門性の高い分野に携わるようになると、年収は大きく伸びていきます。

一方で、パラリーガルや法律事務スタッフの平均年収は400万~600万円前後が目安で、外資系事務所や語学力を生かせるポジションになると水準が上がる傾向があります。

法律事務所の転職事例

秘書経験を生かしてパラリーガルへ転職した事例

Dさん(40代前半/女性)

業種職種年収
転職前金融業界秘書650万円
転職後法律事務所パラリーガル(英文契約)700万円

Dさんは新卒で日系大手銀行に入社し、富裕層向けの営業職を3年間担当しました。その後は大手法律事務所にて長期間、弁護士秘書として勤務。日本人・外国人弁護士を対象に、グループ秘書やマンツーマン、複数名を同時にサポートするなど、多様なスタイルで秘書業務を経験しました。直近では投資関連企業で役員秘書を務め、外国人役員との業務も担いながら、豊富な実務経験と英語力を生かして国際的な業務も主導してきています。

一方で現職はフル出勤が前提で、リモートやフレックス勤務の制度がなく、育児との両立が難しい環境でした。そのため、より柔軟な働き方が可能で、安心して長期的にキャリアを築ける職場を求めて転職を決意しました。

そこでJACのコンサルタントは、Dさんの豊富な秘書経験に加え、英語力や法務関連知識に注目し、法律事務所のパラリーガル職を提案しました。

結果として年収アップを実現し、国際案件に携われる専門性の高い環境でキャリアをさらに発展させることができました。

※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。

法律事務所へ転職後のキャリアパス

法律事務所への転職は、単なる勤務地の変更にとどまらず、その後のキャリアを大きく左右する重要な選択です。

本章では、転職後に想定される主要な下記4つのキャリアパスについて解説します。

  • ●法律事務所内でパートナー弁護士へと昇進
  • ●ほかの法律事務所や専門ファームへの転身
  • ●独立開業・新事務所の設立
  • ●公的な法曹分野やアカデミア

法律事務所内でパートナー弁護士へと昇進

事務所に所属する弁護士にとって、最も代表的なキャリアパスがパートナーへの昇進です。アソシエイトとしての経験を積んだ後、一定の成果を認められることでジュニアパートナー、さらにシニアパートナーへとステップアップしていく流れが一般的です。

パートナーになると、事務所の経営方針や戦略決定に関わる立場となり、案件獲得や既存クライアントとの関係強化、若手弁護士の育成など、多方面での役割が求められます。評価基準は事務所ごとに異なりますが、専門分野における高度な知識と実績、新規案件を手繰り寄せる営業力、チームを率いるマネジメント能力、そして事務所全体の収益やブランド価値への貢献度が大きな指標となります。

ただし、パートナーへの昇進は、高収入や社会的信用を得られる一方で、経営責任や業績のプレッシャーも負う立場となるため、実務スキルに加え、経営感覚やタフさも不可欠です。

ほかの法律事務所や専門ファームへの転身

一定の分野で実績を積んだ弁護士は、その専門性をさらに深めるために別の法律事務所や専門ファームへ転身することがあります。その転職先として、具体的に 「専門特化型ファームへの転身」「規模の異なる事務所への移籍」「インハウスローヤーへの転職」 の3つが挙げられます。

まず、専門特化型ファームへの転身に関して解説しましょう。M&A、国際取引、知的財産、倒産処理など特定分野に強みをもつファームでは、その分野で実績を積んだ弁護士が、より高度な専門性を磨くために移籍するケースが多く見られます。若手のうちから専門案件に積極的に携わることで、転身への道が開かれやすくなります。

次に、規模の異なる事務所への移籍については、大規模事務所に移る場合、国際案件や大規模訴訟などを経験したい弁護士に適しています。逆に中小規模事務所へ移る場合は、依頼者と密接に関わり、一人の弁護士として幅広い実務を担いたい方に向いています。いずれも、現職での案件対応や顧客との関わり方が評価の基盤となります。

最後に、インハウスローヤーへの転職に関してです。法律事務所で培った知識と経験を生かし、事業会社の法務部門に移ることで、経営に近い立場から意思決定に関わるキャリアが築けます。企業法務やコンプライアンス案件の経験、さらにはビジネス理解や英語力があると、将来的に法務部長やコンプライアンス責任者といったポジションに就く可能性も広がります。

このように、転職先は進みたい方向性によって複数の選択肢があり、それぞれに必要なキャリアパスや実務経験が存在します。自身の強みをどう築き、どう発展させたいかを明確にすることが、キャリア形成における重要なポイントです。

独立開業・新事務所の設立

法律事務所へ転職しキャリアを積んだ弁護士にとって、独立して自らの事務所を立ち上げることは大きな挑戦であり、やりがいのある選択肢の一つです。独立によって、自身の理念や得意分野に基づいたリーガルサービスを提供できる自由度が得られます。例えば、スタートアップ支援に特化した事務所や、地域に根ざした法律相談に注力する事務所など、特色ある経営が可能です。

一方で、独立には弁護士業務以外の幅広いスキルが求められます。依頼者との接点創出に加え、経理・労務・広報といった経営管理、さらにはスタッフ採用やマネジメントまで担う必要があります。顧客基盤を築けなければ事務所運営は不安定になりやすく、独立は高いリスクをともなうキャリアパスといえるでしょう。

しかし、安定した顧客基盤を確立し、独自のブランドを築くことができれば、大きな裁量と収益を得られる道でもあります。特に近年は、複数の弁護士が共同で新事務所を設立するケースも増加傾向にあります。各弁護士が専門分野を補完し合うことで対応できる案件の幅が広がり、リスク分散や事務所の成長にもつながりやすくなっています。

このように、独立は難易度の高い選択肢ではあるものの、自分の理想とする弁護士像を体現できるキャリアパスとして、多くの弁護士にとって魅力的な可能性を秘めています。

公的な法曹分野やアカデミア

法律事務所での実務経験を基盤に、公的法曹分野や学術研究の道へ進むキャリアパスもあります。

まず、裁判官や検察官といった職務は公益性が高く、社会全体に大きな影響を与える重要な役割です。安定したキャリアを築ける一方で、選考は極めて厳しく、卓越した法的資質と高い倫理観が求められます。

次に、大学や研究機関で教育・研究に携わる「アカデミア」の道もあります。研究者として法制度の発展に寄与するだけでなく、学生や若手法曹の育成を担うことは、社会貢献意義の高いものです。ただしポストは限られており、採用競争は厳しいものとなります。

このように、公益性や学術性を志向するキャリアパスは狭き門ではあるものの、専門性を社会全体に還元できる極めて意義の大きい選択肢といえます。

法律事務所への転職なら、JAC Recruitment

法律事務所は、高度な専門性と豊富な実務経験が求められる職場であり、公開される求人件数は限られています。そのため、転職希望者が独力で最適なポジションに出会うのは容易ではありません。

法律事務所ごとに採用方針や重視する専門分野、組織文化は大きく異なります。よって、応募先に合わせた対策や情報収集を徹底できるかどうかが、転職成功の大きな分かれ目となります。

その点、JACには法律業界の採用ニーズやポジション要件に精通したコンサルタントが多数在籍しています。応募者のこれまでの経験やスキルを丁寧に整理し、企業法務、国際仲裁、M&A、知的財産などの専門性を的確に評価したうえで、最適なキャリア選択を支援します。さらに、シニアアソシエイトやパートナー候補といった即戦力ポジション、国際案件を扱う非公開求人など、一般には出回らないキャリア機会へのアクセスも期待できるでしょう。

法律事務所への転職をお考えの方は、ぜひJACにご相談ください。

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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment

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当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。