40代社労士の転職事情｜平均年収や求められるスキル経験を解説

40代社会保険労務士（以下、社労士）の転職市場は、働き方改革やDX推進、制度改正などを背景に、大きな変化を迎えています。働き方改革や労務管理の複雑化、企業の戦略強化により、即戦力として40代社労士へのニーズは拡大中です。一方で「未経験分野への挑戦は可能か？」「転職難易度は？」「最新の求人や年収水準はどうなっているのか？」といった疑問をもつ方も少なくありません。

本記事では、40代社労士の転職動向、求められるスキルや経験、年収相場、さらに成功のポイントをJAC Recruitment（以下、JAC）の管理部門専門コンサルタントが、知見を交えて詳しく解説します。

40代社労士の転職動向

40代の転職市場では、社労士に対する企業のニーズがこれまで以上に多様化しています。特に、以下のような背景が顕著です。

・労務管理体制の強化

近年、コンプライアンス意識の高まりを受け、労務管理や就業規則の見直し、働き方改革への対応を担えるスペシャリストが求められる傾向です。特に中堅〜大手企業では、労働法制改正にともなう制度整備を推進できる経験者が重宝されています。

・人事制度や組織再編への対応

事業再編や新規事業展開にともない、人事制度設計や労務DD（デューデリジェンス）をリードできる社労士の需要が高まっています。特に40代は、実務に加え、プロジェクトマネジメントやチームをリードする役割を担える方への需要が高まっています。

・多様な働き方と労務課題の増加

テレワークや副業解禁など、働き方の多様化にともなって発生する労務課題への対応力が重視されています。労務相談やリスク対応の実績をお持ちの方は、即戦力として高く評価されやすくなっています。

・企業内社労士と社労士法人の双方での需要

企業の人事部門で労務の専門性を活かすケースに加え、社労士法人でマネジメントを担うポジションも増えています。50代での採用も見られ、経験豊富な人材が「組織の安定と改革」を同時に進める存在として高く評価されています。

40代社労士は、変化の激しい労務分野で「制度を理解し、現場を動かす力」が求められ、企業は年齢や資格以上に、実務経験に基づく制度設計や組織運営を推進する力を重視する傾向が強まっています。

40代社労士で求められるスキル・経験・マインド

40代社労士の転職市場では、単なる実務遂行力ではなく、組織や事業を「動かす力」が問われます。本章では、30代とは異なる視点から、40代に求められる「経営視点」「専門性の深化」「リーダーシップ」の3つのスキル・経験を整理します。

1.経営視点×労務リスクマネジメント

40代社労士には、日々の労務対応にとどまらず、経営層と同じ目線で課題を捉え、組織全体のリスクを管理・改善する力が求められます。特に以下のような経験が評価されます。

・労務コンプライアンス体制の構築・強化 ・M&Aや事業再編時の労務デューデリジェンス対応 ・働き方改革や法改正にともなう制度整備の主導

これは、単なる「労務担当者」ではなく、「経営に資する専門家」としての役割を期待されていることの表れです。

2.専門性の深化×人事制度・労務知識

40代社労士は、社会保険や労務手続きの基本に加えて、人事制度全般の設計・運用ができる専門性が大きな差別化要素となります。また、多様化する働き方に柔軟に対応できる力も求められます。
特に以下のような「専門性の深さ」と「対応領域の広さ」を兼ね備えることが、40代社労士の市場価値を高める要因となります。

・人事評価制度・賃金制度の企画・運用経験 ・労働組合対応や労使協定締結の実務経験 ・就業規則や人事関連規程の策定・改訂実績

3.リーダーシップ×組織推進力

40代社労士は、後進の指導やチームマネジメントを担う立場としての期待も大きくなります。単に業務をこなすだけでなく、組織を動かし、成果に結びつける力が重要です。
単なる「管理職」ではなく、下記のような「組織をけん引するリーダー」としての存在感が求められることが、30代社労士との大きな違いです。

・プレイングマネージャーとしての実務と育成の両立 ・複数部門や外部専門家を巻き込んだプロジェクト推進経験 ・経営層・従業員双方との合意形成や調整力

40代社労士が取得しておくと有利な資格

40代では、基本資格である「社会保険労務士」のみならず、経営や専門領域を強化できる追加資格の有無が評価につながります。特に、以下の資格を取得しておくと有利です。

・中小企業診断士

中小企業診断士は経営課題を幅広く分析・改善できる知見が得られるため、経営層への提言力やコンサルティング力を高めたい社労士に有効です。

参照：JF-CMCA 日本中小企業診断士協会連合会

・衛生管理者（第一種・第二種）

衛生管理者は労働安全衛生法に基づく必須資格であり、労務管理の信頼性を強化できる点で企業内社労士として評価されます。

参照：公益財団法人 安全衛生技術試験協会「第一種・第二種衛生管理者の紹介」

・年金アドバイザー

年金アドバイザーの資格を取得しておけば、社会保険労務士の専門領域をさらに深め、退職給付や年金相談を強みにできます。金融機関や大手企業の人事部門でも重宝される資格です。

参照：経済法令研究会「検定試験」

・キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは、従業員のキャリア支援や育成に関わる場面で役立ちます。労務管理と従業員育成の両面を担う存在としてアピールすることが可能です。

参照：キャリアコンサルティング協議会「国家資格 キャリアコンサルタント試験」

・MBA（経営学修士）

国内外の経営知識を体系的に習得し、経営戦略や人事制度設計をリードできる力を補強します。特に経営層に近いポジションを目指す場合に有効です。

参照：KEIO MBA「MBAプログラム」

このように、40代社労士は「経営に近い視点」「専門性の深化」「組織を動かすリーダーシップ」に加え、「プラスアルファの資格」による差別化が重要です。実務経験と資格の相乗効果がキャリアの幅を広げます。

40代社労士の平均年収は839.6万円

■40代全体の平均年収

839.6万円

JACの実績では、40代社労士の転職決定時の平均年収は839.6万円です。一般的な勤務社労士（40代）の平均年収が500万円～700万円台であるのに比べ、この高い水準は、マネジメント経験や専門性の深化が報酬に直結していることを示しています。

■役職別平均年収

役職区分	平均年収
課長未満	687.9万円
課長以上	816.4万円
部長以上	1257.6万円

社労士40代の役職ごとの平均年収は、役職が上がるほど大きく増加する傾向にあります。特に部長クラス以上になると、経営層としての意思決定や全社的な戦略運営など、より重い責任が報酬に反映されるため、年収も大きく上昇します。役職ごとに求められる専門性や責任の大きさは異なり、管理職経験やマネジメント力、幅広い視点が評価されるポイントとなっています。

実務経験を着実に積み重ね、役職を上げていくことで、社労士として安定した高収入のキャリアパスを築くことができます。

■転職者が多い職種別平均年収（抜粋）

職種名	平均年収
人事制度	924.7万円
労務・労政	780.5万円
管理部門責任者・ファイナンシャルコントローラー	996.0万円
給与・社会保険	740.4万円

40代社労士は、制度設計や人事戦略を担う分野では年収900万〜1,000万円台の事例も多く、実務経験に加えて組織を動かす力が高く評価される世代です。一方、給与・社会保険や労務運用などの実務分野では700万円台が中心で、安定性や正確性がより重視されます。

40代は、現場で培った専門性を軸に、さらに幅広い役割へとキャリアを広げられる転換期にある世代といえるでしょう。

40代社労士の転職を成功させる5つのポイント

40代社労士の転職を成功させるには、以下の5つのポイントを押さえることが重要です。

ここから、各ポイントについて解説します。

1.実務経験×社労士資格のシナジーをアピール

40代の社労士は、単なる資格取得だけでなく、これまで企業在籍時に築いた労務管理・人事制度運用・現場指導などの具体的な経験と、国家資格としての専門知識をどう融合できるかが差別化の鍵となります。例えば、勤怠・雇用管理の現場実務で培った課題発見力、改善提案の結果による労働環境・生産性の向上といった実績を、社労士視点で言語化して伝えましょう。多様な職場・規模での経験があるほど、事務所や企業側から「即戦力」として認識されやすくなります。

2.業種横断スキルと対応力を強みとして提示

社労士は企業という組織体だけでなく、さまざまな業種・規模の現場と関係するため、40代では異業種経験や多部署連携の実績がそのまま転職市場で強みとなります。製造・IT・介護など業界ごとに特有の課題やニーズに対応してきた事例を具体的に挙げることで、自身の汎用性と応用力をPRすることが可能です。過去に他業界で任された管理業務や危機対応、組織横断プロジェクトへの参加経験などを積極的にアピールしましょう。

3.対人力＝顧客・現場の信頼獲得実績を明示

40代社労士は、年齢による落ち着き・責任感・調整力・配慮の深さなど、高いヒューマンスキルが武器となります。事務所勤務でも企業内でも、従業員や経営層、クライアントなど多様な人と関わる中で「信頼獲得」「折衝」「提案」といった難易度の高い業務を担当した経験は大きな強みになるでしょう。労使トラブルや退職引き止め、制度改革時の周囲巻き込みなど、具体的なエピソードも交えて伝えると説得力が増します。

4.セカンドキャリアの可能性・独立への展望

40代は「残されたキャリアの時間」を意識しやすい世代であり、社労士資格は将来的な独立開業やフリーランス転向も視野に入ります。転職活動では「将来的な開業意欲」や「独立可能な専門職としての成長プラン」「中長期的な貢献領域」を積極的に提示しましょう。また、家庭・ライフバランスにも配慮した柔軟な働き方や、多様な就業形態実現に向けた目標を示すことで、「将来的な拡張性」や「組織への新たな価値提供」が評価されやすくなります。

5.転職エージェントの活用

社労士の求人は一般的な転職サイトには少なく、専門職や管理部門に特化した転職エージェントを活用することで、高年収案件や独自案件へのアクセスが広がります。転職エージェントは、応募書類の作成や業界特有の面接対策、キャリア診断、非公開案件の紹介など40代社労士ならではの不安や課題に沿ったサポートをしてくれます。希望条件やキャリアビジョンを明確に伝えることで、より最適な転職先を見つけやすくなるでしょう。

40代社労士の転職成功事例

ここからは、JACを活用した40代社労士の転職事例をご紹介します。

Kさん（女性/40代前半）

	業種	職種	年収
転職前	物流・運輸	人事管理職	930万円
転職後	化学メーカー	人事戦略領域のマネジメントポジション	1,300万円

Kさんは社会保険労務士の資格をもち、人事・労務分野で幅広いキャリアを積んできました。新卒でシステム会社に入社後、人事部門で給与・社会保険・労務管理を中心に経験を重ね、ダイバーシティ推進や制度運用にも携わってきました。その後、物流企業へ転職し、人事課長として採用チームのマネジメントや従業員管理、若手の育成を担い、直近では人的資本開示やESG関連業務にも従事していました。

Kさんは、これまでの給与・社保や労務管理の専門性に加え、D&I推進や人事戦略に強みをもち、より戦略的な立場で人事をリードしたいと考えていました。しかし現職では経営体制の変化もあり、将来のキャリア展望が描きにくい状況に。そこで、更なるキャリアアップを目的に転職を決断されました。

JACのコンサルタントは、Kさんの「社労士としての専門知識」と「D&I推進を含む戦略人事の実務経験」を高く評価。グローバル企業における人事戦略部門でのマネジメントポジションを提案しました。結果として、これまでの労務・制度運用の経験を活かしつつ、グローバルD&I推進室長として新たな挑戦を実現。戦略人事の領域でさらなる成長を目指すキャリアを歩み始めています。

40代社労士の転職時によくある質問

ここからは40代社労士が転職する際、よくある質問と回答をご紹介します。

Q.40代未経験でも社労士として転職できますか？

A.年齢制限はなく、資格取得後は未経験でも社労士事務所・企業・コンサル会社などに転職可能です。ただし、40代は即戦力や社会人経験、専門性が強く求められるため、転職活動時の自己PRが重要です。

Q.40代社労士の主な転職・就職先は？

A.社労士事務所、民間企業の人事・総務部、コンサルティング会社などが主な選択肢です。近年は法改正や労務管理のニーズ増加により、経験・専門性を評価する求人が増えています。

JACオリジナルデータによれば、40代社労士の転職・就職先としては、EMC（化学・機械・電機などの製造業）が約30％と最も多く、次いで建設・不動産が約18％、流通・サービス・商社がそれぞれ約9％と続きます。人事・労務機能の強化が求められる業種での採用が目立ちます。

■転職者が多い業種（抜粋）

※当社実績（2023年1月～2025年8月分データ）

業種	割合
EMC（化学／機械・装置／電気・電機）	30.3％
建設・不動産	18.2％
流通	9.09％
商社	9.09％
サービス	9.09％

Q.実務経験がない場合、転職で不利ですか？

A.40代の場合は「即戦力」かどうかが重要視されます。未経験でも資格＋これまでの業務経験や専門分野の知識をアピールすることで差別化できます。職務経歴書には労務や管理職経験、関連業務のエピソードなども明記しましょう。

Q.40代社労士が転職成功するためのポイントは？

A.資格取得後は志望動機や自己分析・転職理由を明確化し、自分の強み（コミュニケーション力やマネジメント力など）をアピールすること。転職エージェント活用や求人先の企業研究も効果的です。

Q.40代の未経験でも合格・転職で重視されるポイントは？

A.これまでの社会経験・管理職歴・事務職的スキルをどう社労士業務で活かすかという実践的な視点と、具体的な学びのエピソードが大事です。熱意と成長意欲もアピール材料となります。

40代社労士の転職ならJAC

JACは、社労士として40代でキャリアチェンジを目指す方への豊富な支援実績があります。業界ごとに専門性を持つコンサルタントが、管理部門や労務領域の最新動向や企業ニーズを深く把握し、40代の方の専門性や実務力を最大限に活かすアドバイスを行っています。転職希望者一人ひとりのキャリアや強みを丁寧にヒアリングし、企業の複雑な人事労務課題や制度刷新案件など、専門分野で力を発揮できるポジションのご提案が可能です。

さらに、JACはオープン求人のみでなく非公開ハイクラス案件も豊富に扱い、将来の管理職・コンサルタント・スペシャリストとして活躍できる機会につなげています。社労士資格や現場経験を活かしたい40代の方は、JACの専任コンサルタントの情報力と多様なキャリア支援体制をぜひ活用してください。