2008年にアメリカのSOX法をモデルとして導入されたJ-SOX(内部統制報告制度)。上場企業では内部統制報告制度(J-SOX)の整備が必須となり、経営の透明性の確保やリスク管理強化の観点から、J-SOX対応経験を持つスペシャリストへの注目が高まっています。
本記事では、J-SOXの対応経験を活かせる転職先候補や最新求人・転職情報をJAC Recruitment(以下、JAC)が解説します。
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目次/Index
J-SOX対応経験は転職で有利に働くのか
金融商品取引法の一部である「J-SOX(日本版SOX法)」の実務経験は、転職活動に有利に働きます。その背景には、2024年4月の制度改正や社会的なガバナンス意識の高まりが関係しています。
2008年に開始したJ-SOX制度、約15年ぶりに改正され、2024年4月から適用されました。同改正では「リスクアプローチ」の重要性が明確に打ち出され、業務プロセスごとにリスクを特定し、統制を適切に設計・検証することが求められるようになりました。こうした改正にも対応できる内部監査・統制のスペシャリストは、まだ少なく、採用選考で高く評価される傾向にあります。
もう一つの背景として、過去に会計処理や内部統制が形骸化し、不適切に処理され、社会的に問題視されていた事例があります。これを受けて、金融庁や東京証券取引所は、内部統制報告制度の実効性を、さらに厳しく求めるようになったのです。加えて、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードが改訂され、上場企業の経営監督機能や、内部監査を強化するような流れが、加速しています。こうした実効性をともなう統制が必要とされる中で、内部統制経験者の採用ニーズは、確実に高まっています。
実際に、JACに寄せられている内部監査職の求人は、直近10年で約6倍、特にシステム監査関連では、7倍にまで増加しており、採用ニーズの拡大が顕著です。
J-SOXの対応経験が評価されやすいのは、国内企業だけにとどまりません。グローバル展開や海外上場(米国SOX法適用)を目指す企業においても同様です。英語での内部統制対応ができるスペシャリストのニーズも、増えていくとみられます。なぜなら、グローバルガバナンスの体制整備を進めるうえで、国際的な統制基準に対応できる専門家の存在は、不可欠だからです。
J-SOX対応経験が活かせる転職先候補
J-SOXの対応経験を活かせる転職先は、業界・企業規模・成長フェーズを問わず多岐にわたります。ここでは、具体的な転職候補について解説します。
- ●金融機関(銀行・証券・保険など)
- ●監査法人・リスクコンサルティングファーム
- ●上場企業やグローバルメーカーの内部監査・内部統制部門
- ●IPO準備企業・新興企業
金融機関(銀行・証券・保険など)
J-SOXの対応経験を活かせる代表的な転職先候補の一つは、金融機関です。J-SOXの対応経験者の主な配属先は、内部監査部門やリスク管理部門になります。金融機関がJ-SOXの対応経験者を求める理由は、金融庁がガバナンス強化を求めていることや、金融商品の複雑化・基幹システムの高度化により、統制の重要性が一段と高まっているからです。
こうした環境では、J-SOXに基づいたリスクベースでの統制設計や評価、文書化を経験していることによって、即戦力としてみなされ評価されます。その具体的な業務は、支店や本部の業務プロセスに対する監査、システム障害や不正リスクを想定したIT統制の確認、グループ会社を含む内部統制のモニタリングなどが挙げられます。
また、大手銀行や証券会社、保険会社などでは、IFRSへの対応や海外子会社の統制整備といった“国際的な案件”も増えているのが現状です。そのため、英語力や多拠点での監査対応経験がある方は、採用の場面で、さらに有利になる傾向があります。

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監査法人・リスクコンサルティングファーム
監査法人やリスクコンサルティングファームもまた、J-SOXの対応経験を活かせる転職先候補の一つです。ここでの主なポジションは、上場企業やIPO準備企業を対象とした内部統制監査やアドバイザーです。
この領域でも、J-SOXの実務経験がある方は、即戦力として高く評価されます。その理由は、統制体制の診断や業務プロセスの改善、リスクマネジメントの構築といった依頼に対し、過去の知見を応用できるからです。特に、業務の重要度や、発生し得るリスクを踏まえて統制を評価し、その内容を適切に文書化する経験は、クライアントへの改善提案にダイレクトに寄与する強みになります。
具体的な業務内容は、財務報告に係る内部統制の有効性テストや統制整備に関するアドバイス、DX推進、クラウド・ERP導入プロジェクトにおけるIT統制の確認などが挙げられます。さらに、国際案件も多く、IFRSへの対応や海外子会社統制をサポートする場面もあるため、英語力を備えていたり、国際監査基準に精通していたりすることで、業務の幅はいっそう広がります。

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上場企業やグローバルメーカーの内部監査・内部統制部門
上場企業やグローバルメーカーもまた、J-SOXの対応経験を活かせる代表的な転職先候補です。全社的なガバナンス強化や海外拠点の統制整備の課題を解消するため、主に、内部監査部門や内部統制部門へ配属されます。
J-SOXの経験が有利に働く理由は、大きく二つあります。第一に、上場企業では、内部統制報告書の作成や、四半期ごとの監査法人対応が必須であり、これらの実務経験があれば、即戦力と見なされやすいこと。第二に、グローバルメーカーでは、国内外のグループ会社に統制を展開する必要があるため、各部門との調整や教育を担った経験が、「ルールを定着させる役割を果たせる」との点で、高く評価されます。
具体的な業務内容としては、内部統制報告書の作成や監査法人との折衝、国内外拠点の統制状況確認、従業員への研修企画・実施などがあります。そして、IT統制やシステム監査の知識があれば、DX推進や新システム導入にともなう“リスク評価”に携わることも可能です。加えて、英語力や国際規制への深い理解があれば、US-SOXを含む“グローバル案件”をリードする機会も広がります。

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IPO準備企業・新興企業
IPO準備企業やスタートアップも、J-SOXの対応経験を活かせる主な転職先候補の一つです。これらの企業では、上場基準を満たすための“ガバナンス“や、内部統制体制の“立ち上げや強化”が、経営上の重要課題となっており、即戦力としての採用が進んでいます。
J-SOX経験が有利に働く理由を、さらに詳しく見ると、上場準備に必要な統制整備を主導した経験が、経営陣にとって大きな安心材料となるためです。IPOを控える企業は、監査法人からの厳格なチェックに対応しなければなりません。そのため、内部統制報告書の整備や社内規程の策定、運用ルールの定着を、実務で担える方が強く求められるのです。
具体的な業務としては、監査法人対応、社内規程や業務フローの整備、全社横断的なプロジェクトの推進などがあります。さらに、経理・法務・ITといった複数領域を横断する経験がある方は、少人数体制の新興企業において、内部統制に限らない“幅広い役割”を担います。IPO達成後には、ガバナンス部門の中心的存在として、“組織を牽引する役割”を期待されるケースも多いです。
J-SOX対応経験が活かせる最新転職・求人情報
2024年のJ-SOX改正により、サステナビリティ情報やESGリスクの開示強化が求められるようになりました。そのため、J-SOX対応とともに、リスクマネジメントやIT統制の経験者へのニーズがいっそう高まっています。最新の求人票には、「IT全般統制」「ESG対応」「グローバル監査」といったキーワードが増えており、DX化やITシステムの高度化にともなう“リスクに対応できるスペシャリスト“が不足している状況です。
特に、大手企業やグローバルメーカーでは、海外子会社監査や英語での対応を前提とするポジションが多く、語学力や多国籍環境での経験が、大きな強みとなります。その背景には、組織強化や新規事業の推進、グローバル展開といった“攻めの戦略“があり、内部統制を経営戦略と一体で進める姿勢がうかがえます。
以下に、JACが扱うJ-SOXの対応経験が活かせる公開求人例を、一部紹介します。
●三精テクノロジーズ株式会社:内部監査・J-SOX担当 ■スタンダード上場 遊戯機械世界トップクラスシェアメーカー
●株式会社NTTデータ東北:【開発職・法人事業部】J-SOX内部統制の支援作業
●スズキ株式会社:IT統制(J-SOX、財務諸表監査など)に関する業務
●大手Web企業:ITリスクマネジメントグループ ITガバナンスセクション
上記は、公開求人の一例であり、実際には非公開求人も多数存在します。JACでは、企業戦略上公にできない非公開求人を豊富に取り扱っています。より多くの選択肢を得たい方は、転職コンサルタントに相談されることをお勧めします。
※募集が終了している場合がございます。あらかじめご了承ください。(2025年9月現在)
J-SOX対応経験と併せて転職に役立つ経験・スキル
J-SOX対応の実績と併せて、次のようなスキルや経験を備えることで、より高い市場価値と幅広いキャリア選択肢が得られます。
- ●IT監査経験(CAATsなど)
- ●システム開発経験
- ●情報セキュリティ知識
- ●上場企業での経理業務経験
IT監査経験(CAATsなど)
IT監査経験やCAATs(コンピュータ支援監査技法)のスキルを併せもつスペシャリストは、J-SOX統制の高度化やDX化が進む部門で、特に求められています。
その背景として、従来の財務報告統制だけでなく、業務システムやアクセス管理の統制評価を担う役割が、拡大しているためです。膨大なデータの分析やシステムログの検証を、効率的に行うCAATs活用スキルを備えた監査担当者は、内部統制評価の精度向上や不正検知の高度化に貢献できます。
そのため、事業会社のITガバナンスやITリスク評価の責任者、コンサルファームのデジタル監査部門など、より専門的、かつ高待遇なポジションを目指せます。J-SOX対応とIT監査の双方を経験している方は、企業内において、ITガバナンスと財務統制の“橋渡し役“を期待される存在です。
システム開発経験
システムエンジニアや業務アプリ開発経験者など、“システム開発“に携わった方は、統制設計や監査の際に、大きな強みを発揮します。なぜなら、開発工程やシステム構造を理解していることで、リスクポイントを、多面的かつ適切に把握し、J-SOX統制やシステム監査に応用できるからです。
特に、要件定義からテスト・運用まで、一連のプロセスの経験者は、システム統制やDX関連の監査で、即戦力になります。どのような不備が内部統制上の問題となりうるかを、各工程でイメージしやすく、開発プロジェクトの監査において“的確な指摘や助言ができる点“が、高評価につながりやすいのです。
また、IT部門や開発チームと円滑に連携した経験は、監査業務における“調整力“として高く評価されます。その能力は、結果として、IT統制責任者やDX推進監査担当など、経営に近いポジションを担う道へとつながります。
情報セキュリティ知識
情報セキュリティ分野の知見やISMS・CISSPなどの資格も、評価につながりやすいものの一つです。内部統制上のリスクには、サイバー攻撃やデータ漏えいといった非財務領域のリスクも無視できなくなっています。背景として、改正J-SOXでもIT環境の統制強化が求められていることがあります。
また、セキュリティポリシー策定や脆弱性評価、アクセス権限管理などの実務経験があれば、監査プロセスやリスク管理体制全体の底上げに、大きく貢献できるはずです。
特に、国際的に事業を展開する企業では、各国のセキュリティ基準への適合力が求められるため、情報セキュリティ知識とJ-SOX対応経験の両方を備えていることが、経営層からの信頼につながります。結果として、CSIRTやリスクマネジメント部門の中核を担う機会も広がります。
上場企業での経理業務経験
上場企業で経理実務を担当した経験は、J-SOX対応と組み合わせることで高く評価されます。具体的には、決算業務や開示資料の作成、会計監査人対応といったプロセスの経験者が、数字の裏側にある“リスク“やプロセスの“脆弱性“を把握できる点で、評価されやすいです。
こうしたスキルは、J-SOXの対応経験と掛け合わせることで、財務報告にかかる“統制の評価“や“内部監査業務“に大きく貢献します。また、経理で培った“リスク分析力“は、売上計上や引当金処理などの重要プロセスにおける、統制設計や有効性の検証の実務性をさらに高めるだけでなく、監査法人や経営陣への“納得感のある報告“にも役立ちます。
こうしたスキルの組み合わせにより、目指せるポジションの幅は広がります。例えば、事業会社では、内部統制責任者や経理・財務部門と内部監査部門の“橋渡し役“。また、管理部門全体を横断して経営企画や財務戦略に関与することで、将来的に“CFO候補“や“経営管理層“へキャリアを発展させる道も考えられるでしょう。
J-SOX対応経験を活かして転職した場合の年収相場
2023年1月~2025年9月までにJACが転職をサポートした、SOX関連ポジションへ転職された方の想定平均年収は890.4万円です。ボリュームゾーンは700万円台後半から1,000万円前後で、30代後半から40代にかけて年収が大きく伸びる傾向が見られます。特に、40代前半では平均976.0万円、40代後半では1,086.0万円に達しており、内部統制・監査領域での経験やマネジメント力が評価されやすいことが反映されています。
また、50代でも900万円を超える水準を維持しているケースが確認されており、年齢を重ねても安定した評価が得られやすい職種だといえます。責任ある立場に就くことで明確に年収レンジが上がることも特徴ですが、30代前半のような早期からキャリア形成が可能な領域であることが示されています。
| 役職 | 平均年収 |
|---|---|
| メンバークラス | 809.7万円 |
| 管理職 | 1078.7万円 |
※当社実績(2023年1月~2025年9月、想定年収)より
一般的に、SOX対応や内部統制・監査関連の専門職は、経理・財務・監査系職種の水準をもとに判断すると平均年収は500万円台後半から600万円台が中心です。特に、従業員1,000人以上の大企業や上場企業、金融・製造など、内部統制を重視する業界では、管理職層を中心に700万円~800万円を超える水準に達するケースも確認されています。一方で、中小企業では500万円前後にとどまることも多く、企業規模や職位によって年収レンジに大きな差が出やすい領域です。
J-SOX対応経験を活かし食品メーカーの内部統制へ転職した事例
食品メーカーの内部統制(J-SOX)ポジションへ転職した事例
Mさん(40代前半/男性)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 教育サービス | ITガバナンス | 950万円 |
| 転職後 | 食品メーカー | 内部統制・SOX・コンプライアンス | 1,100万円 |
Mさんはソリューション事業立ち上げやSOX対応に携わり、内部統制分野への関心を深めていました。その後、教育業界にてガバナンス・BCPなどの業務を経験し、特にJ-SOXに基づく監査業務を中心にキャリアを積み重ねてきました。現職企業が上場廃止となったことを受け、引き続き上場企業で高いガバナンス意識をもつ組織でのキャリア継続を希望し、転職を検討することとなりました。
JACのコンサルタントは、Mさんが内部統制・情報セキュリティ・ITガバナンスにおける実績を積み、さらに内部監査士やMBAといった資格を備えている点に注目。食品メーカーが求めていた「業務の実情を理解しつつ、J-SOX監査をリードできる方」という要件に、高い親和性があると判断しました。
結果として、Mさんは食品メーカーの内部監査部門にて、J-SOXチームを担うポジションへの転職を実現。年収も上昇し、より専門性を活かせる環境を手にすることができました。
※事実をもとにしておりますが、プライバシー保護のため、個人が特定されないように内容を一部変更しています。
J-SOX対応経験を活かした転職なら、JAC Recruitment
J-SOXは、財務報告の信頼性確保やガバナンス強化、リスク管理の高度化に直結する領域で、内部監査・内部統制に加え、システム監査や非財務情報の開示対応まで、包括的に対応する点が特徴です。
そのため、会計・統制の知識を基盤に、リスクアプローチの実務経験、IT全般統制やシステム監査の理解などのスキルが求められます。加えて、論理的思考や関係者を巻き込む調整力を兼ね備えていることも重要です。
こうした背景から、J-SOX関連の転職を成功させるには、制度改正の動向や各社の統制成熟度、事業構造を深く理解したエージェントの支援が不可欠です。
その点、JACには、J-SOXの最新動向や内部統制に精通したコンサルタントが多数在籍し、個々の強みを踏まえて最適なキャリアを提案します。さらに、一般には公表されていない非公開求人も取り扱っているため、新たなキャリアの可能性に触れる機会が多数あります。
J-SOX対応の経験を活かした転職をお考えの方は、ぜひJACにご相談ください。

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