IT戦略の転職事情｜年収相場や求められるスキル経験を解説

IT戦略は、企業成長を支える経営とテクノロジーの橋渡し役です。DX推進やAI導入など、全社的なIT方針を設計・実行し、競争優位性を高める役割を担います。特に近年は、生成AIやデータドリブン経営の拡大により、IT戦略スペシャリストの需要が急速に高まっている状況です。経営層と技術部門の双方を理解し、変化に対応できる知見が求められるため、専門性とビジネス視点を兼ね備えた専門家が注目されています。

本記事では、JAC Recruitment（以下、JAC）のコンサルタントがIT戦略の年収相場や求められるスキル・経験を解説します。

IT戦略の転職動向

IT戦略の転職市場は、DX推進やAI導入を背景に需要が急増しています。その採用の背景には、営業系CX領域のスタッフ不足、ハード・ソフトの刷新、2030年を見据えたIT整備など、専門領域の必要性やIT基盤強化といった経営課題があります。

この背景を踏まえ、IT戦略には「変革の担い手」としての役割が期待されています。DX推進による業務改革やAI・クラウド活用による競争力強化、組織再構築やスタッフ育成、グループ全体のIT統制・データ基盤整備などがその一例です。業務範囲は、システム企画（課題抽出・要件定義・グランドデザイン）、プロジェクトマネジメント（計画・進捗管理・ベンダーコントロール）、組織マネジメント（部門再編・スタッフ育成・役割定義）に加え、社内外連携、運用・保守・セキュリティ、新技術導入など多岐にわたります。

当社の転職成功者の事例においても、業務・システムの両面から経営変革を支え、複数拠点やグループ会社のIT推進役を担ったケースが多く、単なる「IT担当」以上の価値が際立っています。IT戦略は、企業内外のステークホルダーと連携し、未来の事業成長を支える基盤を構築する「変革のエンジン」。市場動向からも、こうした全社的改革の推進役に対するニーズは高く、企業の採用競争が激化しています。

IT戦略で求められるスキル・経験・マインド

IT戦略の転職市場では、以下のようなスキル・経験・マインドが求められます。

以下で詳しく解説します。

システム開発経験（要件定義〜運用まで）

システム開発の一連の工程を経験していることは、IT戦略の業務では必須です。特に要件定義や基本設計から、開発、導入、運用保守までプロジェクト全体をリードした経験は、現場課題の抽出や業務改革の実行力に直結します。複数部署の調整、ユーザー目線の設計、多様なベンダーの管理も伴うため、全体最適化の視座が磨かれることが理由です。

ERP・SCM・PLMなど基幹系システム導入経験

基幹業務システム（ERP、SCM、PLMなど）の導入経験は、全社の業務プロセスやデータ基盤を理解し、経営課題をシステム化する力につながります。特にIT戦略の場合、既存業務の棚卸し、業務設計、カットオーバー、運用定着まで一貫して推進した実績が重視される傾向にあります。また、海外子会社やグループ展開を含む大規模導入では、多言語・多通貨対応やグローバル標準化対応も重視されます。

プロジェクトマネジメント力（PM/PMO経験）

IT戦略の転職市場では、DX推進やITインフラ刷新など大規模プロジェクトにおいて、進捗管理やリソース配分、ベンダーとの交渉、リスク管理まで主体的に進めた経験が高く評価されます。実際に部門横断プロジェクトのリーダーやPMOとして、多様なステークホルダーと調整しながら工期・品質・コストを最適化する力が求められます。また、PDCAサイクルの活用や計画修正力も重要な素養です。

クラウド・AI・データ活用推進経験

Microsoft 365や各種クラウドサービス導入、AI活用の企画・設計・実装経験は、近年のIT戦略には欠かせません。クラウド化によるITコスト削減・業務効率化、AI/データ分析による新しい業務価値創造など、最新技術を経営課題に応用できる企画・推進力が重視されます。また、SaaSの選定・運用管理や自社データ基盤の構築・ガバナンス整備も代表的な実例です。

組織マネジメント・ステークホルダー調整力

IT戦略は技術力だけでなく、組織横断でスタッフ育成や役割定義、部門再構築などの組織マネジメント能力も必須です。特に、多様なバックグラウンドをもつスタッフや社外パートナーと協働し、経営層向けの英語による提案資料作成や、調整・交渉を担う場面もあります。コミュニケーション力と戦略的思考によって、社内外の変革を力強く推進できる方が理想です。

IT戦略の想定平均年収は824.5万円

JACの実績※では、IT戦略の平均年収は約824.5万円です。年収のボリュームゾーンは700万円～1,200万円となっています。下記の表は年代別の平均年収ですが、企業規模や担当する領域、これまでのご経験によって、20代でも年収が800万円程度のケースや30代・40代で年収1,500万円以上のケースもあります。

年代	平均年収
20代後半	603.3万円
30代前半	696.0万円
30代後半	862.4万円
40代前半	876.5万円
40代後半	901.2万円
50代以上	893.9万円

役職別年収

役職	平均年収
メンバークラス	738.9万円
管理職	1,002.0万円

企業別年収

企業別	平均年収
日系企業	817.6万円
外資系企業	938.3万円

※当社実績（2023年1月～2025年9月、想定年収）より

IT戦略の最新求人情報

本章では、IT戦略の最新転職・求人情報を紹介します。

●大手BIG4総合コンサルティングファーム：IT戦略コンサルタント

●大手グローバルファーム：IT戦略コンサルタント

●大手グローバルファーム：IT戦略コンサルタント(Global/M&A IT Service)

●日系グローバル企業：IT戦略・企画

●楽天銀行株式会社：IT戦略／各種CoE担当(IT企画／ITアーキテクト／組織開発／ガバナンス／テックリード)

●株式会社三菱UFJ銀行：【システム企画部】IT戦略策定・企画管理担当

●富士フイルム株式会社：IT戦略企画立案/実行マネジメント・推進 – 業務DX（アプリ）

JACでは取り扱う求人の約7割が非公開求人であり、本章で紹介している求人は、JACが取り扱う求人の一部です。非公開求人も含め自身の適性やキャリアビジョンに合う求人の紹介を受けたい方は、ぜひJACにご登録ください。転職支援のプロであるコンサルタントが、丁寧なヒアリングを通じて適性やご希望に沿う求人をご紹介いたします。

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※求人の募集が終了している場合もございます。ご了承ください。（2025年12月最新）

IT戦略への転職で有利となる資格

IT戦略の転職市場では、以下の資格を取得しておくと有利になる場合があります。

ここから、各資格について解説します。

ITストラテジスト

ITストラテジストは、情報システムの企画・戦略立案に関する国家資格で、IT戦略と経営戦略の橋渡し役として有利です。  IT部門の経営層やプロジェクト推進担当者を目指す場合、取得により企業からの信頼度や評価が一段と高まります。

受験には高度な知識と実務経験が求められ、合格率はおよそ15％前後と難易度は高めです。学習期間の目安は3～6カ月です。

参照：独立行政法人 情報処理推進機構「ITストラテジスト試験」

PMP（Project Management Professional）

PMPは、国際的に認知度の高いプロジェクトマネジメント認定資格です。IT戦略の転職市場で、大規模プロジェクト推進やグローバル案件の経験をアピールするうえで、大きな強みとなるでしょう。  世界中の企業で評価される資格のため、転職市場で非常に有利です。

受験には実務経験と研修受講（35時間以上）が必須で、勉強時間は100〜200時間が一般的です。難易度は高めですが、計画的に対策すれば合格を目指せます。

参照：一般社団法人 PMI日本支部「PMP資格について」

SAP認定コンサルタント

SAP認定コンサルタントは、SAP ERPの導入や構築にかかわる高度な知識と技術を証明できる資格です。大手企業やグローバル企業のIT戦略部門への転職で特に有利でしょう。

実務経験がある場合、1〜2カ月程度の集中学習で合格を目指せますが、未経験の場合は数カ月の対策が必要です。試験の難易度は高く、専門分野ごとに複数の資格が用意されています。  

参照：SAP「SAP 認定資格」

情報処理安全確保支援士（SC）

SCはITセキュリティに特化した国家資格で、企業のセキュリティ戦略やリスクマネジメント推進において重視される傾向があります。  近年は、ゼロトラストやクラウドセキュリティ領域での活躍も期待され、転職や昇進時の高評価ポイントとなります。

ただし合格率は20％前後で、200時間以上の学習が推奨される難関資格です。

参照：独立行政法人 情報処理推進機構「情報処理安全確保支援士試験」

TOEIC

グローバル案件や外資系企業、海外拠点をもつ企業では、TOEICスコアが英語力の指標となり、評価対象にもなります。IT戦略職の場合700点以上、できれば800点を目安にすると大きなアドバンテージとなります。

取得のための学習期間はスコアや英語力によりますが、半年〜1年かけて対策するケースが一般的です。英語による提案・報告資料の作成や、多国籍チームとの協働に必須のスキルです。  

参照：IIBC「TOEIC」

IT戦略のキャリアパス

IT戦略のキャリアは、企業変革やデジタル化が加速する近年、幅広い選択肢と成長の機会があります。専門性・マネジメント・戦略思考が求められる環境下で、自身の志向や経験によって幅広いキャリアパスを描けるのが最大の特徴です。ここでは5つのキャリアパスをご紹介します。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは企業の課題解決や戦略立案を支援する役割です。論理的思考力やクライアントの業界理解、提案力に加え、高いコミュニケーション力を備えた志向の方が向いています。

まずはITエンジニアや情報システム部門で実務経験を積み、業務分析やプロジェクト推進を経験することで、ITコンサルファームや事業会社のIT戦略部門へステップアップできます。さまざまな案件を通じて知見を広げながら、コンサルタントからシニア・マネージャー職へ昇進する道もあります。

CIO（Chief Information Officer）

CIOは企業のIT戦略をトップで担う役職で、経営視点と高度なIT知識の両方が求められます。経営層との折衝やリーダーシップを発揮したい志向の方に適しています。

キャリアのスタートはITエンジニアや情報システム部のリーダー職、ITコンサルタントでマネジメント経験を積み重ね、経営企画や社内DX推進にかかわるプロジェクトに参画しながら、部門長や役員ポストへと昇進するのが一般的です。

ITストラテジスト

ITストラテジストはITと経営の橋渡しをし、事業成長に貢献する分析型リーダーです。経営課題の解決やIT投資判断を担う俯瞰的な視点と、論理的かつ体系的な戦略構築志向の方に最適です。

システム企画、ITコンサル、プロジェクトマネージャの経験を積むことでキャリアを重ねられます。資格取得を機に経営層や責任者ポジションへの登用も狙えます。

DX推進

DX推進は、デジタル技術による変革を牽引する役割です。新技術志向、柔軟な発想力、多様な現場の声を取り入れる姿勢が求められます。

キャリアステップとしては、IT部門や事業企画部門で業務効率化やデータ活用プロジェクトにかかわり、IT・デジタル戦略の企画推進やDXプロジェクトリーダーとして経験を蓄積します。ITコンサルやCDOへの昇進も現実的です。

情報システム部門長

情報システム部門長は、企業全体のIT環境や基盤整備を統括するポジションです。 管理志向・プロジェクト推進力・組織づくりへの意欲が求められます。

まずは社内SEやIT部門でヘルプデスクや運用保守、システム企画に携わり、その後プロジェクトリーダー・マネージャーを経験します。部門全体の最適化や、グループ会社・拠点と連携したIT改革をリードする管理職が目指せるでしょう。

IT戦略の転職を成功させる5つのポイント

IT戦略の転職を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

ここから、各ポイントについて解説します。

1.事業成長を見据えた“IT投資戦略”の明確化

IT戦略の転職市場では、単に技術導入を語るのではなく、自社やグループ全体の事業成長にIT投資方針をどのように直結させるかを明確にできる力が重視される傾向があります。例えば「中長期の事業目標に基づくIT基盤刷新」や「新規DXプロジェクトのROI最大化を設計・実行した実績」など、経営や事業企画に踏み込んだ提案型経験が強みとなります。

2.グローバル展開やM&A・統合案件の推進経験をアピール

IT戦略では、国内外グループ企業のIT体制統合や、M&A後のシステム統合プロジェクトなど、多拠点・多国籍な環境で発揮される変革推進力が求められます。そのため、英語力や多言語システムの導入経験、大規模PMOとしてのガバナンス管理実績を具体的に提示できる方は、特に上級戦略職で評価されます。転職活動では、こうしたグローバル案件や統合経験を具体的に提示することが重要です。

3.社内外のステークホルダー統合力とITガバナンス構築経験を提示

企業全体のIT戦略ポジションでは、経営層から各事業部、外部ベンダーまで、どれだけ広範な利害関係者と合意形成・調整を担ったかが鍵です。具体的には「全社IT統制や内部監査、コンプライアンス強化」「海外パートナーとの共同開発体制を主導」など、横断的なガバナンス構築と意思決定に関与した事例を示すことが、転職市場での評価につながります。

4.技術選定およびITロードマップ策定のリーダー経験を訴求

IT戦略の転職市場で有利なのは、単なる技術者ではなく「AI活用」「SaaS最適化」「ゼロトラスト導入」など、技術の選定から実装・展開まで主体的にロードマップ設計を担った経験と、その過程での意思決定ストーリーです。特に、技術調査からPoC、全社導入までを主導した実績が高く評価されます。

5.転職エージェントの活用

転職エージェントの活用は、成功率を高める有効な手段です。IT戦略領域は一般公募されない、非公開の戦略プロジェクト求人が多いのが特徴です。そのため、業界ごとに得意分野をもつJACのような転職エージェントを活用することで、「グループIT統括」「DX推進責任者」「CIO補佐」「M&A後のIT統合リーダー」などの独自ポストにリーチすることが可能です。

IT戦略の転職事例

ここからは、JACを活用してIT戦略へ転職した事例をご紹介します。

Uさん（40代後半/男性）

	業種	職種	年収
転職前	化学（塗料製造）	IT統括マネージャー	1,100万円
転職後	素材（金属、セメント、化学品など）	DX戦略企画マネージャー	1,400万円

Uさんは、ITコンサルティングファームでERP導入支援や業務改革を手がけたのち、外資系メーカーや化学業界でシステム企画・SCM領域のマネジメントを歴任。前職ではグループ全体のシステム構想を担い、事業横断的なデジタル化を推進してこられました。社内外のステークホルダーを巻き込み、変革プロジェクトを推進した実績があります。

JACのコンサルタントは、Uさんの「経営視点からDXを推進したい」という志向と豊富なコンサル・事業経験を評価し、全社変革を掲げる総合素材メーカーのDX戦略企画ポジションをご提案。結果として、経営改革の中枢で事業構造の再設計に携わる、さらなるキャリア成長の機会を得る転職となりました。

IT戦略への転職なら、JAC Recruitmentへ

JACでは、IT・DX・コンサルティング領域に精通した専門コンサルタントが、戦略立案から実行までを担うITプロフェッショナルのキャリアを支援しています。単なる求人紹介にとどまらず、業界動向やDX投資方針、経営層の課題意識を踏まえた提案を行うことが特長です。

また、JACは企業と転職希望者の双方の状況を深く理解したうえで、戦略的なキャリア形成を支援します。大手事業会社のCIO・CDOポジションや、IT企画・DX推進部門など、経営に近いポジションでの実績も豊富です。

IT戦略の経験を活かし、より経営視点のキャリアを目指す方は、ぜひJACにご相談ください。