かつて国家主導だったロケット開発は、現在では民間企業が主導し、小型・低コストなロケットの開発が急速に進んでいます。宇宙産業の成長に伴い、転職市場でも注目が集まっています。
本記事では、ロケット開発企業への転職を目指す方向けに、JAC Recruitment(以下、JAC)が宇宙関連業界の市場動向や主なロケット開発企業を解説します。
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ロケット開発企業とは?
ロケットは、人口衛星や探査機を宇宙空間に運ぶ装置です。そのロケット開発の企業として、ロケット本体の設計や開発を行う企業のほか、ロケットに搭載する装置の開発・設計に関わる企業、ロケット打ち上げ用のシステム開発に関する企業などを解説します。
ロケット開発の市場規模
日本におけるロケットは、国立研究開発法人であるJAXAが中心となって進められてきました。しかし、日本の基幹ロケットである「H-ⅡAロケット」や「H3ロケット」の製造には、民間企業が深く関わっています。さらに、現在では、独自にロケット開発を進める企業も登場するなど、ロケット開発市場は急成長市場として各国の企業から注目を集めています。
経済産業省では、ロケット開発を含め、2024年時点の世界の宇宙産業の規模は54兆円であるとしています。そのうち、政府予算によるものが1/4を占めているものの、残りの3/4は民間衛星サービスや衛星用地上機器などに関するものとなっています。このデータからも、宇宙開発の主役が政府から民間に確実に移行しつつあることが分かります。
さらに、モルガン・スタンレーによる世界の宇宙産業の市場規模は2040年までには140兆円規模に上ると予測されています。この予測は宇宙関連産業全体の市場規模でありロケット開発単体のものではありませんが、宇宙産業の成長にともない、ロケット開発のニーズも今後確実に高まっていくと考えられます。
政府の取り組み/ロケット開発企業のトレンド
政府は基幹ロケットの開発だけでなく、民間ロケットの開発支援も積極的に行っています。また、近年では再使用可能ロケットや小型ロケットの開発が、ロケット開発における主要なトレンドとなっています。
基幹ロケットの民間移管
政府は、2002年から基幹ロケット開発の民間移管を進めており、2007年からはH-ⅡAロケットは三菱重工が打ち上げを担ってきました。
H-ⅡAロケットの後継機であるH3ロケットも、民間企業である三菱重工を主体に開発・製造が行われています。また、慣性センサや誘導ソフトウェア、ターボポンプ、ガスジェット、固体ロケットブースターなどの重要技術も、専門性の高い民間企業が開発を担当しています。このように、ロケット開発の主な担い手は民間企業へと移行しています。
宇宙開発計画とSBIR制度
2020年以降、アメリカや中国におけるロケット打ち上げ数が大幅に増加しています。一方、日本のロケット打ち上げ数は停滞しているのが現状です。今後、日本でのロケット打ち上げ数を増やすため、宇宙開発基金やSBIR制度などを通じて、民間企業によるロケット開発の支援が進められています。
SBIR制度はスタートアップ企業の研究開発を促進する制度です。文部科学省ではSBIRフェーズ3基金事業として、民間ロケットの開発・実証、スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証を行うスタートアップ企業への支援を実施しています。
再使用可能ロケットの開発と小型打ち上げロケットの需要の増加
従来の使い捨てロケットではなく、繰り返し利用できる再使用可能ロケットの開発が世界中で進められています。再使用化が進むと、打ち上げコストが低減し、打ち上げ頻度を高められるといったメリットを得られるためです。
さらに、衛星の小型化によって小型ロケットの需要も高まっています。衛星やロケットが小型化したことで、市場に新規参入しやすくなりました。しかし、衛星の打ち上げ需要が増えている一方で、ロケットの供給が追いついていません。このような状況を受けて、各国では新たに宇宙輸送に参入するベンチャー企業などへの支援が進められています。
研究開発の対象からビジネスの対象へ
当初、研究の対象であった宇宙は、現在ビジネスの対象に変わりつつあります。世界中のさまざまな企業がロケット開発に参入し、国際競争は激化しています。2024年のロケット打ち上げ回数は250回を超え、その過半数をアメリカのスペースX社が占めるなど、宇宙は民間企業にとって、大きな可能性を秘めた新たな事業分野になっているのです。
人工衛星の打ち上げ数も年間2,000基を超える中、人工衛星を運ぶロケットのニーズも高まり、ロケット開発はベンチャー企業でも新規参入しやすい分野として大きな注目を集めています。

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ロケット開発企業の主な企業一覧
ロケット開発に関わる主な企業を10社紹介します。
三菱重工業株式会社
三菱重工業株式会社は、大型基幹ロケットであるH3ロケットのプライムコントラクタです。また、ロケットエンジンの開発だけでなく、ロケットの組立や発射に必要な射点設備の製作も手がけ、打ち上げまでを一貫して担う宇宙輸送サービスを提供しています。このような幅広い取り組みにより、三菱重工業は長年にわたり日本のロケット開発をリードしてきました。
さらに、小型衛星や衛星推進システム、観測機器などの開発にも取り組んでいます。
株式会社IHI
株式会社IHIも、先に紹介した企業と同様に、大手重工業メーカーです。古くから宇宙開発に関わっており、ロケットエンジンの心臓部であるターボポンプやガスジェット装置の開発・生産を得意としています。H-ⅡAロケットやH-ⅡBロケットでは、ターボポンプやロケットブースター、さらには2段ガスジェット装置の開発・製造を担当。H3ロケットのターボポンプ開発・製造は、IHIが担っています。
株式会社IHIエアロスペース
株式会社IHIエアロスペースは、ロケット開発を専門とする総合メーカーです。固体燃料ロケットの技術を応用し、化学観測用や実用衛星の打ち上げ用ロケットを開発しています。また、イプシロンロケット、HⅡ-Aロケット、HⅡ-Bロケットに加え、H3ロケットにおいても固体ロケットブースターやガスジェット装置の開発も手がけます。
川崎重工業株式会社
川崎重工業株式会社も、航空宇宙事業に注力しています。特に、ロケット打ち上げ時に衛星を風圧や振動から守るフェアリングの製造に強みがあります。H3ロケット用の衛星フェアリングの製造も担っており、さまざまなサイズの衛星を打ち上げるニーズに対応できる技術を有しています。
そのほか、ロケットの射点設備の開発・設計・施工も行っており、種子島宇宙センターのロケット射点設備は、川崎重工が開発から設計、施工までを担当したものです。
インターステラテクノロジズ株式会社
インターステラテクノロジズ株式会社は、日本を代表する民間宇宙輸送サービスの提供企業です。民間企業単独で初めて宇宙空間への到達を達成した観測ロケット「MOMO」を開発しました。小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発も進められています。
さらに、自社グループで衛星コンステレーションの構築も行っており、ロケット事業と通信衛星事業を一体的に展開する垂直統合型ビジネスを目指しています。
スペースワン株式会社
スペースワン株式会社は、専用の射場から人工衛星搭載ロケットの打ち上げを行う日本初の民間企業です。キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の4社の共同出資で設立されました。契約から打ち上げまでを世界最短で進めることを目標としており、また、打ち上げ回数でも世界最高水準の頻度を目指しています。日本初の民間発射場として、和歌山にスペースポート紀伊を建設し、運用が開始されています。
株式会社SPACE WALKER
株式会社SPACE WALKERは、東京理科大学発のスタートアップ企業です。持続可能な宇宙輸送手段の提供に向け、再使用可能かつクリーン燃料使用の2つの要件を満たし、環境と経済の両立を目指した有翼式再使用型ロケット(サブオービタルスペースプレーン)の開発を行っています。
SPACE WALKERでは、燃料としてカーボンニュートラルな液化バイオメタンを採用しており、軽量かつ安全性の高い極低温液体複合素材タンクも開発しました。この技術は、水素などのクリーンエネルギーを貯蔵・輸送するための超高圧ガス複合素材タンクの開発にも応用されています。また、モビリティ分野におけるカーボンニュートラルの推進にも貢献しています。
イーグル工業株式会社
イーグル工業株式会社は、ロケット用エンジンシールの研究開発・生産を行う企業です。HⅡ-AロケットやHⅡ-Bロケット、H3ロケットにもメカニカルシールをはじめとした各種シールが採用されています。また、アメリカのスペースシャトルの後継機エンジン用シールの開発にも参加するなど、イーグル工業の高いシール技術は国際的にも高く評価されています。
ロケットだけでなく、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」のアキュムレーター、人工衛星のバッテリー部品などの開発にも取り組んでいます。
三菱電機ソフトウェア株式会社
三菱電機ソフトウェア株式会社は、創業当初から宇宙開発に取り組んできた企業です。基幹ロケットの航空誘導技術や人工衛星のシステム開発、熱・構造解析、運用支援などにおいて、高い技術力と豊富な実績を誇っています。
航空誘導ソフトウェアや飛行シミュレータ、人工衛星や宇宙機の開発、さらに人工衛星の画像処理など、幅広い分野で事業を展開しています。また、H3ロケットに搭載されるロケットシステムの誘導ソフトウェア開発も担当している企業です。
日本航空電子工業株式会社
日本航空電子工業株式会社は、コネクタなどの電子部品や航空・宇宙用電子機器の製造販売を行う企業です。創業以来、独自に開発してきた加速度計やジャイロ、その応用製品は、飛行機やロケット、惑星探査機などに幅広く利用されています。
H3ロケットを衛星の軌道投入地点まで導く慣性センサユニットの開発・製造を担当しているのも日本航空電子工業です。
ロケット開発企業で働くメリット・デメリット
民間企業によるロケット開発は世界各国で進められており、ロケット開発ビジネスのニーズは確実に高まっています。日本政府も民間企業のロケット開発を積極的に支援しており、資金調達も積極的に進められています。
さらなる隆盛が期待されるロケット開発企業へ転職する際には、この業界で働く魅力や注意点も把握しておくべきです。ロケット開発企業で働くメリットやデメリットをいくつか紹介します。
ロケット開発企業で働くメリット
ロケット開発企業で働く場合、主に次の3つのメリットがあります。
宇宙をフィールドとした壮大なプロジェクトに関われる
ロケット開発は、国際競争の激しい宇宙産業の中でも特に競争が厳しい分野です。また、宇宙という壮大な環境へ挑戦するプロジェクトに参画できます。
宇宙空間は未知の領域が多く、シミュレーションも困難です。そのためロケット開発は難易度が高い一方、挑戦のやりがいは非常に大きいといえます。
最先端技術を活用する刺激的な世界で成長できる
ロケット開発には、さまざまな分野の最先端技術が活用されており、高い専門知識を有する技術者との協働から大きな刺激を得られます。常に新しい知識を学び続ける必要もあり、自身も大きく成長でき、学びを深める機会も豊富です。
世界が注目する産業であり、スキルアップのチャンスが豊富なロケット開発企業での経験は、世界市場で活躍するチャンスにもつながるでしょう。
チームの一体感と打ち上げ成功時の大きな達成感
ロケット開発では、さまざまなチームや企業と協力し、プロジェクトを進めるケースが多いといえます。どのようなポジションでロケット開発に携わっていても、チーム全員がロケットの開発と打ち上げの成功という共通目標に向かって協力し合う環境です。開発したロケットの打ち上げ成功時に、大きな達成感やチームの一体感を味わうことができるのも、ロケット開発企業で働く大きな魅力です。
ロケット開発企業で働くデメリット
ロケット開発は壮大なプロジェクトであり、ほかの業界では得られない大きなやりがいがあります。ただし、宇宙へロケットを打ち上げるという難しいミッションであるため、プレッシャーも大きくなります。長い期間をかけた準備も、わずかなミスで失敗につながる可能性があり、常に緊張感をもって業務に取り組む必要があります。
また、さまざまな分野の先端技術が必要なため、チーム間の密接な連携が求められます。多くの部門が関係することで、異なる専門分野の担当者同士の意見がぶつかり、部門間の調整に時間がかかる場合も少なくありません。
計画どおりにプロジェクトが進まないことも多く、予期せぬトラブルが発生した際には、その対応のために長時間労働が必要になる場合もあります。
ロケット開発企業への転職ならJAC
基幹ロケットの民間移行も進み、ロケット開発の主体は民間企業に移っています。また、小型衛星の打ち上げニーズが高まっていることから、小型衛星専用の打ち上げロケット開発に挑む民間企業も増加傾向です。大手企業は基幹ロケットを中心としたプロジェクトに関わることが多く、ベンチャー企業は小型ロケットの開発に注力する傾向があります。
ロケット開発企業への転職を検討する際は、目的を明確にし、キャリアの方向性を見極めることが重要です。JACでは、大手企業からベンチャー企業まで、多くのロケット開発企業の求人を取り扱っています。転職サポート実績を豊富にもつコンサルタントが、これまでの経験や理想のキャリアをお伺いしたうえで、最適な求人を紹介します。
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