近年、ガバナンスの高度化を背景に、内部監査の役割は経営の戦略的パートナーへと進化しています。50代の内部監査職の転職は容易ではないものの、豊富な経験と多面的な視座をもつスペシャリストへのニーズは高まっており、転職事例も増加傾向です。特に、監査を統括するリーダーシップ、CIAなどの国際資格に裏付けられた専門性、および経営に資する提言力が求められます。
本記事では、JAC Recruitment(以下、JAC)が保有する転職支援データをもとに、50代の内部監査における年収水準、求められるスキルや経験、成功のポイントを解説します。
目次/Index
50代の内部監査転職は難しいのか?現状と求人の傾向
高い専門性が求められる内部監査職の転職は容易ではないものの、リスク管理意識の高まりや、労働人口減少の流れもあって、50代の転職事例が増加傾向にあります。
その背景には、ガバナンス強化があります。大手企業においても、子会社などで不正や法令違反が相次ぎ、グループ企業、あるいはM&Aにて買収した企業とのリレーション構築も兼ねて、内部監査を強化する動きが増えてきています。
以前は、専門性の高い「会計監査」や「IT監査」の求人が中心で、「J-SOX対応」が主要なキーワードでしたが、最近では「業務監査」へのニーズが大幅に増加しています。各事業部門の状況を把握分析し、潜在的なリスクを洗い出すことで、事前に危機を回避する機能が求められています。

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50代ハイクラス転職の実情ー成功のポイントや年収傾向などを解説
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50代の内部監査転職で求められるスキルや経験・マインドについて
40代までとは異なる視点で、50代に求められるスキル・経験を3つの観点で解説します。
・監査を統括するリーダーシップ
・国際資格や高度知識に裏付けられた専門性
・経営に資する提言力と改善マインド
1.国内外を含む監査リーダーとしての統括経験
50代では、単なる監査実務の遂行にとどまらず、複数拠点や海外子会社を含む監査をリードし、全体を統括する力が求められます。こうした経験は、監査部門を『組織運営に貢献する機能』として位置づける重要な要素です。
特に、以下のような経験が評価される傾向にあります。
| ・国内外拠点を対象とした監査計画の立案と実行 ・グループ横断的な内部統制の整備・強化 ・監査チームを率いて改善提言まで導くリーダー経験 |

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2.専門資格や高度な知識に裏付けられた専門性
50代内部監査では、国際的に通用する資格や高度な知識を有する方が高く評価される傾向です。特に、以下の資格や知識が重視されています。これらは「即戦力」として監査領域にとどまらず、リスク管理や経営判断に直結する強みとなっています。
| ・CIA(公認内部監査人)、CISA(公認情報システム監査人)などの国際資格 ・MBA、CFE(公認不正検査士)など経営・不正対応に関わる資格 ・ITリスク管理、サイバーセキュリティ、システム監査の専門知識 |
さらに、グローバル企業や海外拠点をもつ企業では英語力の有無が大きな差別化要素に。監査報告書の英語作成や海外子会社とのコミュニケーション、国際会計基準への理解など、多様な場面で英語での専門的なやりとりが必須となるため、資格や専門知識に加えて実務で使える英語力を備えることがキャリア形成において欠かせません。

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3.経営視点をもった提言力と改善マインド
50代に期待されるのは、監査結果を報告するだけでなく、経営課題に踏み込み解決策を提示する姿勢です。理由としては「監査スタッフ」から「経営のパートナー」へと役割がシフトしていることの表れであり、以下のような50代内部監査の転職成功に共通する重要なポイントです。
| ・経営層に対してリスクを踏まえた改善提案を行う力 ・内部統制・業務フローを改善し、組織全体の効率化を推進するマインド ・長年の経験を活かし、問題を本質から捉えて変革に結びつける力 |

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内部監査50代の平均年収は1,062.9万円
■50代全体の平均年収
| 1,062.9万円 |
■役職別平均年収
| 役職区分 | 平均年収 |
| 課長未満 | 986.6万円 |
| 課長以上 | 1,068.0万円 |
| 部長以上 | 1,117.8万円 |
JACの実績データによると、内部監査職における50代の平均年収は1,062.9万円。これは一般的な内部監査職40代平均(700万円)と比較して約350万円高く、マネジメント経験や専門性の深化が報酬に反映されていることがうかがえます。
役職別に見ると、課長未満で986.6万円、課長以上で1,068.0万円、部長以上では1,117.8万円と、役職の上昇にともない年収も着実に増加。特に部長クラス以上では、全社的な意思決定や戦略遂行に関与する責任の重さが高い処遇につながっていると考えられます。
マネジメント能力や戦略推進責任が報酬に直結する点は、内部監査職のキャリアにおける特徴の一つといえるでしょう。
■転職者が多い職種別平均年収(抜粋)
| 職種名 | 平均年収 |
| システム監査 | 1,221.8万円 |
| 会計監査 | 725.7万円 |
| 業務監査 | 1,070.6万円 |
上記のデータからは、ITや金融・企画関連などの高度な専門職が高年収帯に多く集まっていることが分かります。特にシステム監査や業務監査といった分野は、企業のDX化・ガバナンス強化の流れを背景に、求められる専門性の高さが市場価値や年収に直接反映されるのが特長です。
50代内部監査の転職理由とキャリアパス
50代内部監査職の方が転職を検討する理由として、最も多く見られるのは「経営層と内部監査に対する考え方が合わない」というものです。「現職の経営陣は危機管理意識が薄い。リスクに備え、監査を重要と捉える経営陣のもとで働きたい」という声がよく聞こえてきます。
また、「出張が多い」「業務が多忙すぎる」など、ワークライフバランスを整えたいとする希望もあります。
50代内部監査のキャリアパス
これまで準拠性監査だけを行ってきた方も、リスク管理への意識が高い企業に転職することで、リスクベース監査や経営監査、アドバイザリーなど、監査業務の質を高めていける可能性があります。
また内部監査職は、比較的長く働ける職種といえます。実際、JACでは、69歳の内部監査部長のリタイアにともない、次期部長候補の採用を支援している事例もあります。50代の方々は「部長候補」「室長候補」として迎えられ、一定期間を経て部長・室長に就任し、長く働くケースが多く見られます。
業界未経験での内部監査の転職について
「製造業」と「非製造業」の垣根を越えるのは容易ではありませんが、比較的、その枠組みのなかであれば業界未経験でも転職できる可能性はあります。
内部監査の転職に必要な資格

内部監査に転職するにあたり、資格は「必須」とされません。ただし、「公認内部監査人(CIA)」を取得していれば、内部監査について体系的な知識を有していることの証明となり、プラス評価につながります。
また、あらゆる企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するなか、情報システムの監査やセキュリティ・コントロールに関する指導的役割を担う「公認情報システム監査人(CISA®)」の取得を目指す人も増えています。
企業の選考においては実務経験が重視されますので、往査の経験、特に海外拠点での往査経験などは評価されますが、同等の実務経験者が複数候補いる場合、有資格者が優遇される可能性は高いです。

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50代の内部監査転職を成功させる3つのポイント
50代内部監査職の方が転職を成功させるために意識しておきたいポイントを3つご紹介します。
成功ポイント【1】部門とのコミュニケーション経験をアピールする
選考では、監査対象となる部門とのやりとりの経験が着目されます。どのような課題を抽出し、部門とどのようにコミュニケーションを取りながら改善案や妥協案を提示していったのか、プロセスを整理して具体的なエピソードとともに伝えられるように準備しておくと良いでしょう。
成功ポイント【2】経営に提言した経験をアピールする
50代の方となれば、経営の視点も期待されます。「チェック」や「評価」を行うだけにとどまらず、経営に対して提言を行った経験があれば、積極的にアピールしてください。
成功ポイント【3】英語力・海外経験をアピールする
語学力(特に英語)がある監査職は重宝されます。海外での往査経験、英語を使ってローカルスタッフにインタビューを行った経験があれば評価されますので、少しでも経験があればアピールしましょう。
英語力や海外経験はどの企業でも求められるわけではありませんが、これらの強みがあると、求人の選択肢が広がり、選考通過率の高まりが期待できます。再雇用などで長く働くことが可能なポジションであることから、これから英語力を磨いても十分に役に立ちます。

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50代の内部監査転職でよくある質問と回答
50代の内部監査転職を検討する方々からいただく、よくある質問にお答えします。
Q. 出張頻度や業務量を減らしたいのですが、そのような転職は可能でしょうか?
A. 監査対象のグループ企業数や拠点数が少ない企業、または監査メンバー数が多い組織の求人を選びましょう。現在よりも出張頻度や業務量を軽減できる可能性があります。レポート作成をどの程度求められるかも、企業によって差があります。まずはコンサルタントに、どのような働き方を希望しているのかをお聞かせください。
Q. リモートワークができる企業の求人はありますか?
A. 監査法人などではフルリモートワークを導入している企業もあるほか、事業会社でも週1~2回、リモートワークができるケースも多く見られます。ご希望に応じて、リモートワークが可能な求人をご紹介します。
Q. 準拠監査だけでなく、リスク監査や経営監査にも携わっていきたいと考えています。それが可能な求人はありますか?
A. JACには、企業の経営陣から「リスクを意識した監査を強化していきたい」という相談が寄せられるケースが増えています。全般的に意識が高まっていますので、転職によって一段上の監査、質の高い監査を経験できるチャンスも増えているといえます。
50代内部監査職の転職成功事例
内部監査として転職に成功した50代の方の事例をご紹介します。
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 総合商社 | 内部監査 | 2,000万円 |
| 転職後 | インフラ系中小企業 | 内部監査 | 1,300万円 |
総合商社で内部監査を務めるSさん(50代後半/男性)は、定年退職を間近に控え、外部での活躍機会を求めて転職活動を開始されました。複数社に応募し、入社を決めたのが数百名規模のインフラ系企業・A社です。A社はもともと独立系企業でしたが、直近、大手企業の傘下に入ったことから内部監査の水準を高める必要があり、大手企業での内部監査経験をもつ方を求めていました。Sさんの前職とは業種も規模もまったく異なりますが、即戦力として高く評価。その後、採用に至りました
また、Sさんは転職によって大幅年収ダウンとなることを覚悟していました。それでも再雇用された場合、どの部署・職種に配属されるか分からなかったため、確実に内部監査経験を生かせる道を選択されました。そしてA社からは、当初想定していた年収額より数百万円上乗せした額を提示いただきました。SさんはA社から強く求められ、貢献できることに価値を感じ、入社を決意されました。
Fさん(男性/50代後半)
| 業種 | 職種 | 年収 | |
|---|---|---|---|
| 転職前 | 電機・電気機器 | 内部監査部課長 | 1,000万円 |
| 転職後 | 総合商社 | 監査部管理職 | 1,500万円 |
Fさんは大手メーカーで長年キャリアを築き、情報システム部門からスタート。海外拠点での駐在経験を含め、グローバルな業務を担ってきました。その後、内部監査にキャリアの軸を移し、国内外グループ会社を対象とした監査業務やチーム運営に携わるなど、幅広い実務経験を積み重ねてきました。
JACのコンサルタントは、Fさんの「グローバルな視点で業務を俯瞰できる力」と「内部統制に関する専門性」を高く評価。商社の監査部門における管理職ポジションを提案しました。現在は管理職として、グループ全体の内部統制強化や監査業務をリード。これまでに培った知見を活かしながら、変化の大きい事業環境に対応し、企業のガバナンス体制を支える役割を担っています。
内部監査の転職ならJAC
JACのコンサルタントは企業の幹部層と直接対話し、採用背景や求める人物像、選考で重視する要素など、求人票には書かれていないリアルな情報を多く入手しています。内部監査の方々は、転職先企業を選ぶにあたり、「経営陣の内部監査への考え方」に着目されているケースが多く、私たちは、その経営陣の内部監査に対する意識や本気度を直接伺っておりますので、転職希望者の希望・志向を踏まえ、さまざまな選択肢をご提案いたします。
選考プロセスにおいて、転職希望者の方が気になっていることを直接企業に質問しづらい場合も、企業と密に関係を築いている私たちが間に入ることにより、匿名性を保ちながら聞き出すことが可能です。転職希望者の方が納得して決断できるよう、価値ある情報をお届けします。
転職の意思がまだ固まっていない場合も、まずはお気軽にご相談ください。

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内部監査の転職事情
内部監査の求人が活発化しており、内部監査および内部統制の経験を持つ方に転職のチャンスが広がっています。内部監査の転職市場動向、求められる経験・スキル、年収相場、転職成功のポイント、転職成功事例などについて、JAC Rec… 続きを読む 内部監査の転職事情

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