年功序列から成果主義への移行、ジョブ型雇用の導入、M&Aや事業再編、リモートワークの拡大――さまざまな変化を背景に、人事制度や組織の変革・刷新に取り組む企業が増加。人事制度企画・組織開発を担う人材のニーズが高まっています。人事制度企画・組織開発職の転職市場動向に精通した、JAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが解説します。
目次/Index
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人事(制度企画/組織開発)の最新の転職市場動向
人事職の採用は全般的に活況です。特にニーズが高いのは「採用担当者」ですが、つまりは人材採用が活発化しているということであり、優秀な人材から選ばれるためには「人事制度」「組織体制/組織風土」も重要。そこで、人事制度企画や組織開発を担う人材も求められています。
制度や組織の変革が必要とされている背景には、事業環境や雇用の在り方の変化があります。各社、事業の再編を行うなかで、M&Aや新組織・新会社の立ち上げに際し、人事制度の見直し・整備に迫られるケースが多数見られます。
また、「ジョブ型」など新たな雇用制度の導入、年功序列型の人事制度から成果主義型の人事制度への移行を図る動きも加速しています。加えて、近年はリモートワークが拡大。新たな働き方に対し、人事評価や労務管理などを適応させていく必要があります。
今後、人的資本の情報開示なども強く求められるようになっていきますので、人事制度企画・組織開発を主導できる人材のニーズはより高まる可能性があります。
大手企業の採用動向
大手企業による人事制度企画・組織開発の採用においては、30代後半~40代半ばのリーダー~マネジャークラスが迎えられているケースが多く見られます。また、マネジャーと同等の待遇で「エキスパート職」として採用するケースも増えています。
会社全体で既存の制度や組織を大きく変えるというより、事業再編にともなう組織再編、M&A、子会社設立などに際して、制度や組織のスペシャリストを求めるケースが多いといえます。
中小企業の採用動向
中小企業の場合、「制度企画」「組織開発」の専任担当として採用するケースはほぼありません。採用や労務も含め、人事全般のマネジメントに対応できる即戦力人材が求められます。
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労務・労政 給与・社会保険分野の採用動向
転職マーケットの活発化により人材流動が加速していることから「退職者」「中途入社者」が以前よりも増加。こうした人の出入りに対応するため、労務・労政 給与・社会保険の担当者のニーズも発生しています。
M&Aなどで急激に従業員規模が拡大した企業が募集するケースも見られます。
労務関連の採用においては、全体の仕組みや実務を理解しており、業務改善(システムの刷新・導入、アウトソーシングの活用など)を主導できる方が求められています。
人事(制度企画/組織開発)の採用で求められる経験・スキル
人事制度企画・組織開発は、経営戦略・組織戦略の実現を担うポジションだけに、制度企画の経験はもちろんのこと、経営陣とのコミュニケーション、組織を横断してのコミュニケーションが重要となります。
具体的には、次のようなスキルが選考で重視されます。
「制度企画」の採用で求められる経験・スキル
●企画から運用までの経験
人事制度の「企画」フェーズから自身で手がけた経験、そして現場への導入を推進し、運用まで経験を持つ方が歓迎されます。選考においては、現行の制度をどう分析し、課題を発見したか、課題に対してどのような施策を打ち、どのような成果を挙げたかが問われます。
●各部門を巻き込み、連携する力
人事制度とは、人事部門だけで決めて運用できるものではありません。各部門の責任者とコミュニケーションをとり、円滑に導入するための協力を得る「巻き込み力」が求められます。
●経営の視点・経営陣との折衝力
人事制度は経営戦略とも直結するものだけに、経営陣と目線を合わせ、会社が目指す方向性を把握する必要があります。企画~導入のプロセスでは、経営陣との折衝力も欠かせません。
●「グローバル人事」の経験は付加価値が高い
グローバル展開を図る企業が多いなか、海外での人事経験があるとプラス評価につながります。海外拠点を立ち上げ、運営するにあたっての制度や仕組みづくりは、経験者が少ないだけに重宝されます。また、最近では海外の企業のM&Aを行い、その海外子会社との調整をしたという方ニーズが高いです。
すでにあるグローバル人事チームを増強するケースもあれば、これから取り組むにあたって主導できる人材を求めるケースもあります。
●日系企業が外資系出身者を求める採用が増加
日系の大手企業では、旧来の年功序列型人事制度から成果主義型の人事制度へ移行していく動きが見られます。これにともない、成果主義型の人事制度を経験してきた外資系企業出身者を対象とする求人が増えています。
従来は、日系企業が外資系から人事職を採用するケースはほとんど見られませんでしたので、新たなトレンドといえるでしょう。外資系での経験を生かし、日系企業の人事制度の変革に貢献したい方にとってチャンスが訪れています。
「組織開発」の採用で求められる経験・スキル
●採用企業が求める「組織」の運営経験
企業が「こんな組織を作りたい」という構想を持っている場合、すでにそのような組織を確立している企業で人事を務めてきた方が採用ターゲットとなります。「組織運営のノウハウを自社に導入してほしい」ということです。組織作りのフェーズから手がけてきた方であれば、尚歓迎されます。
●経営の視点
経営の視点を持って組織全体を俯瞰し、課題を発見する力、課題に対して効果的な施策を打てる力が求められます。
これまでの経験において、課題発見から施策実行のプロセス、その施策の成果が問われます。
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人事(制度企画/組織開発)の30代の転職事情
制度企画の採用においては、30代前半の方であれば、まずは採用なり労務なり、いずれかの人事領域でしっかり実務経験を積んだかどうかが見られます。そのうえで、制度企画の一部にでも携わった経験があれば、より評価される可能性があります。
30代後半では、より即戦力性が求められるようになります。制度企画の実務経験や実績があることに加え、一部分であっても主担当としてリードした経験があればプラス評価につながります。上長であるマネジャーと連携したり、メンバーに指導したりしながらプロジェクトを推進した経験が問われます。
人事(制度企画/組織開発)の40代の転職事情
40代では、マネジメント経験が求められるようになります。マネジメント経験がない場合も、専門業務のスキルが高い方であれば評価されます。マネジャーと同等の待遇の「エキスパート職」として迎えられるケースもあります。
人事制度企画は、経営戦略や事業戦略に直結するため、経営陣との協議・折衝の経験も重視されます。また、各部署の責任者とどのように連携をとってきたかも注目されるポイントです。
スタートアップやベンチャー企業などでは、これから人事部門の整備を進めるにあたり、CHROや人事部長のポジションを求めるケースもあります。人事の幅広い業務経験+マネジメント力が問われます。
人事(制度企画/組織開発)のキャリアプラン
採用や労務などを経て制度企画・組織開発まで手がけた方は、次のステップとして「人事マネジャー」「人事部長」など、より上位ポジションへ昇格していくのが一般的です。
一方、大手企業で制度企画まで経験を積んだ方は、準大手・中堅・中小企業などのマネジメントポジションに転職し、裁量権を持って制度の整備・変革などを担うことも可能です。
アーリーフェーズ、あるいはIPOの準備を進めるベンチャー企業で、「CHRO」「人事部長」などとして一から人事組織の構築に取り組む方もいらっしゃいます。
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