【動画解説付き】M&A業界の年収事情|4パターンに分けて解説

  1. M&A×企業インタビュー

公開日:2022/10/19 / 最終更新日: 2024/05/02

企業提携や事業継承に関するコンサルティングを行っている株式会社M&A DXの牧田社長へのインタビューの前編です。「FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)」、「PE(プライベートエクイティ)」、「事業会社」の4つに分けて、採用側の視点で、転職市場を解説しています。

-JAC Recruitment北郷
今回はさまざまな業種があるM&A業界の概要を簡単にご説明いただければと思いますので宜しくお願い致します。

-M&A DX牧田氏
M&A業界はいろいろあります。大きく分けると私たちみたいな「ブティック」と呼ばれている会社、あとは「FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)」、「PE(プライベートエクイティ)」、「事業会社」、の4つに分かれます。

それぞれどんな仕事をしてるかについて説明していきますと、

まず「ブティック」ですが、主に売り手と買い手の間に立つ仲介型の会社がほとんどです。営業手法も金融機関にルート営業して案件発掘するような会社もあれば、DMやテレコールをしてダイレクト営業する会社もあります。営業会社に近いようなイメージです。

次に「FAS」ですが、どちらかというと頭脳系、インテリ系なイメージの会社です。私は前職がデロイトトーマツという会社なのですが、デロイトトーマツもいわゆるFASという会社で、主にデューデリジェンス(企業の調査)、もしくは株価算定、ストックオプション算定などのバリエーション業務がメインとなります。よって会計系のファームがやっているケース多く、その中で売り手や買い手のFA(ファイナンシャルアドバイザリー)を行うといったイメージ。このようなFAをやっている会社もあるかなという感じです。

次に「PE」ですが、ファンドですので基本的には預かったお金で利益を出すのが仕事となります。良い投資先にバイアウト投資を行っていきます。ファンドだとベンチャーに数%お金を突っ込むということを行いますが、PEはどちらかというと50%超、多くの場合100%経営権を取得して、3〜5年でバリューアップをして売却することをやっています。案件発掘をするチームとバリューアップするチームに分かれてることも多いです。

最後に「事業会社」ですが、自社の経営企画室と呼ばれているようなところが担っているケースが多く、自社のM&A戦略の立案、投資の実行、投資後にいかにシナジーを出していくかというPMIなどに携わるケースが多いイメージです。

-JAC Recruitment北郷
たとえば、FASの会社とPEの会社、またはブティックの会社とFASの会社が一緒に協業するといったこともあるの
ですか?

-M&A DX牧田氏
たとえば、買い手はPEで、仲介しているのはブティック、このDD(デューデリジェンス買収監査)を行うのがFAS、といった座組みは結構あります。その他にも、売り手がブティック、買い手にFASというようなケースもあります。M&A業界では競合という概念があまりなくて、結構みんなでシェアし合おうとか、一緒に座組みして一つのM&Aプロジェクトを完遂しよう、といった文化が強いという感じですね。

-JAC Recruitment北郷
いかにお客様にとって良いサービスを協力しながらやっていくか、ということが大事ということですね。

-M&A DX牧田氏
そうですね。選ぶのはお客様なのでその中で選ばれる存在にどうなるかっていう戦いですね。

-JAC Recruitment北郷
ではですね、ここからが本題なのですが、やっぱりM&A業界というと「稼げる」というイメージがあるかと思います
が、実際はM&A業界の年収はどうなのか、という点について伺っていきたいと思います。

-M&A DX牧田氏
これも先ほどの4パターンに分けてお話ししていきます。

まず「ブティック」ですが、公表されている情報となりますが、M&Aキャピタルパートナーズという上場会社は、平均年収が2,500万、M&Aセンターで1,200万、上場している地方のM&A会社で大体700万円が平均と言われています。

どの会社でも多くは「固定給+インセンティブ」、この組み合わせで大体給料が決まるのがブティックの特徴です。先ほど平均という言い方をしましたが、私のまわりで年収1億円を超えている方はかなりたくさんいます。

反対にインセンティブの割合が大きいため、固定給だけ見たら500万円といったこともあるのがブティック業界です。

-JAC Recruitment北郷
激しいですね。

-M&A DX牧田氏
かなり激しいですね。それこそ保険業界や不動産業界ではないですが、やればやるほど儲かる、やらない人は儲からない。当たり前と言えば当たり前ですが、そのような業界です。

-JAC Recruitment北郷
会社によってインセンティブの比率は違ったりすることもあるんですか?

-M&A DX牧田氏
これは結構違っていまして、インセンティブの設計の仕方は当然各社ごとにまちまちですし、どことは言えないですけどアッパーを決めている会社もあります。そのため求職者から見れば、魅力的ではないように映っているかもしれません。ただし、インセンティブ設計まで面接時に細かく聞く人もそんなに多くないです。ですから、企業に聞きにくいことは転職エージェントに聞いてもらうのが良いと思いますね。

次に「FAS」ですが、あまりインセンティブという概念はなくて職位によって給与が決まるという感じです。いわゆるコンサル・スタッフと呼ばれている人達で5〜600万円からスタートします。たとえば、私の前職だとアナリストやシニアアナリスト、バイスプレジデントといったあたりがいわゆる管理職と呼ばれるところで、バイスプレジデント、シニアバイスプレジデント、ディレクター、パートナーという順で昇級していきます。一つ職位が上がるごとに2〜300万円位ずつ上がっていき、パートナーになると2,000〜2,500万円ぐらいからスタートとなります。スタートなので中には1億を超えている人もいます。

-JAC Recruitment北郷
パートナークラスになると何が年収の開きの要因となるのですか?

-M&A DX牧田氏
パートナーだと、やはり自分の部署でありチームの業績ですね。パートナーくらいになると業績連動の種類に近づいていくのですが、下位の役職の場合、業績連動の決算賞与はあるものの、個人インセンティブがない、といったイメージです。つまり、自分が1億稼いだからどうとかではなくて、部でいくらというような賞与体型になっています。

-JAC Recruitment北郷
他にもFASのビッグ4と言われるような会社があると思いますが、各社の特徴ってあるんですか?

-M&A DX牧田氏
そうですが、これはかなり違っていまして、一番規模が大きいのはデロイトトーマスファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)です。ただし、給料は多分ビッグ4の中で一番低いと思います。EY(アーンスト・アンド・ヤング) やPwCの方が給料は良く、EY、KPMGは結構DDが多くてFA機能は強化中っていうイメージです。なので、FAをきちんとやりたい、という人はデロイトトーマツがよいのかな、という感じはしますね。また、PwCは結構再生案件を行っているイメージです。しかも、負債総額何千億円といった大型の再生案件を行っています。そういった案件に触る機会はあまり多くないので、再生案件をやりたい方はPwCに行くのがよいという感じですね。

「PE」は基本的には年俸制・月給制です。コンサルで700万円といったところからスタートして、パートナーになると2,000万、3,000万を超えてスタートというイメージです。しかし、PEの場合固定報酬は生活費みたいなもので、彼らは自分たちもファンドにお金を入れるんです。この運用成果が良いと「キャリーボーナス」というものが発生します。これがかなり大きく1度で数億~10億円といったボーナスが発生します。彼らはキャリーで稼いでいくって感じですね。

「事業会社」は会社の規定に準ずるという形なので、あまりM&A業界っぽい給料というよりは、通常の事業会社の給与規定に従うのかなという感じです。

-JAC Recruitment北郷
本当に夢のある業界である印象ではあるのですが、M&A業界を目指したいという方にとって、資格や条件といったものはあるのでしょうか?

-M&A DX牧田氏
たとえば、保険業界の場合だと保険販売人や保険代理店の免許とか、資格を取らないといけないですが、M&A業界は資格や許認可が必要ではない商売ではないため、基本的に資格はいらないです。ただし、FAS系は会計系ですので、割と会計士や税理士が優遇されると言われています。

デロイトトーマツはそんなことはなかったです。デロイトトーマツでは、会計士は入れるんですが、会計士以外の人が入れないかというと結構入っていまして、私が退職した時で有資格者3割、無資格者7割とかでした。どちらが出世してるかというと、無資格者の方が出世しているんですね。営業マインドがあるとか、金融業界に明るいとかというところで割と無資格者の方がよかったりします。

-JAC Recruitment北郷
何が評価のポイントになるんですか?

-M&A DX牧田氏
これは「FAS」での話なのですが、FASのような会計系って難しい会社でして、監査法人もそうなのですが、スタッフ層のうちはいかにミスなく素早く上司と報連相をしっかり行いながら、ExcelやPowerPointといった作業が得意かどうかというところで評価されます。しかし管理職位となると急に「数字取ってこい」となるんですね。管理職は作業もしながら、もしくは作業者のレビューをしながら数字を取ってくることが求められます。

-JAC Recruitment北郷
営業的な要素も求められるわけですね。

-M&A DX牧田氏
有資格者の方って、作業系は得意なのですが営業系が苦手な方が多く、そのあたりで行き詰まるんですね。反対に金融業界の人は、営業はもうある程度こなしてきたものの、Excelワークとかが苦手、といった形でスタートするものの、コンサル業界で働いていくとだんだんと慣れてくるんです。慣れてきて営業になると羽ばたくという感じです。そしてパートナーは完全に数字での評価となります。

-JAC Recruitment北郷
バイスプレジデント以上を目指そうとすると、営業的なマインドや動き方が求められるんですね。

-M&A DX牧田氏
そうですね。その辺で有資格者は結構行き詰まってしまいますね。

>>>後編に続く

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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

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