【2024年】M&A業界 M&A仲介会社の転職市場動向

  1. M&A×転職市場動向

公開日:2022/10/06 / 最終更新日: 2024/05/02

今、注目が集まっているM&A仲介業界は、比較的歴史が浅い一方、事業承継や後継者不足に悩む企業が増加している背景から、急成長を遂げている業界でもあり、JAC Recruitment(以下、JAC)でお預かりしている求人数も、増加傾向にあります。

事業を売却したい企業と、買収したい企業双方の窓口となるM&Aコンサルタントには、M&A業務に関する知見以上に、高いコミュニケーション能力と営業力が要求されます。また、ハードワークである一方、インセンティブの金額が非常に高く、高年収が期待できる職種でもあります。

そのようなM&A業界への転職について、多くの成功事例を持つJACのコンサルタントが、M&A仲介会社の転職市場動向や平均年収、その先のキャリアについて解説します。


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M&A業界全体の動向


日本企業の後継者不在率は2020年時点で65.1%(帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査」2020年11月発表)と非常に高水準な状況が続いており、後継者不在による事業承継問題は顕在化しています。

M&Aは都市圏の企業では規模を問わず利用されてきた企業戦略の手段ですが、近年は地方の中小企業経営者にも認知が広がっています。廃業しか選択肢が無かった中小企業にとっては、M&Aは経営存続につながり、社員の雇用を守る最後の手段です。こういった背景から地方をカバーするM&A仲介会社の業績も好調です。

M&A仲介は大手のプレーヤーであれば大手企業同士の案件も手掛けますが、小規模な案件では年間の売上規模が1000〜2000万円程度の零細企業も対象となります。仲介会社ごとにも特色があり、大手に注力する企業もあれば1件でも多くのM&A案件に対応する企業や、特定の地域や業界に特化した企業もあります。

M&A仲介会社の転職市場動向


M&A仲介会社はM&Aコンサルタントの数が売上に比例するビジネスであることや、先に述べたような需要拡大から、各社とも積極的に中途採用を実施しています。しかし、採用要件のレベルは年々上がっています。

求められるスキル・経験

M&Aコンサルタントに求められる要件として外せないのは、業界を問わず営業マンとしてのトップセールスの実績です。加えて、財務諸表から数値分析ができる方であれば尚可という企業が大半です。
よく転職活動中の方からお問い合わせいただく「簿記2級の資格」について、入社前に必須としている企業は、ほぼありません。プラスに働くケースもありますが、入社時に資格を保有していなくても問題なく、ほとんどの方が入社後に取得されております。

仕事に対する価値観の面では少子高齢化に伴う後継者不足を解決したいという意識や、中小企業の経営者に寄り添える点が重視されます。それに加えて成果を上げて年収を上げたいという強いモチベーションも必要です。

どのような人材がM&Aコンサルタントに転職しているか

M&A仲介会社には各業界でトップセールスの実績を残した方が入社しています。メーカーや商社、MR、銀行、証券、生保・損保の代理店営業、広告など、当社のサービスを活用したさまざまな業界の方々が、M&A仲介会社に転職しています。

異業界からの転職の場合には、20代半ばから30代半ばでの転職が一つの目安となります。現職で高い営業成績を出し、さらに次のステップに進みたいという意欲を持った方には是非チャレンジしていただきたい業界です。

40代以降になると、企業は即戦力での活躍を求めるため、経験者採用が中心となります。業界在籍年数や案件数、実績をベースが評価のベースになり、マネージメント経験は必須ではありません。役職や待遇をアップして転職することで固定給のアップも見込めます。

M&A業界に転職するメリット・デメリット


M&A業界に転職するメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

1.高年収に繋がる
2.キャリアの幅が広がる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.高年収に繋がる

M&A業界への転職は、一般的に見て高収入なことで知られています。その理由としては、M&A業界はベース給与にプラスで、売上の一定金額であるインセンティブが支給されるためです。
このインセンティブは、会社ごとに売上の約10%〜25%と設定されており、このインセンティブの制度によって、結果的に高収入に繋がる可能性が高いと言われています。

2.キャリアの幅が広がる

M&A業界コンサルタントの業務範囲は広く、財務会計・税務・法律のほかに、経営について理解する必要があります。また、交渉やファシリテーションなどのコミュニケーションスキルも必要です。
特に、M&Aのプロセスにおける買収監査の際には、監査人に必要最低限の情報を提供するだけの、財務会計・税務・法律の知識が求められるため、これらの業務を通じて、幅広い知識が修得できるといえます。

M&A業界に転職するデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

1.ハードワークになりやすい
2.転職難易度が高い

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.ハードワークになりやすい

M&Aコンサルタントとはプロジェクト単位で活動することが多く、複数のプロジェクトを並行して進めることもあり、結果的にハードワークになりやすいといえます。
また、数多くの利害関係者との調整が必要であり、プレッシャーを感じやすいという特徴もあります。そのため、M&Aコンサルタントには高いモチベーションとバイタリティが必要です。

2.転職難易度が高い

M&Aコンサルタントは、銀行・証券会社・コンサルティングファームなどでの経験が求められる場合が多く、未経験業務からの転職は厳しい業界です。
また、仲介やFAS・M&Aアドバイザリーのどの分野でも、即戦力が求められる傾向にあるため、M&A業界への転職を検討している人は、転職エージェントを利用するのがおすすめです。

M&A業界の主な業務内容


M&Aは、法律を含んだ専門知識が多く、豊富な経験が求められます。
また、業務内容についても専門性が高いものがたくさんあり、自社と相手先だけでは容易に完結できない場合がほとんどです。
ここではM&A業界で行われる業務内容について、それぞれに分けて解説します。

・案件開拓

M&Aで最初に検討しなければならないことは、案件開拓です。M&Aの戦略を検討し、会社や事業を買収しようとしても最適な相手を見つけることは容易なことではありません。
そのため、M&A事業を担う企業は、こちらの業務をメインにサービス展開をしていることが多い傾向にあります。

・交渉及び契約のサポート

M&Aにおいて、条件交渉及び契約書交渉などのサポートは豊富な知識・経験が求められる重要な局面です。
M&Aの条件交渉では、これまでの経験から蓄積されたノウハウをもとに専門家が行う分野といえます。

・バリュエーション

M&Aにおいて、先方企業・事業の価値を計算し、取得金額が決定されることが一般的です。この際、価値を決めますが、この方法をバリュエーションといいます。
バリュエーションは、実務的に用いられている方法があり、そちらを使って計算します。しかし、自社で取得金額を計算することは非常に難しいため、専門家に依頼することが一般的です。

・デューデリジェンス

デューデリジェンスは、先方企業を調査することです。財務面、税務面、法務面など、あらゆる方面から調査を実施して、買収時の問題点や買収後の改善などがないかを明確にします。

・資料・契約書の作成

M&Aを進める際、資料・契約書の作成業務は欠かせません。しかし、日常業務を行いながら、M&Aを進めなければならないため、全てを自社で行うことは非常に難しいことだといえます。
また、契約書は法律的な専門知識が必要となり、社内で完結することについても難しいことです。
そのため、契約書の作成などは専門家へ依頼することが一般的だとされています。
もちろん依頼することで費用も発生するため、依頼範囲は検討の上、依頼することになります。

・PMIなどの業務サポート

M&Aを行うことが重要だと考えてしまいますが、その後に実施するPMI(経営統合作業)も大切な業務です。
自社と買収先を適切に経営統合できなければ、期待した効果を得られずに、M&Aが失敗してしまうこともあります。
そのため、PMIはM&Aの業務の中で一番大切な業務とされており、迅速かつ確実に進めることが求められます。

M&A業界に向いている方


M&A業界に向いている方について、3つの特徴を中心に解説します。

・M&A業界の再編に関心がある
・成果を形に残す仕事に魅力を感じる
・積極的にキャリアの向上を求める

それぞれの特徴について詳細に見ていきます。

・M&A業界の再編に関心がある

M&A業界への参入は、業界再編や企業統合などの大規模なプロジェクトに関与するチャンスを増やします。現代の厳しいビジネス環境下では、市場規模の縮小を乗り越え、企業が持続的に成長するためには、M&Aや組織再編が不可欠です。
特に日本の少子高齢化の進行は、市場のさらなる縮小を招く可能性があります。このため、多くの業界でM&Aの動きが活発化し、組織の再編や統合が増加すると予想されます。M&Aを通じて業界の変革に関与したい人にとって、M&A業界は大変魅力的です。

・成果を形に残す仕事に魅力を感じる

M&A業界での仕事は、プロジェクトの初期段階から最終実行まで、深く関与することが求められます。多くの関係者と協力してプロジェクトを推進する経験は、大きな達成感をもたらします。
さらに、社会的に注目される大規模なプロジェクトに関わることで、自らの成果が広く認知されるチャンスも増えます。具体的な成果を追求する人にとって、M&A業界は最適な選択と言えるでしょう。

・積極的にキャリアの向上を求める

M&A業界は、キャリアの各段階で多彩な成長の機会を提供します。短期間で会計、税務、人事、法務など、多岐にわたる業務経験を積むことが可能です。これらの経験は、将来のキャリア展開において大きなアドバンテージとなります。
M&A業界での経験は、仲介会社、銀行、証券会社など、多様な分野での転職に役立ちます。また、M&Aを頻繁に実施する企業でも、その経験は高く評価されることでしょう。M&A業界でのスキルや知識は、キャリアの大きな飛躍をサポートします。

M&Aコンサルタントのキャリアパス


社内での昇進を目指す場合には一般の企業と変わらず、マネージャーから部長、役員へと経験・実績に応じて昇進します。ただし、M&A仲介会社では昇進を目指す方は少なく、案件数をこなすことでインセンティブ収入を増やしたいという方が多い傾向にあります。

一方でM&A仲介会社以外の企業に転職する場合には、大手〜中堅のコンサルティングファームや投資銀行が比較的多い傾向にあります。そして、さらにその次のステップとして事業会社の経営企画に進むパターンもあります。

事業会社へ転職する場合にはインセンティブ収入が無くなり、トータルの年収も3分の1から5分の1程度に下がる可能性があります。M&Aコンサルタントとして、さまざまな企業を見てきたなかで、転職先の事業に愛着がある場合や、自分自身の手で企業を再生させたいという意欲を持つ方が事業会社に移るケースが多いようです。

また、転職だけではなく、独立してご自身でM&A仲介会社を設立するケースや、それまでに貯めた資金で中小企業やベンチャー企業を買収して、自ら経営者となるケースも珍しくありません。

高いビジネススキルと年収、人脈を活かしたキャリアパスが描けるのも、M&Aコンサルタントならではでしょう。

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M&Aコンサルタントのモデル年収


M&Aコンサルタントの年収は固定給とインセンティブで決まります。
M&A案件の手数料の平均は5000万円程度で、インセンティブの割合は企業によって異なりますが、およそ10〜40%の間で最も多いのは20%です。
入社1年目は成約数が0〜1件で年収は高くて1000万円程度になりますが、2年目は複数の案件でインセンティブが発生し1000〜2000万円が目安となります。
さらに3年目以降は優秀な成績を残す方であれば3000〜5000万円以上に到達することも珍しくありません。
一方でインセンティブが全く発生しなければ、年収は1年目と同じ500万円に戻ります。インセンティブによる報酬が高い分、ボラティリティが高いことがメリットでもあり、デメリットにもなる職種であることは事前に理解しておきましょう。

管理職になるには成約件数や金額などの実績が必要です。部長職の固定給は平均で1000〜1500万円程度で、部下の案件を支援すれば、その分のインセンティブも付与されますので、トータルでは3000万円程度の年収になるでしょう。

M&Aコンサルタントへの転職に必要な準備と対策


企業経営者が顧客となるM&Aコンサルタントには極めて高いコミュニケーション能力が要求されます。端的にわかりやすく説明できる能力や、臨機応変な対応力、そして事業に対するパッションは欠かせません。

職務経歴書にはこれまでの営業成績や実績などを過不足なく記載しましょう。面接においては以下の3点が重要です。

志望動機は明確かつ一貫性を持ったストーリーで話す

M&Aコンサルタントはハードワークを要求される仕事であるため、「なぜM&A業界を志望したのか」「なぜ、その企業を選んだのか」といった質問から、企業は、動機の強さとモチベーションの高さを確認します。

稼ぎたいという目標がある場合でも、なぜ稼ぎたいのか、その先にどのようなキャリアパスを考えているのかといった中長期的な志向を確認されます。

業界外の方に対するように、平易な言葉を心がける

過去の職務経歴や実績を話す際には業界内の専門用語を使わずに、誰にでも伝わりやすい内容で話すことを心がけてください。というのも、M&Aを全く知らない高齢の中小企業経営者に対して、M&Aのメリットとデメリットを説明し、成約にこぎつけることがM&Aコンサルタントのミッションです。

業界外の方に対しても、ご自身の実績をわかりやすく伝える能力が無ければ、M&Aコンサルタントとしての採用も難しくなります。

自己PRは淡白にならないようにする

これは優秀なビジネスパーソンが陥りがちなミスですが、ご自身の実績を端的に伝えようとするあまり淡白に話してしまい、結果的に面接官からの評価を下げてしまうケースがあります。

実績を単に伝えるだけでなく、そこにご自身の想いを込めることも重要です。実際の商談では経営者の想いを汲みつつ、自分の想いを込めて話すことが求められます。面接官は面接の場を商談に見立てて、M&Aコンサルタントにふさわしいパーソナリティーであるかを慎重に確認しています。面接では面接官の性格やタイプに応じて、その場をポジティブな空気で盛り上げられるよう準備しましょう。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

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