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海外売り上げ比率が驚愕の94%
ヤマハ発動機のカラクリがすごい

ヤマハ発動機株式会社

イベントレポート

ヤマハ発動機といえば、バイクのメーカーというイメージが強いかもしれません。しかし実際にはモビリティを起点に、オープンイノベーションによるファクトリーオートメーションや医療、金融などの分野でも数多くの新規事業を展開しています。

また、以前より新興国への積極的な進出も盛んです。例えば、ナイジェリアでは現地のスタートアップ企業との協業でバイクタクシー事業者などへの二輪車リースを行うなど、モビリティサービスにまで事業領域を広げています。

こうしたヤマハ発動機の新規事業や世界にまたがる成長を支えているのは、その部門で活躍している方々だけではなく、IT部門の貢献も欠かせません。そこで今回のセミナーでは、ヤマハ発動機で経営戦略を担う青田氏とIT部門を担う小野氏をゲストに迎え、JAC Digitalアドバイザー澤 円氏がヤマハ発動機の魅力を深掘りします。

※本記事は2025年3月19日にJAC Digitalが開催したオンラインイベントを一部抜粋、再構成したものです。また、文章表現を統一するため言い回しも変更しておりますのでご留意ください。

<登壇者・登壇企業紹介>

  • 青田 元氏
    青田 元氏
    ヤマハ発動機株式会社
    執行役員 経営戦略本部長(CSO)
    青田 元氏
    慶応義塾大学法学部卒業。
    三井物産を経て2017年にヤマハ発動機株式会社に入社。経営企画部長や技術・研究本部で新事業開発を歴任。
    2024年1月に新事業開発本部長、3月には執行役員に着任。2025年1月からは執行役員 経営戦略本部長(CSO)を担う。
  • 小野 豊土氏
    小野 豊土氏
    ヤマハ発動機株式会社
    IT本部長(兼)IT本部 サイバーセキュリティ推進部長
    小野 豊土氏
    東京電機大学で修士号を取得。1999年にヤマハ発動機株式会社に入社。インドネシアや米国の拠点での駐在を経験した後、ヤマハモーターソリューションの代表取締役社長に就任。
    ヤマハ発動機のグローバルSAP導入のプロジェクトリードなどを経験し、2024年1月からIT本部長に就任。2025年1月からはサイバーセキュリティ推進部長を兼務。
  • 澤 円氏
    澤 円氏
    JAC Digitalアドバイザー 株式会社圓窓
    代表取締役
    澤 円氏
    元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。2021年4月22日よりJAC Digital アドバイザー就任。
    現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界、自動車業界の第一人者たちとのコラボも、業界の枠を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。

1. ヤマハ発動機の会社概要

澤氏: ヤマハ発動機といえば国内のモーターサイクル市場で非常に知名度の高い企業です。しかし実際には売り上げの94%が海外とお聞きしました。これほど海外での売り上げ比率が高い理由を教えていただけますでしょうか。

青田氏: もともとヤマハ発動機はモーターサイクルを中心とした会社ですが、日本国内では市場の縮小が進んでいます。一方で、アジア市場ではモーターサイクルの需要が高く、特にインドネシアやタイ、ベトナム、フィリピンといった成長市場に向けた製品投入を強化しました。

また、海関連の事業では船外機やウォータービークルの主な市場が米国であり、安定した成長を続けています。こうした要因から、海外売り上げ比率が高まる結果となっています。
さらに、日本のモーターサイクル市場はピーク時には年間300万台以上の販売がありましたが、現在は約40万台にまで縮小しており、この市場動向も海外比率の増加に影響しています。

小野氏: 海外展開の背景には創業者のマインドも大きく影響しています。創業者である川上源一氏は、「世界で通用するものを提供する、世界の人の生活を豊かにする」という理念をもち、レジャー市場に着目しました。その影響で、ヤマハ発動機は国内だけにとどまらず、海外へ積極的に展開しています。

特にアフリカでは船外機市場において高いシェアをもち、品質を前面に押し出したマーケティング戦略を採っています。
海外では単純に船外機を販売するわけではありません。船外機を使ってこれまで行けなかった場所まで行けるようになれば、獲れる魚も変わります。
そこで、未知の魚をより多く獲れる釣り方を教えたうえで船外機を販売することで漁業の発展を支援する活動を展開し、世界の市場に適応しつつ成長を続けてきました。

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2. ヤマハ発動機を支えるコーポレートIT

澤氏: 小野さんは長年コーポレートITを担当されてきたということですが、多岐にわたる事業をITで支えるのは相当な難しさがあるように思います。そこでどのように取り組まれていきたのかについて具体的にお聞かせいただけますでしょうか。

小野氏: これまでは事業部の要望に応じて個別のシステムを開発してきました。しかし現在はよりお客さまに向き合うことを最優先に考えています。
例えば物流や財務領域では、独自システムで差別化するのではなく業界標準のものを採用し、世界へ展開することで業務のスピードアップを図っています。標準化することで事業の柔軟性を高め、成長戦略に集中できる環境を整えることが重要だと考えています。
過去はユーザー部門に最適化してきましたが、今は変革期だと捉え、全社でチャレンジしているところです。

澤氏: 標準化と差別化を明確に区別するという考え方は全ての経営者が学ぶべき点ですね。これまで自社は特別だとして何でも差別化しようとした結果、うまくいかなくなったケースを多く見てきました。標準化できるものは標準化し、注力すべきはお客さまとの接点であるという考えには深く共感します。

小野氏: ありがとうございます。そのようにご理解いただけて大変嬉しく思います。確かに標準化を進める際には反対意見もあります。しかし、私たちは「感動創造企業」です。最終的には「人」が動かすものですから、お客さまに感動をお届けできるよう、日々取り組んでおります

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3. 真のグローバルカンパニーを目指して

澤氏: ヤマハ発動機はグローバルカンパニーとして、まだ発展途上だと感じる部分はありますか。

青田氏: ヤマハ発動機は、日本で開発した製品を海外で生産・販売する体制は確立しています。しかし、本当の意味でのグローバルカンパニーとなるには、経営の意思決定に海外拠点のメンバーが関わる必要があります。
現在、取締役会は英語で行われていますが、経営会議は依然として日本語で行われていますし、海外拠点の拠点長は取締役会のメンバーではありません。
グローバルに成長する余力は十分にあるものの、最大限に活用できているとはいえないのが現状の課題です。

小野氏: ITの観点から見ると、グローバルなITメンバーとの対話が十分に行われていない面があります。ただ、デジタル化の進展により、海外拠点ともリアルタイムで意思疎通が可能になり、業務のスピード感は向上しています。

さらに、ヤマハ発動機は単なるITの導入ではなく、プロダクトとフィロソフィーを軸に、多様な価値観や文化的背景を理解しながら意思決定を進めることの面白さがあります
現地の文化を尊重しながら、共通のビジョンのもとで協力し合うことが、真のグローバル企業を目指す上で重要な要素だと考えています。

澤氏: 新規事業にも積極的に取り組んでいるとのことですが、具体的にはどのような動きがあるのでしょうか。

青田氏: 国内では、ジョイントベンチャーを通じて自動搬送の事業を展開しています。一方、海外ではナイジェリアやインドにおいて銀行口座をもたない人々にオートバイを共有してもらう新たな金融事業を進めています。
また、アメリカでは農業ビジネスへの参入を決定し、ロボティクス技術を活用して農業の自動化を図る試みを行っています。

これらの取り組みは単なる事業拡大を目的としたものではありません。各市場の特性に応じた柔軟なアプローチをとることで、グローバル展開をさらに深化させることを目指しています

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4. ヤマハ発動機で働く魅力

澤氏: ヤマハ発動機で働く魅力について、それぞれの視点からお聞かせください。

小野氏: ITやエンジニアの分野では、全世界のエンジニアとコミュニケーションを取りながら仕事を進めることができる点はヤマハで働くことの魅力です。単に技術を扱うのではなく、多様な文化の中で業務を進める経験を積める環境があります。
また、海外拠点のITリーダーと議論を交わしながら、グローバルな視点でプロジェクトを推進する機会も多く、新しい知識や視点を得ながら成長できる点も大きな魅力です。

青田氏: 地方ならではの生活スタイルを楽しめる点も魅力の一つです。アウトドアのフィールドが近接していますので、朝に海へ入ってから出社する社員や、小野や私は自転車が趣味ですので週末のライドを楽しむ仲間も多く、首都圏では得られない経験ができます。

また、首都圏からの転職をしやすくするために横浜に新しい拠点を設け、ライフスタイルを変えずにヤマハへ入社できる環境づくりを進めています。さらに、海外と接続性が高い企業なので、海外出張の機会も多く、国際的な業務に挑戦できる場が豊富にある点も魅力です

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5. 質疑応答

Q. グローバルなキャリア構築に向けた取り組みについて、スタッフ交流やタレントマネジメントの面で現在力を入れている施策や、今後の展開が期待される制度があれば教えてください。

A. 青田氏:駐在員制度は以前から運用しており、日本人が海外へ赴任する仕組みは確立されています。 現在は、グローバルグレーディングを導入し、各ポジションの役割を明確化するとともに、サクセッションプランの策定によって次世代リーダーの育成を進めています。

また、海外のスタッフが日本や別の国へ駐在する制度も整え、グローバルな視点で適材適所、そして適時のスタッフ配置を実現する制度設計を整備しました。今後は運用の強化を通じて、より柔軟なスタッフ配置を目指します。

Q.業務のIT化や自動化が進む中で蓄積されるデータの分析・活用状況や事業開発への応用について教えてください。

A. 小野氏: データ分析や解析は専門家だけのものとはせず、誰でも取り組める環境づくりを推進しています。IT部門だけではなく、事業部門でも「現場サイエンティスト」と呼ばれるスペシャリストを増やす活動を行っています。
データに興味をもつスタッフを育てながら、使いやすいツールやプラットフォームを提供することで、データ活用の文化を全社に広げる取り組みを進めています。

青田氏: 新規事業開発ではデータが不可欠です。どのビジネスでも、データを取得する目的と活用方法を必ず検討しています。農業の自動化では、フィールドデータを収集し、精度の高い意思決定を支援する仕組みを構築しています。

Q. IT・DXの取り組みについて、売り上げ向上とコスト削減のどちらに重点を置いていますか。また、現在の課題やテーマになっている施策を教えてください。

A. 小野氏: 売り上げ向上と業務効率化の両方を推進しています。現在の課題は、安全にデータを活用できる環境を整えることです。生成AIの普及や情報漏えいリスクへの対応を強化し、適切な情報管理を徹底する取り組みを進めています。

青田氏: コスト削減を考えるチームと付加価値を高めるチームを分け、それぞれが最適な施策を検討しています。デジタル技術を活用して業務の効率化を図りながら、将来に向けて新たな価値を創出することを重視しています

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6. 総括(澤 円氏ショートプレゼン)

澤氏: ヤマハ発動機の最大の魅力は、創業者の精神が今なお息づいている点です。このような企業理念があるからこそ、方針が揺らぐことなく発展を続けている理由ではないでしょうか。
また、海外レジャーや陸海での活動など多様なパラメーターをもつことは、イノベーションの種が豊富にあることを意味します。新しい結合によって価値を生み出す環境が整備されているなかで異なる文化背景をもつ方々が参入することで、さらなるイノベーションが期待できます。

そして、日本をベースにしながらグローバルな働き方ができる環境は、外資系に憧れつつも急激な変化を避けたい方にも適しています。海外出張のハードルが低く、グローバルな経験と地方でのローカルライフという両面を楽しめるライフスタイルを提供している点も、レジャーをルーツにもつヤマハ発動機ならではの魅力です。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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