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マネーフォワード社CQO高橋寿一氏が語るQAの最前線とキャリアについて

株式会社マネーフォワード

キャリア座談会
  • 高橋 寿一 氏  マネーフォワード社 CQO
    フロリダ工科大学大学院にてソフトウェア工学の修士号、広島市立大学にて情報工学の博士号取得。Microsoftシアトル本社、SAPジャパンでソフトウェアテスト業務に従事。その後ソニーでのソフトウェア品質担当部長などを経て、現職に至る。著書に「知識ゼロから学ぶソフトウェアテスト 」「ソフトウェア品質を高める開発者テスト 」など。

日系企業のグローバル展開や組織体制強化に伴い、QA(品質保証)の重要性が高まっている。そこでJAC Recruitment(以下、JAC)は、QAの最新事情とキャリアについて解説するウェビナーを開催。QAの第一人者である高橋寿一氏をゲストに迎え、海外と日本のQAに対する考え方の違いやキャリアとして習得しておくべきスキルなどを聞いた。

―海外でのQAの在り方とグローバル企業のQA戦略

JAC:グローバル組織において、日本の品質の高さを実現するのが難しいという話をよく聞きます。過去には欧米でソフトウェアテストに携わり、現在もベトナムでの開発・QAに従事される高橋さんから見て、難しさも含めた海外でのQAの在り方はどうお考えですか?

高橋氏:私は海外だからといって品質の保持や進め方に対して難しいと感じることはありません。むしろグローバルの方が働きやすい面もあります。例えば、ベトナムやインドなどでQAエンジニアを採用する際、大学でコンピュータサイエンスを学び、一つ以上のプログラミング言語を習得していた方を採用するケースが多いです。彼らはソフトウェア工学についての基本的な理解があるため、コミュニケーションがしやすいというメリットもあります。
今私が在籍するマネーフォワード社は、エンジニアの語学力向上を図る取り組みをするなど、グローバル化に注力する組織だと実感していますが、QAにおいても国際的スタンダードを取り入れようと努めています。先進的な姿勢を持ち、QAの新しいやり方をどんどんインプットできることは、グローバル組織の良い点だと思います。

高橋氏
株式会社マネーフォワード
CQO
高橋 寿一 氏
JAC:確かにグローバルスタンダードをリードする存在ともいえるGoogleやNetflixでは、QAにおいて日本とは異なる考え方を持っていると聞きます。その点は高橋さんも感じていますか?

高橋氏:そうですね。アメリカ企業と日本企業ではQAに対する捉え方が違うように思います。日本企業のQAは、「顧客に迷惑をかけない」という点に重点を置く場合が多い一方、アメリカ企業は品質とスピードの両方を実現すべきだと考えています。するとQAに対するコストのかけ方にも、違いが生じてきます。実際Googleが「ビジネスを迅速に展開するためには、テストに時間はかけられない」と明言するように、海外企業の多くが多額なコストをかけてQAを自動化する体制を構築し、良い製品をよりスピーディーに世に出す流れへと変わってきています。日本では、品質を重んじる文化が残っていることもあり、スピード向上を最適に考えるという考え方がなかなか浸透していません。

―上流工程での品質活動がコスト削減・スピード向上につながる

JAC:品質とスピードのバランスは、QAエンジニアの求職者の方とお話していてもよくあがる話題の一つです。どちらかに偏っている環境ではなく、良いバランスを保ちながらQAに携わることができる職場を求めている方が多い印象です。品質とスピードのバランスについて、高橋さんはどのように考えていますか?

高橋氏:QAの品質とスピードのバランスにおいて、これからの時代に求められていることは、スピードが一番、品質が二番という認識を持つことだと思います。開発手法の主流がウオーターフォール型からアジャイル型へ移行した点から分かるように、ビジネスで勝つためにはスピードを最重要視しなければなりません。それはQAも例外ではないのです。しかし早くリリースするために、品質はおざなりでいいかと聞かれたらそれも違います。QAは、スピードを最優先しながらも可能な限り品質を追求する考え方を持つべきだと思います。

JAC:QAエンジニアの方がそのような考えやスキルを身に付けるためには、どのような意識を持てば良いのでしょうか?

高橋氏:開発者を協力者としてとらえ、ワンチームで品質活動を行うことです。開発者とQAエンジニアは対立構造になるケースも多々ありますが、それは避けなければなりません。
例えばQAがバグを起票する際には、開発者が修正するのに有益な情報を丁寧に記載したり、デバッグするためのヒントを提供したりするとより良いです。バグが発生したバージョンと発生していないバージョンを提示すると、開発者はすぐにどのバージョンのpull requestsが良くなかったと気付くことができます。
ソースコードの問題がありそうな部分を提示することも重要です。開発者側もQAエンジニアの協力を実感することで、情報共有が円滑になり、品質保証活動にも良い影響を与えると思います。
また実務的に必要なスキルでお話すると、要求仕様書の段階でバグを見つけられるスキルも大切です。上流工程で品質活動をして様々なバグを見つけ、コスト・スピードの両面を軽減することができれば、会社にとってもメリットが大きいですから。
さらに求めると非機能領域のテストや単体テスト、全体品質を見ることのできるQAエンジニアはニーズも高まっていくでしょうし、キャリアポジションとしても社内受託的な立ち位置ではなく、開発チームと共に製品やサービスに携われる存在として働くことができると思います。

―開発者と連携して品質を追求する姿勢が重要

JAC:面談をしていても、キャリアについて悩むQAエンジニアの方が増えています。例えばQA組織の立ち上げから担い組織構築を一旦終えた方が、その後どのようなキャリアステップを踏めば良いかご相談をいただくこともありました。高橋さんは、QAエンジニアのキャリアの選択肢についてはどのように考えていますか?

高橋氏:QAはコアの知識やスキルさえ備わっていれば、幅広い領域で活躍できる職種だと思います。ですので「キャリアが狭まる」とか「選択肢が少ない」といった悩みを抱える必要はないというのが私の感想です。
コアな知識に、要求仕様やコードレビュー、リファクタリングの経験などが肉付けされていき、QAエンジニアとしてのキャリアにつながっていくのだと思います。実際私もマイクロソフトやソニー、今はマネーフォワードと全く異なる領域を渡り歩いてきましたが、困ることはありませんでした。
コアな知識でいうと、JSTQBのAdvanced levelの資格やスクラムマスターなどの資格を持っていると、有利に働く場面が多いのではないでしょうか。またQAには直接関係ありませんが、英語力は高い方がいいです。やはりソフトウェア製品を作る上で参考情報が必要な時、海外の文書を読む機会がとても多い。これらのスキルは持っておくといいと思います。

JAC:ポータブルスキルを持ってさえいれば他業界へと転身できる。これはQAにとってポジティブですね。例えばハード製品からソフトウェアへ移行するキャリアもありえるのでしょうか?

高橋氏:大いにあると思います。自動車や家電などのハード製品のQAは、徹底的に品質を管理する風土があります。業務プロセスもしっかりとしており、出荷判定会議やバグが発生した際の振り返りなども丁寧に行います。
そうした工程すべてをWeb系企業に導入しようとすると、スピードが落ちてしまうので難しいですが、経験として持っておくと短いサイクルでの最適品質保証のようなアイデアや提案の幅も広がります。ハード製品で培ったQAテクニックをWeb系企業に取り入れることは、ソフトウェア開発にもメリットが大きいと思います。

JAC:なるほど。さらにキャリアの話を聞きたいのですが、開発者からQAエンジニアになるケースはあるのでしょうか?

高橋氏:私自身も開発者からQAへのキャリアチェンジですし、私の周りには結構います。開発者からQAエンジニアへのキャリアチェンジは、開発者の考えを理解した上でQAに臨めるため、お互いにとってメリットがあります。
例えばソースコードのメンテナンス性を高める上でリファクタリングは重要な要素ですが、そうした点を知っていることで、貢献できる部分が大きいと思います。

JAC:ありがとうございます。
これから開発手法がウォーターフォールからアジャイルへと変化していく中で、QAエンジニアに求められることも変わっていくと思います。今後QAに求められるスキルや高橋さんが一緒に働きたいQAエンジニア像などを教えてください。

高橋氏:今後は、開発工程の前半もしくは短いイテレーションの中でバグを見つけるスキルがより重要です。特にバグはどういったソースコードの書き方によって発生しやすいかみないな事実を知っておくと、QAで役立つと思います。また要求仕様を読み込んでバグを抽出したり、アーキテクチャの弱点を判断したりするスキルも重宝されるでしょう。
私が一緒に働きたいと思う方は、やはり開発と共に品質を作る姿勢を持つ方です。具体的には、開発状況に応じて、フレキシビリティさを持てる方です。開発者は開発者としての信念を持って開発に当たっています。彼らの考えや思いも考慮した上でQAの視点で品質の良し悪しを判断したり、テスト手法を取捨選択したり、スピードと品質のボーダーラインを見極めたりすることが必要だと思います。

JAC:本日は貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。ありがとうございました。

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