-
- 岩﨑 磨氏
- 株式会社LIXIL 常務役員 Digital部門担当
岩﨑 磨氏 - 複数のベンチャー企業にて事業・会社立ち上げを経験後、楽天グループ株式会社、株式会社リクルート、合同会社DMM.comなどで情シス部長やインフラエンジニア・アーキテクトとして従事。2018年6月に株式会社LIXIL入社。国内・グローバルを含めたインフラ・セキュリティ・コーポレートIT領域を管轄し、国内基幹システムとそのシステム刷新プロジェクトの責任者としてエンドユーザー・アジャイル視点での次世代化・運用基盤強化を担当。2021年4月常務役員に就任。
-
- 澤 円氏
- JAC Digitalアドバイザー
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円氏 -
元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフト株式会社へ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。2021年4月22日よりJAC DigITalアドバイザー就任。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界、自動車業界の第一人者たちとのコラボも、業界の枠を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。武蔵野大学専任教員。
イベントレポート
異業種転職成功の鍵
株式会社LIXIL × JAC Recruitment
DX推進が重要視される中、IT人材の異業種転職が広がっています。しかし、転職先でのキャリア成長、企業文化への適応、専門知識不足への不安を感じる方も少なくありません。今回は、Web系企業からLIXILに転職し、現在常務役員を務める岩﨑氏をお迎えしたセミナーを実施いたしました。
LIXILは、スクラム手法やノーコード開発導入などが評価され、DXプラチナ企業2025-2027に選出されています。岩﨑氏には、異業種転職成功のポイントや事業会社での変革リーダーシップ、アジャイル型組織で活躍する人物像について伺いました。
<登壇者・登壇企業紹介>
1. 転職の経緯と動機
澤氏:もともとはWeb系の企業にいらっしゃった岩﨑さんですが、キッチンやトイレ、窓などをつくる住宅設備機器メーカーのLIXILへ転職されたのは、どのような経緯だったのでしょうか。
岩﨑氏:前職のWeb系企業で働いていた同僚が先にLIXILへ入社しており、彼から1年ほど熱心な誘いを受けたのが直接のきっかけです。私自身、20代でベンチャーを共同で起業した経験があり、事業運営の難しさや失敗から多くのことを学んできました。
LIXILが抱える課題に対して、これまで培った知見を生かして貢献できるのではないかと考え、入社を決意しました。まったく異なるカルチャーへの挑戦でしたが、そこに大きな可能性を感じています。
澤氏:異業種において特に岩﨑さんのようにリーダーとして入社される場合、さまざまなご苦労があったかと思います。転職を成功させるための秘訣は、どのあたりにあるとお考えですか。
岩﨑氏:最も重要なのは、現場に対するリスペクトだと考えています。異業種から来ると、つい過去の成功体験を基準に「前の会社ではこうだった」と自分のやり方を押し付けてしまいがちですが、それは失敗のもとになります。
まずは現場に寄り添い、これまでの歴史や背景を深く理解することに注力しました。一人で成し遂げられることには限界があるため、現場の方々と協力し、同じ目線で一つのチームとして進んでいく姿勢が、異業種転職を成功に導くのではないでしょうか。
澤氏:実際に入社されてみて、Web業界とのギャップを感じることはありましたか。また、その課題にどのように取り組まれたのか教えてください。
岩﨑氏:最も大きなギャップは、IT部門の外注比率が非常に高かった点です。重要なシステムの意思決定さえも外部のベンダーに依存しており、社内にノウハウが蓄積されにくい構造になっていました。
この状況では変革のスピードを上げるのは難しいという強い危機感を抱き、「内製化」をキーワードに、自分たちでITを主導する体制へと大きく舵を切ったのです。こうした取り組みが実を結び、「DXプラチナ企業」にも選出されましたが、これはゴールではなく、さらなる変革へのスタート地点だと考えています。

2.LIXILの特徴
澤氏:LIXILさんはDXを推進し、非常にスピーディーに事業を進めている印象です。その原動力となっている組織文化について教えていただけますか。
岩﨑氏:当社では「LIXIL Behaviors」という3つの行動指針を非常に大切にしています。その一つに「実験して学ぶ(Experiment and Learn)」という考え方があり、これがスピード感の源泉です。失敗を恐れずにまず挑戦し、そこから得た学びを素早く次のアクションにつなげる文化が全社に浸透しています。この行動指針が共通言語となっているため、迅速なPDCAサイクルを実現できています。
具体的には従来の部門間の壁や階層が意思決定の遅れを生んでいたため、アジャイル・スクラム型組織へと移行しました。IT部門だけでも現在170のスクラムチームが活動しており、スプリントを通じて透明性を担保し、業務サイドを巻き込みながら開発を進めています。これにより、構想から実行までの時間が劇的に短縮され、事業への貢献度を大きく高めることができました。
澤氏:アジャイル型組織への移行にともない、評価制度も変えられたのでしょうか。エンジニアのキャリアパスについて具体的にお聞かせください。
岩﨑氏:役職のヒエラルキーを撤廃し、肩書ではなく個々の専門性を評価する制度を導入しました。エンジニアがマネジメントに進むだけでなく、専門性を追求するエキスパートとしてキャリアを築ける道を明確に設けています。
年齢や経験に関係なく、社員一人ひとりの貢献が、給与やポジションにしっかりと反映される仕組みです。事実、専門性を追求するエキスパートパスで、より高い報酬を実現している社員もいます。エンジニアが自身の技術で正当に評価され、成長し続けられる環境を整えています。
3. 働く環境と魅力
澤氏:Web業界などとは異なるメーカーのLIXILで、エンジニアとして働くことの魅力やキャリアメリットはどのような点にあるとお考えでしょうか。
岩﨑氏:Web業界では多くのエンジニアが活躍しており、一人が担当できる領域が限定的になることもあります。しかし、当社のようなメーカー、特に内製化を強力に推進している現在は、エンジニアが挑戦できる領域が非常に広く、まさにブルーオーシャンといえる状態です。
事業規模が大きく、これまで外部に委託していた領域を自分たちの手で作り変えていくという、ほかではなかなか味わえない「広さ・深さ・楽しさ」が最大の魅力だと感じています。自身の技術で大きなインパクトを生み出したい方にとっては、非常に面白いフィールドだと思います。
澤氏:働き方の面ではいかがでしょうか。また、エンジニアの方々はどのような点にやりがいを感じられると思いますか。
岩﨑氏:私自身がエンジニア出身ということもあり、エンジニアが最もパフォーマンスを発揮できる環境づくりにこだわっています。その一環としてリモートワークを積極的に推進しており、Digital部門では居住地を問わず日本全国どこからでも働くことが可能です。
そして何より、自分たちの仕事が「ものづくり」に直結し、トイレやキッチンといった製品を通じて世界中の人々の生活を支えている実感が得られる点は、大きなやりがいになるはずです。最新のデジタル技術を駆使して、グローバルな社会貢献ができる環境がLIXILにはあります。
4. 質疑応答
Q. 異業種の面接での志望動機と自分の経験職種を結びつけるために意識することはありますか?
A.岩﨑氏:面接では、変に飾りすぎず、本音をぶつけることが大切だと考えています。特に私が転職希望者の方にお聞きするのは、その方が入社して「本当にやりたいこと」や「ご自身の目指す姿」です。それが会社の方向性と合致すれば、きっと良いご縁につながると感じています。
また、ご自身の経験を伝える際には、それを抽象化してロジカルに分解できる思考力が非常に重要です。アジャイルで物事を進める上では、技術力と同じくらい、物事を構造的に組み立てる能力が求められるためです。上辺だけの話ではなく、ご自身の経験を明確なストーリーとして語れることが、異業種への転職、特に中途採用の面接では重視される点ではないでしょうか。
Q.製造業のDXには多くの部署が関わり、キーパーソンが多岐にわたることが導入の難しさにつながっていると考えています。ここを打破するために、一社員としてどのようなアプローチを心がけたら良いでしょうか?トップダウンで一気に推し進めるくらいの力がないと難しいでしょうか?
A.岩﨑氏:DXの推進には、トップのコミットメントと現場からのアプローチ、その両面が不可欠です。経営層のサポートはもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、事業を実際に動かしている方々といかに同じ目線で働けるかだと考えています。
私たちはDXを3つのステップで捉えており、1つめはデータを整える、2つめはプロセスを統合する、そして最後にシステムを導入する、という順番を重視しています。
つまりITは最後のステップなのです。ですから、一社員としてできることは、システム導入ありきで話を進めるのではなく、まずは業務部門の方々と一緒にプロセス改善やデータ整理に取り組むこと。そうして信頼関係を築き、ともに課題へ立ち向かう姿勢が、大きな壁を打破する鍵になると思います。
Q.異業種へ挑戦する怖さ、恐れがあります。チャレンジを決めるためのマインド、また転職がうまくいき異業種で働き始めてからの成功する心構えの2点について教えてください。
A.岩﨑氏:新しい環境への不安は当然あると思います。だからこそ、チャレンジを決める前に、その会社で「自分が何をしたいのか」というビジョンを自分の中で明確にしておくことが非常に重要です。面接は一方的に評価される場ではなく、自分のやりたいことと会社の方向性が合っているかを確認しあう場と捉えると良いでしょう。
そして、無事に入社した後は、まず今いる人たちと、その会社がもつ歴史や文化に対して深いリスペクトをもつことが成功の鍵になります。その会社の良さをしっかりと理解し、課題に共感するところから始める。この入社前後のアプローチの組み合わせが、異業種での挑戦を成功に導くと考えています。
Q.異業種転職ですと具体的に自分がどのくらい活躍できるかのイメージが湧きにくいです。〇〇できるから△△円を希望しますといえると一番良いのですが給与交渉が難しいと感じます。どのように考えたら良いかヒントをいただけると嬉しいです。
A.岩﨑氏:確かに入社前にご自身の価値を的確に伝え、希望額を交渉するのは難しい面があると思います。そのため当社デジタル部門では、新たな価値創出につながる専門性を正当に評価するため、入社後の貢献度に応じたエキスパート向けの資格制度を設けています。
入社してからチームの一員として専門性を発揮し、事業の成長につながるアウトプットを出していただければ、その価値を一人ひとりしっかりと評価し、報酬に反映させていく仕組みです。
より良い条件を目指すのであれば、入社前からご自身の市場価値を高めておくことも有効です。例えば、GitHubでソースコードを公開したり、技術ブログで知見を発信したりするなど、社外で自分の実力を客観的に示せるアウトプットを用意しておくこと。そうした活動は、どのような履歴書よりも雄弁にご自身の能力を証明してくれるはずです。
この記事の筆者
ハイクラス転職を実現する
「コンサルタントの提案」
をぜひご体験ください
ハイクラス転職で求められることは、入社後すぐにビジネスを牽引する存在になること。
そのために「コンサルタントの提案」を聞いてみませんか?
ご経験・ご経歴・ご希望などから、転職後のご活躍イメージを具体的にお伝えします。


