なるほど。「志」の考え方は、海外の人にも伝わりますか。
やってみたら、逆に日本だけでなく世界どこでも通じる考え方は「志」だという確信を持ちました。例えば、多くの日系企業の海外拠点では、現地スタッフのポテンシャルを活かすのに苦労されています。いわゆる「現地化」のマインドセットがうまくいっていない。特に製造業などは「現地化」というと、日本でやっていることを現地でも同じようにうまくやること、という感覚の企業が見受けられます。
しかし今、必要なのは、海外で採用した優秀なスタッフの持っている力をうまく活かすこと。現地と共創していくのが大事だと思います。この課題に対して我々は成果を上げています。
例えばアジアに拠点を持つ会社なら日本で5日間研修をして、拠点であるベトナムやシンガポール、中国、またはオンラインも交えるなどして5日間研修をする。大事なのは国で人を分けずに一緒にやること。現地の環境をお互いが見ることで、日本側はアジアのめまぐるしい発展を目の当たりにし、海外スタッフは日本の環境を理解する。そこで一緒に研修に参加することで、日系企業からは「現地の人はこんなに高い志があり、ポテンシャルがたくさんあったのに我々が使えていなかった」という感想が出てくる。現地の人も「今までは聞いてもらえないと思っていたけど、自分たちが発信していなかったからだ」と気づく。過去の刷り込みで思い込んでいる部分を、人間同士のコミュニケーションで払拭して、新しいステージに行ける。そのキーワードになるのが個々の持つ「志」でもあるのです。
また、こんな例もあります。シンガポールの製薬業界の人たちに志について掘り下げたところ、「命を救う仕事なので、人について考えを深めたり、特別な想いを持ったりしないといけないのに、我々はいつも売上のことや、新しい薬を出さなければ、とばかり考えていた」という気づきから新しいミッションを見いだすことができました。