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パーパスに根付いた文化と成長―急成長するEY で働く魅力

EYストラテジー・アンド・コンサルティング

※このインタビューは2022年11月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
近藤氏

EYストラテジー・アンド・コンサルティング
株式会社 代表取締役社長 
近藤 聡(こんどう あきら)氏


自社の存在意義と社会に与える価値を示す「パーパス」が企業経営で注目されている。近年、経済動向や外部環境の変化が一層増す中で、企業のパーパスは従業員や投資家、顧客から重視されている背景があるからだ。

このパーパスを組織内外へ浸透させながら、急成長を遂げているコンサルティングファームがある。世界4大会計事務所系プロフェッショナルファームのひとつであるEYの日本におけるメンバーファームEYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)だ。

代表取締役社長の近藤 聡氏は2019年1月に EY Japanに参画。2023 年度に向けた成長戦略「プロジェクト・ドラゴン」を打ち出し、2020年10月にEYトランザクション・アドバイザリー・サービスとEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングを統合したEYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下EYSC)の代表取締役社長に就任した。

結果は直後に現れる。コンサルティング事業の国内売上成長率は2年連続で40%以上を推移 。まさに破竹の勢いで成長を遂げている。その急成長の要因には他社には無い成長戦略と、パーパス経営の両立があるという。その真意と変化し続けるEYSCで働く魅力を近藤氏に伺った。

勝つ組織への成長を支えた「ドラゴン」

─近藤さんは2019年にEY Japanに参画されました。その直後に「プロジェクト・ドラゴン」という成長戦略を掲げています。この計画の背景について教えてください。

私がEY Japanに入社した時点では、BIG4の中でもEYは、組織規模が小さく、戦略・オペレーションコンサルティングやテクノロジーの市場シェアは3番手、4番手という位置づけでした。マーケットの中核に入り込むことができず、競合のファームとのコンペに参加できないという状況にいました。

その要因としては組織が小さく、人員が不足していたことが第一に挙げられます。例えば自動車会社のクライアント1社に対して、他社では複数人のパートナーがいて、その下に20〜100人規模のチームがいるのに、私が入社した当初はEYの担当パートナーは0.5人しかいなかったという状況です。規模が小さく、クライアントの相談に応じる人員がいないし、結果として、コンペの俎上にも上がらないという状況に甘んじていたのです。その当時、最も売上が大きかったのはリスクコンサルティングでしたが、そこは競合では監査法人に属しています。また他社のようにテクノロジー領域を強化しようとしていても、監査・非監査の顧客構成やマーケット認知等の問題から、そこに注力するかたちでの大幅な成長は難しいことがわかっていました。

そういった中で成長戦略の中心に考えたのは戦略・オペレーションコンサルティング部門、とりわけ各セクターの規模・ケイパビリティー(組織的能力)向上です。各セクターの知見を持ち、さまざまなバックグラウンドを持った人材を採用し、顧客にしっかりとフォーカスできるチーム作りを継続してきました。2020年10月に2つの法人を統合したEYストラテジー・アンド・コンサルティングを設立し、名実ともに組織全員が同じKPIの元でコラボレーションしながら、顧客に対してベストなチームで対応できる体制を目指しました。その結果、最近ではコンペに勝つ案件数も順調に増えてきています。

─2020年度にはコンサルティング部門の売上成長率は20%、2021年度には43%と大きく成長しています。競合他社でも御社と同様の組織統合があってもおかしくない中で、なぜ御社は短期間で組織統合と急成長を両立できたのでしょうか。

組織が小さいからこその機動性と、組織間の垣根が非常に低かったことが挙げられます。EYは特に海外とのコラボレーションが多いことが特徴です。ほかのファームでは一つの案件があった時に、売上の折半割合やコンサルタントのKPIへの影響を第一に考えてしまいがちですが、EYは利益に対して過度にこだわるという文化が無いというも大きく寄与しています。

それはEYが「Building a better working world (より良い社会の構築を目指して)」というパーパス(存在意義)に従って動いている組織であるからと言えます。案件に対して自分の取り分のことを第一に考えるというのは、EYにおいてはありえませんし、業界順位や短期的な成長といったことを考えずに「より良い社会の構築」に対して、愚直に動けるからこそ壁の無い組織が成立しているのだと思います。

パーパスの浸透が大きな社会インパクトを生む

─社会の中での存在意義を示すパーパスを取り入れた企業経営は、近年グローバルで注目されています。EYのパーパスは、どのように社員に浸透しているのでしょうか?

パートナーシップの在り方が違いますね。一例を挙げると、コンサルティングファームでは重要な意思決定をする際にボーティング(投票)を行うのが一般的です。パートナーが投票して、過半数ないしは3分の2以上の同意を得て意思決定をしますので、規模が大きくなると目指す方向を統一することが難しくなりますし、政治性が働きやすいという側面があります。一方でEYの場合にはサウンディング(意見収集)による意思決定が大半です。この仕組は、その人自身のリーダーシップや周囲からの信頼無しには成立しません。そういった背景を踏まえると、人柄の良さや風通しの良さが社内全体の文化として浸透しているとも言えます。

先程お話したEYSCの統合も、プロジェクト・ドラゴンも、パーパスの実現を目指すという理解が社内全体に無ければ、導入すること自体も不可能だったと思います。

─近藤さん自身はEYに移られて、新しいパーパスにどのように適応されたのでしょうか。

自分たちの存在意義であるパーパスに忠実に働くということ自体は、私自身は当たり前のようにやっていたことではあります。だからこそ新しいパーパスである「Building a better working world」について、入社当初は自分なりに死ぬほど考え抜きました。どうやって、より良い社会の構築を実現するのかを考えた結果、グローバルにおけるEYとはことなり、規模も小さく、マーケットでの認知も低い日本のメンバーファームが、グローバルと同じことを掲げているだけでは実現できないと感じました。

内輪の標語ではなく、より良い社会の構築を実現するためには今よりも規模も大きくして、財務的な余力も更に持たせる必要があります。プロジェクト・ドラゴンにも、その考えはつながっています。「Building a better working world」というパーパスは見方によっては、「より良い社会を目指すのだから、規模の成長は必要ない」という捉え方をされるケースがあります。しかし、「より良い社会の構築を実現するためにはある程度の規模は必要」という考えのもと、成長戦略とパーパスとの整合性を図っていきました。私自身、前職は新卒からの入社だったので、パーパスを含めたカルチャー面を意識することはありませんでしたが、企業カルチャーを非常に重要視するEYのパーパスが自分に浸透するまでには時間を要しました。

─代表である近藤さん自身も悩みながら、パーパスをご自身のものにされたわけですね。それほどにEYでは「Building a better working world」を真摯に捉えている方が国内だけでなく、グローバルで多いということでしょうか。

そうですね。パーパスを心の底から信じて、実行している方が多いと思います。プロジェクト・ドラゴンに対する社内の反応も結果が出るようになってから非常にポジティブな方向に変化しました。私自身コンサルティング業界には長くいます。戦略、財務や人材、リスクのマネジメントなど一通り経験してきたので、先々に起きることや何をすればどうなるかというのは概ね予測できることばかりです。

しかし「カルチャーを守る」というのは私にとっては新しい経営アジェンダでした。入社当初は私自身、パーパスについて話しても口が上滑りしているような感覚を持つ場面もありました。しかし、パーパスを本気で信じているEYの社員たちと議論し、プロジェクトを進めてきたことで、今では自信を持って「Building a better working world」と言えるようになりました。

社会課題に関心を持たないコンサルタントは生き残れない

─コンサルティング業界に長くいらっしゃる近藤さんから見て、今後どのようにコンサルティング業界は変化し、どのような人材が求められると思いますか?

ウクライナ情勢や米中対立などの地政学的問題や気候変動を含めたサステナビリティー、新型コロナウイルスの疫学上の問題など、今起きている社会課題というものは世界全体に影響を与えるものであって、全ての企業が適応しなくてはいけない状況です。つまりは社会課題と経営課題がほとんどイコールの状態になっていて、コンサルティングファームに依頼してくださるクライアント一社だけが頑張っていても解決できない状況です。

そのため、社会課題を解決するためにはEY一社だけが動くのではなく、クライアントや政府、更にはNGOなど、さまざまな組織と協働していく必要があります。加えて、一社だけが勝つような戦略を立てても効果的ではない時代です。足元ではDX(デジタルトランスフォーメーション)に対するコンサルティングファームへのニーズは高いのですが、より直接的に経済安全保障や気候変動問題など、自分たちが取り組める社会課題にリーチすることも重要です。もし、自分たちでリーチできない課題があれば解決できる組織同士をつなぐ媒介者として積極的に動く――。社会課題に対してこうしたアクションがとれないのであれば、コンサルティングファームの存在意義は失われていくでしょう。業界全体でそういった世界を目指していくなかで、社会課題に興味のない人はコンサルタントになってはいけないと思います。業界に入ったとしても、恐らく業界も良くならないし、入社した本人もつらい経験をするのではないでしょうか。

EYは「Building a better working world」というパーパスに加え、「Create Long-term value as the world‘s most trusted, distinctive professional services organization(長期的価値をClient, People, Societyにもたらすことができる、信頼され、独特のプロフェッショナルサービスを提供する組織)」というアンビション・ステートメント(企業として目指すべき姿)を掲げている組織であり、こうした社会課題の解決に取り組む姿勢を示しています。特に若い方はパーパスやステートメントに対する共感を重視されている方が多いと思いますが、私たちの姿勢に共感できる方であれば、EYは最適なプラットフォームになると思います。

─幅広い社会課題に向き合える場として、事業会社からコンサルティングファームに転職される方も増えていると私たちも実感しています。異業界から転職される方に対してメッセージがありますか?

ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどコンサルタントとして磨くべきスキルもありますが、そういった技術を社会課題に応用するような柔軟性を持っている方に来ていただきたいですね。ビジネス上のロジック理解や資料作成能力は追々慣れてくるものだと思います。当社でも事業会社など異業種から入社した社員向けの研修やeラーニングには力を入れています。

また、冒頭でグローバルとの連携の垣根が低いという話もしましたが、英語が話せない方は機会を得、広げていくという観点で、苦労するかもしれません。私自身、EYへJoinするにあたり、多くの方と話しをする機会がありましたが、最後段階まで、ほぼ日本語で話すことはなかった印象です。

急成長の過程にあるEYで働く魅力

近藤氏

新卒以来、一貫してコンサルティング業界に身を置いてきた近藤氏だが、生まれ変わるとしたら消防士や警察官になりたいという。「彼らは火事があったら助けに行く。犯罪が起きたら助けに行くという、人命というシンプルなロジックで動けますよね。ビジネス上の損得や社会的な得失などをロカジカルに考えて、いろいろな事象を判断するのも好きですが、シンプルなミッションに従い行動できる仕事に対する憧れはありますね」(近藤氏)

─プロジェクト・ドラゴンによる急成長のもと、競合他社には無いパーパス経営を進めるEYに入社する魅力について教えてください。

テクノロジーに注力するコンサルティングファームが多い中で、他社とは違う成長戦略を掲げている点を第一に挙げたいですね。この成長戦略の過程を一緒に立ち上げていくというのは、コンサルタントとして楽しい経験になると思います。

2つ目はパーパスに対する本気度は圧倒的にEYが高いと自負しています。全社員がパーパスを共有した上で真摯に取り組んでいます。例えばダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネスや女性管理職や女性社員の比率を高めるというアクションは行政からの指導もあり、どのコンサルティングファームでも取り組んでいます。しかし、EYの場合にはそうした外形的な仕組やコンプライアンス意識以前の段階から、自然に取り組んでいることが特徴的です。コンプライアンスを遵守するためにやるのではなく、「Building a better working world」を実現するから取り組むという発想が根付いていますね。

─当たり前のようにやることだから、声高に宣言したり「やらなければいけない事」として取り組むという発想ではないということですね。

入社したときから誰もが非常にフレンドリーに接してくれる職場だなと思いましたが、パーパスの浸透が仕事のしやすさにも直結していると実感しています。 ある顧客で今まで獲得できなかった大型の戦略コンサルティング案件を受注できた際、勝因を振り返ると組織を統合したことによるシナジー効果もあったのですが、EYならではのコラボレーションする能力の高さだという結論に至りました。業績に結びつかなければ、パーパスも抽象的で漠然とした概念になってしまうのですが、コラボレーションが加速して業績と評価が高まる事例が積み重なっていくと、組織の良さと強さが共存できるわけです。

ですからカルチャーとして決して崩してはいけない部分を守りつつも、注力するべき点にはフォーカスするという両輪の経営ができている点はEYの魅力だと思います。コンサルティングファーム各社がそれぞれに成長している中で、EYは意図的な変化を起こしながらも、カルチャーが根底にあるという点ではユニークな存在だと自負しています。

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