採用企業インタビュー
超小型衛星を活用し「宇宙産業のプラットフォーム」を目指すアークエッジ・スペース
――1000名規模への拡大に向け、「宇宙」未経験者も積極採用
株式会社アークエッジ・スペース

- 株式会社アークエッジ・スペース 代表取締役CEO 福代 孝良氏
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世界で初めて、東京大学で開発・運用に成功した超小型衛星の技術を社会実装することを目的に、2018年に設立されたアークエッジ・スペース。超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューションを提供し、グローバルで新規ビジネスを生み出し、宇宙産業のプラットフォームになることを目指しています。
2025年には約80億円のシリーズB資金調達を実現し、民間からの受注に加えて、日本政府の経済安全保障重要技術育成プログラムや宇宙戦略基金からの採択を含め、総額300億円を超える規模のプロジェクトを推進するなど、急成長を遂げています。日本の宇宙関連企業としては唯一、「Forbes Asia 100 To Watch 2024」に選出されました。
事業拡大にともない、積極採用を進める同社。代表取締役CEOの福代孝良氏に、ミッション、強み、活躍できる人材像についてお話を伺いました。
「ハコ作り」ではなく、「総合システムインテグレーター」として
―― まずはアークエッジ・スペースのミッション、事業概要をお聞かせください。
私たちが目指しているのは、ミッションにも掲げているとおり「衛星を通じて、人々により安全で豊かな未来を」です。現代社会の基本インフラが行き届かない場所がいまだに数多く存在する中で、グローバルな衛星ネットワークがこうした課題の解決に貢献することができます。
衛星観測によって、今まで見えなかった森林奥地での活動や環境データなどを可視化し、衛星通信によって情報から遮断されていた人々に必要な情報にアクセスできるようにするなど、衛星は人々の生活を豊かにする付加価値を創出する力を持っています。グローバルで、新たなビジネスを生み出せるのです。100数十兆円規模へ拡大するといわれる宇宙産業において、衛星を活用したプラットフォームになることが事業領域です。
衛星という「ハコ」を作る会社だと思われがちですが、実際には自社で製造しているわけではありません。「このように作ってください」と外部に発注し、製作を依頼しています。私たちの強みは、衛星を必要とするビジネス領域を開拓し、そのソリューションを企画・デザインできることにあります。
たとえば、宇宙のどこに衛星を配備するか、どのような性能のカメラを搭載するか、どの通信手段を使うかによって、得られる情報や提供できる価値は大きく変わります。こうした全体設計を担えることが私たちの強みであり、いわば「総合システムインテグレーター」としての役割を果たしています。
製造業のエンジニアの方であれば、FAシステムに置き換えるとイメージしやすいかもしれません。工場内のどの位置にどのような性能のカメラを設置すれば課題解決や効率化につながるのかを考える。当社は、それを工場内ではなく地球全域で行っているわけです。
―― 現在の事業規模はどの程度まで拡大しているのでしょうか。
これまでに開発・運用を担った衛星は7機、パートナーとの共同開発・運用を含めると合計で14機の衛星運用実績があります。さらに、2025年末には3機の衛星の打ち上げを予定しており、年間数十機の衛星開発・運用を目指しています。
特に注目していただきたいのは、私たちの6U衛星が世界最高レベルの約2.5mの地上空間分解能を達成していることです。また、IoT衛星としても乾電池駆動レベルの地上IoT機器から大量のデータ受信に成功しています。かつて同地点での観測は2週間に1〜2回程度しか行えませんでしたが、小型衛星を多数運用するコンステレーション(衛星群)により、ほぼ毎日の観測が可能になりつつあります。
2025年には約80億円のシリーズB資金調達を実現し、民間からの受注に加えて、日本政府の経済安全保障重要技術育成プログラムや宇宙戦略基金からの採択も含め、総額300億円を超えるプロジェクトを受注しました。これにより、海洋のデジタル化から月面開発といった最先端の宇宙開発まで、幅広い開発事業を実施しています。
地域や生活者の視点で必要なものを考える、徹底した「現場主義」
―― 具体的には、どのような取り組みがあるのでしょうか。
衛星が力を発揮するのは地上インフラを置けない場所。その一つが「海上」です。インド太平洋地域は、経済・安全保障上の重要性が高いのですが、通信がつながらない場所が多い。そのインフラを構築していく役割を担っています。洋上を航行する船舶の位置情報把握、船舶同士の情報交換をはじめ、物流効率化や安全管理など、さまざまなサービス提供につながります。
「農業」も重要視している領域です。現在すでに、全世界の農業環境に関する数年分のデータを、簡単に閲覧できるようにしています。これらのビッグデータをAIで解析し、ソリューションとして活用できるようにしていきます。
実際に、ラテンアメリカ諸国との協力も本格化しています。パラグアイ宇宙庁と農業分野におけるサービスの試験運用を進めており、ブラジルにおいてもIBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院)、EMBRAPA(ブラジル農牧研究公社)、パラ州政府などとの連携を進めています。IBAMAとの協力においては、森林監視にとどまらず、石油開発が進む海洋環境の監視事業に関しても実証を開始しています。
気象観測については、日本では気象衛星「ひまわり」や「アメダス(地域気象観測システム)」、地上のレーダーなどにより雨雲の動きや降雨量の情報を得られますが、世界にはこれらがない地域も多いので、私たちの技術を役立てられるでしょう。火山活動の監視も可能です。また、アフリカやアマゾンなど、そして日本の山奥も含めて、インフラが整備されていない地域での情報通信をつなぐ役割も担っています。
「安全保障」の分野にも取り組んでいます。日本の近隣には危機を抱えている国々がありますが、現地でのカメラ設置や情報通信は自由にはできないので、情勢の把握に衛星が必要となります。
地上インフラが整っている日本国内であっても、大災害などで既存のインフラが機能を失った際には、衛星を活用した代替通信手段や情報収集システムを迅速に提供し、復旧活動や被災者支援に貢献する責務があると考えています。
私が大学生のとき、阪神大震災が発生しました。そのとき、「現地の人たちを放っておけない」という思いから、学校を休んで半年間ほど神戸でボランティアをしたのです。そのときの体験からも、迅速に地域を復興させる重要性を強く感じています。
当面の課題に取り組みながら、自分たちの能力を高めていき、できる範囲を拡大していきます。将来的には「月」も視野に入れています。世界各国で「月面産業」を推進する動きがありますが、月にはまだ通信ネットワークも測位ネットワークもありません。月での活動インフラを提供していくことも私たちの責務と捉え、すでに取り組みを始めています。
―― 事業を行う上でのアークエッジ・スペースの独自性、強みとはどこにあるのでしょうか。
「ハードウェア」と「システム」の両輪をしっかりと作れることが一番の強みです。そして、「ソリューションサービスを必要としている方々にいかにして届けるか」に徹底的にこだわっています。私はある人に言われたことがあります。「福代さんは徹底的な現場主義者ですよね」と。どんなに優れた衛星を作って、安価で提供したとしても、現場のリアリティが分かっていないとまったく使えないこともあります。
その点でいえば、現場を理解している。地域や、そこで暮らす生活者の視点で考えられるのです。
特に、私たちが開発した地理空間情報プラットフォーム「ArkEdge Insights」は、この現場主義の体現です。多くの衛星企業が自社衛星のデータ配信に限定されている中、課題解決を目的とするユーザーにとって重要なのは、衛星の種別や提供者ではなく、必要な観測頻度と信頼性の高いデータが、専門家でなくとも扱える形で統合されていることです。
「ArkEdge Insights」では自社衛星にこだわらず、Terra、Aqua、GCOM-C、Sentinel-2、Landsatなどの無償でアクセス可能なオープン衛星データも含め、利用可能なあらゆるデータを統合・解析して提供しています。また、可能な限りオープンな構造とすることで、第三者がこのプラットフォームを活用して独自のサービスを提供できる柔軟なモデルを目指しています。
実際にパラグアイでは、大豆生産モニタリングのスマホ・タブレットアプリや河川水位観測・予測アプリの実証を進めており、ブラジルでは船舶監視・管理アプリの実証も決定しています。現地のニーズに対応したソリューションの開発、そしてそれを効率よく実現可能にするパートナーシップの構築を重視しているからこそ、こうした具体的な社会実装が可能になっているのです。
アマゾンの森で学んだ「現場の声」を聞く大切さ
―― その強みはどのように身につけられたのですか。創業までの歩みをお聞かせください。
私はもともと宇宙エンジニアではありません。学生時代に「地域開発」に興味を持ち、「砂漠緑化を手がけたい」と考えたことから、大学では森林科学を専攻しました。20歳のころにはブラジルに渡り、アマゾンの木材企業で1年間研修を受けました。
当時は、COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催され、環境保全への意識が高まっていた時期。私が研修していた木材業者は「森林を破壊している」と悪者扱いされたのです。しかし私が森林資源のある奥地で見ていたのは、木を切って生計を立てる素朴な人々の姿でした。先進国の冷暖房が効いた部屋から批判している人々の方が、よほど環境に負荷をかけている。頑張っている人が評価されず、現実を知らない人が上からものを言っている現実に、社会正義の観点からおかしいと感じました。
この体験が、私の現場主義の原点です。当時は携帯電話やパソコンも普及しておらず、広大な熱帯雨林の把握は困難でした。そこで、衛星リモートセンシングを学び、研究や活動に活用してきました。衛星技術はインフラが未整備な地域でこそ役に立つと実感し、後に宇宙技術を活用して地球規模課題に取り組む事業の創業の原点となったのです。
その後、環境分野でJICA(国際協力機構)の専門家や外交官としてブラジルで活動する中で、衛星リモートセンシング技術を活用した生物多様性保全や貧困削減にも取り組んできました。
特に印象深いのは、ブラジル・アマゾン地域で日系移民の方々がアグロフォレストリーを実践している現場を見たことです。かつての収奪的な農業とは対照的に、森林を維持しながら農業生産を行っている。こうした持続可能な農法による生産物は、これまで他の環境負荷の高い生産物と同様に取引されることが多かったのですが、衛星技術により生物多様性や炭素固定などの観測が効率的に可能となれば、環境的価値が正当に評価される仕組みにつながる。生物多様性やグリーン調達などの取り組みが正当に評価され、社会的価値がつながっていくための手段として「衛星」を活用できる。その確信の原点となったのが、この時期の体験でした。
―― 自然に向き合う専門家から宇宙開発事業への転身は、大きなキャリア転換となったのですね。
私は人工衛星を活用したプロジェクトを複数経験していたので、2013年、外務省から内閣府宇宙開発戦略推進事務局に出向したのです。日本では2008年ごろに宇宙政策が大きく変わり、「研究開発」から「人々の生活に役立てる」方向へ進んでいました。私が内閣府に在籍していた時期は、イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」など、世界的に民間の宇宙関連サービスが広がりはじめたタイミングです。
日本では、2003年に東京大学の中須賀・船瀬研究室が世界初の超小型人工衛星「キューブサット」の軌道投入を成功させていましたが、民間産業としては世界から立ち遅れていました。内閣府では民間の宇宙産業を強化するための議論をしていたのですが、いくら政策を作って予算をつけたとしても、担い手がいなければ始まりません。そこで、私が手を挙げたのです。まずは東京大学特任准教授の立場で産学連携やインキュベーションに取り組み、2018年にアークエッジ・スペース(旧・スペースエッジラボ)を設立しました。
このように、私のバックグラウンドは「エンジニア」ではないので、特定技術へのこだわりがありません。それこそが強みだと思います。これまで、さまざまな課題を抱えた「現場」を見てきたからこそ、技術にこだわらず現場の視点で必要なソリューションを生み出していきます。
そして当社のエンジニアたちも、自身が開発しているものを「どのような人たちが、どのような場面で活用するのか」を具体的にイメージすることで、格段にパフォーマンスが向上します。アマゾンの奥地で森林保護に取り組む研究者、太平洋を航行する漁船の船長、パラグアイの農家の方々といった、実際のユーザーの顔や暮らしを思い描き、彼らにとって本当に価値のあるサービスを届けたいという想いが生まれる。そうした現実的な目標があることで、「このアプローチよりも、もっとユーザーにとって使いやすい方法があるのではないか」といった柔軟な発想や創意工夫が自然と湧き出てくるのです。
グローバル展開を支える「現地密着型」のアプローチ
―― ラテンアメリカでの取り組みが本格化していますが、海外展開において重視していることは何でしょうか。
アマゾン地域のように情報や通信といった現代社会の基本インフラが行き届かない場所が未だ数多く存在する中で、人々が必要な情報にアクセスできない状況があります。また環境や社会に配慮した重要な取り組みを行っているにもかかわらず、その情報が消費地に届かず、結果として不利益を被り続ける現状があります。
グローバルな衛星ネットワークこそが、こうした課題の解決に貢献できると期待されています。そのためには、実際に現地のニーズに対応したソリューションの開発、そしてそれを効率よく実現可能にするパートナーシップの構築が必要不可欠です。
実際に現地でサービスを提供するには、現地パートナーとの提携、およびサポートが可能となる事業者の育成が不可欠です。特に、これらのサービスの最大のユーザーとなるのは政府機関であり、これらの機関は、通常、現地企業に対してシステム開発から運用までの業務を委託しています。そのため、現地の事業パートナーを育成し、連携していくことが非常に重要です。
気候変動対策が急務となる中、EUDR(EUによる森林減少防止のための製品取引規則)の導入などが進むことで、環境配慮型の生産が新たなビジネス機会となり、ラテンアメリカとの連携に注目が集まっています。
今年、COP30がブラジル・ベレンにおいて開催予定であり、また昨年来の日本とブラジルの首脳による相互訪問を契機として、グリーンイノベーションや科学技術協力に対する期待が高まっています。私たちとしても、大学発ベンチャーとしてのイノベーションの経験を活かし、パラグアイ及びブラジルでの協力を起点として、グローバルな宇宙ビジネスの展開を力強く進めていく所存です。
現時点での能力は問わない。チャレンジし、成長していける人が活躍できる
―― 事業拡大にともない、採用を強化していらっしゃいます。アークエッジ・スペースで活躍できるのは、どのような人でしょうか。
10兆円企業を目指しているので、最終的には10万人単位の規模になる必要があると思っていますが、最初のステップとしては現在の100名強から1000名規模を目指します。採用選考の方針として、現在の能力はそれほど重視していません。ハイレベルな能力を持っているけれど現状に満足して「自分の領域はこれ」と制限をかけている人よりも、新たなことに挑戦して成長していける人に期待しています。
今できないからといって卑下するのではなく、数年後に実現したい姿に向けて一歩一歩努力できる人を歓迎します。宇宙関連事業の経験も必要ありません。これまでの宇宙産業の在り方に縛られず、新たな価値を作っていくことが求められますから。
チャレンジしなければ、月も宇宙も切り拓くことはできません。チャレンジしているからこそ、80億円の大型資金調達をいただいたり、宇宙戦略基金に採択いただいたりしているのです。儲かるかどうか分からなくても、やるべきことをやっていく。ですから、チャレンジしない方より、チャレンジして失敗してきた方を評価します。
チャレンジ精神と同様に重要なのが、オープンなコミュニケーションとコラボレーションです。仮に卓越した技術力を持つエンジニアが一人いたとしても、周囲との連携がなければイノベーションは生まれず、事業も前進しません。
私たちは、宇宙産業のプラットフォーム構築を目指していますが、それは一社で完結できるものではありません。閉じた体制ではサプライチェーンの形成も難しく、データサービスにおいても、自社データしか使えない、あるいは特定の環境でしか活用できないようでは、ユーザーにとって利便性が損なわれます。
だからこそ、私たちは自らが生み出した技術やサービスをオープンにし、コミュニティを育て、他社とのパートナーシップを重視した協業を進めています。実際に、日本の製造業の参画も促し、サプライチェーンの構築を進めており、年間数十機の衛星開発・運用を目指す中で、多品種少量生産に対応可能な共通化・標準化を進めています。
現在のスキルに固執せず、外部の知見を柔軟に取り入れながら成長していく姿勢を持つ方こそ、当社で力を発揮できるでしょう。
長期的な視点に立ち、多様な取り組みを進めている中で、幅広く学び続ける姿勢も、特定の領域に専門性を深めていく道も、どちらも歓迎しています。重要なのは、自らの成長が誰かの役に立ち、組織全体の前進につながるという意識を持てることです。
そうした広い視野でビジョンを描き、周囲と協調しながら価値を創出できる方と、ぜひ一緒に未来を築いていきたいと考えています。
―― 最後に、アークエッジ・スペースが目指す未来について、改めてお聞かせください。
世界的な安全保障環境が大きく変化し、気候変動の影響や食糧・エネルギー問題が深刻化する中、衛星技術への期待や重要性は一層高まっています。こうした技術を特定の大国や大企業のみに依存するのではなく、自律的かつ民主的な協力体制を構築することが求められています。
私たちは単なるサービス提供や機器の輸出にとどまらず、人材開発や共同によるイノベーションの創出を重視しています。大学発ベンチャーとして、研究開発段階から事業を展開しており、各国が求める技術水準に適した協力が可能です。
現地の能力開発を伴うイノベーションによって、農業、防災、気候変動対策などの分野に取り組むことで、日本にとっては、広大な土地や豊富な資源を有する地域をフィールドとして、グローバル展開可能な技術の社会実装を実現するための足がかりとなります。これは、相互補完的なWin-Winの関係構築につながるのです。
私たちと一緒に、宇宙を通じてより安全で豊かな未来を築いていきませんか。挑戦する気持ちを持った皆様をお待ちしています。
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