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求めるのは伝統から飛び立つ行動力――
自動運転とモビリティサービスを手がけるホンダモビリティソリューションズ

ホンダモビリティソリューションズ株式会社

※このインタビューは2023年6月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
高見 聡 氏

MaaSの台頭や自動運転技術の進化など、大変革期の中にある自動車業界では「モノ売り」から「コト売り」へのシフトが加速しています。
Honda(本田技研工業株式会社)が2020年に設立したホンダモビリティソリューションズ株式会社(以下、HMS)は自動運転サービスの事業開発や、カーシェアリング・バイクサブスクリプション等といったHondaのアセットを利用したモビリティサービス事業を展開しています。同社の強みは二輪、四輪、パワープロダクツなど、Hondaが75年に渡って培ったアセットと、スタートアップのようなスピード感の両立にあります。

HMSが描く未来のモビリティビジネスと、前例の無いビジネスを開拓する社員に必要な資質とは――。同社代表取締役社長の高見聡氏にJAC recruitment モビリティチームの山内勝と小口莉奈がうかがいました。


ホンダモビリティソリューションズ株式会社
代表取締役社長 高見 聡 氏

1987年 本田技研工業株式会社入社。
国内の四輪営業現場や、広報部で経験を積み、2002年から米国のアメリカンホンダモーター駐在。 2007年に帰国し、広報部でグローバル・国内向け発信に携わる。
2013年から国内営業領域、 株式会社ホンダカーズ大阪 取締役、本田技研工業株式会社販売部 九州ブロック統括長などを経て、2018年、営業企画部長。 2020年より、モビリティサービス事業本部 本部長 兼 ホンダモビリティソリューションズ株式会社社長に就任。

1. 一歩先の未来と、数歩先の未来が共存する組織

―HMSが手がける自動運転サービスの事業開発と、カーシェアリングをはじめとしたモビリティサービス事業ついて教えてください。

求めるのは伝統から飛び立つ行動力――自動運転とモビリティサービスを手がけるホンダモビリティソリューションズ 自動運転サービスの事業開発では、ゼネラルモーターズとその子会社であるクルーズ、Hondaの3社で共同開発した自動運転専用車両「クルーズ・オリジン」の開発を進めています。2020年代半ばには都心部で自動運転サービスを開始する予定です。
一方のモビリティサービス事業ではカーシェアサービス「EveryGo」を2017年から運営※1しています。サービス開始から5年が経ち、会員数は7万人を突破しました。また、2022年11月には、個人配達員向けバイクサブスクリクションサービスを、2023年5月にはe-Bikeのサブスクリプションサービスの事業トライアルを開始し、事業の幅を拡大しました。
※1 2021年4月に事業運営をHondaからHMSに移管

Hondaではモビリティの製造・販売という、「モノ売り」のビジネスを75年に渡って進めていました。近年は車やバイクなどのモビリティと消費者との関係性が多様化し、「モノ売り」だけでは十分ではない時代が来ています。そこで時間単位での利用や、新しいテクノロジーを活用したMaaSの利用など、今までに無いサービスを始めることを目的にHMSが誕生しました。
私たちの強みとしては二輪、四輪、パワープロダクツなどHondaのアセットを活用しながら、今までに無い自由な発想とスピード感を持って進められる点にあります。Hondaの強みを生かしながらも、新しいサービスの最先端にいることを実感できる組織作りを目指しています。

―数年先の事業化を目指す自動運転サービスと、着実な事業展開と成長を目指すカーシェアやバイクサブスクなどのモビリティサービスが共存する事業モデルは非常にユニークだと思います。二つの事業はどのようにリンクしているのでしょうか?

自動運転専用車両イメージ 足下の事業としての各モビリティサービスと、少し先の未来を見据えた自動運転サービスでは事業の進め方が異なりますので、部門を二つに分けた経緯があります。しかし、二つの部門は密接につながっていて、お互いが有機的に機能しなければならないと考えています。

たとえばカーシェアリングサービスに対するお客様からのお問い合わせやご指摘は、数年先に自動運転サービスにも関わってくる内容が多々あります。一例を挙げると、EveryGoではペットの乗車を許可しており、これは非常に社会的意義があることなのですが、お客様によってはペットの乗車に対して拒否感を示す方もいます。
こうした反応に対して「自動運転サービスにペットを乗せたらどういったことが起きるか」といった議論につなげていく必要があるのです。HMSとしてはトップダウンでは無く、お客様や現場の声からサービスを生み出す体質を目指しています。今、手がけているビジネスに寄せられるお客様の声を、いかに将来の自動運転事業につなげていけるかが鍵だと思います。

2. 大企業のアセット×スタートアップのようなスピード感

―現在の自動運転サービスの進捗についてお伺いします。ゼネラルモーターズとその子会社であるクルーズ、Hondaの3社で共同開発による自動運転専用車両「クルーズ・オリジン」を発表し、米国でのテストを開始しました。現場ではどのような印象を持たれましたか?

私も試作車に乗りましたが、驚くレベルにまで到達しています。最初に、クルーズAVという自動運転車に乗ったのですが、「ここまで出来ているのか」と驚きました。最初は少し「大丈夫なのか」と身構えていましたが、次第に慣れてきて、無人で運転が行われていることを忘れていました。
クルーズ・オリジンには、そういった自動運転モビリティ特有の気持ちの変化に加えて全く異なる感覚がありました。乗客が対面するようにして座るシート構成で、窓が広く、車高が高い――全く新しい乗り物だという印象を乗車した人関係者全員が覚えました。

乗車後の日・米のチーム内でのメンバーのディスカッションでも、ここで何ができるかというテーマが一番盛り上がります。例えば、カラオケができたらいいんじゃないかといった具体的なアイデアがたくさんでており、この新しい乗り物で何ができるかと考えるのはワクワクしますね。

―「ここで何ができるか」を自分事として想像できるというのは、モノがある強みですね。UX(ユーザー体験)戦略を練る上でも非常に重要なアプローチです。

UXの設計とリサーチはHondaが最も得意とする領域です。クルマを使って何ができるかというアイデアはHonda内に潤沢にあります。HMSの強みはモビリティと、そこに付随する知見や技術があることです。先ほどお話ししたようなアイデア以外にも、さまざまな選択肢があります。モビリティがもつ可能性をサービスに落とし込むのがHMSの役割です。
一方で人間が運転するよりも安全な運転技術は確立しつつありますが、安心して乗車するという心理の醸成には別のハードルが存在します。自動運転が一般化してから初めて乗車するという方も一定数いますので、時間をかけてでも確実に安全性を立証していくアプローチが欠かせません。

こうした新しい技術の普及は、これまでにHondaでも経験してきたことです。エアバッグ導入の際にも、安全性の立証と普及に苦労した経緯があります。全く新しいものを導入する際の安全性や機能への理解促進とは別に、お客様自身が受け入れ、決断する難しさが存在します。ですから、決断しやすい環境を用意することもHMSのミッションの一つです。
その一環としてサービス開始前に、一人でも多くの方に自動運転サービスを体験いただくと考えています。今は身近な人や同年代の人の言葉が力を持つ時代ですので、さまざまな世代の方が体験する機会を作り、自動運転サービスに対する精神的なハードルを下げることが今後の課題です。
同時に、万が一の事故やトラブルが起きたときの情報公開や対応などにも真摯に向き合い続ける必要があります。ソフトウェアではリリース後のバグを改修できたとしても、ハードウェアでは不具合があれば全台リコールの対象となります。
新しい技術を普及させたり、新しい事業の受容性を高めるためには、事業リリース前の設計ももちろん大事ですが、リリース前にすべての課題を解決することはできません。ですので、事業化した後もお客様に真摯に向き合い、そして安心・安全への追及を続けることで、お客様とともにサービスを育てていくことが至上命題と考えています。

3. 求めるのはファーストペンギン

―Hondaが長年培ってきた技術や経験の先に、自動運転サービスやカーシェアリングをはじめとしたモビリティサービス事業が存在していることが理解できました。貴社では自動車業界以外の方を積極的に採用されているそうですが、どういった方を求めているのでしょうか?

高見氏 現在いる社員に共通しているのは、新しい事業を自分で生み出したいという意識の強さです。自動運転サービスに関わる社員であれば、「世の中にまだ存在しないサービスを作りたい」「あのサービスを作ったのは自分だと言いたい」という気持ちが強い傾向があります。カーシェアリングをはじめとしたモビリティサービス事業においてもその要素は同じですが、こちらは「Hondaのアセットを使って新しいことをする」という点に強い魅力を感じている社員が多いですね。
実はクルマが好きで入社したという方は少なく、むしろ「新しいことをやりたい」という意欲の高い社員が集まっていますし、採用する際にもそういったマインドを重視しています。クルマに対する知見はHonda社内に集まっていますので、Hondaという大きな企業の枠組みから飛び出して、ファーストペンギンになれる人材がHMSには必要なのです。

自動車業界の中に閉じこもって理想を語っていても評論家の域から抜け出せません。「自分はこういうサービスを作りたい」「そのためにはこういう要素が必要だ」という意思を持った人に来て欲しいと思います。付け加えるとすれば、空想ではなく、自分の実体験からにじみ出た意志のある方が望ましいですね。

―自動車業界にはいない人材を求めているということですね。HMSではリモート勤務やスーパーフレックス勤務など柔軟なワークスタイルを採用していると伺いました。これらの制度も自動車業界では珍しいことではないでしょうか。

コロナ禍に創業したこともあり、その当時からワークスタイルは柔軟さを重視していました。社員の平均年齢も若く、子育てとも重なる世代ですので、出社しなくても首都圏のサテライトオフィスも活用できる環境を用意しています。その中で現場やお客様と直接触れあう機会を積極的に増やしてほしいと思っています。
一方で大きな裁量がある分、責任も大きく評価も厳密に行います。ゼロから新しい事業を生み出すには、特定の領域において強い自信を持った人材が必要で、トップダウンではなく現場の底力でやり切る意志が欠かせません。そういった主体性の強い方に来て欲しいと考え、人事制度や企業カルチャーを設計しています。

当社の5つの行動指針の中に「Do Tank―頭で考えるだけでなく、他と協力して行動を起こして行く」という項目があるように、最後まで実行できる人を求めています。夢だけを語って後は誰かに任せるのでなく、一番難易度が高い「実行」まで担える人であれば、自動車業界外の方でも応用できる場面は豊富にあると思います。

―HMSのカルチャーについても伺います。貴社のウェブサイトにはミッション、ビジョンと共に5つの行動指針が掲げられています。こういったHMSのカルチャーはいつ頃にできたものでしょうか。

当初のミッションやビジョンは創業時に数人が一週間で作ったもので、そこから何度もアップデートを重ねています。行動指針については全員の評価にも直結する重要な指標なので、創業後に入社した社員も交えて作成しました。

HMSの企業カルチャーはHondaとは異なるものだと思われがちですが、「変革への挑戦」「仲間と共に」「透明性ある言動」「創意工夫」「Do Tank」という5つの行動指針はHonda出身の私からすると、「まさにこれこそHonda」という要素しかありません。こういった行動指針を新しいメンバーが作ったことが、私にとっては非常に喜ばしい出来事でした。

とはいえHMSは創業3年目ですので、できあがったカルチャーはありません。事業も含めて、これから自分たちで形成していく段階です。

―目指す未来像が明確な一方で、挑戦するべき課題も多いからこそ、社員に求める資質も高く、裁量も大きいということですね。本日はありがとうございました。


  • 山内 勝
    担当コンサルタント
    山内 勝
    2019年にJACへ入社し、2021年までは横浜支店にて日系・外資系製造業領域を担当。
    2022年からは東京本社に異動し、モビリティ領域を担当。
    現在は同領域のマネージャーとして従事。
  • 山内 勝
    担当コンサルタント
    小口 莉奈
    大学卒業後、HRテックベンチャー企業に入社。新卒に特化した両面型人材紹介コンサルタントとして年間1,000名の学生面談、ベンチャーから大手と幅広い企業の新卒採用支援に従事。
    その後、2023年にJAC Recruitmentへ中途入社。
    現在は日系大手製造業の中でも自動車業界を専門としているチームに所属し、採用支援・キャリアサポートを担当。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


当サイトを運営する、JACの編集部です。 日々、採用企業とコミュニケーションを取っているJACのコンサルタントや、最新の転職市場を分析しているJACのアナリストなどにインタビューし、皆様がキャリアを描く際に、また転職の際に役立つ情報をお届けしています。

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