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AIを用いてインフルエンザを判定、AI医療機器開発により医療のさらなる進歩に貢献するベンチャー企業のアイリス

アイリス株式会社

※このインタビューは2023年10月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
沖山 翔氏
アイリス株式会社 代表取締役 医師 沖山 翔氏

病院や医師向けにAI関連医療機器を開発するアイリス株式会社。
ファーストプロダクトとなる「nodoca」は、AIを用いてインフルエンザを判定するAI医療機器です。2022年に販売が開始・保険適用となり、多くの患者さんが利用できる環境も整いました。今後は集積したデータを活用・発展させて、対象疾患を拡大していく未来を見据えています。

今回は、アイリス株式会社 代表取締役で医師の沖山 翔氏に、創業の経緯や現在取り組んでいる事業、求める人材像や今後の展望などについてお話をうかがいました。

アイリス創業は、テクノロジーを用いて医療の現場を変えていきたいという想いから

―まずは沖山さんのご経歴や、アイリス社を創業した経緯についてお話をおうかがいさせてください。

私は医師のバックグラウンドですが、医師で起業家というのは、2017年のアイリス設立当時でもかなり珍しかったのではないか思います。

医師としてのキャリアのスタートは都内の病院勤務からですが、その後沖縄や小笠原諸島の離島でも働きました。沖縄では石垣島、波照間島などで勤務しました。また、日本の最東端である南鳥島は島民が百数十名しかおらず、その島の唯一の医療施設で働いていたので、ケガや内科、泌尿器科、耳鼻科など全ての方を自分が診ている状態でした。

そのような経験から、都内でも一等地の場所と医療環境が整っていない場所との間に、たまたま日本の医療の両極端を見る機会を体験したわけですが、提供される医療の質は、医療環境が整っている東京の施設が優れているのは当然です。しかし、医療は社会のインフラであるはずなのに、現場でこのような差が生まれてしまうのはおかしいのではないか?と考えるようになり、それをなんとかしたい、と思ったのが創業のきっかけでした。

―日本の中の医療格差を、身をもって体験したわけですね。

たとえば、アフリカの一部で医療的に後れを取っていることは、今の小学生なら当然のように知っています。ところが、現地に自分が行って全責任を負う経験をした人は非常に少ないと思います。離島での経験の中で、患者さんからは「あなたが救えなければ、私は死んでしまう」、そのような言葉を掛けられたこともあります。

医療の格差をなくしたいと思っても、病院の中からだけでは変えることはできません。昔からある課題が未だに解決していない領域ではありますが、私たちが今持っている技術やノウハウ、環境を用いれば、今ならできるチャンスがある。世の中を変えるのは大企業ではなくむしろスタートアップであると言われている時代、ここが自分の闘うべきフィールドではないかと思って2017年11月に事業をスタートさせました。

咽頭画像と問診情報等を併せてAIで解析する「nodoca」

―貴社の考えるビジネス領域はどこになりますか?

当社は、大学病院や先端病院の中だけをもっと先端にしていこうと考えているのではなく、どちらかというとむしろ反対側を目指しています。

自分も家族も実家の両親も健康で困りごとがない、という人は世の中には誰一人いません。多かれ少なかれ誰もが医療に触れる瞬間があるはずなので、そこをきちんと未来の医療にしてきたいという思いがあります。

病気になった場合、日本人の95%が街のクリニックへ、残り4%は大病院、1%は大学病院などの特別施設に受診すると言われています。私たちは広く浅く多くの人の医療を変えていきたいと思っているので、大病院よりも診療所やクリニック、〇〇診療科よりは内科全般、総合診療科といったところを対象としています。

―2022年12月より販売開始となった「nodoca」について教えて下さい。

私たちのファーストプロダクトである「nodoca」は、インフルエンザの診察から検査完了までを、診察室内でスピーディーに行えるAI搭載医療機器です。判定開始から数秒〜十数秒で感染症に特徴的な咽頭所見や症状が検出されるので、患者さんへの負担が小さく、その場で検査結果をお伝えできるのが特徴です。

何年後かに医療従事者に「あなたの人生で初めて手に取ったAI医療機器は何ですか?」と質問した際に、おそらくほとんどの医師が「nodoca」と回答するようになっていくと思います。「nodoca」は主にクリニックで使用される医療機器です。私たちは、多くの医師や患者に届くAIを作っていきたい、そう考えています。

また、そうやって多くの医師が手にし、多くの患者さんの診察に使われることで成長していくプロダクトでもあります。自分の診療が未来の医療をつくるというコンセプトが評価され、グッドデザイン賞で、2023年度の経済産業大臣賞(金賞)を受賞しました。

―「nodoca」はどのようにして発売に至ったプロダクトなのですか?

何を保険適用にするかは、医師や看護師の代表、国の代表、経済界の代表などさまざまなステークホルダーが参加して決定されますが、AIに医療費を充てていいかは、様々な議論がなされてきた問題でした。医者の仕事を奪うのではないか?と考えられていたからです。

私たちが利己的なプロダクトにしていたら保険適用とならなかったと思いますが、みんなが恩恵を受けられるになるものを作ったこと、それに加えてクリニックなどマス向けの製品にしたことも大きかったと思います。その結果、多くの方に納得されて発売・保険適用に至りました。

―なぜAIによる診断支援医療機器をプロダクトとしたのでしょうか?

当社は、医療のど真ん中である「診断」に関わる部分をやりたいと考えていますし、実際それができる集団です。私には医師というバックグラウンドがあるので、医療の1丁目1番地といえば診断そのものだと思っています。医療行為に踏み込む内容だけれど価値の高いことだから、AI医療機器の分野でやっていきたい、と思ったのがプロダクト開発の始まりでした。

普通であれば、やったことのない分野だと「規制」「相場観が無い」「門外漢」といった言葉がアプローチを阻むものですが、絶対に達成したいという気持ちと、それを一緒に実行できるチームがあったので、開発・承認・販売までやってこれたと思っています。

―ビジネス的にはマネタイズも考える必要があると思いますが、その点はどうお考えですか?

当社のバリューの中で「ベストから考える」というのがあります。そこで考えられる最強のビジネスモデルは「保険診療」です。

一般的なビジネスモデルは、サービス提供者と受益者がお金とサービスを交換するのでゼロサムになります。しかし、医療の保健診療は第三者がいるモデルです。国がお金を出してくれる、病院は儲かる、患者さんは本来必要となる金額の1~3割負担で10割のサービスが受けられるというゼロサムな関係ではないのです。当然国の貴重な税金を使っているため、それに値するかを審査するプロセスがとても大変なのですが、これを超えられれば、ビジネスモデルとしてベストなものとなります。

この非常に高いハードルを私たちが超えられたことは、事業として大きなマイルストーンだったと感じています。

ディープテックのフェーズから事業をスケールさせるフェーズに

―社内のチーム・組織について詳しく教えてください。

当社の歴史を振り返ると、最初の5年間はザ・ディープテックだった時代です。ファーストプロダクト発売に至るまでの5年間のなかで、社会からの信頼を得ることも厳しく、不遇の時代も経験しました。そんなディープテックのフェーズを乗り越えて、現在は大きくスケールしていくフェーズに突入しています。

ディープテックは社内部門としてあり続け、これからも技術を開発し続けますし、新たなフェーズでは、社会に価値を創出していくチームが立ち上がって動いている。現在そんなタイミングの中にあります。

それぞれのフェーズで必要な気質はパーソナリティやケイパビリティも当然異なります。前者は腕っぷしに自信がある人達で、自分が事業を一から育てた経験がある人、〇〇だったら誰にも負けないという人が集まって一つのチームを構成しています。一方の後者のフェーズではスペシャリストの参画が多く、医者も正社員で5~6名いますし、AIエンジニアのスペシャリスト、ハードウェアエンジニアをやっていた方が集まってきています。

アイリスは国内市場だけでなく将来的に世界展望も視野に

これからの展開について、おうかがいします。今後海外進出も見据えているのでしょうか?

当社のAI技術やデバイスに国境はありません。ですから、世界で戦っていくためには各国で承認を取る必要はあるものの、十分なノウハウは持ち得ているので粛々とやっていきたいと考えています。

医師の診察は世界中どこでも共通で、「喉を見せてください」「胸の音を聞かせて下さい」から入り、これはずっと変わりません。そのため、プロダクトを作る際は、日本の医療課題を解決するにとどまらず、世界へも目を向ける必要があると思っています。

実際のところ、特定の海外進出を外部へコミットしているわけではないので、「〇年後に海外に行く」と明確には約束はできませんが、最近では世界的なスタートアップの祭典であるスタートアップW杯の東京予選で優勝し、日本代表として世界大会に参加するなど、海外展開に向けても1歩ずつ前進しています。

当社の認知率はまだ1%ほどしかないと思いますし、世界に行ったらさらに低い認知率なので、これからだと思っています。もっとプレゼンスを示して、世の中の人に知ってもらって賛同者を増やしていきたいですね。当然競合も増えると思いますが、それこそが私たちの進むべき道だと思っています。

―医療をよりよくしていきたいという未来を見据えた時に、新たなプロダクトの準備はされていますか?

はい、現在同時に開発しているプロダクトはたくさんあります。最初のプロダクト自体もさらに成長させていく過程にあります。 第1号の機器は現場で使用されるたびに、データが当社のサーバーに蓄積されていきます。使用されれば患者さんはうれしいですし、病院側は売上が立ちます。当社としては機器を購入してもらって終わりではなく、日々の診療で使用されることで収益とデータをいただき、さらに開発に繋げることができる、まさに「三方よし」のビジネスモデルです。

収集データを使って機器の精度も伸びる、新しいAIが開発できる、それによって未来の患者さんが救われる、といった好循環ができつつあります。

求める人材像は「知的好奇心旺盛な人」

沖山 翔氏

―貴社がこれからのフェーズにおいて求める人材像についてお聞かせください。

今当社が求めているのは、事業開発推進ができる方、そしてスペシャリストです。

まず、事業開発を推進できる方ですが、いかに取り扱う製品に魅了されるか、自分の製品を信じられるかがポイントとなります。ディープテックはそこに対するソリューションであり、100社あったら95社は息絶えてしまう中、飛び抜けた5社だけは社会を変えられると言われています。自社製品に魅力を感じてもらえるよう、そこを目指していきたいです。

次に、スペシャリストですが、単なる均一的な集団でないところが当社の面白さです。AIチームしかいない、ハードウェアしかないスペシャリストの会社はたくさんありますが、私たちはAI、ハードウェア、ソフトウェアを社内で作っています。そこにメディカルの知識があって、それをどうやって知的財産化するかを日々考えている集団だと言えます。

知的好奇心ドリブンで、自分の専門はここにあるけれど全てを知りたい、というタイプの人には非常にマッチした会社だと思います。

―最後に、医療やスタートアップに興味がある方へ向けてメッセージをお願いします。

当社の行っている事業は、「価値のど真ん中」と「シンプルにわかりやすいこと」というこの2つレンズの重なりだと思っています。

「いい診断って何ですか?」と言われたら、それは正しい診断に違いないのですが、正しい診断というだけでなく精度が上がっていく診断ならよりよいはずです。私たちは、そんな価値のど真ん中を一番シンプルにわかりやすく訴求している会社と言えると思います。

当社のメンバーの3割程度は医療業界経験者ですが、なかには前職で戦略コンサルをしていたという業界未経験だった方にも入社いただいています。知的好奇心が高い方であれば、隣に普通に医師が座っていて気軽に医学の話を聞けるという面白い環境で仕事ができます。もし当社にご興味を持っていただけたなら、ぜひ不安がらずに応募していただきたいです。

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