海外駐在・海外赴任経験を、戦略的キャリアアップに生かすには?

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公開日:2022/08/03 / 最終更新日: 2024/03/18

世界経済が新型コロナウイルスとの共存に舵を切ったことで、海外出張・駐在も再び活発になりつつあります。

コロナ以降、新たな販路開拓、サプライチェーンの再構築や経営の現地化など、海外駐在員に課せられるミッションは以前より複雑化しています。加えて、オンラインコミュニケーションツールが一気に普及したことで、海外とのコミュニケーション機会はかえって増加しており、海外とのビジネスの進め方も変容しています。

こうした変化と共に、企業が海外事業要員採用において求めるスキルも、より高度化、多様化しています。面接(応募書類)で、単に「5年間、アメリカにいました」と伝えるだけでは評価されません。すなわち、海外で何をしてきたかということこそが評価されるのであり、そのためには、赴任前、赴任中、帰任後と、絶えず自分のミッションと取組み、結果(成果)を言語化・可視化することが重要になります。

そういったことも踏まえ、ニューノーマル以降の海外駐在員の求人動向と、戦略的なキャリアアップの方法をご紹介します。


イギリスで創業以来、11カ国、34拠点に広げ、グローバル企業や海外への転職を支援し続けているJAC。
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急回復する海外駐在求人


JAC Recruitment(以下、JAC)の2022年4−6月期の海外駐在求人の成約数は、コロナ以前の2018年10−12月期とほぼ同水準まで回復しています。海外駐在以外も含めた海外事業要員の求人数も前年比で110%超に増加しており、目に見えて海外事業要員採用に対する企業の採用意欲が高まっていることがわかります。

海外駐在求人の動向を産業別に見ていくと、完成車メーカー及び自動車部品や電子部品、産業機械、食品関連業界などで大手を中心に求人が増加しています。またIT系はIoTやDXニーズを追い風に、大手から中小に至るまで幅広い産業で求人が増え続けています。

一方で化学、医薬品は、これまで述べた産業と比べると求人の回復がやや鈍い傾向にあります。

日本発、海外市場を目指すスタートアップ急増


海外駐在経験が活かせるキャリアという面で、国内スタートアップ企業の海外営業や事業開発などのポジションにも今後注目すべきでしょう。

近年、海外の機関投資家による投資が増えており、国内スタートアップの資金調達額は2021年に過去最高額を記録しました。

また、東大や筑波、慶応大などを始点とする優れたシーズを持つ研究開発型のスタートアップでは、創業社長が英語に堪能であることも珍しくなく、躊躇なく海外に事業を展開していきます。海外での事業開発や拠点立ち上げの経験、海外市場に詳しい方であれば、0→1(ゼロイチ)を担う中核人材として活躍できるでしょう。

グローバルでは不透明な市況


海外駐在関連の求人が増え、スタートアップへの投資も活況な日本経済ですが、海外に目を向けると不安要素も存在します。

アメリカではコロナ禍や対ロシア問題、利上げなど、さまざまな要因から景気の減速が予想されています。NYダウ平均株価は半年でピークの3万5,000ドル代後半から20%近く下落する局面もありました。この影響を受け、アメリカのビッグテック企業(google、Amazon、Meta、Apple、Microsoftなど)はエンジニア職以外の求人を抑制しています。

アメリカの景気変動は日本にも影響が大きいことはいうまでもありません。また、様々な材料、部品や燃料の価格が高騰していることに加え、一部の中小企業においてはコロナ禍に金融機関が実施した貸付の償還期限が間もなくやってくることから、これからが正念場ともいえる局面に差し掛かっています。

不透明な環境で海外駐在員の立ち位置も変わる?


このような不透明な状況の中、海外駐在要員の需要はどうなるのでしょうか?

当社では少なくとも駐在員の需要には底堅いものがあると考えています。しかし、その内実は決して楽観的なものではなく、駐在員として海外勤務の経験を積みたい、海外駐在の経験を活かして今後のキャリアを形成したい、とお考えの方は、より計画的で戦略的なキャリア形成やネットワーク開拓、積極的な自己防衛策を講じる必要が増していると言えます。

海外駐在要員の需要が減退しないと考える一つの理由は、コロナ禍によって一時的に海外駐在員の交代が凍結したり、日本への退避があったりした一方で、その期間中に経営現地化が一気に進んだというような形跡は見られません。

その最も大きな要因は、日本からリモートで海外拠点のコントロールを十分に行なうことが非常に難しいことを改めて実感した企業が多かったことに集約されます。図らずもコロナ禍によって、現地で指揮を執る海外駐在員の重要性が浮き彫りになったわけです。

またコロナ禍とは関係なく、ITやカーボンニュートラル、医療などの成長分野においては日本企業による海外企業との連携を報じるニュースが増加しています。

これら先端技術領域においては、残念ながらもはや日本企業が単独で国際競争を勝ち抜くことは難しく、R&Dや事業化で海外企業と連携せざるを得ないのです。

それに伴い、当社に寄せられるR&D系や事業企画・開発系の求人においても、海外の研究者との共同研究、共同プロジェクトの経験が歓迎されるケースが散見されるようになっています。そのような経験をお持ちの方は、「駐在」という形でなくとも、しっかりと書類上でアピールすべきです。

R&Dに限らず、言語や文化、価値観などが異なる環境でビジネスをリードしてきた海外駐在経験者の可能性は今後さらに拡大していくでしょう。


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ニューノーマル以降の海外駐在員に必要なスキル・マインドセット


コロナ禍の期間中、経営現地化が進んだ形跡がないとは言うものの、中長期的には多くの日本企業がそれを志向していることも事実です。その大きな理由は、海外事業の持続的な成長のためには、事業の現地化が不可欠だからです。その際の主役は日本人ではなく、現地の優秀なナショナルスタッフです。そして日本人駐在員に求められる役割は、以前のような「トップダウン(指揮命令)」、「ハンズオン」から、ナショナルスタッフの能力や主体性を引き出すようなサーバントなマネジメントへと変わっていきます。

そういった状況で海外駐在の経験を実りあるものにするためには、どうすればよいのでしょうか。私たちが考える具体的なアクションや考え方を3つご紹介します。

1)自分のミッションを可視化し、駐在員としてのキャリアのロードマップを描く

「タイの営業拠点に駐在員として行ってきてほしい」と言われたとしても、その言葉の裏にある期待値や最終的な目標を理解しないことには、期待に応えようがありません。

海外に赴く前に行うべきことは、会社が自分に求めるミッションと最終的なゴールは何かを明確化することであり、それに沿って自分なりのプランや達成イメージをアウトプットしておくことなのです。

計画とそれに基づいた行動、振返りが無ければ、すべては結果論になってしまい、再現可能な経験値にはなりません。再現性がないということは、自分は何ができる人材なのか(海外経験を経て、何ができる人材になったのか)を明確に示すことができません。それは即ち、折角の海外駐在経験をその後の社内でのキャリアアップや転職時のアピールポイントとして充分に活用できないということになります。

経営が短期的に求めていること、中長期的に求めていることを把握し、行動プランを立て、実行する。この一連の流れを振り返って、成果とその要因を具体的・論理的に説明できてこそ、社内外にアピールできるキャリアになるわけです。

これまでとは物理的に環境が変わり、また任期が決まっているからこそ、成り行きではなく「キャリアを創る」発想で臨んでいただきたいと思います。

2)現地のコミュニティに溶け込む ~履歴書に「ベトナム語可」と書くことの意味

折角の海外駐在員としての経験をより有意義なものにするため、現地では日本人コミュニティに閉じこもるべきではないでしょう。今後ビジネスの現地化が一層進むことを考えると、顧客、従業員、協力会社、そして現地の社会を把握するためにも、現地のコミュニティに飛び込むことが重要です。そして現地のコミュニティに溶け込むためには、ある程度現地の言葉をマスターする努力は欠かせません。

特に東南アジアなどの非英語圏は、現地の言語をマスターするのは簡単ではありませんが、例えば同じようにベトナムに赴任経験がある人でも、履歴書に「ベトナム語での日常会話が可能」と書いてある人に対する企業の評価は、「現地に溶け込んでマネジメントができる人」という一段高いものになります。

3)積極的に外部のプロを活用する

コロナとの共存社会にシフトしたとはいえ、感染者数が増加すればロックダウンなどの厳しい措置を講じる国も未だ存在します。ある日突然ロックダウンになり、出社どころか自宅から出ることも許されない状況が急に訪れるのです。

こういった状況の変化にタイムリーな支援を提供できる日本企業はごくわずかです。JACが、海外駐在しているご登録者様に実施したアンケートでも、渡航規制やロックダウンなど環境の変化に対して、「産業医との面談の斡旋」や「物資や特別手当の支給があった」と答えた方は全体の2割程度に留まりました。

ロックダウンは極端な例として、何かと日本とは違ったストレスにさらされる海外赴任時に気をつけなければならないのは、心身の健康を維持することです。現にコロナ禍の期間中、アジアに駐在している日本人駐在員から現地の日本人医師に対するメンタル不調に関する相談が増加したといいます。

自ら主体的に心身の健康を維持するためには、会社からのサポートをただ待つのではなく、自ら外部のサポートを活用して自衛することが肝要です。オンラインでカウンセリングを受けられる医師が地元にいないか自ら調べたり、不調を感じたらすぐに相談できる病院とつながったりしておくことは、不安定な環境下で海外駐在をやり遂げるためにも有効な自衛策です。

このような自衛手段が必要なのは健康面だけではありません。長いキャリア人生の中では、時に、不景気等によって給与減少の危機に見舞われたり、敢えて給与が下がってもチャレンジすべきオポチュニティと巡り会ったりすることがあります。そんな時、一時的な給与減少に堪えられるような資産運用ができている人は、その時々で最適な選択をすることができます。心身の健康を維持するために繋がっておくのが“かかりつけ医”だとすると、経済的な健康のためには信頼できるファイナンシャルプランナーと繋がっておくこともまた重要と言えます。


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海外駐在員のキャリア相談はJACへ


かかりつけ医やファイナンシャルプランナーといった各分野の“プロ”からの助言が、海外駐在を軸としたキャリア形成を行なう上で重要であるように、信頼できるキャリアコンサルタントとのつながりもまた有益です。

JACは、これまで数多くの海外駐在経験者の方々のキャリア相談をお受けしてきました。そしてそれは日本国内のみならず、赴任中の国でも可能です。JACは、世界11ヵ国、34拠点を持ち、海外駐在経験者のキャリアナビゲーションに強みを持ったコンサルタントが多数在籍しています。

転職エージェントと聞くと求人を紹介され、有無を言わさず転職を促すというイメージを持たれるかもしれません。しかしJACでは、キャリアサポートの期間を定めず、定期的な情報提供やカウンセリングのみの面談にも対応しています。海外駐在中の悩みや帰任後の不安など、キャリアに関する相談もお受けしています。

今すぐ転職したいというタイミングから利用するよりも、普段から定期的にコンサルタントとコミュニケーションを取ることで、適切なタイミングで転職活動がスタートできます。また、場合によっては現職に留まるという選択肢もあります。JACでは転職を促すだけでなく、第三者視点でベストなキャリアパスをご提案しますので、お気軽にご相談ください。

この記事を監修した転職コンサルタント

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佐原 賢治

海外進出支援室 室長

2000年1月入社。大阪、東京、福岡でコンサルタント(および管理職)として人材紹介に携わった後、2011年11月より現職

日経産業新聞コラム「HRマネジメントを考える」連載中。



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