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研究から生産までデジタル化の変革が進む化学業界に求められる人材とは

公開日:2024/01/30 / 最終更新日: 2024/02/02

化学業界を対象にデジタル領域専門で採用を支援する当社のコンサルタントが、化学業界のDX推進状況と、それに伴うデジタル人材ニーズの変化、採用を成功させるためのノウハウを解説します。


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化学業界を取り巻くDXのトレンド


化学業界の裾野は相当広く、石油化学のような原料に近いものから、有機化学、無機化学などの素材、さらに自動車、電気・機械、半導体などの各製造業で部材として使われる加工品をつくるメーカーまで含まれます。

歴史的に見ると、日本の化学・素材メーカーはどちらかというと多品種・小ロットが特徴で、川下のメーカーと“すり合わせ”をしながらきめ細かく要求仕様に応え、高品質の製品を生み出すことで競争力を強めてきました。しかし、製品のライフサイクル短縮化や新興国の追随などもあり、かつてより厳しいビジネス環境になりつつあります。

また、もともと化学分野の研究開発や生産技術においては、日本の文化に起因する職人気質や地道さといったものが技術の優位性となってきた背景がありました。しかし、海外の化学企業を中心に競合でのDXへの投資が進むことによって、属人的な技術の差別化が難しくなってきているというのが現状です。

そのような中、日本の化学・素材メーカーもデジタルの力の必要性に駆られ、競争力を高めるべくDXに注力しはじめています。

化学業界で行われているDXは、主に素材の研究開発における「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」と、生産を効率化・省人化する「スマートファクトリー化」の大きく2つの取り組みが中心です。バリューチェーンの中でも特に、DX推進によるインパクトの大きいプロセスに、てこ入れをしているかたちです。

実は各社ともIoT技術同様、MIを用いた材料開発はかなり前から用いられてはいましたが、上手く活用できているとはいえない状況でした。しかし、昨今のコンピューターの性能向上により本技術も現実味を帯び、再注目されています。

各社とも、既存の情報システム部門とは別にDX専任の部署、ないしはプロジェクトを組成して、ビジネスモデルやカルチャーの変革に取り組んでいます。

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「マテリアルインフォマティクス」の領域で求められるデジタル人材とは


MIは、コンピューターで大量の実験データや論文を解析して、素材の分子構造や製造方法をシミュレーションしながら新素材を探索する取り組みです。

会社によってMIの導入が進んでいる企業とまだそこまで進んでいない企業とがありますが、比較的先行している企業では、MI専門の組織をすでに社内に立ち上げており、社内公募および外部からの採用により、人材面の強化を進めています。まだあまり取り組みが進んでいない企業でもMIの必要性は重く認識されており、小さいながらも研究開発部門内にMIチームを発足したり、キーパーソンの採用に着手して[HK1] します。また、社内に体制を構築するだけでなく、社外のMIの技術面に強みを持つベンチャーとの協業により新素材開発プロジェクトを進めているケースも見られます。

ただ全体として見ると、あくまでも注力しはじめたところです。過去の実験・研究の積み重ねを研究開発部門に依頼して集めて、すべてをデータ化し、解析・シミュレーションのための基盤をつくるフェーズというところが多いようです。

MIの領域で求められるのは、基本的にはデータサイエンティスト、データアナリストなどビッグデータを扱える人材です。

フェーズの進度によって、求められる人材像も少し変わります。例えば、データ基盤を構築していくフェーズでは、研究開発の現場とコミュニケーションをとり、コンセンサスを得ながら進めていかなければならないため、化学系のバックグラウンドと合わせてデータサイエンスのスキルセットを求められます。そのため、現時点では、同業他社でよりMIの取り組みが進んでいる企業から採用するケースが中心です。あるいは、MIと親和性の高い製薬業界でのインフォマティクス経験者や、大学の研究室、公的な研究機関から採用に至ったケースも散見されます。

今後各社でMIの基盤ができあがった後、シミュレーションを回していくフェーズに入ると、その部分を任せられるデータサイエンスの知見のみで構わないというポジションも出てくると予想されます。

まだ各社で始まったばかりのMIですが、ゆくゆくは化学企業の研究開発のプロセスを大きく変える可能性があります。従来のビジネスモデルは、顧客であるセットメーカーの要求に対してQCDを含めて応えられるよう、顧客とすり合わせながら研究開発を進めるかたちでした。

しかし今後は、過去の研究開発のデータからまだ形になっていない顧客のニーズを推測し、「今後はこういう素材が必要なのでは?」というかたちで先回りして提案していくソリューション型のビジネスモデルに変わる──そのような一つの予測が立てられるでしょう。

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「スマートファクトリー化」に求められるデジタル人材とは?


工場内でIoTにより取得したデータを活用し、生産性向上・省人化を図るスマートファクトリー化についても、生産技術・エンジニアリングの部門で各社力を入れはじめているフェーズです。

同じスマートファクトリー化でも、扱うモノによってその様相は少し異なります。川下寄りの部材メーカーの生産工程は組み立ての工程に近いため、電気・機械メーカーの工場におけるファクトリーオートメーション(FA)と似た動きになります。

他方、川上の化学メーカーでは、IoTデバイスで製造プロセスや素材の状態をデータで集め、AIによる画像処理などで解析して、歩留まりの改善や品質改善、定修の代わりとなる予知保全といった色合いが強くなります。

化学業界におけるスマートファクトリー化は、川下の製造業に比べるとまだはじまったばかりでこれから発展していく段階です。これには、川下の製造業はFAによる業績へのインパクトが大きい傾向があるのに対して、日本の化学メーカーは多品種・小ロットで多様な生産ライン・設備があるため、どこへ着手すべきかの議論が進みにくいという背景があるようです。ただ、そのような中でも、2017年に起きた品質不正問題の影響から、品質管理・検査工程のデジタル化への投資が進みはじめた印象はあります。

川下寄りのFAを主眼に置くメーカーでは、スマートファクトリー化に求められるのは、いわゆるSE、システム開発経験者が中心です。先述の通りFAに近い取り組みとなるため、電気・機械メーカーから採用に至るケースが多いようです。

また、川上のIoT・AIを駆使するケースでの人材ニーズはデータサイエンティストが中心です。化学メーカーの生産現場の知見を持っていることは前提となるケースが多く、そのため現時点では、よりスマートファクトリー化の動きを先行させている同業他社からの採用が中心となっています。

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デジタル人材に伝えるべき化学業界の魅力


化学業界は、他の業界と比較すると新卒採用の文化が強く、中途採用にはあまり力を入れてこなかった業界だといえます。化学領域の技術者には専門的な知識が求められるため、その意味で間口が狭く、できるべくしてできあがった文化だといえるでしょう。

ただ現実的に、MIやスマートファクトリー化を進める上での即戦力を新卒採用で賄うのは、知識・経験の観点からも容易ではありません。そのため、デジタル人材に限っていえば、中途採用の熱度が高く、求人ニーズとしても多く出てきている状況です。平均では1社当たり10人前後ですが、多いところでは100名単位の中途採用を行っている企業もあります。実際ここ1年の、デジタル領域における当社の採用支援実績も飛躍的に増えています。

しかし、デジタル人材の転職市場に目を向けると、転職先候補として化学メーカーに目を向けない、そもそも想起すらしない人がほとんどという問題があります。そのため、化学メーカーがデジタル人材の採用を成功させる上では、他業界のデジタル人材に対していかに化学業界を魅力づけ(アトラクト)して、彼らの転職先検討の土俵に乗るかが大きな課題となります。

これまで大学から化学を学んできた・研究してきた新卒学生、もともと化学に関心のある人を中心に採用してきた化学メーカーにとって、“領域外”の人が化学業界のどのような点を魅力に感じるのかが分かりにくいのではないでしょうか。

私たちが転職希望者と接してきたなかで分かってきた、「デジタル人材の化学業界への興味を喚起するポイント」は主に2つあります。

1つめに、製造業の中でも電気・機械などの業界と比べた時に、事業の裾野が広いという点が挙げられます。化学業界の顧客となる業界は、自動車、電気・電子・機械、ヘルスケアなど多岐にわたるため、デジタル系職種として入社した時に扱えるデータの種類・量が圧倒的に多い。それゆえに、DXを推進することで業績への貢献インパクトも大きくなる、そのような実績を積める環境が、アピール材料になります。

2つめに、化学業界ではDXが比較的進んでおらず、MIやスマートファクトリー化専任の組織ができたばかりという環境だからこそ、今入社すれば社内におけるDX推進の“第一人者”になれるという点が挙げられます。

これらの点がデジタル人材にとっては魅力に映ることを意識して、発信を強めていくことが、採用成功に近づくポイントになるでしょう。


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この記事の筆者

越智 岳人

インタビュアー:越智 岳人


編集者・ジャーナリスト
現在はフリーランスとして技術・ビジネス系メディアで取材活動を続けるほか、ハードウェア・スタートアップを支援する事業者向けのマーケティング・コンサルティングや、企業・地方自治体などの新規事業開発やオープン・イノベーション支援に携わっている。



この記事の筆者

畑邊 康浩

ライター:畑邊 康浩


編集者・ライター
語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集、社内SEを経験。その後人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。
2016年1月からフリー。HR・人材採用、IT関連の媒体での仕事が中心。




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