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「モノ売りからコト売りへ」が至上命題の製造業では
IT系・事業企画系のデジタル人材が求人ニーズの中心

公開日:2024/01/29 / 最終更新日: 2024/02/14

製造業を対象にデジタル領域専門で採用を支援する当社のコンサルタントが、製造業のDX推進状況と、それに伴うデジタル人材ニーズの変化、採用を成功させるためのノウハウを解説します。

解説者

渡邉晶子

日系大手企業のデジタル案件を担当。DX関連、事業企画、マーケティング職種の採用支援を得意とする。

吉田哲久

デジタル専任チームのマネージャー。製造業の中でも、とりわけスマートファクトリーなど製造現場のデジタル案件に強い。

 
※所属部署・役職は撮影当時のものです


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製造業を取り巻くDXのトレンド


製造業(電機・電子・機械・製造装置・自動車など)の組織は大きく「製造」と「販売」に分かれますが、どちらの部門でもデジタル人材の潜在ニーズは高い状況です。ただ、DXの文脈では、製造企業と市場のつながり方を含む「販売」側の構造変革がよりドラスティックであるため、まずは「販売」側に着目して、製造業を取り巻くビジネス環境の動向を俯瞰していきましょう。

従来、「エンドユーザーが使うモノ」を提供するBtoC企業の主なビジネスモデルは、作ったモノを「モノとして」売り切る形態でした。しかし近年は、モノを売って終わりではなく、売った後もインターネットを介してエンドユーザーとつながり続け、そのモノがもたらす価値を「サービスとして」提供していくビジネスモデルに変わりつつあります。

このような変化の背景には、工業製品のコモディティ化があります。市場に登場した時には高い付加価値を持っていた製品もやがてありふれたものになり、性能も「これ以上は必要ない」という上限に到達します。

そのような状態では差別化が難しく、製品需要は耐用年数に応じた買い替え需要が中心となります。そうした状況を脱するべく、「モノ売りからコト売りへ」あるいは「モノづくりのサービス化」と言われる流れが起こっているわけです。

この潮流は、部品やモジュール品などを製造して顧客企業に供給するBtoB企業のビジネスモデルにも変革を迫っています。

例えば、完成品メーカーが製品を売った後に、エンドユーザーとインターネットを介してつながることで得られるユーザーの行動データ、あるいは製品の状態のデータなどを活用してビジネス化するのに必要なモジュール、アプリケーションが求められるようになっています。

また、BtoB企業が単体では機能しない「部品」をつくる業務から、完成品寄りに業務をシフトしていく中で、社内に培った「ソリューション」を自社のコアコンピタンスと掛け合わせて既存顧客のいる領域とは全く別の領域へ新規事業として横展開する動きも生まれています。

「モノづくりのサービス化」を目指す製造業が求めるデジタル人材とは?


製造各社、特に「販売」側におけるDX推進の必要性は、このようなビジネスモデルの変化に伴って生じていると言ってよいでしょう。

ここで必要となるのは、ネットワークやサーバ、クラウドが扱えるインフラ系のITエンジニアやセキュリティエンジニア、あるいは顧客にサービス提供する際のインターフェースとなるWebアプリケーションの開発エンジニアなどです。また、“デジタルに強い”事業企画系人材も、BtoB・BtoCを問わず強いニーズがあります。

ただ「職種」は同じでも、求められるスキルや経験は、BtoB企業とBtoC企業で若干の違いが見られます。

BtoC企業は、基本的に「自社の製品・サービスを作る」というスタンスですので、商品・サービス企画、あるいはマーケティングまでを含めた事業企画や製品の要件定義、いわゆる「上流」の部分を担えるスキル・経験が必要とされます。同業界でも他業界でも、「コト」をつくってきた経験があることが望ましいです。

一方、BtoB企業は、完成品メーカーから下りてきた要件を実装していく部分を担うケースが多いため、実際に手を動かす実務レベルのスキルや経験が求められる傾向にあります。ただ、先に触れたように「従来とは別の領域」への展開・進出するケースでは、BtoCで求められるのと同じような商品・サービス企画、要件定義といった上流を担える素養が必要とされます。

DX推進がうまくいっているのはどのような企業か


私たちが採用を支援する企業の中には、DX推進に積極的に取り組み、歩みを進めている企業があります。

それらの企業にまず共通していることとして、経営トップである社長、または有力な役員がDX推進の意思決定にコミットしていることが挙げられます。DXが必要なものとして事業戦略にしっかり組み込まれているがゆえに、社長・部門責任者が覚悟を持って進めており、途中で手を緩めることがありません。

半面、「競合が取り組んでいるから」「トレンドだから」といった外的な理由からDXに取り組む企業は、推し進める動機が弱くなりがちです。

経営層の「覚悟」は組織のつくり方にも表れます。具体的には、DXと名の付いた組織をつくる際、少なくともその時点で、社内で最も知見を持っている役員を責任者に任命する。社内にいなければ、社長自らがDX領域で実績のある名の通った人物を探し出して来て、DX組織の長に据える。そのような組織のつくり方をしている企業は、力強くDXを推進しています。

デジタル人材採用にあたっての課題と打ち手


採用が比較的うまくいっている企業の取り組みから、製造業界におけるデジタル人材採用の「課題」がいくつか見えてきています。その中から3つ取り上げて、その対策を紹介します。

課題(1)自社に合った人材の採用要件を明確に定義する

製造業の、特に大手企業では、事業企画系の人材はある程度社内にいるケースが多く、外部から採用することはあまりありません。代わりによくお聞きするのは、いわゆる“巨大IT企業”と言われる企業群の経験者、「コト」のスペシャリストが欲しいという要望です。ただ、現実的には給与水準を合わせることが難しく、立ち止まってしまうケースが少なくありません。

そこで私たちは、「なぜ“巨大IT企業”の人材が欲しいのか」を詳しくお聞きしていきます。新たに採用する人に「何をしてもらいたいのか」「何ができる人が必要か」を、対話を通じて要素分解していくイメージです。すると、アレもコレもと条件が挙がるのですが、たいていはWant条件で、本当にMustな条件は3つだけだったということが往々にしてあります。

また、よくよくお聞きすると、やりたいことはDXではなかったというケースもあります。的外れな採用をしないためにも、DXやそれに関連するIoT、人工知能(AI)などのバズワードにとらわれず、その企業内で通じる言葉で、何がしたいかを言語化していただくようにしています。

課題(2)自社に適した人材を目利きするための判断軸を持つ

DXに必要なデジタル人材は、これまで製造業における採用の中心だった電気系、機械系、組み込み系エンジニアなどとは「畑が違う」人たちです。そのため、採用すべき職種は分かっても、その中で「誰がより自社に貢献してくれるのか」を目利きする上での判断基準が持てていない企業が多いです。

そのような場合には、「書類選考で迷ったら、会って話をしてみてください」とお伝えしています。直接会うのが難しければ、Webミーティングでも構いません。「分からない」にもかかわらず、転職回数等の従来の基準で安易に可能性を切り捨てることは得策と言えないからです。人事と事業部門の両方でスクリーニングする企業が多いですが、迷った場合は少なくとも人事でNG判断はせず、求人元の部門に判断を仰ぐのが望ましいでしょう。

優秀な求職者の方は、応募書類の中に過去の実績やそこに至ったプロセスを記しています。それを読んで少しでも“ワクワク”したら「絶対に会っておくべき」とお伝えしています。

課題(3)他業種の採用競合企業との比較した際に、魅力的に見せる

デジタル人材を採用する上では、同業界だけでなく他業界、例えば金融機関や保険会社、コンサルティングファームなども採用競合となります。そのような市場環境では、製造業全般に対して抱かれがちな旧態依然とした企業イメージから、デジタル人材の一部に興味を持ってもらいにくいという問題が起こります。採用がうまくいっている企業は、この問題をどう乗り越えているのでしょうか。

よくあるケースとして、DX推進の責任者がベンダーの主催するカンファレンスに登壇したりメディアに露出したりして、自社のDXの取り組みを話すことで、「DXに本腰を入れている」ことを伝える広告塔としての役割を果たしています。それが、旧態依然としたイメージとのギャップ、意外性が求職者にとって魅力となり、採用にも奏功しているケースが見られます。

また、デジタル人材が他業界も含めた選択肢の中で最終的に製造業を選ぶポイントは、主に3つに集約されます。

1つは、DXの“のびしろ”が大きく、それだけに「面白そう」「挑戦しがいがある」という点。

2つ目は、「グローバルで活躍できる」ということ。外資の日本法人と違い、グローバルに展開する日系企業は、英語力を活かしたい、自分の仕事を日本にとどまらず世界に展開したい人にとって魅力に映るようです。

3つ目は、「モノ」に関われるという点です。社会におけるDXが進むほど、アナログな「モノ」とデジタルの世界の結びつきは強くなっていきますから、そこに対して自分の力を役立てたいという人には、製造業というフィールドがうってつけだと考えるのも自然なことです。

以上、3つの課題と、それに対する打ち手をご紹介しました。製造業界において、まだ多くの企業においてDXは道半ばです。「こうすれば必ずうまくいく」というようなノウハウが確立しているわけではありませんが、デジタル人材採用の際のヒントにしていただければ幸いです。

インタビュアー

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越智 岳人

編集者・ジャーナリスト

現在はフリーランスとして技術・ビジネス系メディアで取材活動を続けるほか、ハードウェア・スタートアップを支援する事業者向けのマーケティング・コンサルティングや、企業・地方自治体などの新規事業開発やオープン・イノベーション支援に携わっている。


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