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「2019年上半期中途採用市場動向レポート」

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当社プリンシパルアナリストの黒澤が、2018年下半期までの実績から2019年上半期の市場を予測します。

1.IT系のプロジェクトマネージャー・エンジニア市場は全体的に売り手市場

・2018年の採用マーケットは、活況であった2017年に比べてもさらに売り手市場であり、失われた25年横ばいが続いた給与面でも、比較的上昇傾向が目立っています。この傾向は、2019年上半期も続くと予測されます。
・プロジェクトマネージャーの採用は2018年は2017年の1.6倍に増えるなど、採用が活発化しています。
・定期的に支払われる給与のオファー金額を引き上げることはできないものの、代替措置として入社時インセンティブなどの一時金を支払う企業も増えてきている。
・人材の売り手市場を反映して、リテンション(現職引き留め)の動きも強く、引き留め時のカウンターオファーの金額が、外資系企業を中心に高騰しています。
・オファー金額の直接的な上昇がなくとも、採用競合に負けないように給与レンジ・給与制度自体の改定に取り組んでいる企業が目立ちます。給与を10%引き上げた企業や、リテンション(離職抑制)のために退職金制度を導入・強化した企業もあります。
・Web系の大手企業では700~800 万円前後のオファーが増加傾向です。900 万円以上のオファー提示も2017 年度より増加傾向にあります。また、サインアップボーナスに加えて初年度賞与を補填する入社準備金を用意するオファーが増加傾向にあります。
・これらの強い採用ニーズは2019年上半期も続くでしょう。

2.資金調達に余裕があるベンチャー -景気に左右

・Web 業界に関しては、大手企業を中心に全体的に業績好調であり、ベンチャーへの投資も年々増加傾向にあります。IPO やバイアウトの数も増加しています。これらにより、年収の低いゾーンだけでなく、給与の高いゾーンでの人材の流動性も高まっています。
・近年のベンチャーは、FinTech をはじめプレイヤーが乱立しており、各企業の成長性の予想が難しく、結果として、多くの企業においてVC からの資金調達が容易となっています。設立後10年未満の企業へ年収1,000万円以上で転職決定した数は2018年は2017年の3倍を超え、急速に増加しています。
・売り手市場の中で採用に苦戦している企業が目立ちます。
・ベンチャー/スタートアップ企業の給与水準は二極化しています。VCからの資金で初期の人材採用に資金を投入する企業も多く、現状が赤字でも高い給与をオファーする企業が多く存在するようになりました。そのような中で、経営者と投資家のスタンスにより採用時の給与水準は左右され、直接的な年収が高くない企業の一部ではストックオプションの付与などで代替させる傾向もあります。
・資本市場は動きが激しいため、VC資金に支えられた採用は、急速な景気悪化があれば影響を受けますが、そうでなければ、2019年上半期も質量ともに活発な採用が続くと予測されます。

日本における中途採用時オファー年収

3.AI・データサイエンティストのニーズ強い

・データサイエンティスト・ AI・機械学習系のポジションは、採用競争激化にともない、従来水準以上の年収金額が提示されています。この流れは、2019年上半期も続くでしょう。
・AI エンジニアのニーズが高まっているが、即戦力人材があまり市場に存在しないため、データサイエンティストや金融のアクチュアリーのエンジニアなどを高額で採用するケースも多くなっています。そのデータサイエンティストの求人は2017年末から急増し、2018年は2017年の2.9倍に増加しました。今のところ衰える気配がありません。

4.国際的な採用ニーズが引き続き進む

・日本語・英語バイリンガル人材へのニーズが高まってきています。理由として、1.日系企業では海外展開を図る目的、2.外資系企業では顧客である日系企業の海外展開へのサポートが日本法人に要望されていることへの対応目的。これらの理由により、グローバル対応や英語力が求められています。
・従来、日本語を母語としない人材の採用についても、ある程度の日本語能力を求めていることがほとんどだったが、一部の会社は、日本語能力が無く英語能力のみの人材でも採用を始めています。
・東南アジア方面へ進出する企業から、東南アジア地域本社となるシンガポール駐在でのポジションが増えてきています。それ以外にも、タイ・ベトナム・インドネシア・ミャンマーなど、アジアを中心に海外展開を図る企業の増加が顕著です。この流れは、2019年上半期も続くでしょう。

5.EC/IoTなどでの広い業種での採用の動き

・EC関連人材に関しては、従来のWeb系企業からの採用に加えて、ビジネスの主軸をEC関連にシフトすることを企図する流通・小売系企業での採用も加わってきています。この流れは、2019年上半期も続くでしょう。
・製造業関連、特に自動車業界向けのIT 人材のニーズが2017 年以来増加傾向にあります。自動運転やAI の導入などで自動車メーカーの競争力の源泉としてIT の必要性が増しています。東京・大阪での転職決定増に加えて、名古屋、神奈川、埼玉といったエリアでの決定が増加傾向にあります。
・事業開発系職種を希望する求職者はWeb系企業以外にも、コンサルティングファームや製造業、消費財、金融などのTier1 クラスの企業でも採用されています。社会のデジタルトランスフォーメーションに伴い、デジタル人材の幅広い業種での採用が進むでしょう。

6.セキュリティや従来型以外の金融業界でのニーズ

・金融機関向けのデジタル・ITは、グローバル展開やM&A、FinTech関連などの動きが堅調です。
・並行して、広い業種で引き続き情報セキュリティ関連のニーズが高くなっています。その背景には、1.継続する個人情報漏洩事件の発生、2.事業のグローバル化に伴う海外子会社のガバナンス強化、3.IoT ビジネスの台頭などによるビッグデータインフラの整備に伴うリスクの増大、などがあります。
・金融機関を始めとしてシステム監査のニーズも高く、2018年は2017年に比べて転職決定が倍増、高い給与レンジで決まるようになっています。
・セキュリティ関連エンジニアの求人ニーズは、2018年は4年前の2.5倍があり、この動きは引き続き拡大するトレンドにあるため、2019年上半期も続くでしょう。
・セキュリティ関連などでは、外資系企業の動きが盛んですが、セキュリティの先進地であるイスラエル企業の対日進出も増えてきています。
・セキュリティ関連のニーズは一過性のものではないため、セキュリティ人材のニーズは引き続き強まるでしょう。

7.採用手法の多角化

・リンクトインなどのいわゆるダイレクトソーシングの状況はどうでしょうか?これは、企業内の人事体制により各社により利用比率が異なります。利用が進んでいる企業で全採用の3割程度がこれらのダイレクトソーシング経由で採用を充足しています。人工知能を使ったスカウトやオンライン面接、ドラフト型のスカウト媒体などの利用など従来の採用手法にとらわれない動きも加速しています。
・特に、外資系企業では本国からの指示等によりダイレクトソーシング等による採用の傾向が方向としては強まっています。ただし、実際に採用に至る率は紹介会社経由よりも低く、全体の採用ニーズを満たしていない現状があります。日本特有の事情としては、現職の関係者にも見えるデータベースへの掲載への抵抗感に加え、転職の明確な意思がない人にアプローチした際の反応が鈍いことなどが背景にあります。当面引き続き、多くの企業にとって、採用の重要な部分を紹介が占めるでしょう。

  • 黒澤敏浩

    株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント/プリンシパルアナリスト

    グローバルホワイトカラー中途採用マーケット分析の第一人者。JAC Recruitment Group各国から集計したグローバルな中途採用関連データに基づくリアルな分析が各方面で好評を博している。
    当社においてリクルートメントコンサルタントを経て人事・事業企画などを担当し、現職。
    ・一般社団法人人材サービス産業協議会 外部労働市場における賃金相場情報提供
    ・早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員
    ・日本証券アナリスト協会検定会員