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コンサル未経験者の採用ニーズが急騰
デジタル化でドラスティックに変化するコンサルティング業界の採用動向に迫る

公開日:2024/01/31 / 最終更新日: 2024/02/21

コロナの影響を受け、あらゆる業界でDXが求められる今、企業の変革を支援するコンサルティング業界もまた変化を余儀なくされています。
コンサルティングの質がどのように変わり、求められるコンサルタント像がどう変わってきたのか、コンサルティングファームの採用を支援する3名にお話を伺いました。


インタビュイープロフィール

榮多 綾香・浅野 偉樹・若山 大輔

榮多 綾香(写真中央)

プリンシパルコンサルタント。IT業界での経験を経てJACに入社。コンサルティング業界のなかでも、総合系・戦略系ファームをメインに、ITコンサルタント・AI・IoT・デジタルマーケティングといったデジタル戦略求人を担当。またJACコンサルディビジョン立ち上げ期から参画しており、戦略・業務コンサル~ITコンサルまで幅広く支援実績あり。

浅野 偉樹(写真右側)

プリンシパルコンサルタント。コンサルティング業界のなかでも、テクノロジー系をメインとした、ITコンサルタント・DXコンサルタントの求人を担当。これまで15年ほどの人材業界経験があり、コンサルティング業界はもちろん、日系SIやWeb系ベンチャー企業など幅広い企業/求職者の転職支援に従事。

若山 大輔(写真左側)

プリンシパルコンサルタント。コンサルティング業界の中でも、非IT領域をメインに、戦略系や総合系ファームの自動車・製造・ライフサイエンス領域を中心としたインダストリー/業務系コンサルタントポジションに加え、先端技術分野でのコンサルタントポジションも担当。以前は完成車メーカーや工作機械メーカーなどの大手製造業を担当。

※所属部署・役職は撮影当時のものです



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1.技術の発展、社会の変化に応じて「コンサルティング」の中身が変化


──あらゆる業界にデジタル化の波が押し寄せ、変革を余儀なくされています。事業会社のビジネスを支援するコンサルティング業界には、どのような変化が起きているのでしょうか

浅野:1990年頃から、コンサルティング市場はERP(※1)をはじめとする基幹システムを用いた業務効率化や、経営判断の迅速化を目的としたプロジェクトが増え、大きく拡大してきました。2000年を過ぎた辺りからは、企業のITの使い方が変わり始めます。

たとえばビジネスインテリジェンス(BI)と呼ばれるような、データを活用してビジネス戦略に生かす動きが出てきます。2000年代にはインターネット、2010年代にはスマートフォンの普及に伴って、ITをマーケティングにおいて活用する動きや、モノづくりからコトづくりへの変革が加速し、戦略だけでなく実行支援までコンサルファームに求めるられるようになりました。

加えて、経済産業省が「2025年の崖」を警告したことにより、各業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)への強烈な危機感を背景に、より一歩踏み込んだ「デジタルテクノロジーを駆使した経営のあり方やビジネスモデルの再構築」に向けたコンサルテーションにシフトしてきています。その流れは、2020年に世界を襲った新型コロナウイルスがトリガーとなって、より本格化しています。

だからこそ今、テクノロジーに強いコンサルティングファームの必要性・重要性が、よりフォーカスされているのではないかと考えています。
数年前から、各ファームが「デジタルテクノロジーラボ」のような組織・場をつくり、AI・IoT・ブロックチェーンなどの先端的なテクノロジーについて研究を進めるのと同時に、技術のショールームさながらにテクノロジーに強いことをアピールしているのも、そうした流れの上にある動きだと思います。
※1…エンタープライズ・リソース・プランニングの略。企業資源計画。

榮多:最近は、業務改善・コスト削減系の案件だけではなく、売上を上げることを目的とし、デジタルを活用した新規事業創出の案件が増えてきている印象があります。

たとえば、ECサイトで買い物をする人が増えてきた中で、店舗の存在意義が見直されるようになりました。店舗が不要だということではなく、試着したりサイズや質感を確かめたりといった「店舗だからこそ」得られる体験や感動に着目して、顧客が商品を購入するまでの一連の行動の中に適切に位置づけていくマーケティング戦略やデジタル戦略の案件が増えてきているのは、面白い変化だと思っています。

また、業務改善・コスト削減系の案件も、従来なら3年から5年かけて推進していたところを1年で仕上げるといった形で、スピードが求められるようになっています。コロナの影響もあり、デジタル化やDXが急速に推進されたのがこの1、2年でした。

2.より一層採用ニーズが高まるコンサルティング業界において、今求められる人材とは


──そうした変化の中で、コンサルティングファームにおけるコンサルタントの採用ニーズは現在どのような状況ですか。

若山:先ほど話したように、今は提案の実現性、あるいは実行の伴走までコンサルティングファームに求められる時代に変わってきています。

業務コンサル領域では、以前と変わらず事業会社での経営企画や業務改善、コスト低減などの経験を持つ方のニーズも根強いですが、それだけではなくIT導入やデジタル技術を用いた業務効率化・サービス開発などの+αの経験を求める傾向が強くなっています。

IT領域においても、従来はシステム開発の上流、企画ができる人が求められていたのに対して、今は実際に開発する上で必要なITプロジェクトマネジャーや、コーディングをするエンジニア、データサイエンティストやAI・IoTのスペシャリストなど、実装までできる技術を持つ人材も求められようになりました。

榮多: 一方で全社視点でのDX企画・戦略系のプロジェクトも増えてきていることもあり、事業会社の事業企画・経営企画経験者が採用されるケースも出てきています。

テクノロジーの知見が十分ではない方であっても、採用後に社内研修を受けて「リスキル(reskill)=スキルを再構築する」といったことにも力を入れているのです。ファームの教育機能は充実していますし、今後は事業会社からコンサルティングファームに転職して、デジタル知見を身に着け、もう一度事業会社に転職するといった、デジタル人材輩出企業のような位置づけになっていく可能性もあると思います。

若山:事業会社でも同様の人材を採用していますが、特別なスキルを有する人材ほど十分な人数を集めきれず、コンサルティングファームに頼る事例も多いです。だからこそ、コンサルティングファームが今躍起になってそういった人材を増やしているというのが実情でしょう。ニーズの強さは事業会社以上かもしれません。

浅野:採用が追いつかず人をアサインできないために案件を断らざるを得ないケースも出ているようで、ほとんどのコンサルティングファームが、人材採用を経営上の最重要課題として捉えているように思います。そのくらい切迫している状況なので、コンサルタント経験者だけでなく、コンサルティング業界以外からの採用も大いに視野に入れている状況です。

──様々なスペシャリティーを持つ人が求められているということで、いくつか具体的な職種・領域を挙げていただきましたが、経験の度合いや必要なスキル、求められる素養という点ではいかがでしょうか。

浅野:自分の持っているコアなスキルーーたとえば「会計」や「組織人事」、「プログラム開発」でも「経営」でもよいのですが、いずれにしても単一のスキルだけでは厳しいと思います。コアスキルをベースに、+αで異なるスキルを掛け合わせることが必要になってきているからです。

それは、業務にテクノロジーを掛け合わせる、あるいはその逆でも構いませんが、いずれにしても技術力を駆使して業務や経営をどのようにトランスフォーメーションしていくかが、そのままコンサルタントとして生み出す価値になります。単に「コードが書ける」「技術が分かる」だけでは難しくて、複数のスキルを持つことがコンサルタントに転身する上での最低条件になっていると思います。

榮多:ファームの方からお話を聞くと、今はITやデジタルが全く絡まない案件のほうが少なくなっているようです。ここ数年DXが叫ばれていますが、今、改めて「D(デジタル)」で何をするかよりも、「X(トランスフォーメーション)」が重要だと言われ始めています。

そこで求められるのは、「IT+ビジネス視点」や「IT+マネジメントスキル」といった、ITをベースに+αで何かを持っている人であり、経営視点や業務視点があるIT人材は、どのファームからも引き合いがある状況だと思います。

浅野:先日ある著名な方が、事業会社側の特に意思決定をする方たちに、デジタルの重要性を理解されてない方がまだまだ多いと話されていました。今後、エンジニア出身者やリスキルされたコンサルティングファーム出身者等「技術が分かる経営者」が事業会社に入っていき、経営の意思決定をするフェーズに加わることで、事業会社が本当の意味で主体的にDXを推し進めていくようになるかもしれません。

3.労働環境を改善し「働きやすい業界」へと変化


──需要に対して採用が追いついていないというお話がありましたが、例えば待遇を改善するような採用条件面での変化はありますか?

若山:以前のコンサルティング業界は、非常に激務のイメージがありましたが、そうしたイメージを払拭して、フレキシブルで働きやすい環境が整っていることをアピールする会社が増えてきています。

もちろん表面的なアピールだけでなく、実際にスタッフ層への残業規制や定時以降の会議禁止といった制約を設ける会社も増えてきました。また中には採用時点からその方の状況に合わせて“時短勤務”で採用したり、週3〜4日勤務などの“短日勤務”前提での採用をしたりと、就業時間の条件をフレキシブルに対応する会社もでてきました。

──例えば週3日勤務の場合などは、通常の雇用形態とは異なるのでしょうか。

若山:いえ、各社で多少の違いはありますが、雇用形態は基本的には通常の雇用と同じですね。以前は、長時間労働が当たり前で、そのほうが評価される傾向が一部にはありましたが、今は時間単位でどれだけの成果を生み出しているか、生産性が評価されるようになってきています。

榮多:すべての人が対象ではないのですが、常時リモートで働ける、地方に住んで働けるポジションも出てきていますね。その場合も、どこに住むかにかかわらず、給与水準はまったく同じ。ですから、U・Iターンをする方や、離島に住んで働く方、全国に散らばっているメンバーが1つのチームになって案件を回すケースもあるとお聞きします。

──それは、コロナ以降で変わったのですか。

榮多:リモート可になったのはコロナの影響が大きいと思います。ただ、地方のポジションはそれより前から増えてきていて、ここ数年の変化ですね。

浅野:働きやすさという点では、以前とは別会社かと思うくらいドラスティックに変化していますね。当社に転職のご相談に来られるコンサルティング業界の方も、以前は長時間労働を理由に転職を考えている方が6〜7割という印象でしたが、今はかなり減って1〜2割ほどになっていると思います。

若山:本当にそう思います。コンサルタントとして得た経験を事業会社に戻って生かしたい、というようなポジティブな転職理由が大半を占めるようになりました。

榮多:それくらい、各ファームの変化に対応する意欲を非常に強く感じます。それだけ強い危機感を持って、少しでもよい人材を採用しよう、自社内でキャリアアップしてもらおうとしているということなのだと思います。


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4.未経験からコンサルタントになって活躍する人とは?


──業界の働き方が大きく変貌を遂げている中で、これまで転職先として視野に入っていなかった方にとってもコンサルティング業界が選択肢の1つになってくると思います。未経験からコンサルタントへ転職するケースも増えているとのことでしたが、業界外の方に、コンサルティング業界への転職を考える上でのアドバイスをいただけますか。

若山:働きやすい環境にはなりましたが、アウトプット重視の文化や、時間当たりの生産性については強いコミットメントが求められる業界であることに変わりはありません。そういったプレッシャーの強い環境は、他業界から転職される方にとってカルチャーギャップを感じるケースが多いようです。

また、コンサルタントはさまざまなプロジェクトを経験して成果を出して行かなければならない仕事です。例えば、自分の専門が会計だとしても、場合によっては専門外のサプライチェーン関連×ITのようなプロジェクトに入るケースがあります。その都度自己学習で、しかも短時間でキャッチアップしていかなくてはならない、そういうハードさはあります。

そうした部分を転職前にイメージしておかないと、プロモーションにも影響が出てしまったり、居づらくなったりするかもしれません。逆に、専門外の知識も積極的に取り入れられるキャパシティのある方や、チャレンジすることを面白いと思える方が、活躍できる可能性が高いと思います。

浅野:転職前にコンサルティングファームの仕事をしっかり理解した上で、ジョインすることをおすすめします。入社後になかなかパフォーマンスを発揮できない人は、良くも悪くも、入社前と入社後のギャップがあって、そこを補えなかったケースが大半だと思います。

榮多:付け加えるとしたら、「自分のキャリアをこのように築いていこう」という意志、主体性があると活躍の場が広がると思います。いろいろな業界の顧客企業がいて、多様なプロジェクトがあるので、意志がないとアサインされるままに脈絡のない経験を積んでしまう可能性があります。

事業会社の場合、業務命令や配属辞令については基本的に断れないと思いますが、コンサルティングファームだと実は意外と断れたり、「こういうことがやりたい」と社内で発信していくと、受け入れてもらえたりするカルチャーがあります。だから、「自分でキャリアをつくっていくぞ」というマインドは必要だと思います。

──年代別に気をつけておきたいことはありますか。

浅野:年齢だけで一概に言うことはできないですが、40代以降の方で、新卒入社した1社しか経験がない人は、企業側が慎重になる傾向はあるかもしれません。1社で長く働いて実績もあげてきた方であれば、自分のスタイルが確立していて、悪い言い方をすると「凝り固まっている」と思われてしまうケースもあります。

コンサルティングファームでは、自分より年下の方が上司になるケースもよくありますので、転職して環境を変えることの意味をよく理解して、自分自身がそこに適応していく意志や覚悟が必要です。とはいえ、年齢的には経験や実績に期待しての採用ですから、その期待に応えるパフォーマンスを発揮しつつ、環境に順応していく柔軟性が40代以降の方には特に必要だと考えます。

榮多:年齢が上になればなるほど、1つの会社の中の課題に対する考えだけでなく、俯瞰して業界全体を捉えていく考え方を日常的にしているかどうかは重要だと思います。

また、マネジメントスキルは必須で求められます。アナリストやコンサルタントのメンバーにタスクを振ったり、彼らの成長度合いも見た上で、適切にプロジェクトアサインしたりするような、チームマネジメントができることが前提です。

若山:ただ、マネジメントスキルと言っても、事業会社の管理職とは質が異なる点には注意が必要です。事業会社で求められるマネジメントスキルは、基本的にはピープルマネジメントだと思います。いわゆる部長とか課長の役割ですね。

一方、コンサルティングファームではピープルマネジメントよりもプロジェクトマネジメントの能力を重要視されます。

榮多:コンサルティングファームのマネジャー以上の役職は、各社でレベル感は異なれど、セールス活動も求められるので、受注した案件をメンバーに回していく必要があります。ですから、「マネジメント」の意味が違うということは、ご理解はいただいたほうが活躍する可能性が高いと思います。

──20〜30代の若手の方に向けたアドバイスはいかがでしょう?

浅野:コンサルタントの仕事は、顧客の課題を見つけて、その課題をクリアするための最適な筋道を考える仕事です。ですので、今すぐの転職を考えていない人も、今いる会社でコンサルタントのような取り組みをやり続けることが、将来の転職の際にプラスになると思います。

与えられた仕事に対しても、本当にそのやり方が最善なのか、よりよいやり方があるのではないかと自分なりに考えていく。よさそうな筋道が見えたらそれを実行してみる。結果的に失敗しても構いません。問題定義をして、それに対して動いてみる経験を積み重ねておくことが、非常に重要だと思います。

若山: 20〜30代の方の場合、40代以降の方と少し意味合いは異なりますが、「変われること」「順応できること」は重要です。
転職希望者の方とお話ししていると、コンサルティング業界に対してキラキラしたイメージを持っている人が多いと感じるのですが、20〜30代のアナリストやコンサルタントが担当する業務は、調査やヒアリング、仮説検証や資料作成など、泥臭くて地味な作業が中心です。そういう仕事であることを理解した上で、やっていけるかどうかを自分に問うていただきたいと思います。そして、本当にコンサルティングファームで挑戦したい方であれば、ぜひ早めにチャレンジされるのが良い と思います。

榮多:今は、事業会社でもジョブ型の採用に切り替わってきていると思うので、コンサルティングファームへの転職はまだ先と思っている方も、自分のキャリアをどう築くか、何を強みとして掛け合わせていくかを常に考えながら、現職でできる経験を積んでいっていただくとよいと思います。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


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