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大手企業で増え続ける黒字リストラの正体——DX時代でも求められるミドル人材とは

公開日:2024/01/31 / 最終更新日: 2024/02/08

業績が好調であるにも関わらず、早期退職を募る——いわゆる「黒字リストラ」を行う企業が増えています。なぜ黒字リストラは起きるのか、リストラの対象にならないための対策はあるのかについて解説します


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コロナで打撃を受けた企業で広がるリストラ


東京商工リサーチのレポートによれば、2021年に上場企業が実施した早期・希望退職の募集人数が6月時点で1万人を突破。2020年に1万人超えを記録したのは9月中旬なので、昨年よりも約3ヶ月速いペースでリストラが加速しています。

業種別に見ると2021年はアパレル・繊維製品や観光、運送、外食などコロナによるダメージの大きな業界がリストラを実施しています。一方でコロナ前からリストラを実施している製造業でリストラを実施したのは、31社中21社が黒字企業。東京商工リサーチは「社員の年齢構成是正」や「製造拠点の見直し」、「業務のIT・オートメーション化」を背景とした募集が製造業で進んでいると指摘しています。

引用元:東京商工リサーチ

製造業における黒字リストラは事業部門や製品の収益力やトレンドの波を受けやすい傾向にあります。低価格化の進む白物家電や海外の大手メーカーとの競争が激しい半導体に携わっていた人材が事業撤退や売却によってリストラの対象になるケースは新聞などの報道でも目にするケースは少なくありません。

また過去には、テレビなどの映像機器がブラウン管から液晶に、フィルムカメラからデジタルカメラに移行した際に新しいトレンドに対応できない人材が配置転換や希望退職によって退職を余儀なくされるケースもありました。

近年は縮小し続ける国内市場を見据え、新規事業や海外進出に乗り出す企業や、デジタル化・DX化による省人化、事業モデルの変革など、企業を取り巻く経営課題は山積しています。それらを実行していくためには適材ではない人材を送り出し、必要な人材を補充することで人件費を適正なラインに維持しながら、新たな投資を実行できる組織にしていく必要があります。

それゆえに、リストラ(希望退職募集)の対象は40代以上の社員や勤続年数の長い社員が中心になる傾向にあります。NECが2018年に実施した希望退職の対象は45歳以上かつ勤続5年以上のグループ従業員3000人、富士通も45歳以上のすべてのグループ社員を対象にした希望退職募集を2019年に実施しています。

両社に共通しているのは45歳以上の退職を促進して、組織の若返りを目指す一方で、全社的なDX戦略を掲げている点にあります。赤字企業の場合にはリストラは給与の高い年代を中心にした人件費削減が主な目的ですが、黒字企業の場合には削減ではなく、最適化を狙ったものであるケースもあります。

事実、NECは早期退職を進める一方で、優秀な研究者には新卒でも年収1000万円以上支払う制度を導入することを明らかにしています。富士通も「高度人材処遇制度」を導入し、AIやセキュリティ領域の専門人材において、最高で年収3500万円を支給するなど必要な人材には惜しみなく投資しています。

では、そうした人材をどのように組織で生かし、事業改革につなげるのでしょうか。NECは2025年度を目標とする中期経営計画の中で、国内のIT事業を従来の個別最適から全体最適に転換して営業利益率を8%から13%に高める戦略を発表しました。「コアDX」というテーマで、NEC社内のDXを推し進めた結果を顧客に提供することを目指しています。

社内のDX戦略としては社内ERP(統合基幹業務システム)をAmazon Web Services(AWS)基盤のサービスに移行し、社員10万人規模のリモートワークを可能にするシステムの運用、AIを活用して意思決定と生産性向上のためのインサイト(気づき)を提供するプラットフォームを活用することで、社員の生産性を大きく向上させることなどを掲げています。

一方、富士通も2020年10月から全社的なDXプロジェクトを開始。経営のリーダーシップ」「現場の英知の結集」「カルチャー変革」の3点を意識した改革を目指す内容で、DXを全社的に推進しやすい体制の整備を進めています。組織面の改革としては、新設したCDXO(最高デジタル変革責任者)、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)、CIO(最高情報責任者)で構成するDXステアリングコミッティ(運営委員会)を経営上層部に設置して、DX推進の舵取りを担います。

現場レベルでは「DX Officer(DXO)」を新設し、富士通内の主要な事業部門、海外リージョンにそれぞれ配置し、マーケティング/デザインセンター/人材開発部門などから選出した22名の人材が「DX Designer」という役職を兼務して、各部門やスタッフ間の連携を支援するとしています。組織の中心軸をDXに据え、2022年度末までに1000億円超規模の投資を行うことも明らかにしており、組織とビジネスモデルを本格的に改革する本気がうかがえます。

黒字リストラ時代でも必要とされるミドル人材とは


こうした新陳代謝が進む中で槍玉に上がるミドルクラスの人材ですが、一方では転職市場においてミドル人材の需要は高まっています。35歳が転職できる最後のタイミングとされた時代は遠い昔の話、現在ではそれまでに培った経験を生かして、既存・新規事業の推進を担う人材の需要は、多くの業界で高まっているのです。

しかし、ミドル人材であれば誰でも歓迎されるというわけではありません。先にも述べたように、事業の推進役として必要な経験や知識を持っていることが大前提であり、上から降りてきた業務を淡々とこなすだけでは転職活動においてもアピールできるものがないどころか、現職においても「留まってほしい人材」として評価されません。
ジョブローテーションやメンバーシップ型雇用など、長く同じ企業にとどまる事が前提の時代は終わったと言われて随分経ちました。近年ではジョブ型雇用で採用し、特定のプロジェクトで早期に結果を求める企業も増加傾向にあります。こうした時代において求められる人材であり続けるためには、企業人としてではなく個人としてのセールスポイントを磨いていくことが重要になります。

例えば人事職のビジネスパーソンであれば、「今後は同じ人事でも、制度設計や社内規定の策定など、もっと経営に近い仕事がしたい」「現場から来る求人に対応するオペレーションではなく、事業部に入り込んだビジネスパートナーとしての人事に挑戦したい」といった具体的なプランを描き、実行していくことで自分自身の志向性を定めたうえで専門性を高めることが重要です。

さらにデジタル人材としての素養を磨くのであれば、専門性の向上と並行して、デジタル化に関するプロジェクトに少しでも関わったり、外部の勉強会に参加して自己研鑽したりすることが重要です。現在の職場がデジタル化やDXに消極的な場合でも、社内有志で勉強会を開く、新規プロジェクトを作成・提案するなど、個人ではなくチーム単位で「うねり」を草の根から起こすことからはじめましょう。

仮に上層部が消極的な反応だったとしても、将来的にデジタル化せざるを得ない状況になった際には、あなたに白羽の矢が立つ可能性は大いにありますし、そうでなくとも、希望するポジションで転職するなど、キャリアの選択肢が広がります。

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専門性を磨きながら、デジタル人材への準備を


ミドル人材においては専門性とデジタル知識を持った人材は、業界を問わず高く評価されます。AIやクラウド技術に対して研究者と渡り合える知識や経験がなくても、そういった技術がどのように生かせるか、また新しい技術を現場に適応させるためには、どういった課題を解決するべきかという道筋を立てられる人材は必要不可欠です。

DXに向けて若返りを測る企業の中で、プロジェクトの成功を推進するミドル人材になれるよう、まずは自分自身のキャリアを振り返り、5年後・10年後のあるべき姿を設計しましょう。


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この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

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