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企業のデジタル化推進の原動力となる「社内SE」地方・大阪における採用動向

公開日:2024/01/31 / 最終更新日: 2024/02/21

2020年以降、場所を選ばない働き方が取り沙汰されていますが、首都圏以外でのデジタル人材の採用動向はどうなっているのでしょうか。
今回は、大阪の企業におけるデジタル化推進状況や社内SEの採用動向、企業がつまずく採用上の課題について、大阪支社のマネージャー・布谷が紹介します。


布谷 好輝

解説者プロフィール
布谷 好輝

JAC Recruitment 大阪支店 社内SEチーム マネージャー
大学卒業後、繊維系商社でアパレル向け営業を経験。
JAC Recruitmentに入社後は関西のSIer・コンサルティングファーム・WEBベンチャーを担当。
その後、関西圏を中心とする各事業会社のIT・DX部門に特化したチームに異動。現在はプレイングマネージャーとして業務に従事。



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大阪における直近10年の社内SEの転職市場動向


関西におけるデジタル人材の採用動向の一つとして、私たちが担当している大阪の社内SE採用の状況を中心にお話しします。
直近10年ほどのマーケットの流れを大きく捉えると、弊社がお預かりする求人数は毎年30%増を続けており、企業におけるIT化推進のニーズは右肩上がりの状況です。2020年からの新型コロナウイルス感染症の影響で採用のペースは多少落ち着いたものの、ニーズの高まりはそれを上回り、現在も多く社内SE採用のご相談をいただいています。
この流れを少し具体的に見ていくと、2013〜2014年頃から、世の中で「守りのITから攻めのITへ」といわれはじめたことが、社内SEの流動性が高まる契機になりました。

その後2015年には、大手製造業を中心に「攻めのIT」への組織転換をしていく動きにシフトします。情報システム部門のトップに新しい人を採用・配置したり、それまでの情報システム部とは別に新しく「IT推進部」「IT企画部」といった部署を立ち上げるなど、「攻めのIT」を実質的に牽引できる部門長クラスの採用がはじまりました。その新体制が2〜3年で定着すると、メンバークラスの増員にもつながっていきました。

全体としては東京の動向よりやや遅れて進む関西圏のマーケットのなかで、ある大手総合電機メーカーは、組織構成を大きく改編したことなどから、早期に「経営の見える化」に着手していました。今では、その企業出身の社内SE人材が、その他の関西圏の大手企業へ転職し、デジタル化の旗振り役になるケースも見られます。中堅・中小規模の製造業における社内SE採用は、大手企業から1〜2年遅れの2017年頃から同じような流れをたどりますが、採用した人の定着がうまくいかないケースもあり、まだまだ管理職が求められている状況です。

製造業以外の業種、例えばサービス業や物流行、不動産業なども似たような流れになると思いますが、キーパーソンの採用ニーズが顕在化したのは2019〜2020年と、比較的最近のことです。

システム統合による「経営の見える化」が大阪の企業の一大テーマ


「攻めのIT」と言っても、その範囲は幅広く、AI・IoTなど新しい技術を取り入れた新規事業創出から、ビジネスモデルの変革、製品・サービス開発の強化などさまざまな取組みがあります。今叫ばれているDXについては、こちらのイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

2015年頃から起こりはじめた企業内での「攻めのIT」は、市場・顧客の変化に則した経営判断をするための基盤づくり、つまり「経営の見える化」という意味での基幹システム統合が主流でした。その後、進展のフェーズに合わせて、セキュリティ強化や顧客行動・市場分析の強化などのトピックが持ち上がり、それに伴う採用ニーズもあるものの、やはり大きな流れとしては「経営の見える化」が一大テーマなのは変わりませんでした。いわゆるDXの必要性が語られはじめたのは、2018年頃のことですが、これに対する反応はどちらかと言うと現場主導で、ものづくりの現場から「デジタル人材を採用したい」という声が聞かれるようになりました。しかし、その動きと情報システム部門は別の流れにあり、情報システム部門はあくまでも社内のシステムを担うものとして採用を考える企業が大半でした。

それが、2020年になると新型コロナの影響もあって大きく状況が変わります。
現在は、現場から持ち上がったデジタル化の動きと、情報システム部門が進めてきた経営の見える化、この2つの大きな流れを連携させる方向へシフトする企業が、大企業を中心に少しずつ出てきているといった状況です。

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IT・デジタルに疎く、導入への抵抗感が大きい


新型コロナで状況が変わったと申し上げましたが、とはいえリモートワークひとつとってみても、導入・定着が進んだのは、私の感覚では全体の2割程度、それも上場企業・大手企業が中心です。それ以外の企業は、工場が稼働していたり、取引先が出社していたりしたこともあって、リモートワークは進んでいない印象です。
特に製造業の場合、発注先が東大阪の町工場ということも多く、そういったところは今でもFAXで受注しています。昔ながらの義理・人情や信用のうえに商売が成り立っているという文化的な背景もあり、無機質に見えるITを浸透させていくのはなかなか難しい面があります。

大手企業が自社の基幹システムを刷新したとしても、自社のみで完結するわけではありません。発注先にもシステムが導入され、データ連携がとれなければなりませんが、発注先である中堅・中小企業は経営陣・従業員ともにITにあまり明るくない方が多く、システムの導入が進まないか、導入できても使ってもらえないケースがほとんどです。

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現場の声が強いこともデジタル化を進めるうえでの課題


もう一つ、大阪の企業の特徴であり、課題ともなっているのが、「現場の意見が強い」ことです。
ある大手機械部品メーカーでは、やはり基幹システム統合プロジェクトを進めていますが、現場部門から改修要望が山のように寄せられ、5年ほどの間ずっとプロジェクトが進まない・・・などのケースもあります。

別の大手電子機器メーカーでは、やはり基幹システムの統合を進めようと、東京のコンサルティングファーム出身者を複数採用した例がありました。しかし、導入先の現場から抵抗感が強く、結局システム統合できないままその方たちは辞めてしまい、新たに人を採用しなければならない事態になりました。この企業は、既存の情報システム部門とは別に、新たに「攻めのIT」を推進するための部門を立ち上げたのですが、結局そこに対立が起こってしまいました。既存の部門からすると、仕事を奪われて、自分たちは「守り」のほうばかりやらされるという思いもあったのでしょう。

だからといって新部門を立ち上げることが必ずしも悪手というわけではありません。大事なことは対立が起こらないように、経営のトップがIT化する目的や意義を、自ら説明することだと思います。
私が担当したある化学メーカーでは、社長が交代したタイミングで社内に大号令をかけて、ITだけでなく組織まで含めた抜本的な改革に取り組まれています。決して現場からの抵抗が弱い企業ではありませんが、それでも「社長がこう言っているのだから」という強制力があり、そのおかげで少しずつ改革が前に進んでいる。まだ道半ばではありますが、うまくいっている事例の一つだと言えます。

採用するうえで一番の問題は「採りたい人を定義できない」こと


このような、大阪の企業でよく見られる課題を乗り越えていくために、自社の経営層から従業員、発注先まで含めてITリテラシーがあまり高くない人たちに対して、IT導入の必要性やツールの使い方などを、わかりやすく説明する能力が社内SEには求められます。

もちろん技術的な知識・経験も必要です。しかし、デジタル化を推進したい側の都合や「こうすべき」という理想論だけ話しても物事は前に進みません。強い意見を持ち、時に“抵抗勢力”のように見える現場部門の人たちの考えにも耳を傾け、ひざを突き合わせて対話を続けながら味方につけていく、結果としてプロジェクトを前進させられる交渉力やコミュニケーション能力、そして根気強さが必要です。実際、我々がサポートし、大阪の企業に社内SEとして転職した人の入社後の状況を見ると、チームを組んでプロジェクトを牽引した経験がある方や、フロントに立って顧客と折衝した経験が豊富な方がご活躍されている傾向があります。

しかしここに、ひとつの大きな問題があります。
それは、そういう社内SEを必要としている企業、特に中堅・中小企業の多くが、自分たちで採用要件を適切に定義できないという問題です。すると、当然ながら採用に至らないか、採用できても短期間で辞めてしまうことが多くなります。
そうなってしまう要因の一つは、これまでにデジタル化を推進できる人材を採用した経験がないことが挙げられます。既存の人材ではデジタル化を推進できないから採用するはずなのに、どうしても「従来採用してきた社内SE」の要件から離れられない。そこで新しい要素を追加しようとするわけですが、「AIが分かる人」「データサイエンティスト」という言葉は出てくるものの、「なぜそういう人を採用したいのか」がイメージできていないのです。

もう一つよくある要因は、社内の人事・採用に関するルールや不文律にとらわれてしまうこと。
本来、他社でリーダーシップを持ってデジタル化を推進した経験のある人を採用する場合、経験豊富なミドル層まで想定し、待遇もそれなりの条件を用意する必要があります。
しかし、「組織の年齢構成上」という理由で若手しか採用できない予算に抑えられてしまうというのは、その一例です。企業によっては、情報システム部よりも人事部の発言力が強く、そういった本質的でない判断が容易にまかり通ってしまうという構造的な問題がベースにある場合もあります。

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採用決定した求人の7割は、JACが採用要件定義をサポート


こうした問題を抱える企業のサポートとして、私たちが企業にヒアリングしたり提案したりして、採用要件の定義からお手伝いするケースがあります。その割合が実はかなり多く、弊社からの紹介で採用決定した社内SEの求人の約7割の採用要件定義は、私たちが入って行ったものです。
どのように採用要件を決めていくのかは企業によっても異なりますが、基本的には企業の経営層か、それに近いポジションの方と直接お話しする機会を設けていただくことが多いです。ひとまず採用は抜きにして、今叫ばれている「デジタル化」「DX」とはそもそも何なのか、これまでの情報システム部の仕事といかに異なるかを説明します。その上で、これを「推進できる人」を採用するために、応募書類の読み解き方や、設定すべき採用要件、企業として用意すべき給与水準・待遇のポイントをレクチャーするイメージです。

企業によっては、現場部門の責任者に同様のアプローチをすることもありますし、実は情報システム部門の人がIT業界のエンジニアがどのようなキャリアを歩んでくるのかを知らないケースもあるため、お話しに行くこともあります。
人事部のほとんどはITを深くは理解していませんが、採用については専門であり責任も負っています。そのため、情報システム部からの直接の働きかけでは、社内のルールや慣習を逸脱するのが難しいという背景があります。そんなときに、強い発言権を持つ経営層や現場部門の責任者から人事部に対して、「こういう人を採りたいから、例外を認めてほしい」「ルールを変えてくれ」と働きかけてもらえれば、状況を変えられる可能性があります。そして実際にこのような弊社の取り組みが、微動だにしなかった山を動かし、有力な社内SE人材の採用に漕ぎ着けた例が数多く生まれています。

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大阪で社内SEとして働く魅力


大阪の企業における、デジタル化を推進する上での課題と、採用にまつわる課題、それに対する弊社の取組みをお話ししてきました。
「現場の意見が強い」「ITへの抵抗感が大きい」というとネガティブに聞こえるかもしれませんが、そうなってしまうのは企業を取り巻くDXの流れや、他部門・他企業の状況が「見えていない」からです。しかし根底の部分では、どの企業も「ITの力を駆使したい」「DXを進めたい」と本気で思っています。

全体像を俯瞰できる社内SEがそこへ入り込んで、いろいろな立場の「見えていない」人たちに、ひざを突き合わせてしっかり説明をしていく。“抵抗勢力”のように見えていた人たちもデジタル化の意義やITの有用性を理解できさえすれば、DXを推進する側になってくれる可能性を秘めています。目指すところは同じなのです。
根気強さは必要ですが、自分の働きかけ次第で、経営層や現場部門の方とも直接話をしたり、会社のカルチャーそのものを変えたりしていけるという点は、大阪で社内SEとして働くことの大きな魅力だといえるのではないでしょうか。


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インタビュアー

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越智 岳人

編集者・ジャーナリスト

技術・ビジネス系メディアで取材活動を続けるほか、ハードウェア・スタートアップを支援する事業者向けのマーケティング・コンサルティングや、企業・地方自治体などの新規事業開発やオープン・イノベーション支援に携わっている。。

ライター

hatabe

畑邊 康浩

編集者・ライター

語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集、社内SEを経験。その後人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。
2016年1月からフリー。HR・人材採用、IT関連の媒体での仕事が中心。

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