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DXとITの違い、説明できますか?—新人DX担当者が身につけておきたい基礎知識

公開日:2024/01/30 / 最終更新日: 2024/02/21

「来年度からウチの部署を代表してDXプロジェクトのメンバーに入ってくれないか」
「今度新設するDX推進課に異動してくれないか」

突然、DX担当として異動を打診された。それまでDXとは全く無縁で働いていたので、DXってなんとなく分かっているようで、実はよく分からない。ITとどう違うの?IoTやAIと、どう関わりがあるの?などの疑問が次々と湧いていませんか。

それもそのはず。日本は海外先進国の中でもDXに対する取り組みが遅れていて、DXとIT化を混同した報道や記事は未だ多い状況です。そこで今回は新人DX担当者に向けてDXを解説します。


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DXとIT化の違い


DXと混同しやすい言葉の一つにIT化が挙げられます。「デジタル化」や「デジタライゼーション」とも呼びますが、本記事ではIT化に統一します。

IT化はデジタル技術を活用することで、業務効率化や省人化を高めたり、既存の製品やサービスの価値を高めたりすることを指します。

例を挙げると
・これまで紙による回覧で決裁していた稟議書類を、SaaSに置き換える
・FAXで行っていた受発注管理をクラウドサービスに置き換える
・見積書や請求書、経費精算申請などのフォーマットが決まっている事務作業を、ソフトウェアが代行して作成する

といった、アナログな作業をデジタル技術で効率化することを指します。コロナ禍で一気に普及したオンライン会議システムやテレワークもIT化の1つです。

画像や音声、温度や湿度などをセンサーからデータ収集し、解析して効率化を行うIoT(Internet of Things/モノのインターネット化)もIT化の一つです。
センサーが安価になり、コンピューターが小型化し、無線通信が発達したことによって、インターネットにつながった状態のセンサー付き情報端末をあらゆる場所に設置できるようになりました。収集されたデータはサーバー上で機械学習やディープラーニングと呼ばれる手法を搭載したAIによって解析され、その結果を現場にいる人間や機器にフィードバックします。これによって、人の目や感覚、長年の経験に頼っていた業務を効率化できるようになりました。

IoTによるIT化の例としては、以下のような事例が挙げられます。

・これまで熟練した経験を持つ人間しかできなかった、外観検査をIoTとAI機能を組み合わせたカメラに置き換えた
・ビニールハウス内の温度や湿度、土の水分量をデータ化して監視することによって、適切な場所に適切なタイミングで水やりを自動で行う
・機械メンテナンスの際、ベテランにしか判断できなかった異音検知を、マイク付きIoT端末を使うことで、誰でも正確に判定できるようにした。

これまでの事例でわかるようにIT化は人間が行っていた業務を、テクノロジーによって解決することを指します。特に少子高齢化や労働者人口不足に悩む日本にとっては、必要不可欠なソリューションと言えるでしょう。

更に近年では、ロボットの導入による効率化も進んでいます。これはIT化の発展型とも言えるソリューションで、ITインフラが充実したことに加え、ロボットを構成する主要なパーツやモジュールの価格が大幅に下がり、一部のソフトウェアが一定の条件を満たせば誰でも利用できるオープンソース化が進んだことが影響しています。

受付や接客、清掃や運搬をロボットが担うケースや、長距離の歩行に難がある高齢者を自律走行で送り届けるモビリティなども、今後期待されているソリューションの一つです。

では、これらを踏まえた上でDXとIT化はどこが違うのでしょうか?
IT化がデジタルによる効率化を指すのに対し、DXはIT化された状況を前提に、そこに付随する事業モデルや組織、そして商品やサービスのモデルを変革させることを指します

イメージしやすいよう、例を挙げながら違いを解説します。
ある小売チェーンは、これまで新聞の折込チラシで配布していた割引クーポンをアプリに切り替えました。アプリはポイントカード機能を兼ねているのでユーザーの年齢や性別、住所と購買データを紐付けることができます。ここまではIT化です。

アプリや購買記録などのデータを活用できるようになると、店舗以外での顧客との新たな接点を設けたり、付加価値の高い購買体験を提供できるようになったりします。
例えば、オンラインストアで特定の商品を複数回購入した顧客限定で、実店舗でも利用できる割引クーポンを自動的に発行し、そのキャンペーンが特定の顧客層で有効な施策であることが確認されたので、他の商品にも展開するといったケースはDXといえます。

ここでのポイントはユーザーのデータがあらかじめ蓄積され、分析によって新しい施策を検証・実行できるシステムと人材が社内にあったことにあります。そして、その施策が顧客にとって利便性があるものであり、従来のチラシ配布や一斉配信によるメールマガジンでは実現不可能なアプローチ方法だった点も忘れてはいけません。

ここまでのお話をまとめると、IT化がデジタル技術による効率化を指すのに対し、DXはデジタル技術によって効率化され、データが蓄積された環境を基に、今までになかったサービスや事業を提供することを指します。

さらに今日では先に挙げたIoTの普及に伴い、ユーザーから取得できるデータは多様化しています。年齢や性別といったシンプルな属性データだけでなく、「いつ、どこにいるか」「どのように店舗を回遊するか」「何度目の訪問・アクセスで購買に至ったか」といった行動データまで収集できるようになったことが、DXを後押しする背景にもなっています。

IT化とDXに共通しているもの・異なるもの


IT化とDXに共通しているのはテクノロジーによって、利用者や関係者が何らかの課題を解決できたり、利便性を得たり——結果として、心地よい体験として、継続して利用し続けるようになる点です。つまり、いずれも提供者側のエゴだけでなく、利用者側にもメリットがなければ成立しません。

DXで鍵となるのは、ユーザーの行動データです。ここで定義するユーザーは単純に顧客だけでなく、自社の社員や取引先企業など、企業が相対するあらゆる利用者を指します。ユーザーの行動データの量と質、そしてバリエーションを維持し続けるためには、ユーザーと継続的に接点を持ち続ける必要があります。シンプルにいってしまえば、自社のツールやサービスを利用し続けてもらわなければならないのです。そのためには、提供者だけの都合でなく、ユーザーにとっても利便性のあるアプローチである必要があります。

例えば、顧客との接点を増やすためにクーポン付きのアプリを開発したとしても、そのクーポンの配布タイミングや配布先が全く改善されず、ユーザーからの満足度も低ければ、アプリの利用率も上がらず、データ収集も収益改善も進まず、DXは失敗に終わるでしょう。

また、データを活用した施策を展開するうえで、現場でユーザーと接する部門(顧客と接する店舗スタッフやコールセンター、工場の生産部門など)が、DXによって得られるメリットや効果を理解することも重要です。一方的にツールを押し付けたとしても、現場が納得して利用し続けない限り効果は出ません。

このようにデータを収集、分析、活用し、あらゆる部門に働きかけることが、DXにおいては不可欠であり、結果として組織改革を促すことになるのです。

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手段の目的化に陥らないために


ここまで紹介したとおり、DXを成功させるためには、単純なツール導入だけでなく、データの蓄積と分析、活用できる組織作りが必要不可欠です。そのためにはデジタル技術のリテラシー以上に、課題を抽出する能力や組織を巻き込んだ変革を促す能力、現場や顧客の視点から考える能力が不可欠です。

ツールやテクノロジーの導入によって、業務を効率化させることがIT化でしたが、DXはIT化した環境を一つの手段として活用することを指します。そのため、単純にAIやIoTソリューションを導入しただけではDXとはいえません。それらを活用して、これまで成しえなかった事業やサービスを生み出したり、組織内部に良い変革を起こしたりすることがDXなのです。

新人DX担当者として必要な心得は、技術だけに視点を向けるのではなく、広い視野を持ちながら、トリガーとなるポイントを見つける能力を磨き続けることでしょう。


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ライター

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越智 岳人

編集者・ジャーナリスト

技術・ビジネス系メディアで取材活動を続けるほか、ハードウェア・スタートアップを支援する事業者向けのマーケティング・コンサルティングや、企業・地方自治体などの新規事業開発やオープン・イノベーション支援に携わっている。

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