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「最先端技術とビジネスとをつなぐ」株式会社 Laboro.AIが見据えるAI市場の未来とは?ボストンコンサルティンググループ出身のCEOとCTOインタビュー

株式会社 Laboro.AI

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椎橋 徹夫氏
株式会社 Laboro.AI 代表取締役CEO
2008年にボストンコンサルティンググループ東京オフィスに参画し、同社のテクノロジーアドバンテージグループのコアメンバーとして、ビッグデータ活用チームの立上げをリードする。
その後、東大発AI系のスタートアップ企業に創業4人目のメンバーとして参画。
2014年、東京大学 工学系研究科技術経営戦略学専攻 松尾豊研究室 グローバル消費インテリジェンス寄付講座 ディレクターを兼任。
松尾研究室における産学連携の取り組み・データサイエンス領域の教育・企業連携の仕組みづくりに従事。
2016年、株式会社Laboro.AIを創業。代表取締役CEOに就任。
藤原 弘将氏
株式会社 Laboro.AI 代表取締役CTO
大学院修士課程修了後、2007年に独立行政法人(現 国立研究開発法人)産業技術総合研究所 情報技術研究部門にパーマネント型(任期無し)研究員として入所。
音声/音楽の自動理解の研究に従事。機械学習・音響信号処理・自然言語処理を専門とする。在職中の2008年に京都大学大学院博士課程に社会人学生として入学し、2009年に博士 (情報学) を取得。2011年〜2012年の間、在外研究員としてQueen Mary University of London客員研究員を兼任。
2012年にボストンコンサルティンググループに入社し、データ分析に基づく経営戦略/マーケティング戦略立案に従事。また、社内のビッグデータ活用チームに所属し、社内のデータアナリティクスに関する研修の講師も務める。
その後、AI系のスタートアップ企業を経て、2016年に株式会社Laboro.AIを創業。代表取締役CTOとして技術開発全般をリードする。

株式会社 Laboro.AI (ラボロ エーアイ)は「効く、AIを。」をコンセプトに、最先端のAI/機械学習技術をビジネスに応用することをミッションとして、オーダーメイドによるAIモデルの開発とコンサルティングサービスを提供しています。今回は同社のCEOの椎橋氏とCTOの藤原氏に、当社コンサルタントの土井篤が話をお伺いしました。テーマはAI市場の未来、その中での同社の競争優位性、そしてAI市場で求められるこれからのタレントまで多岐に渡ります。

■株式会社 Laboro.AIの市場優位性は、最先端技術とビジネスとを「つなぐ存在」であること

土井:椎橋さんは藤原さんとボストンコンサルティンググループ(BCG)出身という共通点がありますよね。でも、BCGは世界で約16,000名、日本だけでも約700名が在籍するコンサルティング会社です。これほどの従業員数ですと、顔も知らない同僚もいますよね。その中でお二人が出会えたのは必然だったのでしょうか?

椎橋氏:確かに規模だけ見るとなかなか出会わない二人かもしれません。でも、私と藤原のこれまでのキャリアには共通点があるんです。それを一言で申し上げますと、「最先端の技術とビジネスとをつなぐこと」なんです。「アカデミアと産業の世界をつなぐこと」とも言い換えられます。その中で2014年から始まったあるプロジェクトに、私が藤原を誘ったのが創業のきっかけです。そのプロジェクトは、東京大学の松尾豊研究室という機械学習の研究室で、産学連携の仕組みを作ることなんですね。その時にもともとBCGで一緒に働いていた藤原を誘って、松尾研究室の周りで創業したスタートアップの立ち上げのプロジェクトを一緒に進め始めたんです。

土井:なぜ「技術とビジネスとをつなぐこと」という考え方でビジネスを展開しようと思ったのでしょうか?

椎橋氏:「最先端技術(アカデミア)とビジネス(産業)とをつなぐこと」を志向しているプレイヤーが、市場に明確に存在していなかったんです。例えば私たちがいたコンサルティング業界やビジネス領域だと、技術についてもよく議論されるんですね。でも本当に技術を活用してシステムを実装までして届けることまで踏み込んでいる会社は多くはないのです。一方で、アカデミアや技術系のスタートアップの立場になると、技術ドリブンになることがどうしても多いのが現状です。だから、まだ誰も明確に着手できていない、かつ社会的に最も必要である「技術とビジネスを繋ぐことで新しい技術を実用化し、産業インパクトを生み出す」ために、株式会社 Laboro.AIを創業しました。

土井:具体的にはどういったビジネスになるのでしょうか?ホームページには「カスタムAI」と「ソリューション」の文字が並んでいますね。

椎橋氏:我々のビジネスは機械学習の技術を、企業や産業のコアなプロセスや本業に入れることで実現されます。AI活用でよくイメージされる、間接部門などの効率化のためのAI活用ではありません。クライアント企業の競争力の獲得や、産業のバリューチェーンの根幹の変革を実現しているのです。だから、自ずと支援のスタイルは、汎用的なサービスを提供するのではなく、カスタマイズされた、オーダーメイドのソリューションを設計してご提供するというものになります。また、我々はEC・通販、人材業界、生命保険と様々な業界のクライアント様の支援をさせていただいています。なぜここまで多様な業界に対応できるかというと、その方法論はもちろん異なるものの、コアなビジネスプロセスや事業を理解すること、適切な機械学習ソリューションを設計すること、これらはどの業界やビジネスであっても共通していることだからです。

■なぜ株式会社 Laboro.AIはクライアント企業と「伴走」できるのか

土井:市場の中には「AIをビジネスに応用すること」を強みに掲げる会社であったり、自社にAI開発の部門を設ける会社は増えていますよね。その中でも貴社がクライアント企業に選ばれる理由はどこにあるのでしょうか?

椎橋氏:実際にプロジェクトとして進めていく際に、上流から伴走することが、クライアント企業様が弊社を選んでくださる大きな理由になっています。どうすればクライアント企業の「コアなプロセスが機械学習の導入によって改善されていくか」という設計の部分からご一緒させていただいているのです。だから、我々は顧客の要望を盲目的に受け取ってその通りに実装することはしません。実は上流から関わると当初の計画とは認識が変わっていくことがあります。ご相談の入り口は技術だったとしても、もう一段深く議論していくと、現状のビジネスを変革させるためには、そもそもどこから技術を活用すべきか、またその技術が本当に適切かなどを見直すことになり、その結果、当初とは違う方向性が最適な答えとなることも十分にあり得ます。

藤原氏:たとえばディープラーニングを活用した画像認識のソリューションで考えると、前提として、フレームワークに大きく3つのレイヤーがあります。
ベースとなる1番下のレイヤーは、ディープラーニングを作るためのある種のプログラミング言語を作る部分です。中間にある2つ目のレイヤーは、作ったプログラミング言語を組み合わせて画像を認識する部分です。3つ目の一番上のレイヤーは、さらにデータを学習させて作られるAIモデルです。
市場に存在している多くのプレイヤーは3つ目のレイヤーに属しています。どういうことかと言うと、多くの企業ではAIの根幹となるベース技術部分には注力せず、汎用的なものを使っているということです。
私たちでいうと、一つ目と二つ目のレイヤーの視点からソリューションを提供しています。一つ目のレイヤーであれば企業毎にAIに学習させて提供していますし、二つ目のレイヤーであれば既存のモデルが使えれば活用しますし、なければ実装したりもします。そこは見極めていますね。

■株式会社 Laboro.AIが生み出す「タレント人材」と、AI市場の未来予測

土井:貴社が掲げる「最先端の技術とビジネスとをつなぐ」の元で経験を積むと、どういった人材へと成長していくのでしょうか?初めて株式会社 Laboro.AIを知った人にとっては、少しイメージがしにくいかもしれません。

藤原氏:弊社のキャリアパスとしては、あらゆる産業でイノベーションを起こせる人材になる可能性を秘めています。中心になるキャリアは二つです。一つ目の「機械学習エンジニア」は、ビジネスや産業のバックグラウンドを元に、それまでのデータ解析の経験が活かすことができます。サイエンス、アカデミアの世界で発見される知見の実用化を担っているポジションです。もう一つは「ソリューションデザイナ」と私たちが呼んでいる他にはないキャリアです。一言で言えば、機械学習とビジネスを繋ぐことでソリューションを提供している仕事です。技術とビジネスを繋ぐ専門家として、新しい職業になるという願いを込めて名付けました。でも、最初から二つの領域を知る人材はなかなかおりません。だから、タッグを組んでプロジェクトベースで価値を提供する体制を採用しています。

土井:貴社はAI市場を技術とビジネスの両方の角度から見ることができるポジションを取っています。その二つの視点からすると、今後のAI市場はどう映っていらっしゃいますか?その中での貴社の展望も併せてお聞かせください。

椎橋氏:ものづくりだったり、土木、建設といったリアルな産業の方がポテンシャルは大きいと考えています。機械学習は大量のデータが必要なので情報産業系の方がデータの蓄積はしやすいのですが、リアルの産業アセットと組み合わせた方がインパクトが出せるんです。ITがすべての産業を横断してあらゆる業界を変革させていったように、私たちもソリューションデザイナであったり、技術の知見を実用化する機械学習エンジニアをタレントとして輩出することで、あらゆる産業にイノベーションを起していくことを視野に入れています。タレントとして育てていく時には、一人ひとりが持つ産業や領域への熱意や考えを重視したいと考えています。私自身は、インパクトの大きさとしてインフラ領域が大きいと考えていますが、例えば保険や、小売・流通に機械学習を活用することに興味がある人がいれば、その分野で活躍できる土台を提供したいと思います。

藤原氏:日本は機械学習を産業の中で実用化することに、実は向いているのではないかと考えています。インターネット企業がアメリカや中国を席巻したほどには、日本はインターネット系の企業が強くありません。AI人材がネット領域だけに吸い取られていないのが、日本のAI領域における人材の特徴です。今から日本の研究が世界をリードする可能性は高くはないかもしれませんが、世界の研究から生まれた知見を輸入して日本のマーケットで実用化できる可能性はあります。その仕方を世界に輸出することはできる可能性は十分にあります。我々もせっかく日本で会社を立ち上げているので、日本のAIの現状に軸足を起きながら世界に通用するイノベーションを起こすことを見据えています。グローバルにプレゼンスがある日本企業と一緒にイノベーションを進めてグローバルに展開していくのが、目下の目標です。

聞き手

土井 篤
株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント 執行役員
コンサルタントとしてIT・コンサルティングファームの領域を担当。
現在はJACのデジタルマーケットを管掌する。
薬丸 詩織
株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント
デジタル領域の中でも、主にAI・機械学習・深層学習・ビッグデータなどの
テクノロジードリブンな企業を担当。
エンジニアポジションからビジネスサイドのポジションまで幅広い業種の採用についてご支援をする。